シンセサイザーって何?シンセサイザーのすすめ[記事公開日]2017年8月29日
[最終更新日]2022年03月31日

シンセサイザーのすすめ

ピアノやオルガンなどを格好良く弾いている人を見て「自分もやってみたい!」と思った経験のある方も多いのではないでしょうか。ただピアノやオルガンは敷居が高いし、もっと気軽に弾けたら…。そのような場合、シンセサイザーがオススメです。

シンセサイザーには様々な種類がありますが、その中でも主流のデジタルシンセサイザーは単に演奏用の鍵盤楽器としてではなく、ギターやドラムの音色が鳴らせたり作曲や編曲の機能が備わっているなど、非常に多機能でいながら比較的低価格で購入することができます。

そこでここではシンセサイザーの基礎知識や歴史、シンセサイザーの種類と特徴、シンセサイザーとキーボードの違い、シンセサイザーで出来ること、初心者にオススメの入門モデルなどについて詳しく解説していきます。

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1: シンセサイザーとは? 2: シンセサイザーの歴史 2.1: シンセサイザーの神様 冨田勲 2.2: YMO(イエロー・マジック・オーケストラ) 2.3: MIDI規格の登場 2.4: ソフトウェアシンセサイザーの時代へ 2.5: ボーカルシンセサイザーの登場 2.6: シンセサイザーの今後は? 3: シンセサイザーでできること 3.1: 1人オーケストラ 3.2: ドラムの打ち込み、リズムマシンとしても 3.3: カラオケや楽器練習のマイナスワンに 3.4: オリジナル曲の制作も可能 4: シンセサイザーの豆知識 4.1: シンセサイザーとキーボードの違いって? 4.1.1: 音色合成の有無によって分かれる 4.1.2: 初音ミクはシンセ? 4.2: カラオケの音源はシンセサイザーで作られている 4.3: 鍵盤がないモデルはどうやって演奏するの? 5: シンセサイザーの種類 5.1: デジタルシンセサイザー 5.2: アナログシンセサイザー 5.3: ソフトウェアシンセサイザー 5.4: その他のシンセサイザー 6: シンセサイザー入門モデルのオススメ3種 6.1: KORG KROME 61 6.2: ROLAND JUNO-DS61 6.3: YAMAHA reface シリーズ

シンセサイザーとは?

一般的にシンセサイザーというと鍵盤楽器を想像する方が多いと思いますが、厳密に言えばシンセサイザーはsynthesize「合成するもの」という意味から来ているため、鍵盤がついていないシンセサイザーも存在します。その場合は「音源」と呼ばれたりします。

Moog Minitaur 鍵盤のないアナログシンセサイザー「Moog Minitaur

シンセサイザーはもともと波形を一から加工・合成して音色を作り上げていくアナログ式のものでしたが、1980年代からはFM音源やPCM音源を合成・加工していくデジタル式のものが主流になりました。どちらにせよ一般的な楽器が独自の音色を持っているのに対し、シンセサイザーは「合成・加工により新しい音色を作りあげていく楽器」と覚えておけばいいと思います。

一般的にシンセサイザーと呼ばれる楽器はやはり鍵盤を持っているものが主流で、主に

  • アナログシンセサイザー
  • アナログモデリングシンセサイザー(またはバーチャルアナログシンセサイザー)
  • デジタルシンセサイザー

の3種類に分けられます。現在は安定性・利便性・価格などの面からデジタルシンセサイザーが主流ですが、定期的にアナログシンセサイザーが流行する傾向があります。

また演奏用の鍵盤楽器としてではなく楽曲制作用の音源としての目的であれば、現在はソフトウェアシンセサイザーも多用されるようになりました。こちらはハードを持たないため比較的安価に導入することが可能で選択肢も多いため、現在ではプロだけではなくアマチュアクリエイターにも広く浸透しています。

パソコン上で動作するソフトウェア・シンセサイザー「SPECTRASONICS Omnisphere 2

シンセサイザーの歴史

実験的な電子楽器は1930年代にはすでに存在していたようで、それが後のシンセサイザーの原点になったと言われています。実際にシンセサイザーを使った音楽が演奏されるようになったのは1950年代からで、この頃から初めてシンセサイザーという名称で呼ばれるようになります。

