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「Bitwig Studio」は2014年にベルリンのBitwig社がリリースした、Windows/macOS/Linuxの3プラットフォームに対応したDAWソフト。
打ち込みによる楽曲制作はもちろん、クリップランチャーを中核に据えたライブパフォーマンス向けの設計と、モジュラー音響合成環境「The Grid」を組み合わせた、サウンドデザインとパフォーマンスの両軸で強い個性を放地ます。
開発元のBitwigは2009年、Ableton Live開発チームのメンバーと、ソフトシンセ「Surge」で知られるVember Audioのメンバーが合流して創設された会社で、現在もベルリンに本社を構えます。
Live開発経験者が集まった経緯から全体のワークフローはLiveに近い肌触りを持ちつつ、「クリップランチャーとアレンジャーの両立」「ハイブリッド・トラック」「The Grid」「CLAPプラグイン規格の主導」といった独自の方向性で差別化を図っているのが特徴です。
2026年3月にはオートメーション編集の刷新やクリップエイリアスなどを盛り込んだ最新メジャーバージョン「Bitwig Studio 6」がリリースされ、現在のラインナップはEssentials/Producer/Studioの3エディション体制となっています。

Bitwig Studioは独立した二つのシーケンサーを搭載しており、一つは一般的なDAWに見られるアレンジャータイムライン、もう一つがクリップランチャーです。
後者のクリップランチャーが本ソフトの注目機能であり、このシーケンサーには「ノートやオートメーションなど音楽の断片クリップ」が格納されています。
ランチャー内は時間軸に縛られておらず、あらゆるクリップをループ再生しつつ、自由にタイミングを指定して同時に鳴らすことができるのが魅力です。
クリップランチャーにはBitwig付属のループ素材はもちろん、アレンジャートラックで作成したMIDIフレーズも格納することができます。
MIDI鍵盤で演奏したフレーズを録音し、欲しいところだけをクリップランチャーに格納。格納した様々なクリップを組み合わせて楽曲を構築することで、直感的かつリアルタイム性のある楽曲制作を楽しめます。
Bitwig Studio 6では新たに「クリップエイリアス」が追加され、元クリップを編集すると参照先のコピーすべてに変更が反映される運用も可能になりました。

Bitwig Studioの目玉機能として挙げられるのがハイブリッド・トラック。
通常、MIDIおよびオーディオは個別のトラックで編集するものですが、ハイブリッド・トラックではMIDIで打ち込んだフレーズをトラック内にオーディオとして書き出して編集できる「Bounce in Place」機能を搭載しています。
従来のDAWで「MIDI → オーディオ」化をするためにはバウンス作業が必要で、保存したオーディオを再度プロジェクトに読み込まなければならないなど数行程が必要でしたが、Bounce in Placeを使えばこの作業が大幅に短縮される上に、MIDIトラックだけではできなかった演奏表現も可能になります。
ハイブリッド・トラックではMIDIデータとオーディオデータが共存できるため、楽曲制作に使用するトラック数を通常のDAWより減らすことができ、結果としてプロジェクト管理が単純化されるというメリットがあります。
付属されるループ素材などオーディオトラックに貼り付けるだけで、自動的にプロジェクトのテンポに合わせてくれるのはもちろん、スライス情報が登録されていない外部のオーディオファイル(WAV/ACIDized/Apple Loops)などもプロジェクトのテンポに追従して読み込まれます。
明らかにプロジェクトのテンポと素材のテンポが合っていなくても、Bitwig Studio側が自動的にトランジェントを検出し、プロジェクトのテンポに合うよう調整してくれるので、ループ素材の扱いが格段に簡単になり、リミックスも自由自在です。
Producer以上ではストレッチアルゴリズムを8種類から選択可能、Essentialsでも3種類が利用できます。
Ableton Liveで親しまれている「クリップ」という概念がBitwig Studioにも存在し、Bitwigではクリップをループ再生しつつ波形を編集できる画期的な機能が備わっています。
再生をしながらというのがポイントで、リアルタイムで素材を切り刻んだり、リバーブ効果を掛けたり、部分的にピッチを変えてグリッチ的なサウンドを得るなどの動作が可能となります。
ミュージシャンにインスピレーションを与えるのはもちろん、ライブパフォーマンスに活用できる便利な機能と言えるでしょう。
クリップ内でオートメーションを書ける機能も搭載しているため、アイデア一つでパフォーマンスの幅が大きく広がります。

