DTMに導入したい!おすすめのコンプレッサー・プラグイン[記事公開日]2021年6月11日
[最終更新日]2022年03月31日

コンプレッサーは楽曲制作の上ではもっともよく使われ、まさに必須と言えるエフェクトです。どのようなDAWソフトにも付属しており、それで十分と感じることもあるでしょう。しかし、制作に慣れてくると、もっと簡単に使えてわかりやすいものが良い、あるいは、艶や音抜けなどヴィンテージ系コンプレッサーの強みが欲しい、など、さまざまな欲求が出てきます。

このような時にはサードパーティ製の優れたコンプレッサー・プラグインの出番です。このページでは味付けの少ないデジタル系、アナログの特徴でもある、存在感の強いヴィンテージ系まで、多彩な有償コンプレッサーを紹介していきます。

プラグイン・コンプの種類

デジタル系のコンプレッサーはいわゆるDAWに付属する通常のコンプレッサー。対してヴィンテージ系はアナログのアウトボードをその由来とし、それをコンピューター上で再現したものです。

音の圧縮に特化した「デジタル系」

コンピューターで音楽を作っている時点で全てがデジタルではあるのですが、音に味付けがなく素直、そしてセッティングが非常に柔軟であるものを特にデジタル系のコンプレッサーと呼んでいます。特徴はまさに今述べたそのままで、非常に細かいレシオ設定、波形の先読みによるアタック0ms設定など、アナログではなし得ない柔軟なセッティングが可能。

掛かり具合が視覚的にわかりやすく確認出来る、グラフィカルなアナライザーを備えたものもあります。色付けがないために、純粋に音の圧縮に特化した使い方に向いています。ピークを抑えるリミッティングや、音量バランスを揃える用途など、それ以上の要素がいらない時には最適。DAWソフト付属のものはほぼデジタル系で、動作が軽いのも特徴と言えるでしょう。

ヴィンテージ系

アナログ・アウトボードの名機1176を忠実に再現した「Universal Audio 1176 Limiting Amplifier」

主に1950年代ごろから70年代ごろまでに使われたアナログのアウトボード(ラック型エフェクター)。当時使われていた実物のアウトボードは個人が何台も買えるような額ではなく、現在生産されているリイシューの機体であっても数十万円は下らないため、これらをシミュレートしたプラグインのことをヴィンテージ系と呼んでいます。アウトボードはアナログが故に回路を通過する際に音色の変化が避けられず、その時の音色の変質が音楽的に好まれて使用されます。

主に歪みが増すために、倍音がやや豊かになり、その結果としてやや中域が太くなったり、音のヌケが良くなったりといったような副産物が得られます。その副次効果を狙ってレシオ1:1に設定し、文字通り通すだけに特化した使い方も存在します。動作原理は時代を追うごとに真空管、FET、オプティカル、VCAなど変わっており、それぞれによって少しずつ特徴が異なります。

おすすめの有償プラグイン・コンプ

追加コンプのファーストコール「FabFilter Pro-C2」

FabFilter Pro-C2

昨今爆発的な人気を得るFabFilter製のコンプレッサー。同社の他製品同様、非常に分かりやすく、ユーザーフレンドリーなアナライザーが特徴的で、現在のセッティングでどのようにコンプが掛かっているのかが一目で分かるようになっています。圧縮されている音のみのモニタリングなども可能で、コンプレッサーのモードにはそれぞれClean、Classic、Vocal、Masteringなど、目的に合わせたものが9種類も搭載されています。特定の音域のみを圧縮から逃がすサイドチェイン機能も搭載。非常に幅広い用途で使える、まさに万能型コンプレッサーです。