シンセサイザーの神様 冨田勲

日本での一般知名度はそこまで高くないかもしれませんが、冨田勲さんはシンセサイザーの神様と呼ばれ世界的にも広く名前が知られている有名な作曲家です。日本にまだシンセサイザーが浸透していなかった頃、当時1,000万円もしたと言われている大型のアナログシンセサイザーをはじめて個人輸入したのが冨田勲さんだったそうです。

その後当時としては革新的だったクラシックとシンセサイザーのコラボレーション作品を発表し、日本人としては坂本九の「上を向いて歩こう」以来の全米チャート入りを果たし、後に日本人として初めてグラミー賞にノミネートされるほどに。日本でもTV番組のテーマ曲やBGM制作など作曲家として非常に多くの作品を残しています。

残念ながら2016年に亡くなられていますが、晩年にはボーカル・シンセサイザーであるVOCALOID「初音ミク」とのコラボ作品を発表するなど生涯に渡ってシンセサイザーと関わってきた方でした。日本だけではなく世界のシンセサイザーの歴史に大きな影響を与えた人物といっても過言ではないでしょう。
冨田勲×初音ミク  「イーハトーヴ交響曲」 銀河鉄道の夜の動画はこちら

YMO(イエロー・マジック・オーケストラ)

一般層に向けてシンセサイザーという楽器を広く知らしめたのはおそらくYMO(イエロー・マジック・オーケストラ)ではないでしょうか。YMOは細野晴臣・高橋幸宏・坂本龍一の3人からなる音楽ユニットで、シンセサイザーを全面に押し出したテクノポップという音楽ジャンルを大流行させました。

代表曲は「RYDEEN」「TECHNOPOLIS」「君に、胸キュン。」など。特に「RYDEEN」はシンセサイザーがメロディを奏でるインストゥルメンタル作品なのですが、今でも古さを感じさせないということは当時としてはかなり斬新だったと思います。
YMO – Rydeen (Budokan 1980) の動画はこちら

MIDI規格の登場

DAWソフト上でのMIDI DAWソフト上でのMIDIの様子

1980年代に入るとMIDI(Musical Instrument Digital Interface、読み方はミディ)という規格が登場します。それまでのシンセサイザーはあくまで生演奏のための楽器でしたが、ここからこのMIDI規格に沿ったデジタルシンセが一気に普及し一般層にも広く浸透することになります。

MIDI規格は楽曲における強弱・音程・音価・各種ON/OFF・再生/停止などの情報を全てデータ化したものであり、MIDIの登場によりデジタル楽器を使ったDTMが一般的になり今に至っては楽曲制作の基本となっているほどです。例えデジタル楽器を一切使わない楽曲だったとしても、DAWを使ったレコーディングでは各種操作やオートメーションがMIDIで制御されているため、もはやMIDIなしでの楽曲制作は考えられないのです。

音楽の歴史をたどっていくと、80年代以前と以降ではシンセサイザーによって世界の音楽が一変していることに気付くはずです。70年代までは珍しいもの扱いだったシンセサイザーが今ではポピュラーミュージックにも当たり前に使われているというのは少々不思議な感じもしますね。

ソフトウェアシンセサイザーの時代へ

Native Instruments Massive ソフトシンセ業界を牽引するNative Instrumentsの「Massive」

2000年代に入ると今度はソフトウェアシンセサイザーが使われるようになります。ソフトウェアシンセサイザーというのは簡単に言うとコンピューター上でソフトとして立ち上げて使うシンセサイザーのことで、ハードウェアを必要としないことからより安価に、より気軽に導入することができます(演奏にはMIDIキーボードが必要になります)。

またそれまでハードウェアのシンセサイザーでは本体メモリーの関係から大容量の音色データは扱えなかったのですが、ソフトウェア・シンセサイザーの場合はパソコンのハードディスクを記憶領域に使用するため、より大容量の音色データを使用することが可能になりました。プロ仕様の本格的なオーケストラ音源だと全部で50GBを越えるような大容量音源もあるほどです。

