Fenderのサウンドが充実したDAWソフト「Fender Studio Pro」の特徴

[記事公開日]2026/8/28 [最終更新日]2026/9/7
[編集者]神崎聡

Fender Studio Pro 8

「Fender Studio Pro」はWindows、macOS両対応のDAWソフトウェアです。
2009年にPreSonusからリリースされた「Studio One」がその前身にあたり、大幅な後発ながら独自の強みを持つことで多くのユーザーを獲得し、Cubaseと並んで日本で特に人気の高いDAWとして定着してきました。
2021年にPreSonusがFender傘下に入ったことを受け、2026年1月にブランドが統合され、名称が「Fender Studio Pro」へと改められています。

名前は変わったものの中身はStudio Oneの系譜をそのまま受け継いでおり、これまでに作ったソングファイルもそのまま開けます。
そのうえでFender公式のアンプ/エフェクトモデリングがDAW本体に標準搭載されたことが最大のトピックで、ギタリスト・ベーシストにとっては導入メリットが一段と大きい一本になりました。
最新版はFender Studio Pro 8.1(2026年6月リリース)です。

Studio OneからFender Studio Proへ

Studio Oneの初代バージョンは2009年、PreSonusより発売されました。
開発に当たってはかつてスタインバーグに勤めていた、ウルフガング・クンドラス、マシアス・ジュアンという二人が中心となって行われたため、Cubaseとの共通点、さらにそれをブラッシュアップしたような機能が見られることもあります。
リリース当初から評価は高かったものの、バグなども多く、2年後の2011年には程なくメジャーアップデートが行われ、バージョン2がリリースされました。
このバージョンからはピッチ補正ソフトとして有名なCelemony社のMelodyneが付随するようになり、これは本体ソフトに統合されることで、以後Studio Oneを代表する重要な機能となります。

それ以降もアップデートは頻繁に行われ、2018年にバージョン4、2020年にバージョン5、2022年にバージョン6、2024年にバージョン7をリリース。
その間の2021年にはPreSonus自体がFenderに買収され、2026年1月、バージョン8にあたる新版が「Fender Studio Pro 8」としてFenderブランドから登場しました。
アカウントもMyPreSonusからMyFenderへ引き継がれており、開発チームとソフトの中身は継続したまま、看板だけが掛け替わったかたちです。

Fender Studio Proの特徴

Studio One譲りの強みはそのまま健在です。
ここでは前身から受け継がれている基本的な性格を紹介します。

機敏な動作、高い操作性

Fender Studio Pro のメイン画面
Fender Studio Pro のメイン画面。アレンジビューとコンソール、プラグイン画面が1つのウインドウにまとまっている

初期開発の段階で64ビットデジタルを前提としてソフト制作が行われたため、動作に無駄がなく、非常に機敏に動きます。
また、インストゥルメントやエフェクトの読み込みをはじめ、多数の操作がドラッグ&ドロップのみで完結してしまうといった優秀な操作性を備え、DAWに不慣れな初心者でもとっつきやすいところは、シェアが継続して増えている一因ともなっています。
作業ウインドウは一つにまとめられ、その中でMIDIトラックの編集、コンソール画面を用いてのミックスなども含めて行えるため、画面がウインドウで埋め尽くされることがなく、目線も迷わず、スムーズな作業が可能です。
ソフトの挙動に関する部分はCubaseを制作する際のノウハウが参考にされており、初期バージョンから非常に高いパフォーマンスを発揮していました。

マスタリングまで1本で完結する

Dolby Atmos Renderer
コンソール画面と Dolby Atmos Renderer

現在でも依然として一定数のニーズがあるCD用、アルバム用マスタリング。
Studio Oneの時代から、マスタリングに特化した機能を別枠で持つ数少ないDAWソフトとして知られてきました。
マスタリングは作業を行うためのソフトを別個立ち上げ、そこに完成済みの楽曲を並べていくのが普通ですが、このやり方は作業途中で単曲の中のバランス変更を行うのが非常に煩わしくなります。
同一のソフトの中にその機能を備えることで、単曲ごとにエクスポートをやり直す作業がほぼ必要なくなります。
この機能は初期バージョンの頃から存在し、同ソフトの強みとしてよく認知されています。

