今最もホットなブランドの一つ、UJAMのプラグインとは?[記事公開日]2022年2月13日
[最終更新日]2022年04月22日

UJAMプラグイン

バンド系の生楽器サンプリングVirtualシリーズやハンス・ジマーの手掛けるSymphonic Elementsシリーズなど、コストパフォーマンスの高い製品を多く手掛けるUJAM。ドイツのブレーメンに本社を置き、様々な音源をリリースする、DTMの世界で今最もホットなブランドの一つです。

2002年に手掛けたスタインバーグ社「Virtual Guitarist」の成功からメーカーとしての歴史が始まっており、ギターやベースなどのサンプリング音源であるVirtualシリーズは今でもラインナップの根幹を成しています。創業にも関わったハンス・ジマー氏が自らのスタジオでサンプリングしたシンフォニー音源や、2022年初頭には初となるシンセ音源Usynthをリリースし、その製品の範囲を着々と広げています。

UJAMは具体的にどのような製品をリリースしているのか、詳しく見ていきましょう。

UJAMプラグインの特徴

BEATMAKER IDOL BEATMAKER IDOL

UJAMの最大の特徴は操作が簡単であることでしょう。ほぼ全ての製品が一画面で完結するようになっており、コントロールもわかりやすい変化を起こすものが多いため、感覚的に触っていくだけで好みのサウンドに近づけることができます。いくつかの製品に採用されているFinisherエフェクトは同社の代表的エフェクトプラグインとして単独の製品にもなっており、回すだけでその音源のもっとも美味しい部分だけを変化させられるように調整されています。

UJAM音源のカテゴリはギター、ベース、ドラムのサンプリングを軸としたVirtualシリーズ、様々なジャンルのビートを手軽に表現できるBeatmakerシリーズ、ハンス・ジマー氏の手掛けるSymphonic Elementsシリーズ、唯一のシンセ音源であるUsynthシリーズの4種が存在します。中でもVirtual Guitaristは5種類、Beatmakerに至っては10種類以上を数え、ジャンルごとに細やかな違いを持たせた充実ぶりが目立ちます。

UJAMの強み:半自動演奏

ほぼ全ての音源に半自動での演奏がフィーチュアされています。これはあらかじめパターン化されたフレーズが膨大に収録されており、そのパターンをキースイッチで切り替えて曲に合わせていくというものです。他社のものでもしばしば見られるこの機能ですが、UJAMの製品は簡便な打ち込みでありながら、取ってつけたような雰囲気を微塵も感じない、超ハイクオリティなトラックができあがってしまうのが特徴。特に膨大な知識と時間が要求されるストリングス音源や、打ち込みが煩雑かつ困難になりやすいギター音源などでこの機能は非常に有用で、UJAM製品の評価を高める最大の要因にもなっています。
この機能に特化した製品では、オリジナルの打ち込みフレーズ演奏に対応しない代わりに、高音質を維持しつつ全体として低負荷、低容量そして低価格を実現しています。

UJAMの代表的なプラグイン

Symphonic Elementsシリーズ

SYMPHONIC ELEMENTS STRIIIINGS SYMPHONIC ELEMENTS STRIIIINGS

映画音楽の世界的権威ハンス・ジマー氏によるサンプリング、そして作曲家ボリス・サルコウ氏のプロデュースによって製作されたシンフォニック系音源。単なるシンフォニックサウンドに留まらず、エフェクティブな独創性の高いものまで、幅の広いサウンドをもフィーチュアしているところが特徴。複雑な打ち込みをせず高速にハイクオリティなフレーズを作れてしまうのは大きな魅力です。

SYMPHONIC ELEMENTS STRIIIINGS

ハンス・ジマー氏が自らのRemote Control Studiosでサンプリングし、プロデュースにボリス・サルコウ氏が関わったストリングス音源。一音打ち込んだだけでそれらしいアレンジのサウンドになり、和音を打ち込むことでより複雑な音列を持ったアレンジのストリングスセクションが完成します。演奏パターンは60のスタイルに基づく膨大なプリセットを収録。低音部と高音部は別々にEQからフィルターまで自在の調整ができ、中央のFinisherノブを回すことで掛けられる強烈なマルチエフェクトはサウンドを大胆に変質させます。ソロ演奏を省きセクションでのサンプリングに特化、またオリジナルのフレーズ演奏が不可能と、機能は大胆に絞られており、その分軽い動作と低容量でありながら高音質を実現しました。

