圧倒的な充実度を誇るMac専用DAWソフト「Logic Pro X」の魅力とは?[記事公開日]2023年9月23日
[最終更新日]2023年09月25日

Logic Pro X

LogicはApple社が開発するDAWソフトウェア。Pro ToolsやAbleton Live、Cubaseなどと並び主要DAWソフトの一つに数えられており、Macユーザーから絶大な支持を誇ります。2023年夏現在バージョンはLogic Pro X 10.7。バージョンアップを繰り返すたびに機能や音源の強化が図られています。

Logicの歴史

LogicはドイツのEmagic社が1993年に初代バージョンを発表しました。当時はMIDIシーケンサーソフトとして知られており、外部音源をつなぎ、打ち込んだものを鳴らすためのソフトウェアという位置づけでした。のちにLogic Audioとしてレコーディング可能な製品が登場、さらにそれがメインのシリーズに統合され、現在におけるLogicの源流が作られました。2002年にはEmagicはAppleに買収され、それとともにWindows版のLogicは開発が停止、以後はMacintosh専用ソフトとしてその歴史を築いていくことになりました。Intel MacとしてのMac OS X以降、Logic Pro 9を含む音楽制作スィーツLogic Studioとしての販売を経て、2013年より現在のバージョンであるLogic Pro Xへとバージョンアップ。現在ではパッケージ版などは存在せず、Mac App Storeでの取り扱いのみとなっています。

Logic Pro Xの特徴

Mac専用、Apple製品との高度な連携

Logic Pro Xのインターフェイス

多数の使用者が存在するLogicですが、開発元がAppleであることからMac専用のソフトとなっています。ホストPC、OSと最適化されているため動作は非常に軽快で、低スペックのMacbook Airなどでも一定以上の作業を行うことができ、開発元が統一されている安心感も感じ取ることができます。
同じくApple製品であるiPhone、iPadとの連携には非常にシームレスに行われており、中でも代表的な機能がLogic Remote。これはiPhoneやiPadでMacのLogicを操作する機能で、ミキサー、再生、停止などのトランスポートパネルとして利用したり、サンプラーのトリガーとしてMIDIコントローラーのように利用するなど、Logicの多くのパラメータをコントロール可能です。また、iPhoneに付属するGarage BandはLogicの下位アプリであり、プロジェクトのやりとりなどもスムーズに行えます。

膨大な付属プラグイン、インストゥルメント

現在DAWソフトにおいて付属プラグインは相当に充実しているのが普通であり、それだけで大抵の音楽は作れてしまうほどになっていますが、Logic Proについては他の製品と比べても質、量ともに群を抜いています。
エフェクトプラグインには、リニアフェイズ、ヴィンテージ系まで選べる7種類ものEQ、用途別に使える4種類のリバーブ、ステレオイメージャーやトレモロなど、一般的なものからマニアックなものまで網羅。さらに圧巻なのが音源で、サンプリング音源であるEXS24をはじめ、シンセにはサンプリング、ヴィンテージ、物理モデリングまで様々な種類のものが10種類以上、キーボード音源にはオルガン、クラヴィネット、エレピ、メロトロンの専用音源が各種用意されています。

Retro Synth Retro Synth

他にも20種類以上のアンプモデルを内包するギターアンプモデラーAmp Designer、ドラム音源としてDrum Kit Designer、NI Batteryを彷彿させるドラムサンプラーDrum Machine Designerなどが用意され、極めつけに20,000以上のオーディオサンプル集”Apple Loops”が付属。総ファイルサイズ数十GBをこえるこれらのコレクションはまさに他のDAWソフトが霞むほどの充実ぶりであり、後述のコストパフォーマンスにつながるこの付属プラグイン、サンプルの圧倒的な量こそがLogicの人気ぶりを決定づける一つの要素となっています。

Logic Proでこんなことができる!


ギター博士の練習曲「#4 閃光のハカセェイ」
楽曲「#4 閃光のハカセェイ」は、Logic Pro Xで録音/ミックスダウンが行われている

ギター博士が Logic Pro X を使って録音・編集した楽曲が上の音源です。この音源のようなバンドものからストリングスが入ったアレンジ、ダンス/エレクトロ/EDMなど打ち込み系トラックメイキングまで、幅広いジャンルに対応した楽曲制作が行えます。

バリエーション豊かな機能

複数のテイクをつなぎ合わせるクイックスワイプコンピング機能や、ボーカルのピッチや打楽器のタイミングを内部エンジンのみで修正するFlexの存在はオーディオレコーディングをメインとする制作には必須と言える機能でしょう。さらにLogic特有の機能として、ドラムパターンの自動生成機能であるDrummerの存在が挙げられます。ジャンルやスタイルを選び、最適なパターンを自動で作り出してくれるこの機能は、ドラムについて詳しくないギタリストやボーカルなどにとっては非常に有用であるほか、ドラムトラックの簡易的なメモにも役立ち、MIDIトラックに落とし込むことで手直しして使うことも可能です。