作曲を支えるコード機能

アレンジビューとピッチ編集画面
アレンジビューと、下段のピッチ編集画面

Fender Studio Pro のコードセレクター
コードセレクター

オーディオファイルからのコード検出機能や、コード入力を支援するコードトラック機能などは強力な作曲支援ツールです。
専用のセレクターウインドウより選んでトラックに打ち込まれたコード進行は、メロディと合わせて楽曲のトラックと完全に連動します。
コード進行を変えると、メロディやオーディオファイルまでがそのコード進行に合わせて自動で変化し、アレンジの調整などが非常に捗ります。
バージョン8では次に置くコードの候補を提案するコードアシスタントが加わり、理論に明るくない人でも進行を組み立てやすくなりました。

Fenderアンプが標準搭載

Mustang Nativeの65 Twin Reverbと59 Bassman

Fenderブランド化にともなう最大の追加要素が、アンプシミュレーターの標準搭載です。
ギター用のMustang Nativeには39種のアンプモデルと73種のストンプボックス、200以上のプリセットが収録され、’65 Twin Reverbや’59 Bassmanといった定番機がそのまま呼び出せます。
ベース用のRumble Nativeには20機種のアンプと70種類のエフェクト、100以上のプリセットが用意されており、いずれもチューナーを内蔵しています。
DAWに付属するアンプシミュレーターとしては異例の規模で、ギターやベースを録る人にとっては、これだけでも乗り換えの動機になり得る内容です。

Fender Studio Pro 8の新機能

ブランド変更と同時に、本体側の機能もバージョン8として大きく手が入りました。

刷新されたインターフェースとオーバービュー

Fender Studio Pro 8 のアレンジメント・オーバービュー

ツールバーとトランスポートバーが整理され、Fender製品らしい落ち着いた配色のインターフェースに変わりました。
新しく追加されたオーバービューでは、アレンジメント・オーバービューは曲全体のトラック配置を画面上部に縮小表示し、長い曲でもスクロールせずに全体像を把握できます。

Fender Studio Pro 8 のチャンネル・オーバービュー

チャンネル・オーバービューは選択トラックのインサートを横一列に並べて表示するもので、複数のプラグイン画面を開かずに設定を追い込めます。
ノートPCなど画面の狭い環境で作業する人ほど恩恵が大きい追加です。

AIによる「音符を抽出」「ドラムを抽出」

オーディオイベントの右クリックメニュー「音符を抽出」「ドラムを抽出」

オーディオイベントを右クリックして選ぶだけで、機械学習によりオーディオをMIDIノートへ変換する機能です。
単音のフレーズだけでなく和音を含む演奏にも対応する「音符を抽出」と、生ドラムのループを打ち込みデータに置き換える「ドラムを抽出」の2種類が用意されています。
録っておいたギターのリフからコード進行を起こしたり、気に入ったドラムループを自分の音源で鳴らし直したりといった使い方ができ、アイデアを転がす段階で強力に働きます。

その他の追加・強化点

音源側ではSample OneとImpactが強化され、リバーブには新アルゴリズムのStudio Verbが追加されました。
リズム練習の助けになる70種類以上のパターンを備えたドラムメトロノームも搭載され、細かなところではブラウザまわりの作業性も改善されています。

Fender Studio Pro のスコアエディタ

スコアエディタも引き続き搭載されており、五線譜はもちろんドラム譜やTAB譜での表示・入力にも対応します。

バージョン8.1で加わったもの

2026年6月には最初の大型アップデートとなる8.1が公開され、AI関連の機能が一気に増えました。

Studio Assistant

Fender Studio Pro 8.1 の Studio Assistant パネル

DAWの中で操作方法を質問できるアシスタント機能です。
「ピッチカーブでボーカルトラックのピッチ編集をする方法は?」といった質問に対し、必要な手順を順を追って提示してくれます。
マニュアルやチュートリアルを別ウインドウで開かずに済みます。

