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「FL Studio」は、ベルギーのImage-Line Software社が開発するDAWソフトウェアです。ループ素材やステップシーケンサーで組んだパターンをプレイリストに並べていく独自の制作法を持ち、エレクトロやヒップホップ、EDMといったクラブ系・ビートメイク系のジャンルで世界的に高い支持を得ています。長らくWindows専用ソフトでしたが、2018年発売のバージョン20から正式にmacOSに対応し、現在はApple Siliconネイティブにも完全対応しています。
最新版は FL Studio 2025(2025年7月10日リリース、最新メンテナンスは2025.2.3)。Dynamic Mixer Tracksによる500トラック対応、AIアシスタント「Gopher」(日本語対応)、Loop Starterによるアイデア生成など、現代の制作スタイルに合わせた機能拡張が継続的に行われています。さらに2025年12月にはブラウザ版「FL Studio Web」のパブリックベータが公開され、2026年には次期バージョン「FL Studio 2026」のベータテストも進行中です。
Image-Line Softwareは、ベルギーのプログラマーであるJean-Marie Cannie氏とFrank Van Biesen氏が設立した音楽ソフトウェアメーカーです。1997年12月18日に「FruityLoops 1.0.0」の名でリリースされたのが本ソフトのルーツで、原設計者はDidier Dambrin氏。バージョン4の頃に米国での商標申請がKellogg’sからの異議申し立てを受けたことをきっかけに、現在の「FL Studio」へと名称を変更しています。
2018年にはバージョン20で正式にmacOSへ対応し、それまでのWindows専用ソフトから両OS対応ソフトウェアへと脱皮。その後はバージョン20.5でFLEX、21でVintage PhaserやAI Mastering(FL Cloud Mastering)など、毎年新機能が加わってきました。
2024年6月にはバージョン番号の付け方を「FL Studio 2024」と西暦ベースへ切り替え、AI Chord Progression Tool・CLAP対応・Kepler Exoなどを投入。
2025年7月の「FL Studio 2025」では後述するDynamic Mixer TracksやGopher、Loop Starterといった大型機能が追加されました。
Image-Lineは公式に「Lifetime Free Updates」(永年無料アップデート)を掲げており、一度購入したエディションは将来のすべてのバージョンを追加料金なしで使い続けることができます。
これは他社DAWでは数年ごとに有償アップグレードが発生するケースが多いことを考えると、長期的な投資対効果に大きく寄与するポリシーです。
FL Studioはループ素材や、ステップシーケンサー Channel Rack で組んだパターンを別ウインドウのプレイリストに配置していくという、他のDAWとは一線を画す制作法を採用しています。
考え方が根本から異なるためマニアックという評価を受けることもありますが、パターンを部品として扱う方式はループやサンプルを積極的に使う音楽との相性が抜群で、EDMやヒップホップのコンポーザーから絶大な支持を集めています。
Channel Rackはそれ自体がマルチトラックシーケンサと呼べる構造を持ち、ステップシーケンサーで組んだドラムパターン、ピアノロールで打ち込んだベースライン、コード伴奏まで、複数の楽器が織りなすパターンをこの中で完結させられます。
Channel Rackで作り出したパターンをプレイリストに並べることで曲を俯瞰的に組み立てていきますが、プレイリストにはパターン以外にもオーディオサンプルやオートメーションを部品として配置でき、特にオートメーションを部品扱いできることが、オートメーションを多用するEDM制作で大きな武器になります。
ミキサーが完全に独立しているのもFL Studioの特徴です。ミキサーとプレイリストウインドウのトラックは自動で連携しておらず、ミキサーを使った音量調整のためにはどのトラックをどのチャンネルに送るかを事前に設定する必要があります。
最初は煩雑に感じる部分ですが、反面ルーティングの自由度は非常に高く、うまくカテゴライズすることで簡便かつパワフルなミキシング環境を構築できます。
FL Studio 2025ではこのミキサーが大きく刷新され、長年の上限だった「125ミキサートラック」の壁が取り払われ、最大500トラックまでダイナミックに追加・削除できるようになりました。
大規模なオーケストレーションやステム単位でのミックスにも余裕で対応できる仕様で、近年の制作スタイルに即した重要なアップデートとなっています。
FL Studioはその制作法の都合上、オーディオ波形の加工が必須となる場面が多いソフトです。そのため波形編集まわりは非常に強力で、タイムストレッチやピッチシフト、リバースなどの編集が直感的に行えるサンプラー、強力なサンプラー兼レコーダー Edison など、多彩な機能を備えています。
FL Studio 2025ではプレイリスト上のオーディオクリップに対して、別ウインドウを開かずに直接ストレッチ・ピッチシフト・リバースが行えるようになりました。
ボーカル加工やサウンドデザインのワークフローが大幅に簡略化されています。打ち込み環境もChannel Rack内のドラムシーケンサー・ピアノロールともにわかりやすいUIと直感的な操作を実現しており、特にステップ入力の簡便さは多くのユーザーから高く評価されています。
