音作りの要!おすすめのEQプラグイン

[記事公開日]2024/12/9 [最終更新日]2026/5/18
[編集者]神崎聡

おすすめのEQプラグイン

イコライザー(Equalizer)は音色の周波数ごとに音量を増減するもので、略してEQと呼ばれます。
かつては平均化という名の通り、突出した部分を抑えたり足りない部分を補ったりして音色を整えるだけのものでしたが、デジタルミックスが当たり前になった現代では、大胆なブースト/カットを施して音色そのものを作り替える、いわば音響デザインのツールとして使われることが一般的になりました。

ベースの太く唸る音色や、アコースティックギターのきらびやかなストロークのサウンド、ボーカルのツヤなど、私たちが普段耳にする完成された音源はEQで大胆に作り替えられたあとのサウンドであることがほとんど。
さらに、必要のない帯域をばっさりとカットすることで他の楽器が入り込むスペースを空け、トラックごとの棲み分けを行ってミックス全体の音圧を底上げする役割もあります。EQで音場を整理するスキルは音色作り以上に重要な意味を持つようになっています。

EQの種類

EQプラグインを選ぶ際は、まず動作タイプを押さえると製品選びがスムーズになります。代表的な動作タイプは以下の4つで、現代のEQプラグインはこれらを単独・あるいは複合的に搭載しています。

動作タイプ 特徴 得意な用途 代表的なプラグイン
パラメトリック(デジタル) バンド数・周波数・Q・カーブを自由に設定。視覚的な操作が可能 ミックス全般、繊細な調整、サウンドデザイン FabFilter Pro-Q 4、Waves H-EQ
アナログモデリング Neve/SSL/APIなど名機の音質をデジタルで再現 質感付け、トラック単位の仕上げ Waves V-EQ4、UAD Pultec
リニアフェイズ 位相ずれを発生させずに帯域を可変 マスタリング、ミックスバスEQ iZotope Ozone EQ、Waves Linear Phase EQ
ダイナミック 特定レベルを超えた帯域だけを処理 共鳴の暴れ抑制、トランジェント制御 FabFilter Pro-Q 4、Slate INFINITY EQ 2

パラメトリックEQとグラフィックEQ

BOSS GE-7 グラフィックEQ
BOSS GE-7

自分で可変する周波数を決め、そこを中心にブースト/カットを行うものをパラメトリックEQ、あらかじめ決められた周波数ごとにスライダーが横一列に並んでおり、それを上げ下げするものをグラフィックEQと呼びます。
DAWに付属するEQはほとんどがパラメトリックタイプで、帯域・Q・カーブを自由に選べる柔軟性が決め手になっています。
グラフィックEQはベースアンプやギターエフェクター、PAミキサーで採用されるケースが多く、感覚的に操作できる手軽さから音楽再生ソフトに搭載されることもあります。

デジタルEQとアナログモデリングEQ

他のエフェクターと同様、EQにもデジタルとアナログがあり、音質的なキャラクターが異なります。

FabFilter Pro-Q 4 デジタルEQの決定版「FabFilter Pro-Q 4」

デジタルEQは周波数・Q・カーブを自由に変えられ、応用範囲が極めて広いことが特徴です。
アナライザーの曲線で音質の変化を視覚的に読み取れるうえ、極端な設定でも破綻が少なく、初心者でも直感的に扱えます。DAWに必ず付属しているうえ、音質的にも色付けが少なく、現代のミックスでは中核となる存在です。

WAVES V-EQ4
アナログEQをモデリングした定番「WAVES V-EQ4」

対してアナログモデリング系のEQは、Low/Mid/Highを中心に可変できる周波数があらかじめ決まっており、35Hz・60Hz・100Hzなどから帯域を選んでブースト/カットを行います。
バンド数が少なく視覚的な情報も乏しいため初心者には慣れが必要ですが、ギターアンプやPAミキサーに親しんでいれば操作系は馴染みやすいでしょう。

デジタルでは出にくい「通すだけで音が太くなる」「倍音が付いて温かみが出る」といった質感が魅力で、NeveやSSL、API、Pultecなど往年の名機をモデリングしたプラグインがアナログEQの主流となっています。
デジタルEQの各バンドにアナログモードを搭載するハイブリッド系も増えており、操作性はそのままにアナログ的な音質を得られるようになっています。