Moises Studioとの統合

Fender Studio Pro 8.1 に統合された Moises のステム分離・ステム生成・ボイス変換

音源分離サービスのMoises StudioがDAW内に統合され、ブラウザとDAWを行き来せずに処理を完結できるようになりました。
既存の音源からボーカル・ドラム・ベース・ギターといったパートを取り出すステム分離、録音済みのトラックを元に伴奏パートを生成するステム生成、そして声質を変換するボイス変換の3つが利用できます。
8.1ユーザーには追加費用なしで、月あたりステム分離10回・ステム生成120回・ボイス変換5回までの利用枠が付属します。
ただし利用にはMoisesのアカウント登録が必要で、連携用のプラグインは拡張インストーラーとして別途導入するかたちになります。

Vocal TuneとPitch Curve

Fender Studio Pro 8.1 の Vocal Tune プラグイン

ネイティブのピッチ補正プラグイン「Vocal Tune」が加わりました。
自然に整える方向から、フォルマントシフトを併用した積極的な音色加工まで対応します。
あわせてオーディオイベント上にピッチカーブを直接描き込める機能も追加され、ベンドの作り込みや細かな補正をオートメーション感覚で扱えるようになっています。

エディションと無料版

現在の製品構成は、永続ライセンスのFender Studio Proと、サブスクリプションのFender Studio Pro+の2本立てです。
これに加えて、機能を絞った無料アプリ「Fender Studio」が別途配布されています。
かつて存在した廉価グレードのStudio One Artistと無料版のStudio One Primeは、Studio One 7の時点で提供が終了しており、現在はPro系に一本化されています。
旧バージョンのArtistライセンスはアップグレードの対象として扱われます。

項目 Fender Studio Pro Fender Studio Pro+ Fender Studio(無料)
提供形態 永続ライセンス(1年間の新機能アップデート付き) 月額/年額のサブスクリプション。年額(12ヶ月メンバーシップ)は期間終了後に永続ライセンスが残る 無料アプリ
オーディオトラック数 無制限 無制限 8トラック(無料アカウント登録で16トラック)
MIDI・ソフト音源 対応 対応 非対応(オーディオ専用)
サードパーティ製プラグイン VST3/AU に対応 VST3/AU に対応 非対応
Fenderアンプ Mustang Native/Rumble Native Mustang Native/Rumble Native ’65 Twin Reverb、Rumble 800 など少数のアンプとペダル
Studio Assistant 公開ベータとして利用可
対応OS Windows/macOS Windows/macOS Windows/macOS/Linux/iOS/Android

Fender Studio Pro

買い切りの永続ライセンスで、購入から1年間は新機能アップデートも受け取れます。
他社DAWからの乗り換えに向けたクロスグレード版、学生・教職員向けのアカデミック版も用意されており、旧Studio One(Pro 1.x〜7.x、Artist 1.x〜6.x など)のライセンスを持っている場合はアップグレード版が使えます。
本格的に音楽制作へ取り組むなら基本的にこちらを選ぶことになります。

Fender Studio Pro+

月額または年額で使うサブスクリプション。
契約期間中は最新版が常に使えるうえ、Studio Assistantのように先行して開放される機能もあります。
年額の12ヶ月メンバーシップは期間を終えた時点で永続ライセンスが手元に残る仕組みですが、月額のメンバーシップには永続ライセンスが付かない点には注意が必要です。
初期費用を抑えて始めたい場合や、最新機能を早く試したい場合に向いた選択肢です。

無料アプリ「Fender Studio」

スマートフォンで動作する無料アプリ Fender Studio

Fender Studio Proとは別に、無料の録音アプリ「Fender Studio」が配布されています。
Windows・macOS・Linuxに加えてiOS・Androidでも動作し、8トラック(無料のFenderアカウントを登録すると16トラック)のオーディオ録音、’65 Twin ReverbやRumble 800といったアンプ、数種類のペダル、チューナーが使えます。
MIDIやソフト音源、サードパーティ製プラグインには対応しないオーディオ専用の設計で、あくまで思いついたフレーズを手早く録るためのアプリという位置づけです。
なおアプリ内課金の「Complete Fender Amps & FX」を購入すると32トラックまで拡張され、MustangとRumbleのアンプが全て開放されます。
無料アプリで書き留めたアイデアをFender Studio Proで作り込む、という流れがFender側の想定する使い方になっています。

