マスタリングに押さえておきたいオススメのソフトウェア・プラグイン[記事公開日]2021年3月2日
[最終更新日]2021年03月11日

オススメのマスタリングプラグイン特集

マスタリングとはなんだろう?

現代の(DTMでの)楽曲制作に「マスタリング」という作業は欠かすことができません。マスタリングはミキシングとセットで考えられるのが一般的で、「各パートのオーディオデータをまとめて音源にする作業がミキシング」、「出来上がった音源を磨き上げて音楽にする作業がマスタリング」と覚えると良いでしょう。

マスタリングはミキシング同様、現代の楽曲制作において重要な役割を担う作業であり、この作業が上手ければ上手いほど、ハイクオリティな音源に仕上げることができるという訳です。

スタジオレコーディングでのマスタリングとは別物

このページで言及する「マスタリング」は、パソコンを使った楽曲制作におけるものを言い、スタジオでのバンドレコーディングなど、録り音そのものを重視する現場での”いわゆる”マスタリングとは趣が少し異なります。
バンドでの本格的なスタジオレコーディングのやり方 – エレキギター博士

マスタリングプラグインが必要な理由

最近では「マスタリング=音圧を上げる作業」という考えが一般的になっていますが、「全体の音質や空間の広がり」も調整するのがマスタリング作業の一環です。

そのため、音圧を上げるためのマキシマイザーだけでなく、マスタリング専用イコライザーやコンプレッサー(マルチバンドも含む)、ステレオイメージャーなどのプラグインも必要なり、市販のCDと同程度のクオリティを追求すると機材投資も相当な金額となってしまいます。
このページでは、アマチュアDTMerにおすすめのマスタリングソフトウェア、そしてマスタリング作業に活躍するプラグインなど紹介していきます。

総合マスタリングソフトウェアの筆頭格「iZotope Ozone 9 Advanced」

iZotope Ozone 9 Advanced

iZotope社のOzoneはマスタリング作業に必要なツールを全て兼ね備えている総合マスタリングソフトウェアです。搭載されているエフェクトは以下となります。

  • Equalizer(イコライザー)
  • Exciter(エキサイター)
  • Imager(イメージャー)
  • Dynamics(ダイナミクス)
  • Post Equalizer(ポストイコライザー)
  • Maximizer(マキシマイザー)
  • Spectral Shaper
  • Low End Focus

それでは、各ツールがどのような役割を担うのか見ていきましょう。

Ozone 9 の搭載エフェクト

Equalizer

eq

8バンドのパラメトリックイコライザーです。マスタリング専用ということもあり、多少無理なブーストあるいはカットをしても音質に影響を与えません。Q幅も細かく設定することができ、周波帯のピークを抑えるのに最適です。5タイプ17種類のシェルビングから選択できます。

ちなみにこのイコライザーはMS処理にも対応しています。楽曲に低音が不足していると感じた場合、M成分の低音をブーストし、同時にS成分の低音をカットすることで、簡単に厚みあるサウンドに仕上がります。ちなみに、Post Equalizerも同様のことができます。

Exciter

ex

4つの帯域
エキサイターは指定した周波帯に倍音を加えて音を煌びやかにするエフェクトです。倍音を加えることでその周波帯だけが強調され、クッキリと聴こえるようになります。ミキシングでは主にボーカルの2kHzから5kHzに掛け、音抜けの良い声に仕上げるために用いられることが多いです。

マスタリングでは、不足している周波帯をエキサイターで盛るために使います。特に12kHz以上の超高音域は不足しがちなので、そのあたりをブーストしてみると空気感のある楽曲に仕上がります。4バンドで使用することができ、用意されているエキサイターの種類は6タイプなので、楽曲に合ったタイプを選択すると良いでしょう。

Imager

img

4つの帯域に分けて調整できるステレオイメージャーです。帯域に合わせてステレオ感を強調あるいは抑えることができます。空間の広がりを擬似的に演出することができ、軽く通すだけで全体の音圧を少しだけ上げることができます。マキシマイザーで強引にリミッティングして音圧を得るよりも、ステレオイメージャーで広げてから適度にリミッティングした方が良い結果になることが多いです。

