音作りの要!おすすめのEQプラグイン[記事公開日]2021年12月9日
[最終更新日]2022年03月31日

おすすめのEQプラグイン

イコライザー(Equalizer)は音色の周波数ごとに音量を増減するもので、略してEQと呼ばれます。かつては平均化という名の通り、突出した部分を抑えたり足りない部分を補ったりして音色を整えるだけのものでしたが、現在デジタルでのミックスが一般的になるにつれて、大胆なブースト/カットを施すことで、音色を作り替えてデザインするためのツールとして使われることが当たり前となりました。

ベースの太く唸る音色や、アコースティックギターのキラキラしたストロークのサウンド、ボーカルのツヤなど、いずれもEQの大胆な使用によって作り出されているところが多く、我々が普段耳にするできあがった音源はすでにEQで作り替えられた後のサウンドであることが普通です。

また、必要の無い帯域をばっさりとカットすることで他の楽器が入り込むスペースを空け、うまく楽器ごとの棲み分けを行うことで音を過不足なく詰め込むことができ、トータルで見た際の音圧アップにもつながります。音圧を稼ぐことが一つのテクニックとされる現代のミックス/マスタリングの世界において、こちらも音色作り以上の重要な意味を持っています。

EQの種類

デジタルとアナログ

他のエフェクターと同様、EQにもデジタルとアナログがあり、それぞれ性質がやや異なっています。

デジタルEQ デジタルEQの決定版「fabfilter Pro-Q3」

まずデジタルは周波数帯域やQ、カーブを自由に変更でき、応用範囲が極めて広いことが特徴です。音質の変化をカーブで視覚的に読み取ることができるため、使い勝手も良く、極端な変化を作り出すことで音色を大胆に変えることも容易です。サウンド的には色付けが少なく、あくまでも特定の周波数の上下を機械的に行うものが多いため、全体的にクリアなサウンドを保つことができます。DAWソフトには確実に付属で付いており、操作が分かりやすいため、初心者でも直感的に使えます。

アナログEQ 定番のアナログEQ「WAVES V-EQ4」

対してアナログはLow、Mid、Highを中心として可変できる周波数があらかじめ決まっています。たとえばLowであれば35Hz、60Hz、100Hzなどから可変する帯域を選んで、そこを中心に増減するようなものが多いですが、種類によっては選ぶ余地がなく、完全に固定されているものもあります。また、一般的にバンド数が少なく、7箇所程度も一度に可変できるデジタルに比べ、一度に可変できる帯域は多くても4箇所程度。視覚的にEQの効きを読み取ることもできないため、初心者が扱うのは少々慣れが必要ですが、普段からギターアンプやベースアンプ、あるいはPAミキサーなどに慣れ親しんでいれば、構造が同じため、すんなり使う事ができるでしょう。デジタルに比べると、音に温かみがある、通すだけで音が太くなるなど、音質面で様々に評されることがあり、わざわざアナログのEQを使う最大の理由もその部分にあります。

アナログEQは古くから使われているつまみのついたハードウェアのことですが、現在ではそのような過去の銘機と呼ばれるものをデジタルでシミュレートしてプラグインで使えるようにしているものがほとんど。デジタルEQのバンド毎に、アナログ的な音質変化を含めたアナログモードを搭載しているものも多く、このようなものは操作性や視認性はデジタルEQそのものでありながら、アナログ的な音質を得ることができます。

グラフィックEQとパラメトリックEQ

グラフィックEQ
BOSS GE-7

自分で可変する周波数を決め、そこを中心にブーストカットを行うものをパラメトリックEQ、あらかじめ決められた周波数ごとにスライダーが横一列に並んでおり、それを上げ下げするものをグラフィックEQと呼びます。DAWソフトで使われるものはほとんどがパラメトリックEQの方で、帯域やQ、カーブの種類などを自由に選ぶことができるため、柔軟性が高いことがその理由となっています。グラフィックEQはベースアンプやギターエフェクターなどで見ることが多く、直感的な操作が可能で、視覚的に音質の傾向が読み取れるところからも、素早い操作に向いています。音楽制作の中で見る機会は多くありませんが、感覚的な操作ができることから、制作とは無関係な音楽再生ソフトに付属していることもあります。