FabFilter Pro-C2 – Supernice!DTM機材

あらゆるシーンで使える万能コンプ「FabFilter Pro-MB」

FabFilter Pro-MB

FabFilter Pro-MBは、他製品同様に非常に分かりやすく使いやすいユーザーインターフェースとアナライザーを備えたマルチバンドコンプレッサー/エキスパンダーです。1バンド~6バンドまでを自由に選んで帯域を追加でき、実際の掛かり具合をアナライザーで確認しつつ設定していきます。その設定項目は多岐に渡り、まずコンプレッサーとエキスパンダーのモードの選択、アタック、リリースなどコンプレッサーとしての通常のパラメータ、圧縮を掛ける帯域の範囲や、プロセッシングモードとしてリニアフェイズ、ミニマムフェイズ、ダイナミックフェイズからの選択など、トラックごとのプロセスからマスタリングまでを視野に入れた万能コンプとして使えることがわかります。

FabFilter Pro-MB – Supernice!DTM機材

ヴィンテージ系の万能コンプ「IK Multimedia T-⁠RackS Comprexxor」

IK Multimedia T-⁠RackS Comprexxor

様々なレコーディングスタジオで万能コンプとして使われるアウトボード、Empirical Labs EL-8Xをモチーフとしたコンプレッサー。真空管やテープのサチュレーションをシミュレートしたDistスイッチ、歪みの深さをコントロールするTone、アグレッシブな音色を作り出すGBスイッチなどを備え、ヴィンテージコンプの美味しい部分を自在にセッティングして作り出せます。レシオのカーブは1:1からMAXまでの8種、アタック、リリースとも、幅広いセッティングに対応し、Optoモードを使用することで、滑らかなオプティカルコンプレッサーとしても使用可能。アナログのアウトボードを彷彿させるクラシカルな見た目とは裏腹に、まさに文字通り万能型と呼べる優れものです。

IK Multimedia T-⁠RackS Comprexxor – Supernice!DTM機材

ボーカル向けの定番「WAVES CLA-2A Compressor Limiter」

WAVES CLA-2A

60年代中期にTeletronix社によって製造されたオプティカルチューブコンプレッサーLA-2Aをシミュレートしたプラグイン。史上初めてゲインの制御に蓄光式のフォトセルが使用されたこのモデルは、不要な歪みを増やすことなく、滑らかな掛かり具合を実現し、多くのスタジオで使用されました。そのスムースなコンプレッションはボーカルやベースに特に向いており、二つしかないコントロールの使いやすさも相まって、常に使えるところに置いておきたい汎用性を持っています。Wavesの他のCLAシリーズ同様、敏腕エンジニア、クリス・ロード・アルジ氏とのタッグで制作されており、氏の監修した充実のプリセットも魅力です。

収録バンドル製品:
WAVES CLA Classic Compressors
WAVES HORIZON
WAVES Mercury – Supernice!DTM機材

ドラム向けの定番「WAVES DBX 160 COMPRESSOR」

WAVES DBX 160

1970年代よりソリッドステートVCAコンプレッサーの定番として幅広く愛されるdbx 160 compressorをシミュレートしたモデル。Wavesがdbxとの提携で作り上げたプラグインだけあって、非常に緻密にシミュレートされています。ポイントは何と言ってもスレッショルドとコンプレッションのみというシンプルなコントロール。プラグイン特有の機能として、LRでの分離や、ミックスコントロールなどを備えてはいますが、基本的にはこの二つのコントロールのみをセッティングし、コンプレッサーの要ともなるアタックとリリースは自動で調整されます。

音質はパンチが効いておりナチュラルで、この特性がドラムに最適と言われる所以であり、ドラム以外にもアコースティックギターなど、アタックの強い楽器に向いているコンプレッサーです。現行品の実機dbx 160Aは手に入れやすい値段で出回っており、興味のある方はプラグインのみならず実機ハードウェアの導入も良いかもしれません。

