8out以上の出力端子を搭載したオーディオインターフェイス[記事公開日]2022年11月17日
[最終更新日]2023年01月1日

8out以上のオーディオインターフェイス

宅録経験者なら既にオーディオインターフェイスはお持ちかと思います。ですが、あなたの手持ちのオーディオインターフェイスはいくつの入力端子が付いていますか?おそらく1つか、2つでしょう。ギターやボーカルのレコーディングには1つか2つの入力で問題ありません。宅録でモニターミックスを複数作る程度であれば4チャンネル程度で十分です。

8チャンネル以上の出力はドラムを含めたバンドの一斉録音、複雑な打ち込みのフレーズを含めて同期させてのライブ、あるいはマニピュレーターとして演奏メンバーの一員となってサウンドを統括する場合などに限られます。ただ、これらの用途には多チャンネルの出力はなくてはならないもの。今回、このマルチチャンネルの出力を持つオーディオインターフェースに焦点を当ててみました。

8out以上の出力端子を搭載したオーディオインターフェイスの選び方

まず目的の用途にあわせて、いくつぐらいのチャンネル数が必要かを考えましょう。購入した後でチャンネル数が足りないことが判明しても増設はできません。大規模なインターフェースの場合、コンピューター制御でミキサーとして扱えることが普通なので、ミキシングのための付属ソフトについてもチェックしておくと選ぶための要素になり得ますし、購入後もスムーズです。そして、最後に決め手になるのが付属ソフト。付属エフェクトプラグインの内訳はメーカーのウェブサイトで見ることができますし、もしDAWソフトを所持していない方は付属されているものを購入するのが良いでしょう。また、昨今のハードウェアはどれも高品質ではありますが、マイクプリについてはその品質をしっかりチェックしておく価値があります。

どういった用途で使うか?

ドラムやバンドのレコーディング

バンドでのレコーディングを考える場合、まずドラムが必要か否かで大きく変わり、また全員で一斉に録音するのかどうかでも変わります。ドラム以外の楽器はせいぜいステレオ入力があれば事足りますが、ドラムはどうでしょうか。ドラムレコーディングに必要な入力数はいくらか、ざっと数えてみましょう。

  • ①バスドラム
  • ②スネア
  • ③タムタム1
  • ④タムタム2
  • ⑤フロアタム
  • ⑥オーバーヘッド右
  • ⑦オーバーヘッド左
  • ⑧ルームマイク

最低限見積もっても8個は必要になります。さらに上のクオリティを求めるならスネアの裏、ハイハット、ライド、チャイナなどもマイキングしたいところなので、軽く10個以上の入力は必要になってくるでしょう。その場合この場合、8チャンネルの入力数であってもむしろ最低限と捉えるべきで、さらにもし8本のマイクを立てると仮定した場合、ライン入力ではなくマイクプリを介したマイク入力8系統が必要という点も押さえておくべき点です。

アウトボードの複数使用

ミックスの際にアウトボード(外部につなぐエフェクター)を複数使う際には、メイン出力の他、そちらへ誘導するための別チャンネルが必要になります。多くのアウトボードをそれぞれ個別につなぐためには一基ずつに入出力を介する必要があり膨大な入出力数が必要になりますが、この点はエフェクターの数次第といったところ。モノラルとステレオのどちらで繋ぐのかによっても変わってきます。

マニピュレート業務

マニピュレーターは楽曲に必要なサウンドをリアルタイムで流す業務を行う人のことで、裏方としてステージ上のクリックやエレクトリックドラム、ベースなどの音を統括することが多く、ステージにはなくてはならない、見えない”プレイヤー”と言うべき存在です。近年ではバンドに交じってステージ上に立ち、必要なサウンドや効果音をリアルタイムで加えていく、DJのような働きをしているケースも多々あり、DAWソフトやMIDIパッドとオーディオインターフェースが必需品となります。