Dynamics

dyn

4つの帯域
マルチバンドコンプレッサーとマルチバンドリミッターの機能を一つにしたエフェクトです。一般的なコンプレッサーおよびリミッターのパラメータが4バンドで用意されており、それぞれ個別に設定することが可能。MS処理もできるため、うまく使えば市販のCD音源並の音圧を得ることができます。

Maximizer

max

OzoneのMaximizerには「Intelligent Releace Control(IRC)」と呼ばれる独自技術が採用されており、非常にナチュラルに音圧を稼ぐことが可能となっています。

IRCには3種類のタイプが存在し、IRCⅠが「全体的に厚みあるサウンドに仕上がる」、Ⅱが「クリアでナチュラルに仕上がるタイプ」、Ⅲが「メニューで選択した仕上がりになるカスタムタイプ」です。それぞれ楽曲に合わせて選択すると良いでしょう。

Spectral Shaper

Spectral Shaper

Advanced版に含まれる機能。ボーカルトラックに使われるディエッサー(サ行などの歯擦音を軽減するエフェクト)に近い機能を持ちますが、マスタートラックの耳障りな部分の質感を繊細に調整できるものとなっています。難しいEQ処理を楽に行うことができ、使い勝手の良いエフェクトです。

Low End Focus

Low End Focus

Advanced版に含まれる機能。その名の通り、低域部分に対してのEQ調整、コンプレッサーなどを自動調整してくれるプラグインです。最終段階でもかなり難しい低域の調整を手助けしてくれるとあって非常に有用なエフェクトです。パラメータもわかりやすく簡便で、それぞれ音のイメージを調整するContrast、特徴を設定するPunchy/Smooth、そして音量調整のGainだけ。初心者にもありがたい存在です。

マスタリングをアシストするツール

難しいマスタリング作業を強力にアシストしてくれるツールが以下3つです。

Master Rebalance

Master Rebalance

Advanced版に含まれる機能。Ozone 9から搭載された新機能で、出来上がっている2mixファイルからドラム、ベース、ボーカルの音量だけを制御できるというもの。人とデータをやり取りすることが多い制作家には非常に助かる機能です。またボーカルを下げることでカラオケ音源に近いものを作ることができるため、ボーカリストの練習用にもおすすめです。

Tonal Balance Control 2

Tonal Balance Control

Advanced版に含まれる機能。様々なジャンルの理想的ミックスバランスを学習しており、それと比較してマスターの指針を示してくれるというもの。図的に表示されるため、リスニング環境にも左右されることなく正確なミックスを求めていくことができます。答えの見えなくなりがちなマスタリング作業において、指針がはっきりしているというのは、実用的のみならず初心者の練習用としてもうれしい存在です。

Master Assistant

Ozone 8から追加された機能にして、Ozoneを大人気プラグインへと押し上げた存在。あらかじめ組み込まれたプリセットや、リファレンスとなる楽曲に合わせてAIが自動でマスタリングを行ってくれるという唯一無二のツールであり、制作の初心者や時短を目指したいクリエイターまで、非常に重宝する機能です。ミックスダウン用プラグインNeutron 3にも同様の機能が存在しており、しばしばiZotopeブランド製品の代名詞として語られます。

Ozone 9を初心者におすすめする理由

プリセットが豊富

Ozoneはプリセットが非常に豊富。ジャンルごとに多彩なプリセットが用意されており、それを選択するだけでそれなりのものへと仕上がるため、一つ一つを見ていくのが難しい初心者にとってありがたい存在です。まずはプリセットを選んでみて、そこから少し調整しつつ仕上げていくことを繰り返す内に、少しずつ上達させることもできるでしょう。

様々なツールの存在

Master Assistantを使うことで、AIによる自動マスタリングが可能。右も左も分からない人のみならず、ミックスやマスタリングなどより作編曲や演奏に時間を掛けたいミュージシャンまで、これは非常に重宝します。明確な指針を示してくれるTonal Balance Controlの存在も頼もしく、初心者にとって心強いツールが揃っているのも、Ozoneの特徴でしょう。

3グレードのOzone 9、どれを選ぶべき?