音色データの大容量化にともないシンセサイザーとしてではなく実際に生演奏された音色を使ったサンプラー的な使い方をされることが増えてきたようにも思いますが、ソフトウェアシンセサイザーの登場によりシンセサイザーとしての可能性はより広がったと思います。

ボーカルシンセサイザーの登場

初音ミク 初音ミク

2007年にはヤマハの音声合成システム「VOCALOID」を使ったボーカル・シンセサイザー「初音ミク」が発売され、若い世代を中心に大ヒットしました。それまでボコーダーやトークボックスのように「擬似的にボーカルのようなサウンドに仕上げるエフェクター」は存在しましたが、実際のボーカルの代用として使えるようなシンセサイザーは存在しませんでした。

アマチュア・ミュージシャンが歌モノの楽曲を仕上げる際には「歌ってくれるボーカリストを探してきて実際に録音する」という高いハードルがあったのですが、VOCALOIDのおかげで完全に一人で楽曲を完成させるということが可能になりました。これはシンセサイザーのみならず音楽制作の歴史の中でもかなり画期的な出来事だと言えるのではないでしょうか。

初音ミクが登場した2007年頃は制作者の技術不足もあり「ロボ声」などと揶揄されることも多く、あんなのは歌じゃないと嫌悪する人も多かった印象でした。初音ミク登場から10週年となる2017年現在では技術の進歩と世間の認知によってようやく「音声合成ソフトを使ったボーカル楽曲」が一つのジャンルとして認められたように思います。


【Hatsune Miku】 World is Mine / ryo(supercell)【初音ミク】

シンセサイザーの今後は?

アナログシンセ・デジタルシンセは行き着くところまで進化し尽くした感もありますし、MIDI規格登場によって数値による合理的な録音・編集やオートメーション(自動制御)が可能に、ソフトウェア・シンセサイザーにより限りなく生音に近いリアルな音色が扱えるように、そしてボーカル・シンセサイザーによって歌までも表現できるようになりました。

シンセサイザーがまだ日本に浸透していなかった1970年代から考えると当時からは想像もつかないような進化を遂げています。こうして見るとおよそ10~20年おきくらいに大きな変化が起こっているような印象ですので、ボーカル・シンセサイザーの実用化からちょうど10年経った現在、シンセサイザーはそろそろ次の段階に進む時期と言えるのかもしれません。

それは全く新しい技術なのかもしれませんし、スマートフォンやVR(仮想現実)のような最先端のデバイスと連携する何かなのかもしれません。今のところ想像もつきませんが、まだまだ進化の過程にあるシンセサイザーの今後に注目していきたいですね。


Roland RD-2000 – All Playing, No Talking!
2017年に登場したローランド・ステージピアノのフラッグシップモデル「Roland RD-2000」。アコースティック楽器のリアルな音色、PCM音源、オルガン/ストリングス/ブラス/シンセサイザーといった音色からエフェクターまで搭載されている

シンセサイザーでできること

最近のデジタルシンセはかなり多機能で、USBケーブルでコンピューターと繋いて通信することも可能になっていますが、実際にシンセサイザーってどういうことができるの?と疑問に思っている方も多いのではないでしょうか。以下に一般的にデジタルシンセでできることの一例をいくつか紹介したいと思います。

1人オーケストラ


Roland SYSTEM-8 Overview
シーケンス機能を搭載している「Roland SYSTEM-8」どんどん音を重ねてフレーズを構築することができる

デジタル・シンセサイザーの多くにはシーケンサーと呼ばれる自動演奏機能が内蔵されています。これを使ってデータを作成することにより自分で全ての楽器を演奏することなく一人オーケストラが可能になります。

曲にもよりますが、最近ではクラシックの楽曲で著作権の切れた楽譜データをインターネットでダウンロードすることができるので、その楽譜通りに楽器を設定し音符データを打ち込んでいくことで大人数のオーケストラをシンセサイザーで再現できるのです。

もちろん根気のいる作業になりますし、上手く聴かせるためには強弱や抑揚などをデータ上で再現しなくてはならないのですが、それだけに完成したときの達成感は唯一無二のもの。興味のある方は挑戦してみてはいかがでしょうか。