この際のオーディオインターフェースは鳴らす楽器やサウンドの数の分の出力が必要となります。例えばエレクトリックドラム一つとってもキックとスネア、金物系で4チャンネル、その上にベース、クリック、スクラッチなどのサウンドが全て乗るとこれだけで7チャンネルという具合に、多くの出力が必要です。機材を選ぶ際には、どのような音楽を指向するのかよく考えた上で出力数を吟味する必要があるでしょう。

出力端子をしっかり確認しよう

アナログ出力端子 TASCAM US-16×08のLINE OUT端子。アナログ出力端子が8つ搭載されている。

出力端子は8チャンネルと書いてあっても、モノラルジャック×8の純粋な8チャンネルではないケースが見られます。中にはヘッドフォン端子を2チャンネルとして数えている場合などもありますので、スペック以外に前面背面の写真などをよくチェックしておきましょう。またそれ以外に多いのがデジタル端子(オプティカル、コアキシャル)を含めてチャンネル数を数えている場合です。ハーフラックサイズにかかわらず16チャンネルなどの非常に多くの出力数が設定されている場合は、デジタルを含んでいる場合がほとんどです。デジタルはその後に接続する機材が通常のアナログミキサーなどであれば使えないので、こちらもよく確認しておきましょう。また入力端子についても同じ事が言えますが、特にマイクプリを搭載したマイク入力の数は要チェックです。

デジタル端子の規格(ADAT、S/PDIF)について

デジタル端子には、光ファイバーケーブルで伝送するための四角いオプティカル端子、通常のRCAピンケーブル用と同じ形状のコアキシャル端子の二つがあります。送受信するデータの形態にはいくつか種類がありますが、オーディオインターフェースで見られるものはほとんどがS/PDIFかADATの二つに絞られます。

S/PDIFはソニーとフィリップスが共同で開発した規格で、主に2系統の音声(LRのステレオであることが普通)を一本のケーブルで伝送できるというもの。コアキシャル端子のほとんどはこの形態での伝送に使われます。

ADAT(エーダット)はもともとAlesis社のハードウェアの名前が規格名として定着したもので、24bit/48khzの信号を8チャンネルに分けて送信することができ、オーディオインターフェースに付随するオプティカル端子のほとんどがこのADATに対応しています。しばしば端子の数とカタログ上でのin/out表記が異なっているのは、ADATひとつで入出力8チャンネル分に相当するためです。ADATは外部機器との連携を前提としており、ADAT出力を持つ多チャンネルのマイクプリアンプをつなぎ入力数を増設、対応したミキサーにチャンネルごとの信号を一括で分けて出力、など様々な使い方が想定できます。ちなみに入出力数を半分にする代わりに96khzの信号を送る、マルチプレクサ(S/MUX)という機構をもった機種も存在します。

出力端子を8系統搭載したオーディオインターフェイス

TASCAM US-16×08

TASCAM US-16×08

コストパフォーマンスが光る1Uラックサイズのモデル。マイクプリアンプを介したXLR入力が8系統、ライン入力に対応したフォン端子入力が8系統の計16入力、出力は8系統を備え、MIDI in/outも装備した大型オーディオインターフェースで、8つもの高品質マイクプリアンプを搭載した大型モデルとして、この価格帯では稀少な製品です。専用ソフトウェアではコンピューター制御のミキサーを操作でき、こちらも各チャンネルのレベルのみならず、コンプレッサーとEQをそれぞれに装備した本格的なものになっています。ドラムの録音やハードウェアシンセを大量に繋ぐなどの用途に打って付けのモデルで、PCと繋がずに使用するとマイクプリアンプのみを利用できるという柔軟性も光ります。

先鋭的なデザインは、数多くの音楽制作機器を手がけてきたドイツ人のデザイナー Axel Hartmann(アクセル・ハートマン)氏によるものです。また、iPadなどiOSデバイスへの接続にも対応しており、Apple純正のLightning-USBカメラアダプタを用意すれば、iPadのオーディオインターフェースとしても使用可能です。