UJAM Symphonic Elements Strings – Supernice!DTM機材

SYMPHONIC ELEMENTS DRUMS

STRIIIINGと同じく、ハンス・ジマー、ボリス・サルコウ両氏の手によるパーカッション音源。迫力満点のシンフォニック系のドラム音源で、53のスタイルに基づく300のプリセットパターンがサンプリングされており、スタイルやパターンを選択していくだけでハイクオリティなサウンドが手に入ります。UIはSTRIIIINGSとも共通しており、低音部と高音部をそれぞれに調整可能で、強烈な変化を起こすFinisherエフェクトももちろん搭載。難解なパーカッションパートの打ち込みの知識がなくても真に迫ったサウンドが構築できる辺り、シンフォニック系サウンドをあまり作ったことがない方にもおすすめです。

UJAM SYMPHONIC ELEMENTS DRUMS – Supernice!DTM機材

Beatmakerシリーズ

BEATMAKER KANDY BEATMAKER KANDY

エレクトロ系ドラムサウンドをフィーチュアしたシリーズ。各製品にはそれぞれに向いたジャンルなどが示されており、最新のトラップ系楽曲やK-POP系サウンドから80年代のレトロフューチャー系サウンドに至るまで多彩な製品がラインナップされます。インターフェースはシリーズで共通しており、キットやミックスバランスや全体の質感などを上部のスライダーやメニューで選んで調整、下部で各パーツ毎の音色調整やマスタートラックのリバーブ、コンプレッションなどを調整します。その中で各製品毎に特有のコントロールが一つ存在し、その製品のもっとも特徴的な質感を調整できるようになっています。パターンをそのまま貼り付けるほか、パーツ単体ごとの打ち込みやマルチトラックアウトにも対応。

BEATMAKER KANDY

トラディショナルなテクノ系統にありながらも、現代風なリズムを構築する音源。20のスタイルに基づく460ものパターンを収録し、ドラムキットには10種類が用意されています。上下に分かりやすく分離されたインターフェースは明快で直感的に操作できます。中でも左上に備えられたKANDY特有のSweetnessコントロールは強力で、押し出し感のようなものを調整することでパーカッションパート全体の存在感を増減できます。EDMでよく聴かれるような攻撃的なサウンドではなく、その名の通り甘さを感じるポップなビートを簡単に得ることができ、幅広いジャンルに使うことができるでしょう。

UJAM Beatmaker Kandy – Supernice!DTM機材

BEATMAKER IDOL

世界を席巻するK-POPアイドルのサウンドをフィーチュアしたドラム音源。タイトなバスドラムを特徴とする現代ディスコ風のドラムパートが簡単に構築でき、その明快なインターフェースと相まって、自分の好みに容易に調整することができます。Beatmakerシリーズ共通のインターフェースの中、当音源の特有のJuiceコントロールは上げていくことでマルチバンドコンプとEQが良い具合に作用していき、艶やかかつパワフルなサウンドに変貌していきます。20のスタイルに基づく460のパターンを収録し、10のドラムキット、12のミックスプリセットを収録。

UJAM BEATMAKER IDOL – Supernice!DTM機材

BEATMAKER GLORY

2000年代にヒップホップより派生し登場した、トラップ系楽曲のパターンを構築できるドラム音源。トラップの特徴であるコンプの効いた808系のキック音と手数の多いハイハットやスネアを組み合わせたパターンが460収録されています。20のスタイル、60のプリセット、10のドラムキット、12のミックスプリセットを収録。GLORY特有のコントロールにはBass Tuneというものが採用されており、バスドラムにD-0からD-1までの1オクターブ内で任意の音程を与えることができます。ジャンル的にスローなパターンが多く、純粋なトラップ系楽曲以外にバラードなどに使っても面白そうです。

UJAM Beatmaker GLORY – Supernice!DTM機材

BEATMAKER VICE

BEATMAKER VICE

電子ドラムが登場して間もない80年代、シンセと深いリバーブで彩られたポップソングはテクノポップ、シンセウェイブなどと呼ばれる新しいジャンルを形成し、一大ムーブメントを引き起こしました。この音源は当時のサウンドを全面的にフィーチュアしたドラム音源で、今では懐かしさとある種のSF感を感じるその質感を良く再現しています。当時世界を駆け巡ったLinn ElectronicsやRolandなどの電子ドラムのサウンドをモチーフとして製作されており、マスターセクションに搭載されたリバーブまでも緻密に当時のサウンドをフィーチュアしています。30のスタイル、12のミックスプリセット、10のドラムキットを収録。特有のTime Machineスライダーは80年代から2020年までサウンドの質感をバーチャルに調整可能という面白いものです。

UJAM Beatmaker Vice – Supernice!DTM機材

Virtualシリーズ

UJAMの歴史を彩ってきた生楽器サンプリング系音源。代表的製品であるVirtual Guitaristを始めとし、Virtual BassistとVirtual Drummerの三種をラインナップ。ベースとギターは純粋な生楽器サンプリングを基としており、Beatmakerシリーズと近いインターフェースを持つVirtual Drummerのみエレクトロ系に近いサウンドのものが含まれています。

