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かつては「マスタリング=音圧を上げる作業」と捉えられがちでしたが、Spotify/Apple Music/YouTube などストリーミング配信が主流となった現在では、各プラットフォームのラウドネスノーマライゼーション(-14 LUFS 前後を基準とする音量調整)に合わせて適切な音量・音圧で破綻なく仕上げることがマスタリングの基本となっています。
当然ながら、全体の音質バランスや空間の広がり、ジャンルごとの目標トーンに合わせる作業もマスタリングの一環です。
そのため、音圧を稼ぐためのマキシマイザーだけでなく、マスタリング専用イコライザーやコンプレッサー(マルチバンドも含む)、ステレオイメージャー、True Peak リミッターやラウドネスメーターなど、市販CDや配信音源と同等のクオリティを追求しようとすると相応の機材投資が必要になります。
このページでは、アマチュアDTMerにおすすめの総合マスタリングソフトウェアと、マスタリング作業に活躍する単体プラグインを2026年現在の現行ラインナップから紹介していきます。
マスタリングプラグインは大きく分けて、必要な処理を一通りまとめた総合マスタリングスイートと、得意分野に特化した単体プラグインの2系統があります。
初心者やワンストップで仕上げたい人は前者、ジャンルや工程ごとに最適なツールを組み合わせたい人は後者を選ぶことになります。
| 製品 | カテゴリ | 対応OS | 対応フォーマット | 主な特徴 |
|---|---|---|---|---|
| iZotopeOzone 12 | 総合スイート | Win / macOS | VST3 / AU / AAX | Master Assistant 搭載、IRC 5 マキシマイザー、Stem EQ |
| IK MultimediaLurssen Mastering Console | 総合スイート | Win / macOS / iOS | VST2 / VST3 / AU / AAX | 実スタジオの信号チェーンを再現、スタイル選択型 |
| WAVESGrand Masters Collection | 総合バンドル | Win / macOS | VST3 / AU / AAX | L3-16/PuigTec EQs/V-EQ/Linear Phase EQ など15プラグイン |
| NUGENModern Mastering Bundle | 配信特化バンドル | Win / macOS | VST3 / AU / AAX | ISL 2st/MasterCheck/Visualizer の3製品 |
| FabFilterPro-Q 4 | マスタリング向けEQ | Win / macOS | VST3 / AU / AAX / CLAP / AudioSuite | 24バンド、ダイナミックEQ、Spectral Dynamics、MS処理 |
| FabFilterPro-L 2 | True Peak リミッター | Win / macOS | VST3 / AU / AAX / AudioSuite | 8種のリミッティングスタイル、最大32倍オーバーサンプリング |
| WavesPuigChild 660 / 670 | ヴィンテージコンプ | Win / macOS | VST3 / AU / AAX | Fairchild 660/670 モデリング、MS処理対応 |
| ProAudioDSPDSM V3 | マルチバンドコンプ | Win / macOS | VST3 / AU / AAX | スペクトラムキャプチャ機能、DFT方式 |
| WavesL3-16 Multimaximizer | マルチバンドマキシマイザー | Win / macOS | VST3 / AU / AAX | 16バンド、リニアフェイズクロスオーバー |