Ozone 9にはそれぞれElement、Standard、Advancedの3種があります。
最高グレードであるAdvancedが全機能対応。ElementにはEqualizer、Imager、Maximizer、Master Assistantの一部機能が解放されており、Standardではかなりの機能が使えますが、上で紹介しているLow End Focus、Master Rebalance、Tonal Balance Controlなどが使えません。また、一つずつのエフェクトを個別のプラグインとして使うことができず、例えばEQだけを使いたいときにもOzone 9を全体で呼び出す必要があります。

目玉機能のひとつであるTonal Balance Controlを利用を想定するならばAdvanced版一択。プラグインを個別に指すことでメモリの使用を効率的にしたいという場合もAdvanced版を選ぶことになるでしょう。Element版はOzoneの真価を発揮できるとは言いがたく、始めのお試しといった使い方になるはずです。

iZotope Ozone 9 – Supernice!DTM

Ozone 9が含まれるバンドル

Mix & Master Bundle

Ozone 9 Standard、Neutron 3 Standard、Tonal Balance Control 2の3つが含まれたバンドル

Tonal Balance Bundle

Ozone 9 Advanced、Neutron 3 Advanced、Tonal Balance Control 2、Nectar 3 Plus(ボーカル用マルチエフェクト)、Breath Control & Melodyne Essential(ボーカルのブレス音調整エフェクト)が含まれたバンドル

iZotope Tonal Balance Control 2 – Supernice!DTM

LAのスタジオを再現「IK Multimedia Lurssen Mastering Console」

IK Multimedia Lurssen Mastering Console

ロサンゼルスに存在するLurssen Mastering Studioのコンソールを再現した、マスタリング専用のツール。それぞれ真空管EQ、ソリッドステートEQ、リミッター、ディエッサー、ソリッドステートコンプレッサーの5種が搭載されています。実際のスタジオでは、最良の効果が得られるようにそれぞれ考え抜かれてワイヤリングされており、このプラグインでもそのままの音色が再現されているため、まさに”Mastering Console”と呼ぶにふさわしく、他の製品のようにただ5種のエフェクトを網羅しただけにとどまらないところがポイントと言えます。

20種類からの音楽のスタイルを選び分けることで最適な設定が瞬時に呼び出され、あとは音量などの微調整をするだけという、ユーザーフレンドリーな設計になっており、もちろんそれぞれを個別に調整することも可能。プリセットの多さは上記のiZotope Ozoneにも通じるものがあり、制作の初心者や時間を節約したい人にはうってつけ。値段も高くなく、コンソールが再現されたビジュアルも作業を盛り上げてくれること請け合いです。

IK Multimedia Lurssen Mastering Console – Supernice!DTM

業界定番「WAVES Grand Masters Collection」

WAVES Grand Masters Collection

オーディオプラグインの定番であるWavesのマスタリング専用バンドル。Linear Phase EQやL3 Multimaximizerなどの定番デジタルプラグインから、往年の銘機を再現したV-EQ、V-Comp、PuigTec EQsなどのアナログライクなサウンドのものまで、抱き合わせに11種が収録されています。

これ一本で必要なものが全て揃うというラインナップの充実度もさることながら、V-EQやV-Compなど、マスタリング以外に通常のミックス時にも大活躍するものが含まれており、汎用的に使えるのがなにより魅力。その反面、あくまでマスタリングに向いたプラグインの集合体であり、専用の製品ではないため、他社のバンドルのように、プリセットに合わせて一括で制御できるような機能などはありません。さらにWavesのバンドル製品は、中に含まれるプラグインが他のバンドルと被っていることが多く、すでに他のバンドルを所持している場合、購入の前には確認を要します。

WAVES Grand Masters Collection – Supernice!DTM

新時代のマスターを「NuGen Modern Mastering」

NuGen Modern Mastering

True Peakを抑えるISL2、聴感上のラウドネスを監視するMaster Check Pro、音を画像として表示できる高性能メーターのVisualizer 2の3種がセットとなったパッケージ。True Peakとは真正ピークとも言われ、デジタルからアナログ信号に変換したときに意図せず発生するピーク値のこと。これを抑えることを目的としたISL2は積極的な音作りに利用するものではないのが前提ですが、ラウドネスを稼ぐ目的で利用することも可能。Master Check ProではMP3などに変換された際のピークレベルまでも表示することができ、Visualizer 2は音をサーモグラフィーのように画像的に表示できる優れたアナライザーです。