リニアフェイズ

可変された周波数の周辺で音の遅延が発生する「位相ずれ」を起きないようにしたEQ。リニアフェイズEQはCPUへの負荷が大きい上、単一トラックでは位相ずれそのものが問題にならない場合が多いため、主に複数のトラックが組み合わさったミックスバスや、最終段階のマスタリングなどで使用されます。全体的な音色のバランスを崩すことなく音色を微調整できますが、大胆な掛け方は用途として好ましくありません。Logicに付属するリニアフェイズEQのように個別に用意されているケース、あるいは通常のEQプラグインの中にリニアフェイズモードがあるケース、中にはOzone EQのように、バンド毎にパーセンテージで位相のずれを調整するようなものもあり、通常のEQプラグインとの境界はやや曖昧です。

有料のEQプラグインでできること

ソロ試聴

EQプラグインの中には可変している対象の周波数帯域だけを再生する機能があるものがあります。ブースト、カットに伴う音質変化がピンポイントで確認できるため、繊細な調整が必要な場面では特に有効です。ただし、特定の帯域ばかり聴いていると、知らない間に全体のバランスが崩れていることも。全体の中でのバランスを考えながら使うように注意しましょう。

ダイナミック処理

特定以上のレベルが入力された時にのみ作動するものをダイナミックEQと呼び、こちらも有料のプラグインには付属していることがあります。たとえば高域が出過ぎていると感じた際に、「これ以上のレベルに達するとカットを作動」、あるいは「これ以上のレベルに達したときにブーストを行わない」等といったようなフレキシブルな使い方が可能です。動作原理はマルチバンド・コンプレッサーに近い挙動をしていますが、ダイナミックEQはより各トラック毎の細かいセッティングに向いています。

MS処理とは?

MS処理

MS処理とはMid-Sideの略で、パンニングにおける中心と左右を別々に処理することを指しています。昨今急激にメジャーになった処理法で、左右の音量や音質だけを操作することで、広がりなどをコントロールできます。こちらもほとんどのEQには搭載されており、主にミックスダウンやマスタリングなどの最終工程で使われることが多い手法です。また、MS処理の他、左右を別々にイコライジングするLR処理というモードもあります。

音圧が欲しいならこれを使え!超簡単にMS処理ができるプラグイン特集

バンド数は多い?

デジタルEQは基本的にバンド数が多く、多いほどブーストとカットを様々な帯域で細かく行うことができ、緻密な音作りが可能です。DAWソフトの付属のものでも7バンド程度はあるのが普通ですが、Fabfilter Pro-Q3のように24バンドというとてつもない数のバンド数を持つものもあります。先述の通り、アナログの機材では4バンド程度のものも多く、デジタルの恩恵を最も受けている部分と言えます。

おすすめのEQプラグイン

EQの種類や有料EQプラグインならではの機能について紹介しました。それらの機能を搭載したおすすめのEQプラグインを紹介します。

Waves – H-EQ

Waves H-EQ

プラグインエフェクトのスタンダード、Wavesの看板イコライザープラグイン。H-EQのHとはHybridの略で、デジタルとアナログのシームレスな融合を目指したシリーズです。各バンド毎にヴィンテージ、モダン、デジタルを含む7種類のタイプを設定でき、それぞれに狙った音質でのイコライジングを施すことができます。独自のMSモードではMidとSideに別々のEQ設定を適用することもでき、アナライザーも非常に見やすく丁寧。ソロ試聴モードやダイナミックEQには対応しませんが、使いやすい上に値段が安く、幅広いユーザーにお奨めできる定番です。

WAVES H-Series – Supernice!DTM機材

FabFilter Pro-Q3

2018年リリース、数多いデジタルEQ製品の中でも最高峰との呼び声が高いプラグイン。他トラックのかぶりをチェックできるアナライザー、下部に鍵盤を表示し基音と倍音のチェックが直感的に行えるピアノロールティスプレイ、アナライザー上でのピークをそのままクリックしてEQが反映できるSpectrum Grabなど、とにかく操作性や視認性が群を抜いて素晴らしく、初心者を含めたあらゆる層にマッチします。最大24バンドまで使う事ができ、MSモード、LRモード、ソロ試聴モードを備え、全バンドにダイナミックEQモードが付随します。最高峰にクリアーな音質でありながらCPUへの負荷も抑えられており、ミックスダウンからマスタリングまで、これ1本で全てが適う優れたEQです。