Bitwig Studio 3(2019年)から搭載された「The Grid」は、Bitwig内部で動作する完全モジュラー型のサウンドデザイン環境です。
Poly Grid/Mono Grid/FX Gridという3種類のデバイスから入り、150種類を超える内蔵モジュールを自由に組み合わせることで、シンセサイザー、ドラム音源、エフェクトを一から構築できます。
ハードウェアモジュラーシンセに親しんでいるユーザーはもちろん、市販のソフトシンセでは出せない音を作りたい上級者にとっても、ゼロから音を組み上げられるこの環境は強力な武器となります。
なお、The Gridは最上位のStudioエディションのみに付属するため、サウンドデザイン重視で導入するならStudio版を選ぶ必要があります。
BitwigはハードウェアコントローラーのAPIをオープンにしており、あらゆるコントローラーに対応した制御スクリプトを自由に作成することができます。「◯◯DAW専用」となっている他社製コントローラーも、Bitwig Studio上で自由に使いこなせる設計です。
スクリプトはGitHub上の公式リポジトリで公開されており、世界中のユーザーが作成・公開した制御スクリプトを取り込んで利用できます。コミュニティが拡大した現在では、主要メーカーのほぼあらゆるコントローラーが何らかの形でカバーされています。
Bitwig Studioはマルチタッチ操作にも対応しており、タッチ対応ノートPCやペンタブレット環境を活用できます。
専用の円形メニューやタッチ最適化されたUI挙動を備え、トランスポート操作からコピー&ペースト、音源やプラグインのインサートまで、指やペンでの作業を前提とした効率的なワークフローが組まれています。
純粋なマウス+キーボードだけでなく、外部コントローラーとタッチを併用するハイブリッドなセットアップで使えるのは、ライブパフォーマンスの現場でも有効に働く設計です。
楽曲制作において「さっき立ち上げてたプロジェクトのドラムトラック、エフェクト何かけてたっけなぁ」といった疑問が生まれることはしばしばありますが、Bitwig Studioではいちいち前のプロジェクトを閉じてから新しいプロジェクトを立ち上げる必要がありません。
複数のプロジェクトを同時に開けるだけでなく、プロジェクト間でオーディオデータやMIDIデータをそのままコピー&ペーストできるため、過去曲からのアイデア流用や、複数の派生バージョンを行き来する作業が圧倒的にスムーズになります。
Bitwig StudioはLinux上でも正規にサポートされている数少ないDAWです。Ubuntu 24.04以降向けのDEBパッケージ、および主要なLinuxディストリビューションで使えるFlatpakパッケージが公式配布されており、Windows/macOSと同等の機能が提供されます。
無償で運用できるLinux環境とBitwig Studioを組み合わせれば、追加のOSライセンス費用なしで本格的なDTMマシンを構築できます。
OSロックインを避けたいユーザーや、サーバー/開発用途のLinuxマシンを音楽制作にも転用したいユーザーにとっては、選択肢として非常に魅力的だろう。
Bitwigはソフトシンセメーカーのu-heと共同で、2022年にオープンソースのプラグイン規格「CLAP」を発表しました。
CLAPはVSTやAUに比べてマルチコアCPUの活用に優れ、ノートごとのパラメーターオートメーション、ノンデストラクティブなモジュレーションといった現代的な要件を最初から織り込んだ規格で、Bitwig Studio 4.3以降でホスト側の正式対応が始まり、Bitwig Studio 6では完全な標準フォーマットとして扱われます。
Bitwig Studioが対応するプラグインフォーマットはVST2/VST3/CLAPの3種類。クロスプラットフォーム設計を優先する方針から、macOS専用のAudio Units(AU)およびAvid Pro Tools専用のAAXには非対応である点には注意が必要です。
Bitwig Studioは現在、機能の異なる3つのエディションで販売されています。
最上位のStudioにはThe Gridや3画面マルチディスプレイ対応など上位機能がすべて含まれ、Producerはバランス重視、Essentialsは入門用とそれぞれ立ち位置が明確だ。すべてのエディションでトラック数は無制限、VST/VST3/CLAPプラグインの読込にも対応します。
| エディション | 内蔵デバイス | モジュレーター | ストレッチアルゴリズム | オーディオI/O | The Grid | 主な想定用途 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| Essentials | 51種類 | 10種類 | 3種類 | 4/8バス制限 | 非搭載 | DTM入門・サブ機 |
| Producer | 105種類 | 18種類 | 8種類 | 無制限 | 非搭載 | 通常の楽曲制作 |
| Studio | 188種類以上 | 43種類 | 8種類 | 無制限 | 搭載 | サウンドデザイン・プロ制作 |
入門ユーザー向けのエントリーエディション。内蔵デバイス51種類とモジュレーター10種類で、基本的なエレクトロニック・ミュージック制作に必要な道具は一通り揃う。オーディオI/Oが4/8バス制限である点には注意。
プロデューサー向けの中位エディション。Essentialsから内蔵デバイスが約2倍に増え、モジュレーターやストレッチアルゴリズムもフル装備に近づく。日常的な楽曲制作ならProducerでまず不足することはない。
全機能を解放した最上位エディション。The Gridをはじめ、3画面マルチディスプレイ対応、Multisampleエディター、Circle Membership(Bitwigコミュニティへの参加権)などプロフェッショナル向けの全機能が含まれる。Bitwigを本格的に使い込むつもりなら、最初からStudio版を選ぶのが最もコストパフォーマンスが高い。
Bitwig Studioにはエレクトロ系・ダンス系と相性の良いソフトウェア音源と、ミキシング/マスタリング用途まで含むオーディオプラグインが多数付属します。
中でも注目なのがDrum Machineと呼ばれるドラムマシン音源と、膨大な量のループ素材と組み合わせて使用するSAMPLER(サンプラー)だ。
Drum Machineはシンプルながら、かゆいところに手が届くドラムマシン音源で、アサインした素材(キックやスネアなど)にチャンネルごとに細かくエフェクトを掛けることが可能。キックには強烈なコンプレッションを、スネアには薄っすらとディレイを、シンバルにはリバーブを、という具合に個別かつ細かく追い込むことができます。
SAMPLERはただ単に取り込んだサンプルを再生するだけのものではなく、トラッキングと呼ばれる機能を備え、サウンドをストレッチして音階を与え、原音が分からなくなるほど音を変化させることが可能。遊びながら自分好みのサウンドを生み出せるクリエイティブなサンプラーとなっています。
そのほかにもPolymer(モジュラー的アプローチのシンセ)、FM-4/Phase-4などの数学的合成シンセ、Sampler/Multisampleなどのサンプル系音源、EQ+/Compressor+といった「+」シリーズのミキシング系プラグイン、各種モジュレーター43種が付属しており(Studio版時点)、サードパーティ製プラグインに頼らずにBitwig単体で完結した制作が可能です。


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