EQやコンプレッサー、フィルターなど音楽制作に必須のプラグインはほぼ網羅されており、上位エディションでは高機能なものまで標準搭載されています。インストゥルメント系もFLEX、Sytrus、Harmor、Kepler Exoといった強力な音源が揃い、外部プラグインに頼らなくても複雑なトラック制作が完結できる構成です。
特にエフェクトは全体的にパワフルかつハイファイで、コンプレッサーが強くかかった低音や強烈に抜けるハイの金物といった、EDMを印象づけるサウンドメイクとの相性が抜群です。
AI Chord Progression Tool(FL Studio 2024追加)など、近年はAIを活用した作曲支援機能も搭載されており、付属プラグインだけで完結する制作環境としての強度が増し続けています。
3つあるグレード(Fruity / Producer / Signature)に加え、全付属プラグインを含む最上位の「All Plugins Edition」までを揃えるFL Studioですが、いずれのエディションも他社DAWと比較してコストパフォーマンスは歴然。さらにImage-Lineは公式に「Lifetime Free Updates」を掲げており、永年無償アップデートが約束されています。
OSのアップデートに伴ってDAWの有償バージョンアップを迫られる、といったことが起こらないのは、長く同じソフトを使っていく上で大きな安心材料となるでしょう。クロスグレード版(他社DAW所有者向け)も用意されており、乗り換え時の負担も抑えられます。
FL Studio 2025(2025年7月10日リリース)から、特に注目したい新機能をピックアップして紹介します。なお、ひとつ前のFL Studio 2024(2024年6月リリース)で導入されたAI Chord Progression Tool、Kepler Exo(後述)、CLAP対応、Blend2D UIといった機能も併せて使えるため、長く触れていなかった方は2024 / 2025の両世代の差分をまとめてチェックしておくことをおすすめします。
FL Studio史上長年の制約であった「125ミキサートラック」の上限が撤廃され、最大500トラックまで自由に追加・削除できるようになりました。大規模なオーケストラ作品や、マルチマイク収録のドラム、複雑なステム構成のミックスでもトラック数を気にせず作業できます。
FL Studioのマニュアルとナレッジベースを学習したAIアシスタントで、ソフトの使い方や音楽制作の質問を自然言語で投げかけられます。日本語にも対応しており、ヘルプを探す手間が大きく削減されました。
FL Cloud上のループ素材から、ジャンルを指定するだけでドラム・ベース・メロディ・トップレイヤーを自動生成し、ワンクリックでプレイリストに展開できる機能です。アイデア出しや制作の取っ掛かりとして活躍します。
サンプラー兼レコーダーのEdisonに、AIを使ったリバーブ除去機能「Deverb」が搭載されました。録音時の不要なルームリバーブを、サードパーティ製プラグインに頼らず内部で除去できます。
FL Studio 2025のAll Plugins Editionに付属する、マルチステージ仕様の高音質リミッター。マスタリング工程での最終段リミッティングに有効な、新世代の付属プラグインです。
2026年3月よりベータテストが進行中の次期バージョン。コードを自動生成する「Chord Stamp Tool」、マスター出力を常時録音する「Audio Logger」、MIDI/キーボード/ピアノロールからコードを検出する「Chord Detection Panel」、Apple SiliconのAudio Workgroups APIによる動作改善などが予告されています。ライフタイム無料アップデートの対象となるため、既存ユーザーは正式リリース後に無償で受け取れます。
FL Studioは2026年5月現在、Fruity / Producer / Signature / All Pluginsの4エディションで展開されています。いずれもWindows 10/11(64bit)とmacOS 10.15以降に両対応で、Apple Siliconネイティブ動作にも対応済みです。日本国内ではHookup, Inc.が正規代理店を務めています。
| 項目 | Fruity | Producer | Signature | All Plugins |
|---|---|---|---|---|
| 位置付け | エントリー。打ち込み中心の最廉価版 | 中位グレード。オーディオ録音・編集に対応 | 上位グレード。主要プラグインがほぼ揃う | 最上位。Image-Line製の全プラグインを内包 |
| オーディオ録音/編集 | 非対応 | 対応(Edison) | 対応(Edison + Newtone等) | 対応(Newtone等含む全機能) |
| 付属インストゥルメント | 23種 | 27種 | 29種 | 39種 |
| 付属エフェクト | 53種 | 59種 | 65種 | 70種 |
| 追加プラグイン | ― | Edison/Newtone等の編集系を追加 | Pitcher/NewTone/Hardcore等を追加 | Kepler Exo/Emphasis/LuxeVerb/DrumSynth Live等を追加 |
本格的に音楽制作へ取り組むなら、コストパフォーマンスのバランスから Producer Edition がもっとも人気の選択肢です。オーディオ録音・編集が解禁されることでDAWとしてのフル機能が解放され、ボーカル録音や生楽器の取り込みにも対応できます。プラグインまで一式揃えたい場合は Signature や All Plugins への投資も検討に値しますが、サードパーティ製プラグインを併用する前提なら Producer から始めても困りません。すべてのエディションでライフタイム無料アップデートが受けられるため、後から上位エディションに直接ジャンプするクロスグレードも可能です。
