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1996年にドイツ・ベルリンで活動を開始したNative Instrumentsの代表的なバンドル製品であるKOMPLETE。同社の誇る膨大な数の音源やエフェクトプラグインをセットにしたこの製品は、アマチュア、プロフェッショナルを問わず、DAWでの製作におけるスタンダードとして広く認知されています。
業界標準のサンプラーKONTAKTと、それに対応する生楽器のサンプリング音源、Massive XやAbsynthなどのシンセサイザー、ドラム用サンプラーのBatteryなど、定番として認知される製品を多数含み、特に編集よりも創作に力を発揮するバンドルです。
2026年5月にリリースされた最新版KOMPLETE 26では、命名規則がこれまでの通し番号(〜KOMPLETE 15)から西暦下2桁ベースに変更され、収録製品は190以上の楽器・エフェクト、180,000以上のサウンドに拡充されました。
さらに同月8日には、Native Instruments自体がAkai ProfessionalやMoog Music、Denon DJ等を擁するinMusic Brandsと買収合意(definitive agreement)を締結したことが発表され、数週間内のクロージングを経て新体制へ移行する見通しとなっています。

鍵盤、弦楽器、管楽器、シンセ、民族楽器に至るまで、いかなるジャンルでも、とりあえずこれがあれば何とかなるというほど、豊富な種類と使えるクオリティを備えており、作編曲の場面において強い味方となってくれます。
シンセサイザーも、一時期EDM系の音楽において誰もが使用したMassive、その後継となるMassive X、無限の柔軟性を備え自分でサウンドを構築できるReaktor、広がりのあるパッド系サウンドの名機Absynth 6など、多彩な顔ぶれが揃います。
リズムの構築には、KONTAKT音源に付随するドラム音源が優秀な上、ドラム用サンプラーのBatteryなど、十分な素材とツールが揃っています。
エフェクトプラグインについては、ダイナミクス系の定番Solid Bus Compや、アタックとリリースを直感的に制御できるTransient Masterに加え、KOMPLETE 26からはiZotopeのOzone 12 Elements・Nectar 4 Elements、BrainworxのコンソールEQ・サチュレーションプラグインなど、ミックス/マスタリング系の強力な布陣が一気に追加され、これまで「素材は揃うがミックスは別ブランド頼り」と評されたバンドルの弱点を補強する形になっています。
以上のように、ジャンルを一切問わず、ほぼ全ての音楽が作れるようにセットされており、これ一つで作編曲からミックスまでの素材は全て揃うと言って過言ではありません。
2026年5月時点での最新バージョンKOMPLETE 26は、4つのグレードで提供されています。
バンドル全体としては190以上の楽器・エフェクト、180,000以上のサウンドを収録し、上位グレードほど収録製品とエクスパンションが豊富になります。
| グレード | 位置づけ | 主な収録 |
|---|---|---|
| SELECT | 入門 | Beats / Band / Electronicの3エディションで提供。各ジャンルに必要な厳選楽器・エフェクトを収録 |
| STANDARD | 標準 | KONTAKT 8、Massive X、Battery 4、Guitar Rig 7 Pro、Reaktor 6、Session Guitarist/Stringsシリーズなどの主要音源を網羅 |
| ULTIMATE | 上位 | STANDARDの全製品に加え、Symphony Series、Cremona Quartet、Damage 2、Abbey Road Drummer Collection等のシネマティック/オーケストラ音源を多数追加 |
| COLLECTOR’S EDITION | 最上位 | Native Instrumentsが提供するほぼ全てのエクスパンションと専用音源を含む、最大ボリューム構成 |
KOMPLETE 26のラインナップ
膨大な数に上る収録製品の中から、KOMPLETEの中核をなす定番音源・プラグインと、KOMPLETE 26で新たに追加された注目製品を紹介します。
KONTAKTはKOMPLETEの中核をなすサンプラーで、メモリー管理や編集のし易さ、動作の軽さ、サウンドデザインの明快さなど、多数の優れた点によって、世界中で使われています。
KOMPLETEに収録される音源の多くがKONTAKTの枠組みの中で動作し、NI純正のもののみならず、世界中のブランドから膨大なKONTAKT用の音源が生み出されており、現在ではデファクトスタンダードとしての地位を不動のものにしています。
製品版のKONTAKTに初期収録されている「Factory Library」は、オーケストラ、ロック、民族楽器に至るまで、世界中のあらゆる楽器のサンプルを収録したパッケージで、ベーシックな存在ながら非常に高いクオリティを持っています。
この付属音源のクオリティにおいてKONTAKTはスタンダードとなり得ていると言っても過言ではありません。
また動作が軽いのも魅力です。
KOMPLETEにはさらに個別の楽器に特化した音源が多数付属しており、その中でも代表的なものを下に抜き出して解説しています。
実際の演奏を忠実に再現したギター用拡張音源シリーズ。
実際のリフ、ストローク、アルペジオなどを簡単に曲中に呼び出すことができ、エレキギター用のものではメロディプレイまでも対応可能。エレキギター用とアコースティックギター用のものをあわせて複数収録されており、ジャンルやサウンドに合わせて使い分けることができます。
ポップスやR&B系に最適なストリングスアンサンブルを収録した音源。
トレモロやグリッサンドなど奏法に応じて別々に音源が収録されており、うまく打ち込むことで、生楽器さながらの表現力が得られます。他の音源と同じく、自動アルペジエーター機能”Animator”では、刻んだリズムなどを表現力豊かにワンタッチで発動可能。
Ultimate以上に付属するProは、より大編成での使用が可能で、ストリングスセクションのみならず、各楽器の個別音源まで収録されています。