収録バンドル製品:
WAVES Mercury – Supernice!DTM機材

1176を再現「Waves CLA-76」

Waves CLA-76

伝説的なFETコンプレッサーであるUrei 1176をモデリングしたもの。ヴィンテージ系コンプレッサーとして、1176系は非常に数多く存在しますが、その中でも最も広く使用されているモデルの一つです。実機と同じく、スレッショルドがなく、インプットレベルを上げてコンプレッションを掛けていく操作性、右に回すほどアタック、リリースが早くなる通常とは逆の挙動など、いずれも実機を忠実にシミュレートしています。下部のボタンにより3種類のコンプを使い分けることができますが、いずれもアナログらしい粗さや歪みが心地よいサウンドに仕上がります。ヴィンテージ系コンプとしては、初めに手に入れておきたい定番モデルです。

収録バンドル製品:
WAVES CLA Classic Compressors
WAVES HORIZON
WAVES Mercury – Supernice!DTM機材

おすすめのプラグイン・バスコンプ

バスとは複数のトラックをまとめたもののこと。ドラム、バックグラウンドボーカル、ストリングス、最終的な2mixなど、バストラックには様々なものがあります。個々のトラックをうまく一つにまとめるため、全体として統一感のある圧縮を行う際に使用します。コンプレッサーの使用目的としては主要なものの一つで、バス用のコンプレッサーも多数存在します。

バスコンプの際にはアタックを早すぎず遅すぎず、リリースは早め、レシオは軽めにしておいて、派手にかけ過ぎないのがポイント。ヴィンテージ系ではレシオやアタックのセッティングが自動であるものも少なくありません。また一般的に低域はパワーが強く、そちらに引っぱられて高域側の必要なところに圧縮が掛かっていかない、というバスコンプ特有の現象が起きることがありますが、そのような現象を防ぐために、低域をあらかじめコンプの範囲外に逃がす、サイドチェイン・ハイパスフィルターを備えているものもあります。

WAVES V-Comp

WAVES V-Comp

1969年に開発されたNeve2254コンプレッサーをシミュレートしたプラグイン。コントロールはリミッターセクションとコンプレッサーセクションに分かれており、個別にオンオフすることで、細やかなセッティングが可能です。ヴィンテージ系に多いスレッショルドのないタイプで、インプットとアウトプットで掛かり具合を調整します。典型的なヴィンテージ系コンプの存在感を持ち、通すだけで中域がリッチになり、強いアタック感が得られパンチの効いた仕上がりになります。

ヴィンテージコンプレッサーの中でもマスターバスによく使われるものの一つですが、以上のような特性を持つため、単一のトラックにも、存在感を強めたい場合には大いに有力な選択肢となります。ロックを筆頭に、ラウドな音楽で最良の効果が得られるでしょう。

収録バンドル製品:
WAVES Diamond
WAVES Platinum
WAVES HORIZON
WAVES Mercury – Supernice!DTM機材

WAVES SSL G-Master Buss Compressor

SSL G-Master Buss Compressor

Solid State Logic 4000Gコンソールに付属するマスターバス用コンプレッサーをベースに作られた、マスターバス専用のコンプレッサープラグイン。オリジナルの挙動を正確にシミュレートし、その上で、プラグインならではのAnalogコントロールをオフにすることで、オリジナル以上のクリアさを実現できます。質感はオリジナル同様クリアーで、原音の響きに対する味付けは少なめ。それでありながら、全体のトラックをしっかりとまとめてくれる接着剤的な機能は大変に優れており、簡便なコントロールによるシンプルな設計もあって、マスターバス用の第一候補として非常に使いやすいものになっています。

収録バンドル製品:
WAVES SSL 4000 Collection
WAVES Studio Classics Collection – Supernice!DTM機材

Native Instruments Solid Bus Comp

Solid Bus Comp

Native InstrumentsのSSL系バス用コンプレッサー。上記のWavesの製品に比べても、それ以上に原音への味付けが少なくクリアーな圧縮を特徴としており、あまり元の音を変えたくないがまとまり感を出したい、という時には最適です。また、不要な味付けがないという一点が汎用性に繋がるため、マスター以外にもドラム、コーラス、ストリングスなど、複数のトラックをまとめ上げる際に、楽器の種類を問わず使用できるでしょう。動作が軽いのも大きな利点です。現在、単品での販売はしておらずKompleteやSolid Mix Seriesに収録されていますが、Kompleteはほとんどの制作家が使用しているため、一応インストールされているが使っていない、ということもあるかもしれませんよ。

