頼れるプラグイン・バンドル!WAVESのプラグインってどんなの?[記事公開日]2020年11月9日
[最終更新日]2020年11月12日

WAVESのプラグイン

Waves Audio、通称してWAVES(ウェイヴス)と呼ばれるこの会社は、1992年イスラエルにて設立されました。同年、第一号として「Q10 Parametric EQ」をリリース、そして94年には「L1 Ultramaximizer」をリリースします。L1はマスタリング用ダイナミクスエフェクトとして世界的にヒットし、その後の音楽業界における音圧競争を引き起こす引き金となるほど、爆発的に普及しました。これによりブランドの地位は確固たるものになり、傑出したプラグインが多数生まれてくる下地ができあがりました。

現在ではオーディオ用プラグインの最古参の一つとして、デファクトスタンダードといって良いほどの地位を築いています。90年代~00年代に登場した製品は今となっては古さを感じるものの、まだまだ現役で活躍しているものが多数存在し、200以上のプラグインはプロアマ問わずあらゆる現場で使われています。

初心者にもオススメできる高品位なプラグインを多数用意

WAVESのプラグインですが、初期にリリースされたものは非常に軽く、動作が円滑でありながら、クセの無い挙動をするものが多いのが特徴です。リリース後20年も経った現在でも「Q10 EQ」、「C1 compressor」、「S1 Stereo Imager」のように定番として愛されている製品が多数あり、いずれもシンプルかつクセがなく使いやすいプラグインとなっています。
2010年前後からはロック系を得意とするエンジニア、Eddie Kramer氏の協力によるシリーズや、アビーロードスタジオの機器を再現したものなど、個性的で尖ったものも多数リリース。アナログとデジタルのいいとこ取りを目指したHybridシリーズの「H-Delay」や「H-Comp」、また過去の銘機を再現したVintageシリーズの「V-Comp」などは、現在の定番プラグインと言って良いでしょう。

このように幅広く多彩な個性を持つ製品が揃っているので、WAVESのプラグインだけで制作のほとんどの部分が賄えると言っても言いすぎではありません。世に溢れる膨大なプラグインから、何か有料のものが欲しいという初心者の方にも、真っ先におすすめしたいブランドです。

WAVESの代表的なプラグイン

L1 Ultramaximizer、L3-16 MultiMaximizer

WAVES L1 Ultramaximizer

WAVES L3-16 MultiMaximizer

WavesをWavesたらしめる最初期の代表作L1 Ultramaximizerは、スレッショルドを下げるだけでデジタルにあってはならないクリップを回避しながら、的確に音圧だけを上げることができる、簡便かつ優れた機能によって大ヒットしました。高いサンプリングレートに対応したものでないため、現在の基準ではやや粗く感じることも多いこのプラグインですが、下位のバンドルにも含まれていることもあり、特に宅録を中心に行うアマチュア層にはいまだに幅広く使われている製品です。
L3-16 MultimaximizerはそんなL1の進化版とも言えるもので、16バンドのイコライザーとマキシマイザーを複合したもの。設定した各帯域ごとに適切な圧縮効果を掛け、明瞭さを保ちつつ音圧を稼ぐことができます。L3-16は下位バンドルには含まれておらず、Horizon以上となります。

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DTM君「楽曲のミックスに必ず使うプラグインですね。ボクの場合、どの曲にもマスタートラックにL1 Ultramaximizerをかけています。」


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S1 Stereo Imager

WAVES S1

最初期に作られて、いまだに当時のままの設計で愛されている数少ないプラグイン。長く愛される要因はその操作画面にあることは間違いなく、サウンドの幅とパンをイメージした逆三角形はこの上なく直感的。広げるだけでなく狭めることもできるため、ピンポイントに狙った位置にパンニングを制御することが可能。イメージャーという名の通り、ステレオソースの指向性を変幻自在に操ることができます。

Doubler

WAVES Doubler

ディレイとピッチモジュレーションを同居させ、ダブリング効果を手軽に生み出すプラグイン。Waves初期のころから存在する製品ですが、上のStereo Imagerと同じく直感的かつ明快な作りはさすがの一言で、使い勝手の良さはトップクラス。サウンドは良い意味でふわふわとした音が作りやすく、普通のダブルボーカルなどの他、パッドやストリングス、バックグラウンドボーカルの処理などにも活躍します。

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DTM君「これもたまに使います。ギターやボーカルの存在感/定位を変えたいという時に登場しています。」

Renaissance EQ

WAVES Renaissance EQ

ヴィンテージ機器のアナログ的なカーブによる、音楽的表現が可能なパラメトリックEQ。やや古いモデルながら、その使いやすさとクセのない音質で、いまだに幅広く愛されるWavesを代表するイコライザーです。トラック単体にはもちろん、複数のトラックをまとめたバス用EQとしても優秀で、動作も軽いため基準のEQとして使うのもおすすめです。

PAZ Analyzer

WAVES PAZ Analyzer

周波数ごとのレベル、ステレオの広がりや奥行きをグラフィカルに表示するアナライザー。ピークやイメージを視認できるアナライザーは地味ながらも重要なプラグインであり、PAZ Analyzerはわかりやすく精密な表示が魅力で、このカテゴリの製品の中でも第一に名の挙がる存在です。

