MS処理でDTMの音圧を上げるおすすめプラグイン

[記事公開日]2023/6/2 [最終更新日]2026/5/20
[編集者]神崎聡

「なぜ自分の曲は音が小さく感じるのだろう…」と思ったことはありませんか。オリジナル曲の「音圧不足」はDTMをやっている人なら一度は悩む課題です。ストリーミング配信が主流となりラウドネス基準が普及した現在でも、楽曲の聴感上のパワー感を引き上げたい場面は変わらず存在します。

その有力な手段のひとつが「MS処理」です。これはステレオ楽曲(LR)を「MとS」に分けて処理する考え方で、現代のミックス/マスタリングには欠かせないテクニックとして広く使われています。EDMやヒップホップなど、迫力のある低域とワイドなステレオ感を両立する楽曲の多くが、MS処理を巧みに利用しています。

最近では「トラックに挿入するだけでMS処理ができるプラグイン」が定着しており、DTM初心者でも簡単に取り入れられるようになっています。ここでは処理の基礎知識に加え、音圧稼ぎに役立つMS処理対応プラグインを紹介します。

そもそもMS処理って何だろう?

プラグインの紹介に入る前にMS処理がどういうものなのか押さえておきましょう。基礎を理解しておくことで、ナチュラルな音圧稼ぎが可能になります。

さっそくですが、以下の図をご覧ください。

LRをMSで考えた場合の図 LRをMSで考えた場合の図

私達が普段聴いている音楽はステレオ(L+R)です。それを「S(side)+M(middle)+S(side)」に分けて考えるのがMSです。レフトとライトではなく、「センターと両サイド」に分けて処理を施していきます。

MS処理で音圧を得られる仕組み

「どう頑張っても音圧が上がらない曲」があるとします。ミキシングが終わり、マキシマイザーを挿して音圧を稼ごうとするものの、十分な音圧を得る前に「音割れ」や「歪み」が起こってしまう。このままでは、狙ったラウドネスを確保することはできません。

音圧が上がらない原因は様々ですが、「ミキシング時点で失敗している」のが大半です。こうなった場合、1からミキシングをやり直すのが定石ですが、ひとまずMSに変換して様子を見ることをおすすめします。それでは下記の図をご覧ください。

MS処理前の音量レベルを表した図 MS処理前の音量レベルを表した図

音圧の上がらない曲をMSに変換してみると、多くが「Mのみ天井(0dB)に張り付いている状態」となっています。つまり、Sの音量レベルが十分に確保できていないため音圧を感じないのです。逆を言えば、「Sの音量レベルを稼げれば必然的に音圧が上がる」ということになります。

次の図をご覧ください。

MS処理後の音量レベルを表した図 MS処理後の音量レベルを表した図

Mが天井に張り付いている状態では音圧を稼げないので、「コンプレッサーでMだけを圧縮」します。その後、マキシマイザーなどで全体の音量レベルをメイクアップします。すると、Mを圧縮した分だけ「Sの音量レベルが引き上げられている」ことが図を見れば分かるかと思います。

改めて処理前と処理後の図を見比べてみましょう。Mは同じく天井に張り付いているものの、Sの音量レベルは処理後の方が大きくなっています。上述にもあるように、全体の音量レベルが上がると必然的に音圧も上がるので、処理後の曲は十分な音圧を確保できているはずです。

つまり、LRでは限界を迎えていても、MSにすることでさらに音圧を稼げる余地が生まれるということになります。ただし、過度なMS処理は楽曲全体のダイナミクスを失わせたり、奥行きのない平坦なサウンドへ変化させてしまうので、やりすぎには注意しましょう。

おすすめのMS処理対応プラグイン

以上のことを踏まえ、次からおすすめのMS処理対応プラグインを紹介します。

WAVES S1 Stereo Imager

最もポピュラーなMSエンコーダー/デコーダープラグインです。プラグインの公式名称はS1 Stereo Imagerで、その中に「Shuffler」「Imager」「MS Matrix」の3コンポーネントを内蔵しています。
MS処理を施したいトラックにS1を挿入すると、LRからMSに変換されます。次にMS個別に掛けたいプラグイン(コンプレッサーやイコライザーなど)を挿入し、最後にまたS1を挿入。これによってMSからLRに戻されます。2つのS1に挟まれているプラグインだけが、MS処理に対応できるようになるイメージです。