ドラムの打ち込み、リズムマシンとしても


Dorian Concept Performance Featuring the JD-Xi Synthesizer
Roland JD-Xi」は1台のマシンの中にデジタルシンセ/ドラム音源/ボコーダー/ステップシーケンサーなどの機能が盛り込まれている

シンセサイザーには多くの楽器音がプリセットされていますが、もちろんドラムの音色も存在します。シンセサイザーのイメージからテクノっぽい音色のドラムしかないんじゃないかと思う方もいるかもしれませんが、通常の生演奏で使われるようなリアルなドラムの音色もあるのです。

シンセサイザーも年々クオリティが高まってきていますし、DTMという言葉が流行り始めた頃に比べるともはや雲泥の差があるほど。リアルな音色に加えてコンプレッサーやリバーブなどのエフェクトを掛けることにより本物と聞き間違えるようなドラムトラックを作ることも可能なのです。

また最近ではドラムループ(数小節のドラムパターン)がプリセットされていることも多いので、メトロノームから一歩進んだリズムマシンとして楽器の練習に使うこともできますね。このように様々な用途に使えるのもシンセサイザーの利点だと言えるでしょう。

カラオケや楽器練習のマイナスワンに

前述しましたが現在のデジタルシンセはMIDI規格に対応しているため、市販の楽曲MIDIデータを購入すれば本体で再生することが可能になります。MIDIデータであればカラオケのようにキーの変更も自由にできますし、特定のトラックをミュートにすれば楽器練習のためのマイナスワン音源にすることもできるのです。

特に楽器練習の際にはマイナスワンだけでなく苦手な部分のループ再生、テンポを落としての再生などもできますので非常に優秀な練習ツールになります。

オリジナル曲の制作も可能


Yamaha Montage Sound Demo (no talking)
YAMAHAのフラッグシップモデルのハードウェア・シンセサイザー「YAMAHA MONTAGE

デジタルシンセには多彩な音色がプリセットされており、それを使えば様々なジャンルの楽曲制作が可能になります。デジタルシンセも年々進化してきており、初期にはディストーションギターなど特定の楽器はあまり本物のようには聴こえなかったのですが、現在ではかなりリアルな音が出るようになっています。

シンセサイザーだからデジタルサウンドにだけ特化しているというわけじゃなく今やバンドサウンドまでも作れてしまうので、初音ミクのようなボーカル・シンセサイザーも併用すれば一人で最後まで楽曲を完成させてしまうことも可能です。

また現在はインターネットの発達により動画サイトや自身のブログ・SNSなどで制作した楽曲の発表まで出来てしまうという時代。自宅にいながらにして制作~発表まで行えてしまうというのはシンセサイザーならではのメリットなのではないでしょうか。

シンセサイザーの豆知識

知ってる人には当たり前のことだけど、一般的にはあまり知られていないことって実は多いのかもしれません。ここではそんなシンセサイザーに関する豆知識をいくつか紹介します。

シンセサイザーとキーボードの違いって?

よく聞かれるのがシンセサイザーとキーボードの違いについてですね。鍵盤奏者でもこの辺りが曖昧になっている方もいますし、バンドをやっている方でも「なんとなく似たようなもの」のように考えている方も多いようです。この機会に是非シンセサイザーとキーボードの違いについて覚えておきましょう。

音色合成の有無によって分かれる

前述しましたが、シンセサイザーとは音色を合成(シンセサイズ)する装置のこと。一般的にシンセサイザーといえば鍵盤がついてあるもののことを言うためキーボードとの違いに悩む方も多いかと思いますが、最近ではソフトウェアシンセといって鍵盤が存在しないソフト上のシンセサイザーもありますし、ギターシンセやウインドシンセというものも存在します。

一方、キーボードというのは直訳すると「鍵盤」です。つまり厳密にいうと鍵盤のついている楽器であればピアノもオルガンもアコーディオンもエレクトーンもキーボードの一種ということになりますね。もちろん鍵盤付きシンセサイザーもキーボードの一種です。

…と、このように厳密に分けると余計にややこしくなってしまうのですが、世間一般的なイメージで分けるとするならば、音色を一から作ったり細かくエディットすることができる鍵盤楽器のことを「シンセサイザー」、最初からプリセットされている音色を演奏する鍵盤楽器のことを「キーボード」だと思えばいいでしょう。

また複雑な構造を持つシンセサイザーと比べて機能がシンプルで済むキーボードは比較的安価なモデル(3万円以下)が多いため、その点もシンセサイザーとキーボードを見分けるポイントの一つになるのではないでしょうか。

初音ミクはシンセ?