いずれも業務用をメインとするNuGen Audioらしい製品群であり、この中では異色の存在と言って良いでしょう。配信やYouTubeなどの動画がメインとなる現在の音楽市場において、厳密なレベル管理を成し遂げるために存在する、まさに玄人向けのパッケージです。

Nugen Audio Modern Mastering Bundle – Supernice!DTM

オススメのマスタリング向けイコライザー

Fabfilter Pro-Q3

FabFilter Pro-Q3

ミックスダウン、マスタリング専用EQとして多方面から絶大な信頼を得ているFabfilterの定番EQ。近年では当たり前となったMS処理はもちろんのこと、音量によって適用量を可変させるダイナミックEQ、他のトラックを参照して同じEQを施すMatch EQ、他のトラックをアナライザーに表示する機能など、かゆいところに手が届く多機能はさすがの一言。特にPro-Q3よりさらに強化されたMS処理は、中央とサイドの音量バランスを非常に明確にかつ簡単に制御することができ、マスタリング時に心強い存在となりました。

Fabfilter Pro-Q3 – Supernice!DTM

マスタリング向けコンプレッサー

Waves PuigChild 670

waves pc
伝説的名機であるFairchild 670をモデリングしたプラグインです。ヴィンテージコンプのモデリングとはいえその出音はハイファイであり、現代のポップスやロックと相性抜群です。

全てをパソコン内で完結させるDTMはデジタルなサウンドになりがちなので、このプラグインを通すことで豊かな倍音が付加され、ウォームで聴き心地の良いサウンドに仕上がります。MS処理にも対応しており、MとSの成分を個別にコンプレッションできるのも魅力です。

PuigChild 670がバンドルされている製品
WAVES HORIZON
WAVES MERCURY

ProAudio DSP Dynamic Spectrum Mapper v2

dsm

マスタリング用途では最高クラスのマルチバンドコンプレッサーです。最大の特徴は、2mix音源の周波スペクトラムをキャプチャーし、最適なスレッショルドの形を自動的に決めてくれることにあります。

通常、マルチバンドコンプを使ってマスタリングを行う場合、低音域と中音域、高音域に超高音域と計4バンドのスレッショルドを調整していきますが、それぞれ個別に最適なパラメータ設定をするのは大変です。「高音はあまり潰さないで中音だけ潰して、低音は少しだけ…」という具合に試行錯誤することでしょう。

その手間を省いてくれるのがキャプチャー機能で、音源の再生中にCaptureというボタンを押すだけで、自動的にスレッショルドを設定してくれます。後はリリースやアタック、ゲインを調整するだけで完成です。音質も非常にナチュラルであり、コンプレッションされていることを忘れてしまうほど、自然なサウンドに仕上がります。

マキシマイザー

Waves Lシリーズ

waves l
定番のマキシマイザー

定番中の定番、Waves社が手がけるマキシマイザー、Lシリーズです。マスターにインサートしてスレッショルドを下げるだけで簡単に音圧が上がってしまう魔法のようなプラグインになります。

ゲインリダクションが多いほど堅くアタック感の強いサウンドになる傾向があり、サビでガツンと聴かせたいロックや、EDMなどエレクトロ系ミュージックとの相性が良いマキシマイザーです。16バンドで各周波帯にリミッティングでき、定番でありつつも使いこなすにはそれなりの技術が必要となります。

WAVES L316 Multimaximizer – Supernice!DTM

Fabfilter Pro L

fab
原音重視のマキシマイザーといえばこれ。相当突っ込んでも音質が破綻せず、ナチュラルなサウンドに仕上がります。音圧よりか、「聴覚上のボリュームを上げる」イメージの方が合っているでしょう。ガツンと聴かせたい音楽ジャンルよりも、バラードやジャズなど、原音を大切にしたい楽曲で使用するのがオススメ。リミッティングの様子をリアルタイムで監視できるモニターが付いているのも魅力でしょう。

FabFilter Pro-L2 – Supernice!DTM


MUSICBASE