リニアフェイズEQとダイナミックEQ

可変された周波数の周辺で音の遅延(位相ずれ)が起きないようにしたEQをリニアフェイズEQと呼びます。
CPU負荷が大きいうえ、単一トラックでは位相ずれそのものが問題になりにくいため、主にミックスバスやマスタリングでの全体調整に用いられます。
Logic Pro付属のLinear Phase EQのように専用プラグインとして用意されるケース、Ozone EQのようにバンドごとに位相ずれの量をスライダーで調整できるケースなどがあり、通常のパラメトリックEQとの境界はやや曖昧になっています。

一方ダイナミックEQは、入力レベルが閾値を超えた瞬間にだけブースト/カットが作動するEQです。
「高域が出すぎた瞬間だけカット」「キックの足りない帯域にトリガーされたときだけブースト」など、マルチバンド・コンプレッサーに近い挙動を取りつつ、トラックごとの繊細な処理に向いた制御が可能。現代の有料EQでは標準機能になりつつあります。

有料EQプラグインならではの機能

有料のEQプラグインには、DAW付属のEQでは届かない便利機能が多数搭載されています。ここでは代表的な機能を整理しておきましょう。

ソロ試聴

EQで可変している帯域だけを再生する機能。ブースト/カットによる音質変化がピンポイントで確認でき、繊細な調整が必要な場面で威力を発揮します。ミックス全体の中での印象を意識しながら使うようにしましょう。

ダイナミック処理

特定レベルを超えた帯域だけを処理するダイナミックEQは、最近の有料プラグインでは当たり前のように搭載されています。
「これ以上のレベルに達したらカットする」「閾値を超えるまではブーストを保留する」といったフレキシブルな使い方ができ、共鳴の暴れやトランジェント由来の耳障りなピークを狙い撃ちで抑え込めます。
マルチバンド・コンプレッサーに近い動作ながら、トラック単位の細やかな音作りに向いた使い勝手が特長です。

MS処理/LR処理

MS処理

MS処理とはMid-Sideの略で、パンニングにおける中心(Mid)と左右(Side)を別々に処理する手法のこと。Sideだけを操作してステレオの広がりをコントロールしたり、Midのみで楽曲の芯を整えたりできます。
ミックスダウンやマスタリングなどの最終工程で使われることが多く、現行EQプラグインのほとんどに搭載されています。MS処理の派生として、左右を独立してイコライジングするLRモードも一般的になりました。

バンド数の自由度

デジタルEQは基本的にバンド数が多く、ブースト/カットを様々な帯域で細かく組み合わせて緻密な音作りが可能です。DAW付属のEQでも7バンド程度はあるのが一般的ですが、FabFilter Pro-Q 4のように最大24バンドという巨大なバンド数を持つ製品もあります。
先述のとおりアナログ系のEQは4バンド程度が標準のため、バンド数の自由度はデジタルEQ最大の恩恵といえるでしょう。

おすすめのEQプラグイン

ここからは現行のおすすめEQプラグインを紹介します。DAW付属EQで物足りなくなってきたら、まずデジタル系のオールラウンド型を1本追加し、必要に応じてアナログモデリング系・AI系・特殊用途系を足していくのが王道です。

FabFilter Pro-Q 4

FabFilter Pro-Q 4

2024年12月リリース、デジタルEQ製品の最高峰として絶大な評価を得るFabFilter Pro-Qシリーズの最新メジャーバージョン。
前作Pro-Q 3から進化したポイントは、指定バンド内で閾値を超えた周波数だけを動的に処理するSpectral Dynamics、バンドごとに高域・低域の傾きを変えられるPer-band Spectral Tilt、ノードを動かしてカーブを練り上げるEQ Sketchなど。
最大24バンド、6〜96dB/octの急峻なスロープ、Brickwallカーブ、ピアノロールディスプレイ、Spectrum Grab、他トラックのかぶりを可視化するアナライザーまで揃い、操作性と視認性は他の追随を許しません。
MS/LRモード、ソロ試聴モード、ダイナミックEQはすべて全バンドに搭載。最高峰のクリアサウンドでありながらCPU負荷も抑えられており、ミックスからマスタリングまでこれ1本でこなせる万能型EQです。