《作編曲のための素材が全て揃うバンドル》Native Instruments Komplete 13

IK Multimedia T-RackS 5 Bus Compressor

IK Multimedia製、SSL 4000Gコンソールのシミュレートプラグイン。VCAタイプの特徴でもある味付けの少なさや、本家のもつサウンドキャラクターや操作性はそのままに、プラグインならではのコントロールが追加されています。追加されているものはサイドチェインのハイパスフィルター、そして倍音を加えて音の存在感を増すためのGritコントロールです。この二種のコントロールは他のSSL系にはない装備である上に、非常に有用なコントロールとなっており、この製品を使う理由として十分でしょう。また、MS処理が可能なところも見逃せないポイントです。

IK multimedia T-RackS 5 MAX – Supernice!DTM機材

WAVES API 2500

WAVES API 2500

80年代から90年代に掛けてのアメリカのヒットソングを中心に、非常に多く使われたVCAバスコンプレッサー、API 2500をシミュレートして生まれたプラグイン。多くの人がその頃のサウンドで聴いている通りの印象を持っており、カラッとした乾き、タイトさやパンチの効いたパワフルな質感が特徴です。本家APIとの提携で生み出されており、帯域毎のコンプの掛かり具合を3種類から選べるThrustコントロールや、回路構成を変えることでコンプレッションのタイプを切り替えるTypeなど、オリジナルに搭載された特徴的なコントロールをそのまま備えています。マスターバスにはもちろん、ドラムバス、あるいはボーカルトラックなどの単一トラックまで、多様な使い方ができる優秀なモデルです。

収録バンドル製品:
WAVES API Collection
WAVES Studio Classics Collection
WAVES Mercury – Supernice!DTM機材

WAVES PuigChild 660, 670

WAVES PuigChild 670

真空管コンプレッサーの伝説的銘機Fairchild 670をシミュレートして作られたプラグイン。丸く温かみがあり、自然な圧縮が特徴で、真空管ならではのノイズや倍音成分の付加には非常に適しているため、幅広いジャンルで使用されています。レシオは存在せず、インプットゲインとスレッショルドを設定して最適なセッティングを行い、アタックとリリースは決められた組み合わせの6種類から選ぶ方式となっています。ステレオ、デュアルモノ、さらにMS処理にも対応しておりマスターバスには特に最適。もちろん単一トラックに掛ける際にもおおいに頼りになるでしょう。

収録バンドル製品:
WAVES HORIZON
WAVES Mercury – Supernice!DTM機材

IK Multimedia T-RackS Classic Compressor

T-RackS Classic Compressor

T-RackSシリーズの最初期から存在するコンプレッサー。アナログらしい温かさと、自然な反応、おおげさに掛からない部分に人気があり、古い製品にもかかわらず、長らくT-RackSの最もベーシックなモデルとして愛されてきました。スレッショルドはなく、インプットゲインで圧縮具合を決める方式ですが、サイドチェインのハイパスフィルターや、他のコンプレッサーではまず見ることのない、ステレオエンハンスコントロールを持つのが最大の特徴。ステレオ感を簡単に調整できるこのコントロールは、様々なところで活躍するでしょう。

IK multimedia T-RackS 5 MAX – Supernice!DTM機材


無数に存在するコンプレッサープラグイン。デジタル系なのか、ヴィンテージ系なのか、あるいはバスコンプなのか、今自分の必要としているものが何であるのかを見極めた上で導入に踏み切ると良いでしょう。また、コンプレッサーは色々なバンドルにたくさん収録されています。必要とするコンプレッサーを中心にバンドルの導入を考えてみるのも良いのではないでしょうか。