iZotope社の Ozone はマスタリングに必要なツールを一通り揃えた総合マスタリングソフトウェアです。2025年9月にリリースされた現行の Ozone 12 では Advanced 版で20種類のモジュールが利用できます。
Standard 版でも 14モジュールが揃い、AI ベースの Master Assistant や定番の Maximizer・Equalizer・Imager・Dynamics などが使えます。
代表的なモジュールがどのような役割を担うのか、順に見ていきましょう。
8バンドのパラメトリックイコライザー。
マスタリング専用ということもあり、多少無理なブースト/カットをしても音質に影響を与えにくい設計です。Q幅も細かく設定でき、ピーク帯域を抑える処理に最適。
シェルフ・ベル・ハイカット/ローカット・バンドパス・フラットトップ・プロポーショナルQ など複数のフィルタータイプから選択できます。
MS処理にも対応しています。
低音が不足していると感じた場合、M成分の低音をブーストし、同時にS成分の低音をカットすることで簡単に厚みのあるサウンドに仕上がります。
Ozone 12 Advanced の目玉機能の一つ。
ステレオの2mixを Vocals/Drums/Bass/Instruments の4ステムに自動分離し、ステムごとに個別のEQカーブを適用できる機械学習ベースのモジュールです。
「ボーカルの中域だけ持ち上げたい」「ドラムの低域だけ削りたい」といった、本来はパラデータがないと不可能だった処理が2mixに対して行えます。
指定した周波帯に倍音を加えて音を煌びやかにするエフェクトです。
倍音を加えることでその周波帯だけが強調され、クッキリと聴こえるようになります。マスタリングでは不足している周波帯を盛るために使うことが多く、特に12kHz以上の超高音域は不足しがちなので、そのあたりをブーストしてみると空気感のある楽曲に仕上がります。
4バンドで使用でき、エキサイトタイプも複数用意されています。
帯域別に調整できるステレオイメージャー。
空間の広がりを擬似的に演出することができ、軽く通すだけで全体の音圧を少しだけ上げることができます。
マキシマイザーで強引にリミッティングして音圧を得るよりも、ステレオイメージャーで広げてから適度にリミッティングしたほうが良い結果になることが多いです。
マルチバンドコンプレッサーとマルチバンドリミッターを一つにしたエフェクト。
一般的なコンプレッサー/リミッターのパラメータが各バンドで個別に用意されており、MS処理にも対応しているため、うまく使えば市販CD音源に近い音圧と密度を得ることができます。
Ozone の Maximizer には「Intelligent Release Control(IRC)」と呼ばれる独自技術が採用されており、ナチュラルに音圧を稼ぐことができます。
Ozone 12 ではこれが進化し、ポンピングや歪みを避けながらラウドネスと明瞭度を両立するIRC 5アルゴリズムが搭載されました。素材に合わせて従来の IRC モードと使い分け可能です。
Ozone 12 から新たに搭載された機械学習ベースの低域コントロールモジュール。
従来からあるLow End Focusと並んで、低域の輪郭をリスニング環境を問わずまとめてくれる、マスタリング初心者にはありがたい存在です。Contrast/Punchy・Smooth/Gainなど、パラメータも直感的に扱えます。
ボーカルトラックに使われるディエッサー(サ行などの歯擦音を軽減するエフェクト)に近い思想を持つモジュール。
マスタートラックの耳障りな部分を自動で検知して質感を繊細に整えます。難しいEQ処理を半自動で行えるため使い勝手の良いエフェクトです。
Ozone 12 で新規追加。過度に圧縮されてしまった2mixを解析し、機械学習でトランジェントを賢く回復させることで「ブリックウォール化されてしまった素材のダイナミクスを取り戻す」という、マスタリング業界でも前例の少ない発想のモジュールです。
Ozoneを人気プラグインへ押し上げた象徴的機能。
あらかじめ用意されたプリセットや、リファレンスとなる楽曲に合わせてAIが自動でマスタリングチェーンを組み立ててくれます。
Ozone 12 では「Custom」フローが追加され、ジャンルターゲット・LUFS値・使うモジュールの取捨選択までユーザー側で指定できるようになりました。
制作初心者や時短を求めるクリエイターにとって心強い存在です。
2mixファイルからドラム、ベース、ボーカルの音量だけを後から制御できる機能。
人とデータをやり取りすることが多い制作家には非常に助かる機能で、Ozone 12 では Standard 版にも降りてきました。
ボーカルを下げることでカラオケ音源に近いものを作れるため、ボーカリストの練習用としても使えます。
Advanced 版に含まれる機能。
様々なジャンルの理想的ミックスバランスを学習しており、ターゲットと比較してマスターの指針を示してくれます。
グラフィカルに表示されるため、リスニング環境に左右されることなく正確なバランスを追い込めます。
答えの見えなくなりがちなマスタリング作業において、指針が見える化されているのは実用的のみならず初心者の練習用としても価値があります。
Ozone 10 世代でリリースされた解析用のスタンドアロンアプリ。
ストリーミングサービスやローカルファイルなど、どんな音源からでもトーンや幅・ダイナミクスを解析して「自分用マスタリングターゲット」を作れます。
現在は Tonal Balance Control 3 のスタンドアロン版に機能が統合される方向に整理されつつあり、Ozone Advanced と組み合わせれば、お気に入りリファレンス曲のサウンドを自分の楽曲に近づけられます。
Ozone 12 には Elements / Standard / Advanced の3エディションが用意されています。
Tonal Balance Control 3 や Stem EQ・Unlimiter といった Ozone 12 を象徴する機能を使いたいなら Advanced 一択。
各モジュールを個別プラグインとしてミックス工程で挿したい場合も Standard 以上が必要です。
Elements 版はあくまで「Ozone を体験してみる」位置づけと考えるとよいでしょう。
iZotope Ozone 12 – Supernice!DTM機材
iZotope 単独バンドルのほか、Native Instruments の KOMPLETE 26 に Ozone 12 Elements が同梱されているのも見逃せません。マスタリングだけでなくサンプリング音源・シンセも一気に揃えたい場合は KOMPLETE 系を検討する価値があります。