Sibilance

WAVES Sibilance

ボーカルから、”サ行”に代表される歯擦音を取り除くディエッサー。世の中に溢れるディエッサーの中でも、当モデルはデファクトスタンダードの地位を確立しており、たった二つのコントロールで望む音質が得られるその簡便さと優れた音質で幅広く使用されています。下位のバンドルにも含まれるため、宅録などでも使う機会が多いモデルでしょう。

V-EQ3/V-EQ4

WAVES V-EQ3/V-EQ4

V-EQ3はNeve1073、1066、V-EQ4はNeve1081をそれぞれ再現したイコライザーです。60~70年代のクラシカルなアナログサウンドを手軽に得ることができ、Wavesのヴィンテージ系イコライザーの中では特に代表的なモデルです。V-EQ3の方は3バンドで、用意されている周波数の選択肢も少なく、V-EQ4はそれに比べて4バンドEQとなっており、周波数帯域も細かくセッティングできるためやや細やか。いずれもアナログ的な音質を加えることができ、それを目的として掛ける手もあります。

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DTM君「ドラムトラックをパラアウトして、スネア/キック/タム/ハイハットそれぞれにV-EQ3/V-EQ4をかけています。簡単に使いたい時はV-EQ3を、細かくかけたい時はV-EQ4、という使い分けですね。ドラムトラックをバランスよくミックスするのに欠かせないプラグインです。」


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V-Comp

WAVES V-Comp

Wavesを代表するコンプレッサー。V-CompはNeve2254を模したコンプレッサーで、コンプレッサーとリミッターを別々に搭載しています。インプットで入力値を調整し、レシオとリリースで掛かり具合を調整、アウトプットで出力を決めるというシンプルな操作性を持っており、レシオやリリースタイムの設定値などはオリジナル同様に固定値を選んでいく方式となっています。入力値を上げてしっかり掛けることで、アナログ感のある歪みが得られ、音がぐっと前にくる感覚があります。

H-Comp

WAVES H-Comp

トランス、真空管、トランジスタの動作をモデリングしたアナログ感のある音質と、デジタルならではの使いやすさや操作性などを同居させたモデルです。Hybridシリーズに共通する、アナログ感を調整するためのAnalogコントロールもさることながら、このモデルの最大のポイントはMIXコントロールによりドライ音とウェット音のバランスを調整できるところ。コンプを通した音と原音を混ぜていく”パラレルコンプ”と言われる手法は、本来非常に煩雑な作業を要求されるものですが、このモデルであればMixコントロールを動かすだけでそれが実現可能です。

H-Delay Hybrid Delay

WAVES H-Delay

Hybridシリーズにおけるディレイエフェクト。H-Comp同様Analogコントロールを装備しており、このAnalogやLoFiボタンを利用することで、アナログディレイからテープエコーまで、様々な音質のディレイを再現可能。調整幅の広い可変フィルターによって、より細かなセッティングもできるようになっています。ステレオ出力でのピンポンディレイ、コーラス効果を付加するモジュレーションディレイまで、通常のディレイで可能な範囲のサウンドはほぼ網羅しており、デジタルならではの使い勝手と優れたアナログディレイが合体した、まさにハイブリッドなプラグインと言えます。

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DTM君「これも使います。デジタルディレの澄み切った音とは少し違った、H-Delayにしか出せないディレイ音があるので重宝します。」

GTR3

IK MultimediaのAmplitubeやNIのGuitar Rigなどと同カテゴリの、ギター用アンプシミュレータープラグイン。ヴィンテージから現代に至るまでの代表的なギターアンプ、エフェクターを網羅しており、その範囲はベースアンプにまで及びます。キャビネットとマイキングの組み合わせなども多数ありながら簡便な操作も魅力で、ギターのみならずオルガンやシンセに通すなど、多彩な使い方が考えられるプラグインです。

で、結局どれを買えばいいの?

WAVESの製品は複数のものをまとめて一つにセットにした「バンドル」で購入するのがお得で、コストパフォーマンスは単品購入の比ではありません。中でも代表的なバンドルは、ブランド初期から存在する定番のものを集めたDIAMOND、GOLDなど、Wavesのレギュラーラインとも言えるバンドル製品です。これよりも上位のものに至っては、エフェクトプラグインはこれ一つで事足りるほどの充実ぶりです。その他にはHybridの名を冠するHシリーズ、Neveのシミュレートプラグインが揃ったVシリーズ、著名なエンジニアとタッグを組んで作り上げたEddie KramerシリーズやChris Lord-Algeシリーズ、著名スタジオと共同開発されたAbbey Road Collectionなど、それぞれ似た傾向、同系統のシリーズのものをセットにして販売されます。

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DTM君「WAVESでは年に1,2度セールを開催することがあるので、そのタイミングで欲しいバンドルを手に入れると良いと思います。」