KOMPLETE 26で新たに追加された希少なグランドピアノを収録したサンプル音源。
緻密にサンプリングされた響きと、独自の表現力豊かなプリセットが特徴で、よりアーティスティックな演奏に踏み込んだ「Claire: Avant」も併せて収録され、クラシックからモダンな楽曲制作まで幅広く対応します。
アビーロードスタジオで録音されたドラム音源シリーズ。
50s/60s/70s/80s/Vintage/Modernの全6エディションが揃い、各時代特有のサウンドキャラクターを再現します。当時の太く鈍いサウンドからモダンなハイファイまで、楽曲のジャンルや時代設定に合わせて選択でき、ULTIMATE以上のグレードで全シリーズが利用可能です。
ベーシスト、プロデューサーのThomas Hansen Skarbyeによって作成されたベース音源。
Chicの伝説的ベーシストBernard Edwardsのサウンドをモチーフとしており、Chicのようなダンサブルなジャンルにはもちろん、その他のジャンルにも幅広く適応できるサウンドを持っています。
弦ごとのサウンドの違いや各種奏法に至るまで緻密にサンプリングされ、正確に打ち込むことで本物さながらのグルーブが得られるでしょう。

KOMPLETE 26で新たに収録された、ロンドンを拠点とする現代音楽アンサンブル「London Contemporary Orchestra」によるストリングス音源。映画音楽でも頻繁に起用される彼らの演奏を、プロデューサー視点で扱いやすい形にパッケージしています。
今や伝説となっているMassiveシンセの後継バージョンで、2019年に登場しました。2種のオシレーターは波形を加工する機能を備え、前バージョン同様個性的なモードを備えています。
作り上げた波形のサウンドをベースに、フィルター、エフェクトなどを含めた、柔軟なルーティングによるサウンドの構築が可能で、このルーティングの自由度が今バージョンを象徴する機能となっています。
音色はかなり派手で、良い意味で現代風に仕立て上げられたサウンドです。
2025年から2026年にかけてのアップデート(v1.6〜v1.7)でMorpherやAnimatorといったモジュレーション機能が拡充され、無料のPlayer版もリリースされるなど、ユーザー層の拡大が進んでいます。
初代Massiveも引き続きKOMPLETEに収録されており、過去のプリセットや音作りのワークフローも継続して活用できます。
KOMPLETEを代表するシンセ。それだけで音を発するというよりは、シンセのエンジン部分そのものといった方が良く、様々な部品を繋いでいくことで自分だけのシンセが作れるという、およそ他に見られないソフトウェアです。
できることの幅が劇的に広い分、実際に使いこなすのは相応に難しく、Reaktorの使い方についての指南がネット上で多数アップされているほどですが、ver6よりグラフィカルな編集に特化したReaktor Blocksが同梱され、そのハードルは下がりました。
たとえ自分でゼロから作るというところに触れずとも、プリセットのサウンドだけでも十分に魅力的なものが揃っており、またKOMPLETEに含まれるMONARKやROUNDSなど、他のシンセにはこのReaktor上でそのエンジンをベースに動かすものがいくつかあるため、そのために起動する機会は十分あるでしょう。