ロサンゼルスにある Lurssen Mastering Studio のコンソールを再現した、マスタリング専用のツール。
真空管EQ、ソリッドステートEQ、リミッター、ディエッサー、ソリッドステートコンプレッサーの5種が搭載されています。
実際のスタジオで最良の効果が得られるよう考え抜かれた信号経路がプラグイン内部でも忠実に再現されているため、まさに”Mastering Console”と呼ぶにふさわしく、「ただ5種のエフェクトを並べただけ」にとどまらないところがポイントです。
公式40種類のスタイル・プリセットから選び分けることで最適な設定が瞬時に呼び出され、あとは音量などの微調整をするだけというユーザーフレンドリーな設計。もちろん各モジュールを個別に詰めていくこともできます。
プリセットの豊富さはiZotope Ozoneにも通じるものがあり、制作初心者や時間を節約したい人にはうってつけ。
値段も抑えめで、実機コンソールを思わせるビジュアルが作業を盛り上げてくれます。
IK Multimedia Lurssen Mastering Console – Supernice!DTM機材

2025年3月、IK Multimedia は新たに T-RackS Lurssen Mastering EQ をリリースしました。
Lurssen Mastering Studio で愛用されてきた EAR 825Q 系の真空管ステレオEQをモデリングした T-RackS モジュールで、温かみのある音色付けが得意。
Lurssen Mastering Console と組み合わせた「Lurssen Mastering Suite」バンドルも展開されており、Lurssen サウンドをより細かく追い込みたい人に向いています。

オーディオプラグインの定番である Waves のマスタリング専用バンドル。
リニアフェイズ系の Linear Phase EQ/Linear Phase Multiband Compressor、定番マキシマイザーの L2 Ultramaximizer・L3 Multimaximizer・L3 Ultramaximizer・L3-16 Multimaximizer・L3-LL Multi/Ultramaximizer、ヴィンテージ系の V-Comp/V-EQ3/V-EQ4/PuigTec EQs、MS処理用の Center、メーターの Dorrough Stereo、複合機能の MaxxVolume などを含めた15プラグインを収録しています(2026年5月時点)。
これ一本で必要なものが揃うラインナップの充実度もさることながら、V-EQ や V-Comp、PuigTec EQs などはマスタリングだけでなく通常のミックスでも大活躍する汎用性が魅力。その反面、あくまでマスタリング向けプラグインの集合体であり、Ozone や Lurssen のようにプリセットで一括制御するワークフローには対応していません。
さらに Waves のバンドル製品は他のバンドルと収録プラグインが被ることが多いため、すでに別バンドルを持っている場合は購入前に重複を確認することをおすすめします。
WAVES Grand Masters Collection – Supernice!DTM機材

True Peak を抑えるISL 2st、聴感上のラウドネスと配信プラットフォームのターゲット値を監視するMasterCheck、音を画像として表示できる高性能アナライザーVisualizerの3製品がセットとなったパッケージ。
True Peakとは、デジタルからアナログ信号に変換したときに意図せず発生するピーク値のことで、これを抑えるISL 2stは積極的な音作りに使うものではない一方、リミッターとしてラウドネスを稼ぐ目的にも応用できます。
MasterCheckではSpotify/Apple Music/YouTube/TIDALなど各プラットフォームのラウドネスノーマライズ後にどのような音量・True Peakで再生されるかを事前に確認でき、MP3/AACなど各種コーデック変換後のピークレベルも表示可能。
Visualizerは音をサーモグラフィのように画像的に表示できる優れたアナライザーです。
いずれも業務用音響を主軸とする NUGEN Audio らしい製品群であり、ストリーミング配信や YouTube が音楽流通のメインとなった現在の市場において、厳密なレベル管理を成し遂げるために存在する玄人向けのパッケージです。
Nugen Audio Modern Mastering Bundle – Supernice!DTM機材