ヤマハの音声合成システム「VOCALOID」でもっとも有名なキャラクターといえば初音ミクですよね。2007年の発売後しばらくしてからアマチュア音楽家(いわゆるボカロP)の制作した楽曲がニコニコ動画を中心に一大ムーブメントとなり、今や初音ミクはミュージックステーションにも出演(?)するほどの人気になったため一般層にも広く浸透しているキャラクターです。

よく見かけるのが、初音ミクはシンセなのか?という疑問。そもそもシンセサイザーはsynthesize(合成する)という意味の言葉なので、音声合成システム「VOCALOID」を使っている初音ミクはシンセサイザーの一種と言えるでしょう。

ただしこの「VOCALOID」は純粋な電子音ではなく、もともとは特殊な環境で録音された人間の声から合成されているため、アナログシンセ・デジタルシンセといった一般的なイメージのいわゆるシンセサイザーとは別物だと考える方も多いのではないでしょうか。

その場合、初音ミクは「ボーカル・シンセサイザーという新しいジャンルのシンセ」という認識で良いのではないかと思います。

カラオケの音源はシンセサイザーで作られている

カラオケに行って楽曲を流すと「原曲とちょっと違うな…」と感じることはありませんか?それもそのはず、実はカラオケの音源はシンセサイザーで作られているからなんです。

これはおそらく著作権的な理由もあるとは思いますが、移調(キー変更)の問題が大きいのではないかと思います。カラオケでは自分が歌いやすい高さにキーを合わせるのが一般的ですが、これがシンセサイザーで作られた音源だと自由に変更できるんですね。オーディオデータだとこうはいきません。

そして実はこのカラオケ音源データは専門のシンセサイザー職人さん達が1曲ずつ耳コピー&打ち込みで手作りしているんです。だから原曲と多少違う部分があっても大目に見てあげてくださいね。

鍵盤がないモデルはどうやって演奏するの?

Waldorf MOD1 鍵盤がなくても演奏を楽しむことができるモジュラーシンセ「Waldorf MOD1」

最近の主流であるソフトウェア・シンセサイザーや音源タイプのシンセサイザーには鍵盤が付属していません。あまり音楽制作に詳しくない方にとってはどうやって演奏するのか気になりますよね。

鍵盤のないシンセサイザーはMIDIキーボードと呼ばれる演奏専用のキーボードを合わせて使います。基本的にMIDIキーボードには音源部分が付いていないためこれ一つでは演奏することができませんが、ソフトシンセや音源タイプのシンセと合わせて使う前提であればこのほうが合理的なんですね。

最近ではスマートフォンアプリタイプのソフトウェア・シンセサイザーも出てきているので、MIDIキーボードと合わせれば非常にコンパクトな音楽制作環境を作ることが可能になっています。

シンセサイザーの種類

一言でシンセサイザーといっても実は様々な種類が存在します。ここではそれぞれのシンセサイザーの特徴やメリットなどを解説します。

デジタルシンセサイザー

一般的に「シンセサイザー」というとデジタルシンセサイザー(以下デジタルシンセ)のことをイメージするのではないでしょうか。音楽番組などで見かけるバンドのキーボーディストが演奏しているのも多くの場合このデジタルシンセですね。

デジタルシンセには最初から数多くの音色がプリセットされており、よっぽど特殊な楽器でない限りはこれ一台で演奏可能になります。また多くのデジタルシンセにはシーケンサー(自動演奏機能)が内蔵されており、一人で作曲から編曲までもこなすことが可能です。

アナログシンセと比較するとなんでもできちゃう万能型といったところでしょうか。もちろんアナログシンセ的な音色も含まれていますのでデジタルシンセを一台持っておくと非常に便利ですよ。