付属プラグイン、インストゥルメント

Fender Studio Pro 8 に付属するインストゥルメント

Fender Studio Proに付属する代表的なプラグインを紹介します。

Pro EQ3

標準的なEQの使用法からダイナミックEQに至るまで、多彩な機能を持つ万能イコライザー。
視認性の良いアナライザーが画面全体に広がり、操作性も良好です。
DAW付属のEQとしてはかなりレベルの高いものになっており、使い込むことによってイコライザーを隅々まで理解できるでしょう。

Open AIR

コンボリューションリバーブ。
得られる音の幅が非常に広く、通常のホールから、バーチャルで非現実的な空間まで様々な質感の残響を得られます。
その分、操作は難しく設定も難しいですが、プリセットも充実しており、これ一つでリバーブはかなりの部分をカバーできるはずです。
IRリバーブの特徴として、必要なマシンパワーが多いのは注意。
なおバージョン8では、より軽快に扱える新アルゴリズムのStudio Verbも加わっています。

Melodyne essential

本体に統合されたボーカルトラックの編集機能。
Studio Oneのバージョン2から連携しており、ARA経由で本体の機能の中にシームレスに溶け込み、簡便な操作で編集できるようになっています。
さすがに業界標準のソフトだけあって、音質、編集機能は屈指のレベルに達しており、この機能だけでも導入する価値があるほどです。
8.1で追加されたVocal Tuneが手早い補正を担うのに対し、こちらは1音単位で追い込む用途に向きます。
またバージョン8.0.1では、同じくCelemony製のTonalic essentialのライセンスも付属するようになりました。

Presence

ピアノ、ギター、ドラムからサックス、バイオリンや民族楽器まであらゆる音色が出せる総合サンプラー音源(旧Presence XT)。
ライブラリは15GBを超え、LogicのEXSやKontaktなど他社製のライブラリをインポートできるという機能を持っています。
多数の楽器を一手に引き受ける、付属音源の中でも最大級に活躍する存在です。

Impact

純正のドラム用サンプラー(旧Impact XT)。
初期の頃から付属しているものの、バージョンを追うごとにサンプラーとしての機能が見違えるほど充実し、現在では音色ごとにかなり手の込んだ編集、加工ができるようになり、優秀なサンプラーとして定着しています。
ハードウェアも展開する会社だけあり、外部のMIDIコントローラーとの連携もスムーズで、多様な用途で活躍します。
バージョン8ではサンプラー系の機能がさらに強化され、種類を問わず総合ドラム音源として扱えます。

Sample One/MaiTai/Mojito

Sample Oneは録音した音をその場でサンプリングして鍵盤に割り当てられるサンプラー、MaiTaiはアナログモデリングのポリフォニックシンセ、Mojitoはベースに強いモノフォニックシンセです。
凝った音作りは専用のソフトシンセに譲るとしても、シンセベースやパッド、効果音程度であればこの3つで十分に賄えます。

動作環境

項目 macOS Windows
OS macOS 13以降(64bit) Windows 10 22H2 または Windows 11 22H2以降(64bit)
CPU Intel Core i3 または Apple Silicon(M1以降) Intel Core i3、AMD A10、Snapdragon X 以上
メモリ 8GB以上(16GB以上推奨)
ストレージ 40GB以上の空き容量
ディスプレイ 1280×768以上(高DPI推奨)
プラグイン形式 64bit の VST3/AU(32bitは非対応) 64bit の VST3(32bitは非対応)
インターネット インストールとアクティベーションに必要(永続ライセンスはオフライン認証も可)

このほかLinux版とWindows on Arm版も存在しますが、いずれもサードパーティ開発者向けの公開ベータという位置づけで、テクニカルサポートの対象外とされています。

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