ボーカルミックスのおすすめエフェクト・プラグイン

[記事公開日]2023/5/28 [最終更新日]2026/5/15
[編集者]神崎聡

ボーカル・プラグイン

楽曲の中でも要となるボーカルトラックのトリートメント。どのようなエフェクトを使い、どんな順序で処理していくべきなのか、迷いどころでもあります。
ここではボーカルによく使われるエフェクトプラグインを網羅し、合わせて代表的な定番製品も紹介していきます。

ボーカルのミックス処理に使うプラグイン

ボーカルのミックス

ボーカルのミックスでまず必要なものは何でしょうか。それは楽曲において、ボーカルの存在がどのようなものかを考えることで見えてきます。

  • 1. バックトラックに負けない一定以上の音量
  • 2. 演奏の中に馴染んでいる

もっとも重要なことはこの二点です。
ボーカルは曲の主役ですが、楽器の中に埋もれて聞こえないのではメインになり得ません。とは言え、バックから浮いて聞こえても音楽として成立しません。
「EQ」「コンプレッサー」「リバーブ」などはまさにこの二点をクリアするために用いられるため、ほぼ必須と言えるエフェクトです。そして、それがクリアできた上で他のエフェクトが使われるという順序になります。
後段で使われるエフェクトは、サウンドを色付けしたり、音楽的な修正を施したりするためのもので、後述するダブラーやピッチ補正などが代表的です。

マイクからの信号を増幅する「プリアンプ」

Golden Age Project Pre-73 MKIV Neve 1073系プリアンプを再現したGolden Age Project「Pre-73 MKIV」

まずはレコーディングの段階で、十分な音量と十分な音質を確保することが何より重要です。録音されたソースが劣悪であれば、後の工程で取り返すことはほぼ不可能だからです。

マイクプリアンプは最初の段階において、マイクからの微弱な信号を録音に耐えるレベルにまで増幅してくれるものです。
基本的にはオーディオインターフェースに付随しており、ファンタム電源を装備しコンデンサーマイクからの入力に対応している機種であれば、まず間違いなく内蔵されています。
その上で、より積極的に音作りを行いたい場合には、プリアンプにこだわるアプローチが二通り考えられます。

プラグインを使ってかけ録りする

ひとつめは、プラグイン形式のマイクプリを使い、録音時にDAW側で「かけ録り」するアプローチ。
Universal Audio Apolloシリーズに代表されるDSP搭載インターフェースであれば、UAD Neve 1073API Vision Channel Stripなどの定番プリアンプを、低レイテンシーで録音前段に挿入できます。
実機の購入と比べて圧倒的にコストを抑えられること、Neve・API・SSLといった複数の名機を一台で使い分けられること、設定をプリセット化して再現性を確保できることなどが利点です。
CPUベースのプラグインプリでも、後段でかける形であれば同様の質感を加えることができ、宅録環境との相性が良いのも特徴です。

ハードウェア・マイクプリアンプを導入する

もうひとつは、アウトボード(ラックマウント機材)としてのマイクプリを導入するアプローチ。
Neve 1073系を再現したGolden Age Project Pre-73 MKIVや、Universal Audio LA-610など、実機を経由した録音には、アナログ回路ならではの倍音や太さが乗ります。
真空管・トランスフォーマーを含むプリでは、通すだけで音の重心が中域に寄り、ヴォーカルの存在感が一段増す効果も期待できます。
録音ソースの段階で味付けを完結させたい場合や、オーディオインターフェース内蔵プリではゲイン・S/N比に物足りなさを感じる場合には、外部ハードウェアの導入が有効です。

ボーカルトラックのトリートメントにまず使う「イコライザー」

FabFilter Pro-Q 4
FabFilter Pro-Q 4

イコライザーはEQと表記され、周波数ごとに音量の増減をしていくもので、ボーカルトラックのトリートメントにまず必要となるエフェクトです。
録音された状態でのボーカル音源は、基本的に低域が膨らみすぎていることが多いため、真っ先にローカットを行うのが普通。
その後も耳に付く成分をカットしたり、高域のピーク部分を増幅して倍音を増強したり、様々なプロセスを通して、楽器の音に埋もれていかないボーカルを作っていきます。

EQはどのDAWソフトにも付属していますが、存在感が必要なボーカルトラックにはアナログ系のEQもおすすめ。
何十年も使われてきたPultec系(後述)などは、通すだけで倍音が付加され音抜けも良くなるため、ボーカルとは特に相性が良い存在です。

ちなみに、大規模なミキシングコンソールのうち、一つのチャンネルの列のみを抜き出したものを「チャンネルストリップ」と言い、一般的にEQやコンプレッサーがセットになっていますので、これもEQ系の一部と見なせます。
昨今プラグインとして出回っている中でも、ヴィンテージ機器としてのNeve、Solid State Logic(SSL)のモデリングなどは特に多く、ヴィンテージ系チャンネルストリップとして重宝されています。

ボーカルトラックには必須「コンプレッサー/リミッター」

UAD 1176 Classic Limiter Plug-In Collection
UAD 1176 Classic Limiter Plug-In Collection

