打ち込みドラム講座 Vol.2「ドラムトラックはパラアウトする!」[記事公開日]2017年6月19日
[最終更新日]2018年09月22日

打ち込みドラム

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DTM君「キックにはこのコンプレッサーを掛けて……カチャカチャ」

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ギター博士「コンコン……ガチャ!やぁDTM君!ギター博士ぢゃゾィ!頼んでおいたオリジナル曲のドラムトラックぢゃが、あれからどうなったかのぅ?」

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DTM君「あ、博士。こんにちは!ちょうど今、パラアウト(パラレルアウトプット:Parallel Output)したトラックにエフェクトを掛けているところです」

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ギター博士「パラアウト!?まだそんな複雑な作業が必要なの?前回作ったドラム音源全体にエフェクトをかけるだけじゃダメなのか?」

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DTM君「いえ、ダメってことは無いですよ。でも、パラアウトしてからキック・スネア・ハイハット・ルームと、各ドラムキット毎にエフェクトを掛けることで、より自分が理想とする音に近づけやすくなるんです。せっかくなので、パラアウトのやり方と音作りのコツをお教えしますね!」

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ギター博士「よろしく頼むゾィ!」

今回のテーマは「ドラムトラックのパラアウト」。まずは、DTM君が前回作業した打ち込みドラム講座 Vol.1「グルーブ感のあるドラムを打ち込む」で調整したドラムトラック「NO.2」の音源を聴いてみましょう。

踊ろうよっ! – ドラムトラック No.2

「No.2」では「No.1」のドラムトラックのMIDIデータを編集しました。ノートの位置調節やベロシティの強弱をつけ人間がプレイしているかのようなグルーヴを加え、「No.1」に比べて格段にノリが良くなっているように聞こえますが、DTM君はもっと高いクオリティを目指しているようでます。より1音1音の存在感を際立たせたい/迫力のあるドラムトラックにしたい/音の混ざりを自然なものにしたい、「ドラムトラックのパラアウト」はそんな要求に応えてくれる作業です。
おすすめのドラムソフト音源

ドラム音源からパラアウトする方法

今回はDAWにLogic Pro Xを、ドラム音源にXLN Audio社のAddictive Drums2を使って解説します。

(1)ドラム音源をマルチ出力に設定する

まずはLogic XのAddictive Drums2トラックが「マルチ出力」になっているか確認します。もし出力が「ステレオ」になっている場合、マルチ出力に設定しましょう。Logic Xのインターフェース下部に「− +」という項目が表示されればOKです。

(2)各トラックを個別出力に対応させる

addictive-drums-paraout 「↓」をクリックすると出力先を変更することができる

続いてAddictive Drums2の画面を立ち上げます。各パートのミキサー下部に「矢印マーク」がありますのでそこをクリック(上記画像の赤丸で囲ったところ)、「Sparate out」の項目が表示されるので選択してください。この時点で内蔵エフェクトを全て切っておきます。

(3)DAWソフトのオーディオトラックを必要な数だけ追加する

logic-paraout バスドラム、スネア、ハイハット、タム、ルーム…必要な数だけトラックを追加しよう

Logic Xのインターフェースに戻り、Addictive Drums2トラックの下部にある「+」をクリック。すると、オーディオトラックが作り出されますので、パラアウトに必要な数だけ作成してください。必要に応じてトラックの名称を変更しましょう。これでドラムトラックの各キットが個別トラックとして編集できるようになっているはずです。

(4)各トラックのパラメータを調節していこう

パラアウト用に作成したトラックが個別にパラメータ調節できるようになりました。音量調節/データのオートメーション/パン/コンプレッサーやサーチュレーターなど、お気に入りのプラグインをインサートして音作りを追い込んでいきましょう。使用するDAWによってパラアウトの方法は異なりますが、Logic Xの場合はこのように。Addictive Drums2の出力設定は殆ど変わりません。

パラアウトするメリットとデメリット

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DTM君「パラアウトする最大のメリットは“ドラムの細かい音作りを可能にする”ことです!」

市販のドラム音源を使ってドラムトラックを作成する場合、内蔵エフェクトを使用して音作りをするか、市販のプラグインエフェクトを使って音作りをすることになります。内蔵エフェクトを使用する場合、前述のようにドラム音源内で音作りを完結させることが可能です。この場合、パラアウトをする必要はありません。