FabFilter Pro-Q 4 – Supernice!DTM機材

IK Multimedia T-RackS EQual

IK Multimedia T-RackS EQual

T-RackS 6 MAXの目玉ともなるイコライザー。先述のH-EQと同じく、デジタルとアナログのハイブリッド設計を採用しており、クリアな音質と豊富なキャラクター選択が両立した使い勝手の良さが特長です。
基本構造は10バンドのデジタルEQでありながら、Peak/Notch/Tilt/High&Low Shelf/High&Low Pass/Band-Passの8種類のフィルター形状と、UK Modern/UK Classic/USA Classic/Mastering SS/Mastering Tubeを含む10種類のEQモードを組み合わせて、英米クラシックEQのカーブを自在に再現。
MSモードにも対応し、ミックスからマスターまで幅広い用途に応えます。

IK Multimedia T-RackS 6 MAX – Supernice!DTM機材

iZotope Ozone EQ

iZotope Ozone 12 Equalizer

絶大な評価を得るマスタリング用エフェクト群、Ozone 12(2025年9月リリース)に収録されたマスタリング用EQ。8バンドにわたり精細なEQを施すことができ、EQの挙動をアナログ/デジタルの二種から選べる構造になっています。
アナログモードでは2mixに対してアナログ的な倍音を付与でき、デジタルモードではクリアな音質を保ちつつ、バンドごとに位相ずれの量をスライダーで調整して任意の地点でリニアフェイズ動作させることが可能。MS/LRモードやソロ試聴に加え、リファレンス曲のEQ設定を学習して近づけるMatch EQも搭載しています。
Ozone 12では、ステレオミックスをVocal/Bass/Drums/Otherの4ステムに分けてそれぞれにEQを掛けられるStem EQがAdvancedエディション限定で追加され、マスタリング段階での補正自由度が一気に広がりました。

iZotope Ozone 12 – Supernice!DTM機材

Slate Digital INFINITY EQ 2

Slate Digital INFINITY EQ 2

2024年10月リリース、アナログコンソールのシミュレートで有名なSlate Digitalの最新EQ。MS/LRモード、ソロ試聴、ダブルQによる滑らかなカーブなど、初代INFINITY EQから定評ある操作性はそのままに、INFINITY EQ 2では大胆な強化が施されました。
Dynamic Filters機能では、各バンドに閾値を超えた瞬間だけ作動するコンプ/エキスパンダー的な振る舞いを追加でき、TightとSmoothの2種類のタイミングモードによってディエッシングからナチュラルな質感調整まで使い分けが可能。さらにNotch・Tilt・Bandpassの新フィルタータイプ、128dB/octまでの急峻なカーブ、洗練されたGUIなど、最新世代らしい仕上がりです。
歪みのないアナログマッチ・カーブで、ミックスからマスターまで安心して投入できます。

Slate Digital INFINITY EQ 2 – Supernice!DTM機材

sonible smart:EQ 4

sonible smart:EQ 4

2023年12月リリース、楽曲をAIに聴かせるだけで干渉する周波数領域を自動整理するクロスチャンネル・プロセッシングを搭載した、AI時代の代表的なインテリジェントEQ。トラックごとに楽器・ボーカルProfileを選ぶだけで、ターゲットに沿った音質バランスにスマートフィルターが自動で寄せてくれます。
smart:EQ 3から進化したポイントは、複数トラックを同一インスタンスでまとめて処理するグルーピング、再生中の音に追従してリアルタイムでイコライジングを更新するDynamic Adaption、Smoothingパラメータによるカーブの穏やかさ調整、Auto Gain機能など。
通常のパラメトリックEQとしてもL/RとM/Sの両モードに対応しており、AI補正をベースに微調整を重ねる新世代のミックスワークフローに最適です。

sonible smart:EQ 4 – Supernice!DTM機材

Eventide SplitEQ

Eventide SplitEQ

ギター用エフェクターの名門としても知られるEventideのプラグイン。サウンドのトランジェント(アタック成分)とトーン(持続成分)を分離してそれぞれに別々のEQ・パンニングを掛けられる、独自のStructural Splitテクノロジーを採用した8バンド・パラメトリックEQです。
アタックだけを左右に広げてトーンは中央に固定する、あるいはトーンだけをカットしてアタックの抜けを保つなど、従来のEQでは届かなかった補正が直感的に行えます。
各バンドはL/R・M/Sのパンニングに対応、フィルタータイプはPeak/Notch/Bandpass/High Shelf/Low Shelf/Tilt Shelf/High Pass/Low Passの8種類、スロープは6〜96dB/oct。トランジェント/トーンを独立して描き分けるリアルタイムアナライザーや150以上のプリセットを備え、複雑なイコライジングを短時間でまとめあげてくれます。

Eventide SplitEQ – Supernice!DTM機材

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