ハードウェア・シンセの人気製品 – Supernice!DTM機材

アナログシンセサイザー

入門用アナログシンセとしても最適な「KORG MONOTRIBE

こちらはデジタルシンセと比べてかなりマニアックな部類に入るというか、かなり深く音楽をやっている方でなければ存在も知らないかもしれないのがアナログシンセサイザー(以下アナログシンセ)ではないでしょうか。ただロックバンドでキーボードを演奏されている方にとってはオルガンと並んで憧れの存在だと思います。

特徴としてはとにかく本体につまみが多く付いていて音色を一から作ることが可能です。またアナログ回路を使って出力しますのでデジタルシンセと比べて暖かく太い音色なのもメリットですね。

MinimoogやProphet-5といったアナログシンセの名機と呼ばれる製品は年代が古く、メンテナンスも必要な上になかなか手に入れられる価格ではありませんが、最近では低価格の入門機も続々と発売されているため以前より気軽に導入できるようになりました。また現在はアナログシンセの回路をデジタルでシミュレートした「アナログ・モデリング・シンセサイザー」も人気です。
おすすめのアナログシンセサイザー入門機

ソフトウェアシンセサイザー

鍵盤の演奏よりも楽曲制作を重視する方にはソフトウェアシンセサイザー(以下ソフトシンセ)がオススメです。ソフトシンセはコンピューターのソフト上でシンセサイザー機能を再現するもので、演奏時にはMIDIキーボードと呼ばれる鍵盤機器を合わせて使いますが、リアルタイムに演奏しないのであればパソコンのキーボードやマウスで代用することもできます。

ソフトシンセに関しては鍵盤奏者がシンセサイザー(音色合成)として使うというよりはDTMをやっている方が作曲や編曲のために利用するというのが一般的なのではないかと思います。

ハードウェアのデジタルシンセと違い、ピアノ専用音源・ギター専用音源・ドラム専用音源・オーケストラ専用音源など、より専門的でクオリティーの高い音色を扱えるのがメリットですね。その反面パソコンが必要となりますので最低限のコンピューターとDTMの知識が必要、ライブに使えない(パソコンごと持ち運べば不可能ではないが扱いが難しい)などがデメリットでしょうか。

最近ではスマートフォンでもソフトシンセアプリやDTMアプリが出てきているほどなので、今後はソフトシンセがシンセサイザーの主流になっていくのではないかと個人的には思っています。

ソフトウェア・シンセサイザー – Supernice!DTM機材

その他のシンセサイザー

これらをシンセサイザーの部類に入れていいのかは分かりませんが、おまけとして一応「シンセ」の名前のつく変わり種を紹介しておきたいと思います。

ギターシンセ

BOSS SY-300 ギターシンセ「BOSS SY-300

その名の通りギターでシンセサイザーの音色を出すものです。通常のギターのようにシンセサイザー用のピックアップを取り付け、現振動を音程と音量情報に変換してシンセサイザーをコントロールします。

ギターシンセの歴史は古く、実はMIDI規格が完成する前の1970年代後半に発売されていたようです。「DTMをやりたいが鍵盤が弾けない」というギタリストにとってはMIDI入力機器としても非常に有効なツールになるのではないでしょうか。
Adrian Belew – Japanese Commercial I の動画はこちら – Youtube
キング・クリムゾンに在籍していたエイドリアン・ブリューが、ギターでピアノやストリングスの音を演奏している様子。まさに飛び道具といった感じでパフォーマンスとして非常に楽しめます。

ギターシンセ一覧 – Supernice!エフェクター

ウインドシンセ

Akai EWI USB Akaiのウィンドシンセサイザー「Akai EWI USB

90年代にフュージョンバンドのT-SQUAREがTRUTHという楽曲でウインドシンセを演奏していたのですが、当時この曲がF1グランプリのテーマソングとして大ヒットしたことからウインドシンセの知名度は比較的高いと思います。今でもウインドシンセといえばT-SQUAREをイメージする方は多いのではないでしょうか。

ウインドシンセは主に管楽器奏者の演奏を前提としていますが、家庭で生の管楽器なんてなかなか演奏できないでしょうからこちらは大いに実用性があると思います。これから管楽器を始めてみたいという方にもオススメできますね。