プラグインバンドルのラインナップの選び方

WAVES製品はバンドルでセットになったものを選ぶのが一般的です。手持ちのプラグインが少ない、あるいはWavesのプラグインを持っていないという場合、代表的なエフェクトを網羅したSilver~Mercuryまでの6種から成る通常ラインのバンドルを選ぶのが良いでしょう。上位のHorizon辺りになるとCLA Classic Compシリーズなどはその内部に全て入っていたりするので、手持ちのものと被ってしまわないように、計画的に購入していきましょう。また、その他のバンドルはシリーズごとにまとめてあり、用途や音質などに応じてそれぞれ選ぶということになります。

通常ラインのバンドル

下に行くほど上位となります。上位になるほど内包プラグインの数は多く、下位に内包されるものは全て入った上で、それに積み増しされる形で増えていきます。最上位のMercuryはWavesの大多数のプラグインを網羅しますが、値段も桁外れに高くなります。

プラグイン数 代表的プラグイン
Silver 16 Q10 EQ、L1 Ultramaximixer、S1 Stereo Imager、Doubler、Trueverb
Gold 42 H-Delay、H-comp、V-Comp、V-EQ、Sibilance、GTR3
Platinum 54 L3 Multimaximizer、PuigTec EQ
Diamond 69 Center、Z-Noise
Horizon 76 Kramer HLS Channel、L3-16 Multimaximizer
Mercury 171 SSL 4000 Collection、Abbey Road Collectionなどを除くほぼ全てのエフェクトプラグイン

Gold Bundle

WAVES Gold

選りすぐられた42種のプラグインを内包した、最初の一本として打って付けのバンドル。Wavesの地位を押し上げたQ10 EQやL1 Ultra Maximizer、そして後に紹介するV-EQ3、V-EQ4、H-Comp、H-Delayなども全て含まれていながら、無理のない価格帯に抑えられています。Goldは下から二番目のグレードですが、第一歩としては十分すぎるほどの充実ぶりです。

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DTM君「ボクが持っているはGoldです。このバンドルで「H-Delay」「V-Comp」「V-EQ3/V-EQ4」「Doubler」「L1 Ultramaximizer」「Renaissance EQ」「S1 Stereo Imager」など、上述したWAVESの頼れるプラグインが網羅されているので、かなり満足できると思います。今はGoldに入っていない他のWAVESプラグインも使いたくなってきてますね笑。」

WAVES Gold – Supernice!DTM機材

Horizon Bundle

WAVES HORIZON

通常ラインのバンドル製品の中で上から二番目に位置する製品。クリス・ロードアルジ氏の協力を受け完成したCLA Classic Compressorシリーズを全て含み、MS処理を行うのに必須とも言えるCenter、現在のスタンダードなマスタリングコンプであるL3-16Multimaximizerなど、多彩なプラグインを76種類以上もパック。これ一つでWavesの代表的プラグインが網羅できると言っても過言ではありません。

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シリーズのバンドル

V-Series

WAVES V-Series

クラシカルなヴィンテージコンソールの代表的存在であるNeve社の機器を緻密に再現したシリーズ。「V-EQ」や「V-Comp」はWaves屈指の人気モデルですが、通常ラインのバンドルに含まれているため、当製品を選ぶ決め手は「V-EQ」「V-Comp」だけが欲しいというユーザーに限定されそうです。

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H-Series

WAVES H-Series

アナログとデジタルの融合を目指す、Hybridという名を冠したプラグインを集めたシリーズ。かゆいところに手が届く練られた操作性を持ちながら、音質的にはアナログに寄ったものが多く、良質なプラグインが揃っています。H-Delay、H-Compの二種は通常バンドルに含まれているため、その他のH-ReverbやH-EQなどを決め手として選ぶことになるでしょう。

WAVES H-Series – Supernice!DTM機材


Abbey Road Collection

WAVES Abbey Road Collection

ビートルズで有名な、ロンドンのアビイロードスタジオと共同で開発されたヴィンテージ系プラグインのバンドル。60~70年代の良質なヴィンテージ機器を模倣したものが多く含まれますが、レコードカッティングマシンをシミュレートしたAbbey Road Vinyl、第二スタジオに設置されたチェンバーリバーブを再現したAbbey Road Chambersなど、他にはない独自の面白いモデルが含まれるのが特徴。通常バンドルに含まれない製品が多いため、単品で求める価値があるシリーズです。

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API Collection

WAVES API Collection

世界中のレコーディングスタジオで愛されるAPI(Automated Processes Inc.)と共同開発されたシリーズ。APIの代表的イコライザーである550A、550B、560、そしてステレオコンプレッサーの2500をシミュレートした4種を内包するバンドルです。なめらかなアナログのサウンドは実機をかなり忠実にシミュレートしており、アナログならではの温かみと考え抜かれたEQのポイントは非常に音楽的に作用します。

WAVES API Collection – Supernice!DTM機材


現在のようにプラグインが大量になかった時期、Wavesのプラグインは飛び抜けて高価な品でしたが、現在ではずいぶんと手に入れやすい価格になっています。初心者から熟練者まで、幅広く使っていける優れた製品が揃っており、プラグインの王道としてまずここから触れていくことで、自分の中にも基準がしっかりと作られていくでしょう。