逆に、市販のプラグインエフェクトを使って音作りする場合は、ボーカルやギター、ベースなどと同じようにDAWのトラック上で処理します。多くの場合、ドラム音源はモノラル/ステレオ1チャンネルの出力となっているため、ドラムトラック全体にエフェクトをかけることしかできません。スネア・キック・シンバルと個別にエフェクトをかけたい場合は(DAW側およびドラム音源側の)パラアウト設定が必要となります。

どちらの方法もメリットおよびデメリットがあるので覚えておきましょう。

内蔵エフェクトで音作りするメリットとデメリット

メリット
・市販のプラグインエフェクトが不要
・収録されているドラムサンプルと相性の良いエフェクトが多い
・音源内で処理するためCPU負荷が軽くなりやすい
・各トラックの管理がしやすい

デメリット
・内蔵エフェクト以外は使用できない
・簡易的な機能を搭載したものが多いので細かい設定をしにくい

内蔵エフェクトで音作りするのに適しているユーザー

・作業効率を重視するスピード勝負の人(プロの作・編曲家など)
・市販のプラグインエフェクトが揃っていない人

市販のプラグインで音作りするメリットとデメリット

メリット
・市販のプラグインが使えるので音作りの幅が一気に広がる

デメリット
・CPU負荷が高くなりやすい
・全体のトラック数が多くなると管理しにくくなる

市販のプラグインで音作りするのに適しているユーザー

・ドラムトラックを徹底的に作り込みたい人


上述にもあるように、現在主流となっているドラム音源に内蔵されているエフェクトは、市販のプラグインに引けを取らない性能を持ち合わせています。とはいえ、大半は機能が限定されている簡易版であり、細かい設定ができないことが殆どです。ただ、ドラム音源には各ジャンルに適したドラムプリセットが用意されており、Addictive Drumsの場合プリセットを選択するだけで、適切なパラメータが設定されたエフェクトがインサートされます。スピード重視で作曲を進めたい人にとって、プリセットと内蔵エフェクトは強い武器となります。

それに対して市販のEQやコンプレッサーのプラグインエフェクトは、その多くが音質・機能共に優れており、より細かい音作りを可能とします。徹底的に音作りをし、時間を掛けても“自分の音”を追求したいという人は、市販のプラグインを使うのが良いでしょう。

Waves Signature Seriesで簡単にプロの音を

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DTM君「今回は使っていませんが、ドラムの音作りに重宝する便利なプラグインをご紹介します!」

「パラアウトしてエフェクトをインサートしたけど……音作りがうまくいかない」という方にオススメなのがWaves社の「Signature Series」というプラグイン。トラックにインサートしてフェーダーを調整するだけで、プロのサウンドが簡単に手に入ります。

Signature Seriesは「CLA」、「Eddie Kramer」、「JJP」、「Maserati」とった4種類のシリーズが用意されており、全てが世界的エンジニアによってプロデュースされているのが特徴です。各シリーズともパート毎のプラグイン(CLA Drums、CLA Guitarsなど)をラインナップしており、単体販売もされています。

コントロールがフェーダーのみという非常にシンプルなプラグインですが、その実力は本物。市販のプラグインがまだ揃っていない人はもちろん、内蔵エフェクトよりも高いサウンドクオリティを簡単に手に入れたい人にオススメです。

今回作業した音源がコチラ!

「No.2」のドラムトラック(Addictive Drums2)をパラアウトして音を作り込んだ音源「No.3」です。NO.2より迫力が増していることがわかります。今回DTM君はWaves社の製品や、Logic X付属のプラグインをメインに使ったようです。

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DTM君「どうでしょうか?派手な処理はしていませんが、パワフルで聴きやすいサウンドになったかなと思います」

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ギター博士「おぉ!前回よりもパワーアップしているゾィ!ワシも市販のプラグインなら揃っておるから、ドラムをパラアウトして使ってみるわぃ!」

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DTM君「そうですね!内蔵プラグインはとても便利ですが、もし音作りに納得できなかったら、市販のプラグインを使ってみてください!一気に音作りの幅が広がりますよ!」

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ギター博士「そうぢゃの!さて、そろそろワシは帰るから引き続き頼むゾィ!ぢゃあの!!!バタッ!」

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DTM君「ということで、今回のポイントをまとめて終わりにしましょう!」

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DTM君「次回は他のパートとミックスダウンしますよ!お楽しみに!」

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ギター博士「いよいよワシの曲が完成するゾィ!楽しみぢゃな!」