ミキシング・マスタリングの両方で絶大な信頼を得ている FabFilter の定番EQ。
年12月にリリースされた現行 Pro-Q 4 では最大24バンドのEQが扱え、6〜96dB/oct の急峻なスロープ、ハイカット/ローカット用の Brickwall スロープなどマスタリング用途に十分なスペックを備えます。
MS処理(Mid/Side 個別制御)、ダイナミックEQ、Match EQ といった定番機能はそのままに、Pro-Q 4 では新たにSpectral Dynamics(指定したバンド内でも閾値を超える周波数だけを動的に処理する機能)とInstance Listによる複数インスタンス管理が加わり、マスタリング時のサイド帯域コントロールやリファレンスマッチが一段と高速化しました。
Fabfilter Pro-Q 4 – Supernice!DTM機材

伝説的名機 Fairchild 660/670 をモデリングしたプラグインです。
プロデューサー Jack Joseph Puig 所有の実機をベースに作られたモデリングで、ヴィンテージコンプとはいえ出音はハイファイ寄り、現代のポップスやロックと相性抜群です。
DTM内で完結する制作はデジタルなサウンドになりがちなので、このプラグインを通すことで豊かな倍音が付加され、ウォームで聴き心地の良いサウンドに仕上がります。MS処理にも対応しており、M/S 成分を個別にコンプレッションできるのも魅力。
Waves PuigChild は単体販売のほか、Waves の上位バンドル(Mercury など)にも収録されており、Waves Ultimate のサブスクリプションでもアクセス可能です。
PuigChild 670 がバンドルされている製品
WAVES MERCURY
– Supernice!DTM機材

マスタリング用途では屈指の評価を持つマルチバンドコンプレッサー。
最新のDSM V3ではPlugin Alliance/Brainworx経由での販売に移行しており、スペクトラム上のアクティブ・ドラッグハンドル、リミッターとDSM処理の分離、信号フローの改善、50〜150%のGUIスケーリングなどが加わりました。
最大の特徴は2mix音源の周波スペクトラムをキャプチャし、最適なスレッショルドの形を自動的に決めてくれること。
通常、マルチバンドコンプで「高域はあまり潰さず、中域だけ潰して、低域は少しだけ……」と試行錯誤するところを、Capture ボタン一発で自動的にスレッショルド・カーブを設定してくれます。あとはリリース/アタック/ゲインを調整するだけ。
DFT(離散フーリエ変換)方式で帯域を細かく分割するアーキテクチャのおかげで音質も非常にナチュラルで、コンプレッションされていることを忘れてしまうほど自然なサウンドに仕上がります。

定番中の定番、Waves 社が手がけるマキシマイザー L シリーズ。マスターにインサートしてスレッショルドを下げるだけで簡単に音圧を上げられる、まさに業界標準のマキシマイザー群です。
現行ではL1+ Anniversary・L2 Ultramaximizerといった単体リミッターから、マルチバンドのL3 Multi/L3 Ultra/L3-LL(リニアフェイズ・ローレイテンシ)/L3-16 Multimaximizerまでラインナップしています。
中でも L3-16 は16バンドの仮想クロスオーバーを備え、各バンドのアテニュエーション・EQ・プライオリティを3本のカーブで設計できる多バンド・マキシマイザーで、リニアフェイズ・クロスオーバー、21種類のリリース・キャラクター、オートリリースまで揃った最高峰モデル。
ゲインリダクションを深く入れるほどアタックが立ち上がりサビでガツンと聴かせるロックやEDMにも適合します。
定番でありつつも使いこなすにはそれなりの技術が必要となるプラグインです。
WAVES L316 Multimaximizer – Supernice!DTM機材

原音重視のマキシマイザーといえばこれ。相当突っ込んでも音質が破綻しにくく、ナチュラルなサウンドに仕上がります。
8種類の用途別リミッティングスタイル(Transparent/Allround/Aggressive など)と最大32倍までのオーバーサンプリングが選べ、True Peak リミッティングと精密なラウドネスメーター、サラウンド出力にも対応。
「音圧を稼ぐ」というよりは「聴覚上のボリュームを引き上げる」イメージで、バラードやジャズなど原音を大切にしたい楽曲に特におすすめのマキシマイザーです。
リミッティングの様子をリアルタイムで監視できるモニターも作業を強力にサポートしてくれます。
FabFilter Pro-L2 – Supernice!DTM機材

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