Drum Kit Designer Drum Kit Designer

またバージョン10.5より追加されたLive Loop機能は、ループ素材をリアルタイムにマス目に貼り付けながら制作を行っていく、さながらAbleton Liveを彷彿させるツールで、それまでの制作方法とは一味違う手法が取れるようになりました。このバージョンからはそれまでLogicがあまり得意としてこなかったサンプラー系についても多くアップデートが施され、まさに死角のないDAWになりつつあります。

高いコストパフォーマンス

前述の通り、膨大な付属音源やサンプルなどが付属しながら、製品価格は3万円。これ以下の価格で最上位版が購入できるDAWソフトは他にはFL Studioのみで、競合製品のCubaseが上位版のProでおよそ5万円を超えるところを考えても、まさに格安です。さらにLogicにはグレードがないため、「上位版のみ付属のエフェクト」などといった存在とも無縁です。Pro Toolsのようにサブスクリプションで毎月支払いが必要ということもなく、アップグレードのたびに支払いを要求されることもありません。また、頻繁にマイナーアップデートが行われ、その度に音源やプラグインが少しずつ増えていくため、メジャーアップデートである11が10年近くリリースされない(2023年9月時点)中でも、ユーザーからの満足度は高く、高いコストパフォーマンスを維持しています。

付属プラグイン

Vintage EQ Collection

Console EQ Vintage Console EQ

バージョン10.4から追加されたEQコレクション。Console、Graphic、Tubeの3種が含まれており、それぞれNeve系、API系、Pultec系となっています。いずれも本家のものをうまく再現しており、かねてより付属していたEQであるChannel EQではなかなか出すことができなかった質感の付与が可能となりました。特にその質感の部分は柔軟にコントロールできるように作られており、そのために右端に用意されたDriveとOutput Modelの2種のコントロールが特徴的。その恩恵もあり、音作りの幅が広く、多彩な可能性を持ったEQプラグインとなっています。

ChromaVerb

ChromaVerb

LogicでのリバーブといえばコンボリューションタイプであるSpace Designerが真っ先に挙がりますが、それの対極となるアルゴリズムリバーブがこのChromaVerb。14種類の部屋のタイプを選び、細やかな設定で追い込むことができる王道のリバーブプラグインです。部屋のタイプはどれも「音が徐々に吸収される円形の構造物」が想定されており、自然な減衰を含んだナチュラルな残響が得られるのが特徴。バージョン10.4から新たに搭載された後発のプラグインだけあって品質は高く、詳細なパラメータも相まって作れるサウンドは多岐に渡ります。

Amp Designer、Bass Amp Designer

Amp Designer

ギターアンプモデリングのプラグイン。昨今のDAWソフトではおなじみとなっているカテゴリですが、使用できるアンプの数は付属プラグインとしてトップクラスのバリエーションを誇り、ベースアンプとギターアンプで別枠になっていることからもその充実ぶりが見て取れます。音質はサードパーティ製の専用品にはさすがに及ばないものの、ハードロック、ヘヴィメタルやギターインストなど、ギターが曲中の大半を埋めるような音楽でなければ、十分に対応できるレベルが担保されています。

Pedalboard Pedalboard

これもまた別枠となっているギター用エフェクター専用プラグインPedalboardの存在と合わせて、あらゆるギターサウンドが構築できるでしょう。

Vintage B3 Organ

Vintage B3 Organ

ロックミュージシャンを中心に大変な人気を誇るHammond B3をモデリングした音源。Logicの付属インストゥルメントの充実ぶりを示す際によく挙げられる存在で、オルガンの専用音源がデフォルトで搭載されているDAWはLogic以外には見当たりません。さながら本物のB3のようにドローバーをコントロールして音色を作っていくことができ、ドライブやロータリースピーカーの設定も可能と、ハモンドオルガンに必要な要素をすべて備えた優秀な音源です。プリセットは数が多く完成度も高いため、そのまま曲中に使用することもできます。Logicのキーボード専用音源は他にクラヴィネット、エレピ、メロトロンがあり、いずれも非常に高品質。これらの楽器が大活躍した70年代ごろのロックやフュージョンが好きな人にとっては垂涎もののコレクションとなっています。

Alchemy

Alchemy

バージョン10.2より追加された、4つのオシレーターを持つソフトシンセ。4つのベーシックな波形、往年のシンセの銘機からモデリングされた多数の波形が搭載され、それらに7種類の合成エンジンを施しサウンドを作ります。オリジナル波形のインポート機能や、16もの重ねがけができるModulation、オシレーターごとに調整可能なアルペジエイターなど、専門的にも非常に込み入った調整ができる奥の深いシンセでありながら、8マスを適当に選択するだけでサウンドを激変させられるトランスフォーム機能の存在、膨大なプリセットがDAWのサウンドライブラリと一体化した構成など、シンセ初心者にもとっつきやすい側面を持ち、あらゆる層を満足させられる高いポテンシャルを持っています。

もともとはCamel Audioという会社が240ドルほどで販売していた製品で、それが付属として使えるようになったものであり、そのクオリティは無料の付属音源のレベルを完全に逸脱しています。この存在だけでLogicを使う価値があると言われるほどで、Logicを代表する音源の一つと言ってよいでしょう。