こちらもボーカルトラックには必須。コンプレッサーはその名の通り音を圧縮するためのもので、基準の音量を超えた信号を強制的に小さくすることで、全体の音量を揃えます。
ボーカルはあらゆる楽器の中でもダイナミクスの差がもっとも大きいため、そのままで楽器のオケに乗せると、聞こえるところと聞こえないところの差が甚だしく、聴くに堪えないものになります。
音量の大きいところを圧縮することで上部に余白が生まれ、結果として全体の音量を底上げできるという仕組みです。同時に音量差を縮めることで、全体的な太さやパワー感を増幅できるという副産物も得られます。

また、コンプレッサーには単純な音量変化のほか、それを通した際の質感が好まれて使用されるケースも多々あります。
ヴィンテージコンプと呼ばれるFairchild 670やUrei 1176(後述)などはヴィンテージコンプレッサーの代表的製品で、これらをシミュレートしたプラグインも多数リリースされています。

バックの演奏とも馴染みが良くなる「ディレイ」

ディレイ・プラグイン
WAVES H-Delay

いわゆる「やまびこ」で、同じ信号を繰り返し再生するためのものです。すでに出来上がっている音源からは聴き取りにくいですが、サビの歌い終わりや演奏がブレイクした瞬間などを集中して聴くと、間違いなく使われているのが分かるはずです。
楽曲のテンポに合わせたリズムでやまびこ部分を返すことで、トラック全体の存在感がぐっと増し、バックの演奏とも馴染みが良くなります。

ディレイにはやまびこ部分がまったく同じ音質で返るデジタル・ディレイ、劣化しながら返ってくるアナログ・ディレイやテープエコーなどがあり、音楽的に自然という理由から、ボーカルには後者が使われることが普通です。
一般的にボーカルのディレイは悪目立ちしやすいため、あくまで薄く掛けるのが基本。逆にギターのトラックなどはかなり強めに掛けても自然に聞こえたりします。

音源作成の上でも要となり得る重要エフェクト「リバーブ」

リバーブ・プラグイン
Logic Pro ChromaVerb

残響を作り出すエフェクト。上のディレイと違うのは、やまびこのような繰り返しではなく、あくまで空間の響きをシミュレートしたものであることです。
ボーカルのみならず、音源作成の上でも要となり得る重要エフェクトで、個別にレコーディングした楽器や歌を同一の箇所で演奏しているように聴かせるための響きの統一、歌をバックと馴染ませるための残響、最終的な楽曲の世界観を増強するための響きの付加など、幅広い役割で使われます。

ボーカルに使われるのは、ルームやスタジオリバーブなどの狭い空間をシミュレートしたものがまず第一。そして、その上でホールや教会などの広い空間のものを、楽曲に合わせた形で使用します。
また、1950年代後半に登場した、金属の板から音を響かせる「プレートリバーブ」は、その明るい質感がボーカルによく合うため、こちらもよく使われます。UAD EMT 140などはヴィンテージプレートリバーブの最高のモデルの一つです(後述)。

歯擦音を除去「ディエッサー」

サ行やタ行などから発せられる耳障りな歯擦音を除去するためのもの。耳障りな成分は概ね決まった周波数から発せられるため、その周波数帯域に狭く絞ってリミッティングを掛けるという構造になっています。Waves Sibilanceなどが定番として知られています。

ダブルボーカルを簡単に作る「ダブラー」

多重録音によるダブルボーカルを簡単に作るために使われるエフェクト。リードボーカルのダブリングのほか、ハーモニーパートを分厚くするなどの目的でも使われます。モジュレーションの代わりとして使われることも多く、ボーカルに限らず多用途に使用されます。

無くてはならない「ピッチ補正」、その他のエフェクト

昨今無くてはならないものとして挙げられるのがピッチ補正ソフトウェアです。
Antares Auto-Tuneに代表されるピッチ補正プラグインは、現在の商業音楽で使われていないものはほぼ無いと言ってよいほど浸透しており、個人でも当たり前のように導入されています。近年ではDAWソフトにもいち機能としてピッチ補正機能が搭載されていることが珍しくありません。
また、「ケロケロボイス」と呼ばれる、ポルタメントの掛からない機械音声のような声を作り出すためにも、このピッチ補正プラグインが使われています。


この他にもローファイなラジオボイスを作り出すためのエフェクトや、場合によっては声を歪ませるためにディストーションを使用したりすることもあり、ボーカルトラックには非常に幅広く色々なエフェクトが使用されます。

おすすめのボーカル用プラグイン

EQ

コンプ

リバーブ

その他

マルチ

多岐に渡るプラグインがボーカルには使われていますが、EQやコンプレッサー、リバーブなどはボーカル特有というわけではなく、他の楽器やトラックにもそのまま使えるものばかりです。楽曲そのものの完成度を高めるために、汎用的なものから手を付けるのも良いでしょう。
また、ディエッサーやピッチ補正はボーカルトラックのためだけに存在するプラグインですが、トラックの完成度をより高めるためのパワフルなツールになり得ます。
現在の手持ちのプラグインから何を優先すべきか、よく考えて導入してみましょう。

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