最廉価のエントリー版。Channel Rackやプレイリスト、ピアノロールといったFL Studioの基本ワークフローを体験でき、付属インストゥルメントとエフェクトを使ったMIDI/ステップ入力中心の制作が可能です。オーディオ録音・編集には対応していないため、生楽器やボーカルの取り込みを行う場合はProducer以上が必要になります。
DTM全体でもっとも人気の中位グレード。FruityにEdisonやNewtoneなどのオーディオ編集機能が加わり、波形のスライス・タイムストレッチ・ピッチシフトといった編集が可能になります。ボーカル録音やマルチトラックの生楽器収録もここから解禁され、本格的なDAWとして使える最低ラインです。
上位グレード。Producerの機能に加え、Hardcore(ギターアンプシミュレーター)、Pitcher(リアルタイム・ピッチコレクション)、NewToneの拡張機能などが追加されます。サードパーティ製のプラグインに頼らなくても主要なジャンルをほぼ網羅できる充実度で、解説本とのバンドルパックも用意されています。
最上位エディション。Signatureの内容に加えて、Image-Line製のすべてのプラグイン(Kepler Exo、Emphasis、LuxeVerb、DrumSynth Live、Drumaxx、Toxic Biohazard など)が全部入りになります。ヴィンテージシンセ系のKepler Exo(FL Studio 2024追加)や高音質リミッターのEmphasis(FL Studio 2025追加)といった目玉プラグインを最初から手に入れたい方、買い足しの判断を都度行いたくないプロユースに向いた構成です。
FL Studioには膨大なエフェクトと数々のインストゥルメントが付属しています。Ver20以降に追加された目玉プラグインや、長年看板を担ってきた代表的な存在をいくつか紹介します。
Ver20.5で新規に追加されたシンセサイザー音源。減算・ウェーブテーブル・マルチサンプル・AM・FMといった複数の合成方式を組み合わせたハイブリッド構造で、プリセットベースで現代の音楽に必要なあらゆるサウンドを引き出せる音源です。ゼロからの音作りはできないものの、2,000以上のプリセットと8つのマクロによる加工で、思い描いた音色に直感的にたどり着けるよう設計されています。Online Packsからプリセットを追加購入することも可能で、購入したパックを継続的に拡張していけるのも魅力です。
内部トラックや外部入力からのギター・ピアノなど、あらゆるソースを録音できるサンプラー兼レコーダー。FL Studioでは録音したサウンドもサンプルとして扱う前提のため、単なる録音機能にとどまらず、スライスやオートメーションカーブなどを駆使して素材を作り上げるサンプラーとしての側面が強く出ています。
レコーディング機能としても優秀で、プレイリスト上のトラックをバックに録音する用途にも使いやすく作られています。リバーブ・EQ・ノイズ低減・ローファイ・ブラーなどのエフェクト処理にも対応し、FL Studio 2025からはAIによるDeverb機能が追加。録音時の過剰なルームリバーブを内部処理だけで除去できるようになりました。最終的にはFL Studio内のプレイリストに配置するのが基本ですが、wav/mp3への単体書き出しもできるため、レコーディング作業や素材スケッチにも活用できます。
長らくFL Studioに標準搭載されてきた、当ソフトを代表するプラグインのひとつ。時間とピッチを有機的に変化させることで、ゲート・スクラッチ・スタッターといったエレクトロ系音楽に必須の効果を自由自在に得られます。何の変哲もないシンプルなドラムビートが、クールで緊張感あふれる複雑なパターンへと変化していくさまはまさに魔法のよう。プリセットが充実しているので、カーブを動かすだけで面白い効果がすぐに得られるのも嬉しいポイントです。同種の機能を持つ製品が少ないこともあり、FL Studioユーザー以外からも評価の高い一本です。
それぞれVer20.9・Ver21で追加された、FL Studioとしては新参のヴィンテージ系エフェクトプラグイン。Vintage ChorusはRoland Juno-6™に内蔵されていたコーラスを再現したもので、3種類のモードを持ち、短いディレイとモジュレーションの組み合わせで温かみのある太いサウンドを生み出します。Vintage Phaserは70年代にJean-Michel Jarre氏が「Oxygène」などで愛用したことで知られる、Electro-Harmonix Small Stone Phase Shifter™を再現したプラグイン。PhaserパネルとModulation/Delayパネルから成り、ギターエフェクターとして発売されていたオリジナル同様の、前へ突き抜けてくるサウンドが特徴です。過去の銘機を再現するプラグインは他社からも高価格帯で多数発売されていますが、これらがDAWに標準で付属しているのは特筆に値します。
FL Studio 2024で新規追加された、Roland JUNO-6™ / JUPITER-8™の世界観を現代のプラグインで再構築したヴィンテージシンセサイザー。豊富なフィルターとモジュレーション、独自のアナログサウンドエンジンを備えており、シンセウェイブやアンビエント、シネマティック制作などで重宝します。All Plugins Editionに付属するため、これ目当てに最上位エディションを選ぶユーザーも少なくありません。

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