VIRTUAL GUITARIST IRON 2

IRONという名が表す通り、メタリックで歪んだ音に特化したエレキギター音源。膨大なスタイルに基づくプリセットのフレーズを演奏させるプレイヤーモードと、UJAM製品には珍しい、オリジナルの打ち込みフレーズを演奏させることができるインストゥルメントモードの2種を搭載。サウンドキャラクターを4種、アンプを6種から選ぶことができ、ピックアップもネック側とブリッジ側をシームレスにブレンド可能で、ペダルエフェクターのシミュレートや強烈な効果を得るFinisherエフェクトも搭載するなど、1台で歪んだギターはほぼ網羅出来る汎用性があります。アンプシミュレーターを別途用意する必要がなく、エレキギター音源を何か1つだけ欲しいといった際には有力な候補となりそうです。

UJAM IRON 2 – Supernice!DTM機材

VIRTUAL GUITARIST Sparkle

VIRTUAL GUITARIST Sparkle

70年代から現代に至るまでエレキギターのサウンドとして不可欠なカッティング奏法を中心に収めた音源。70年代の泥臭いファンクから、80年代のAOR、90年代以降のインディーロックに至るまで様々なジャンルに対応するサウンドを収録。音質にはクリーンからクランチまで歪み具合に応じて5種類から選択可能なうえ、中高域のブースト具合を調整できるGritというコントロールを装備し、求める音色に簡単にたどり着けるようになっています。Symphonic Elementsシリーズと同じく、フレーズパターンでの演奏に特化しており、単音でのオリジナルのフレーズ演奏には対応しません。

VIRTUAL GUITARIST AMBER

ストラミングに特化したアコースティックギター音源。ヴィンテージのドレッドノートを使用し、様々なストロークプレイのフレーズを収録。50種類のスタイルで演奏された600のフレーズを収録し、打ち込まれた和音からギターのコードに置き換えて響きを出してくれます。コンデンサーマイクとピックアップの二種のソースを選択あるいはミックスできるほか、トーンも暖かいものからカリッとしたものまで5種類から選択可能。Sparkleと同じく単音でのサンプリングをしないことで高音質かつ低負荷を実現。そのためフィンガーピッキングや、単音でのソロ演奏は不可能となっています。

UJAM Virtual Guitarist Amber – Supernice!DTM機材

VIRTUAL DRUMMER DEEP

VIRTUAL DRUMMER DEEP

モータウン系に代表されるような、トラディショナルな乾いたサウンドにシンプルなビートを特徴とするドラム音源。ドラムキットは5種、6つのミックスプリセットが用意され、サウンドにパンチを与えるGritコントロールなども装備し、バリエーション豊かなドラムサウンドが得られます。パターンは700近く、60のプリセットを収録し、打ち込みに時間を掛けずとも非常に真に迫ったドラムトラックを構築可能です。

Usynthシリーズ

「誰でもクリエイティブになれる」というキャッチフレーズとともに登場したUJAM初となるシンセ音源。操作パネルはシーケンサー、シンセ、Finisherエフェクトが横に並んだ分かりやすいもので、コントロール名称も感覚的に理解できるものになっているため初見で簡単に操ることができます。サウンドやシーケンサーのエディット幅も広く、自分の好みのサウンドを見つけることも容易いでしょう。サウンドをゼロから構築するといった根源的な部分を大胆に削り、あくまでもシンセらしいサウンドをカッコ良く、かつ簡単に扱えるように特化させた、ある意味”UJAMらしい”と言える製品です。80年代風サウンドの「2080」、パッド音専用の「CARAMEL」、EDM系サウンド「Euphoria」の三種がラインナップされます。

Usynth EUPHORIA

Usynth EUPHORIA

3種あるUsynthの中で攻撃性の高いEDM系サウンドに特化したものがこのEuphoria。100のプリセットから音色を選び、30のシーケンサープリセットから選び演奏させるだけで、驚くほどのクオリティのトラックが完成します。またエディットの幅が広いため、直感的な操作で音色や音列をぐいぐいと変質させていくアナログシンセ的な面白さも健在です。UJAM製品おなじみのFinisherエフェクトには100のプリセットが用意され、こちらも細かなカスタマイズが可能。EDM系に合わせただけあって、カミソリのような切れ味の鋭いサウンドを特徴としています。シーケンサーでの演奏に本領を発揮しますが、自分で作り上げたフレーズも演奏可能です。


非常に簡単な打ち込み、編集を特徴とするUJAM製品は制作の時短を目指すクリエイターや、手軽にハイクオリティなトラックを作りたい初心者にもおすすめ。価格的にも良心的な値段に収まっているため、試してみやすいのも魅力ですね。