FabFilter Pro-Q3 – Supernice!DTM機材

IK Multimedia / T-Racks EQual

T-RackS 5の目玉ともなるイコライザー。先述のH-EQと同じく、デジタル、アナログのハイブリッド設計で、クリアーな音質を特徴としています。基本的な構造は10バンドを一度に制御できるデジタルEQでありながら、バンド毎に様々なタイプを選ぶことができ、それぞれNeve、SSL、APIなどの往年の銘機を模倣したアナログEQから、マスタリング専用のモードも含む11種類と豊富です。MSモードにももちろん対応し、ミックスからマスターまで、非常に幅広い使い方ができるEQプラグインとなっています。

IK multimedia T-RackS MAX – Supernice!DTM機材

iZotope / Ozone EQ

絶大な評価を得るマスタリング用エフェクト群のOzone 9。このEQはそのOzoneに含まれるマスタリング用のEQで、8バンドに渡り精細なEQを施すことができるツールです。EQの挙動をアナログとデジタルの二種から選ぶことができ、アナログでは2mixに対してのアナログ的倍音の付与、デジタルではクリアーな音質かつ位相スライダーによってリニアフェイズとしての挙動をセッティングすることができます。MSモードやソロ試聴モードの他、左右で別々のEQを施すLRモードも搭載。既存の曲からEQ設定をインポートして、それに近づけるMatch EQというこの製品ならではの独自機能を持ち、最終段階でのEQ設定を行う上で助けとなってくれるでしょう。

iZotope Ozone 9 – Supernice!DTM機材

Slate Digital INFINITY EQ

2020年2月リリース、アナログコンソールなどのシミュレートプラグインで有名なSlate Digital。MSモード、LRモード、ソロモードなどが当たり前のように付属している中、この製品ならではの独特な特徴は平均とピークを両方監視できるスペクトラムアナライザー、そして128db/octまでの急峻なカーブを作れること、さらに、Low Shelf、High Shelfが二種のカーブをセットで動かせるところでしょう。ダブルQと名が付いたこの機能では、急激なカーブを作っても自然な音質を保つことができます。新しい製品ならではの洗練された操作性、視認性で、直感的な操作を可能にしてくれるEQです。

Slate Digital INFINITY EQ – Supernice!DTM機材

sonible smart:EQ 3

sonible smart:EQ 3

2021年5月リリース、AIに楽曲を聴かせるだけで、干渉している周波数領域を自動整理するクロスチャンネル・プロセッシング機能を搭載。スムーズなミキシングを実現する次世代インテリジェントEQです。「2」から「3」に進化したことで、新たに複数トラックの同時EQが可能となるグルーピング機能、再生中のサウンドに合わせてリアルタイムでイコライジングをし続ける「Dynamic Adaption」機能を搭載。ステレオ設定(L/R & M/S)、M/Sパンニングの設定も可能など、通常のイコライザー・プラグインとしても優秀です。

sonible smart:EQ 3 – Supernice!DTM機材

Eventide SplitEQ

Eventide SplitEQ

2021年11月リリース、ギターのエフェクターとして評価が高いEventideのプラグイン。サウンドのトランジェントとトーンを分割してイコライジングできる次世代8バンド・パラメトリック・イコライザーです。トランジェントとトーナル別々にEQとパンニングを適用できるというのが最大の特徴で、その他にも各バンドでL/R、M/Sのパンニングが可能となるなど、従来のEQの概念を超えた画期的な機能を搭載。複雑な処理を求められるイコライジングを短時間で解決してくれます。初心者にも優しい操作しやすいインターフェイスを採用。150以上の豊富なプリセットを収録、大胆に変化するプリセットを参考に音作りするのも良いでしょう。

Eventide SplitEQ – Supernice!DTM機材