このプラグインが収録されているバンドル:
WAVES Gold
WAVES Platinum
WAVES Diamond
WAVES HORIZON
WAVES Mercury
※サブスク「Creative Access Essential / Ultimate」にも収録

WAVES Center

挿入するだけでMS処理ができるプラグインの代名詞といえばWAVESのCenterです。使い方はとても簡単で、ミキシングあるいはマスタリング時にこのプラグインを挿入し、画面左右にある大きなフェーダーを調節するだけです。ちなみに、左側のフェーダーはMに、右側のフェーダーはSに対応しています。

また、本プラグインにはMid/Sideの高域・低域バランスを調整するゲインコントロールも備えており、簡易的な帯域処理が可能です。難しいことは分からないけど、とにかくMS処理を試してみたいという方にぴったりです。

このプラグインが収録されているバンドル:
WAVES Gold
WAVES Platinum
WAVES Diamond
WAVES HORIZON
WAVES Mercury
※サブスク「Creative Access Essential / Ultimate」にも収録

WAVES PuigChild Compressor

PuigChild Compressor(旧称PuigChild 670)はFairchild 660/670というヴィンテージコンプレッサーをモデリングした製品で、豊かな倍音を加えてくれる高品位なコンプです。本プラグインにはMSモードが搭載されており、MS個別に圧縮を掛けることができます。

画面中央にあるLat/Verと書かれた位置にスイッチを切り替え、上下にある2つのコントロールで操作します。ちなみに上のコントロールがM、下のコントロールがSに対応しています。LR状態でMS処理ができる便利なコンプレッサーです。

このプラグインの入手方法:
WAVES PuigChild Compressor(単体)
※サブスク「Creative Access Ultimate」にも収録(Gold〜Mercuryなど通常バンドルには含まれません)

WAVES H-EQ Hybrid Equalizer

MS個別にイコライジングができるハイブリッドイコライザーです。アナログ機器をモデリングしたプラグインですが、デジタル特有の便利な機能も兼ね備えているため、ハイブリッドと称されています。

本プラグインのM/Sモードを使用することで、Mの4kHz付近をブーストし、Sの100Hz付近をカットする、といった処理が可能です。アナライザーも搭載されており、周波数帯を視覚的に捉えながら作業できる優秀な7バンドイコライザーです。

このプラグインが収録されているバンドル:
WAVES Gold
WAVES Platinum
WAVES Diamond
WAVES HORIZON
WAVES Mercury
※サブスク「Creative Access Essential / Ultimate」にも収録

Brainworx bx_saturator V2

様々なMS処理関連のプラグインを世に送り出しているBrainworxですが、同社のbx_saturator V2は世界中のプロから高い評価を得ているサチュレーターです。コントロールの数が多く、上級者向けのプラグインであるものの、ズバ抜けた音質とエフェクトの効きを持ちます。

画面を見るとMid High、Mid Lo、Side High、Side Loという4つのセクションに分割されていることが分かります。LRの状態でMS処理ができ、さらにMとSはHigh(高音域)とLow(低音域)の2つに分離されます。

基本的には、各セクションにあるXLあるいはDriveというコントロールを操作して、ゲインアップおよびサチュレーションを掛けていきます。特に注目したいのがXLコントロールで、これは立体的な音像を保ったままレベルを稼ぐことができる非常に優秀なツマミです。

マキシマイザーで一気にレベルを稼ぐよりも、本プラグインでセクション毎にレベルを稼いだ方がナチュラルかつ奥行きのある仕上がりになります。Plugin Alliance版とUniversal Audio版(Apollo/UADハードウェア対応)の2系統が販売されており、好みの環境で導入できる素晴らしいプラグインです。

このプラグインの入手方法:
Plugin Alliance bx_saturator V2
Universal Audio bx_saturator V2

今回のまとめ

いかがだったでしょうか。MS処理という技術自体は昔から存在していましたが、現代の音圧競争やストリーミング時代のラウドネス調整の流れの中で、その需要が一気に高まりました。そこに目を付けたWAVESやBrainworxなどのメーカーが、簡単にMS処理ができるプラグインの開発に力を入れ、今に至ります。
オリジナル曲の音圧やステレオ感に不満がある方は、これらのプラグインを導入することで解決できるかもしれませんよ。

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