TASCAM US-16×08 – Supernice!DTM

FOCUSRITE Scarlett 18i20 (3rd gen)

UAC-8

オーディオインターフェース最大手Focusriteの代表機種Scarlettシリーズ、中でも一番の大型となるものがこの18i20で、その型番の通り、デジタル、アナログ合わせ18in/20outを持つ1Uラックサイズの大型モデルです。XLR、フォン端子に対応したアナログ入出力は入力8系統、出力10系統を装備。デジタルはオプティカル入出力(ADAT対応)が8系統、S/PDIFが2系統ずつとなっており、同時アナログ入力の数では前述のUS-16×08に及びませんが、デジタル入力をフル活用できるのであればこのスペックは大変魅力でしょう。同梱のFocusrite Controlではエフェクトこそ付いていないものの簡易ミキサーを構築でき、他のFocusrite製品同様、プラグインやDAWソフトが付属します。特にAbleton Live Liteはマニピュレーターに適したソフトで、今から挑戦しようという人にもうってつけです。ADAT入出力はマルチプレクサ(S/MUX)対応しており、48khzのみならず96khzでも送受信可能です。

FOCUSRITE Scarlett 18i20 (3rd gen) – Supernice!DTM

Presonus Studio 1824C

DAWソフトStudio Oneを制作するメーカーとして有名なPresonus。こちらは18in/24outを謳う大型のオーディオインターフェースで、上に挙げたFocusrite Scarlett 18i20とかなり似通ったルックスをしており、入出力の配置や数もまったく同じという完全な競合製品です。こちらの方が出力数が4つ多くカウントされていますが、これはヘッドフォン出力を数に加えているため。スペックが拮抗している分、付属ソフトの差が際立ちますが、複数付属するプラグインはこちらが種類、数ともにやや勝り、DAWソフトはFocusrite社製が豊富。ただ、Presonus製品のためStudio Oneシリーズとの親和性が抜群で、当モデルにもStudio One Artistが付属します。Studio Oneの使用者であれば迷い無くこちらを選ぶべきでしょう。

Presonus Studio 1824C – Supernice!DTM

MOTU 8pre USB

8pre は、8基の入力を装備しており 24bit/96kHz 対応の USB オーディオインターフェイスです。ADAT オプティカル デジタル端子を装備し、 96kHz 動作時でも 8チャンネルの同時録音・再生が可能となっています。その他にも MOTU制のオーディオインターフェイスの拡張機器としても使用可能なモデルです。

MOTU 8pre USB – Supernice!DTM


UNIVERSAL AUDIO APOLLO X8

内蔵DSPプロセッサーにより、コンピューターの負荷を掛けず高品質プラグインを使えるUniversal AudioのAplolloシリーズ。当機種はその中でもヘクサコアの強力なプロセッサーを内蔵する最高峰モデルです。マイク入力は4系統を搭載し、それぞれに装備されたマイクプリはNeve、API、SSLなどの歴史的なプリアンプをエミュレーションできます。ギターなどの楽器を繋ぐためのHi-Z入力、その他ライン入力を含めアナログ入力は計8系統、アナログ出力が10系統。ADATオプティカル入出力とコアキシャル端子によるS/PDIFを含めて18in/24outを誇る大規模なインターフェースで、世界最高峰を誇るUADプラグインが多数使える点は他のどの機種よりも魅力的なポイントです。マイクプリ4系統はドラムの録音などにはやや不足を感じるかもしれず、その場合はマイクプリを外部につけ足す必要があるでしょう。

UNIVERSAL AUDIO APOLLO Xシリーズ – Supernice!DTM


オーディオインターフェースのカテゴリではほとんどの製品が4チャンネル程度の入出力で、8チャンネル以上の製品はずいぶんと限られてきます。その分、選びやすくもなってきますが、自分の音楽環境や必要なものを整理した上でしっかりと吟味して選ぶようにしましょう。