またウインドシンセの特徴として、MIDI入力機器としてDTMにも利用できるというメリットがあります。MIDIキーボードで再現できるのは強弱(ベロシティ)くらいですが、ウインドシンセでは実際に管楽器を演奏したときのような強弱、ピッチ、ボリュームの情報が自動で入力されます。使い方によっては非常に有効なツールですね。

シンセサイザー入門モデルのオススメ3種

シンセサイザーは様々なモデルが存在しているので楽器屋に行っても何を選べばいいのか悩んでしまいますよね。そこでここでは初めてのシンセサイザーにぴったりな入門モデルを紹介します。

KORG KROME 61

KORG KROME 61

こちらはまさにオールインワンシンセ、ミュージックワークステーションといった感じの「いわゆるシンセらしいシンセ」ですね。初めてなので何を買っていいのか分からない、でも比較的安くて色々こなせる多機能なデジタルシンセが欲しいという場合はこの KORG KROME 61を買っておけば間違いないでしょう。

まず大きな特徴がピアノ/エレピ/ドラムにこだわった3.8GBもの大容量PCM音源の搭載。特にピアノに関しては最近の大容量ソフトウェアピアノ専用音源と比較しても遜色ないほどのハイクオリティーを実現しています。

またデジタルシンセサイザーらしく細かい音色エディットも可能で、本体に16トラックのシーケンサーを内蔵しているためこれ一台で音楽制作が可能になっています。なお7インチのタッチパネルディスプレイを搭載しているという現代的仕様も嬉しいところ。もちろんアルペジエーターやドラムループなどの便利機能も装備しているのでライブの際にも重宝するでしょう。

ROLAND JUNO-DS61

ROLAND JUNO-DS61

バンド・ユースの定番シンセサイザーとも言える ROLAND JUNO シリーズの最新モデルである JUNO-DS61。JUNO-DS の基本コンセプトは「高音質」「軽量」「簡単操作」とのことで、家でどっしりと音楽制作するというよりは外に持ち出してスタジオ練習やライブに使うといった利用に向いているシンセサイザーですね。軽量なので女性にもオススメです。

また JUNO-DS61 はMIDIキーボードとしてだけではなくUSB オーディオインターフェースとしてパソコンに繋ぐことができるのも大きな特徴になっています。つまり JUNO-DS61 にマイクを繫げばそのままパソコン上のDAWに録音できてしまうということ。これは初心者にはありがたいですよね。

他にも1,000を越えるプリセット音色、8トラックのパターンシーケンサー、オーディオサンプルの再生に使えるフレーズパッド、単体機に匹敵するボーカルエフェクターの内蔵、このサイズのシンセサイザーとしては珍しい電池駆動可など、低価格ながら盛り沢山のシンセサイザーになっています。

YAMAHA reface シリーズ

YAMAHA reface シリーズ

こちらはプロのレコーディング・ステージユースにも対応できるハイグレード音源搭載していながらも低価格、軽量コンパクト、スピーカー内蔵、電池駆動可という斬新なキャラクターで人気のYAMAHA refaceシリーズ。今どきの多機能なデジタルシンセとは真逆とも言える個性ですが非常に魅力的なモデルだと思います。

ラインナップとしては、reface CS(バーチャルアナログシンセ)、reface CP(ビンテージエレクトリックピアノ)、reface CP(ハイグレードFM音源)、reface DX(ビンテージコンボオルガン)という4台。それぞれの本体に装備されている音源、ノブ、エフェクターなども実機顔負けのこだわりのもの。その「いかにも」なルックスにもニヤリとしてしまいます。

こちらは本体にシーケンサー機能は搭載されていませんし鍵盤の少なさもありこれ一台で本格的な打ち込みや演奏をする目的には向かないと思いますが、USB端子がついているためパソコンと繋げて軽量コンパクトなMIDIキーボードとしても使えるのが嬉しいところ。何よりこんなに可愛らしくて遊び心のあるシンセサイザーならどこにでも持ち出したくなりますね。


さてシンセサイザーについて色々と紹介してきましたが、改めて世の中には様々なシンセサイザーが存在するとともにまだまだ進化の途中という非常に面白い世界だと感じました。最後にシンセサイザー入門モデルをいくつか紹介しましたが、もちろんこの他にも魅力的なモデルがありますので是非自分に合ったシンセサイザーを見つけてみてください。