広大なサウンドスケープ、包み込むようなパッドやダイナミックなサウンドを得意とするシンセサイザー。
Absynth 6では合成エンジンが根本から再設計され、グラニュラーやウェーブテーブル、FM等を組み合わせたハイブリッド構造により、オリジナルな音色を作るためのツールとしての強力さがさらに磨かれました。
Absynthは2022年9月に「End of Sale(販売終了)」がアナウンスされて一度KOMPLETEから外れたものの、KOMPLETE 26のリリースに合わせてオリジナル開発者Brian Clevingerによる新バージョンAbsynth 6として復活。長年Absynth 5を愛用してきたユーザーにとっても、新たに触れるユーザーにとっても注目の一作です。
KOMPLETEを代表する打楽器用サンプラー。
ドラムサンプラーとして世界的に定番の地位にあり、付属するキットライブラリ、波形を自在に編集できる分かりやすいエディター、EQ、コンプ、リバーブなどの高品位な内蔵エフェクトをも装備し、様々なドラムキットによる洗練されたビートを作成可能です。
特にアナログシンセばりの自由で高品位な編集能力、付属されるサンプルのクオリティは非常に高く、それだけであらゆるリズムを構築できる幅広さを備えています。
また、NI純正のエクスパンションや、他社からリリースされているキットを導入することで、さらなる拡張が可能です。
エレキギター用のアンプシミュレーター。アンプのみならず、ギター用エフェクターやキャビネットのシミュレートも搭載し、エレキギターの音色が一手に賄えます。
ギターのみならずベースアンプのモデリングも含み、さらにオルガンやドラムなど、別の楽器に使用することで、通常のディストーションエフェクトでは得られない存在感のある音色を獲得できます。
最新版のGuitar Rig 7 Proでは、新たに開発されたICM(Intelligent Circuit Modeling)テクノロジーが導入され、26種のアンプと115種のストンプボックス/エフェクトを搭載。
回路レベルでアンプの挙動を再現することで、より実機に近いダイナミクスとフィーリングが得られるようになりました。

KOMPLETE 26では、これまでのNI純正エフェクトに加え、iZotope・Brainworx・Plugin Allianceの定評あるミキシング/マスタリングプラグインが多数追加され、ミックス工程までKOMPLETE一本でカバーできる構成になりました。
KOMPLETEの初期から標準搭載されている、NIの定番コンプレッサー。
Solid State Logic社のコンプをモチーフとしたモデルで、複数のトラックをまとめたバストラックに掛けるのが主な役割。色付けの少ないナチュラルな掛かり方が持ち味で、複数のトラックのまとめ役として機能します。
ミックスの最終段階や、もちろん単独トラックに掛けるのもありで、Dry/Wetコントロールにより、一台でパラレルコンプが掛けられるところは、地味でありながら非常に有用な点です。
打楽器の音の減衰の部分をワンタッチで制御できる、便利なダイナミクスエフェクト。アタックとリリースしかないという非常に簡便なコントロールとなっており、これだけで自在に減衰の長さが操れます。
普通はコンプレッサーで煩雑な手順を踏まなければならないのが、ワンタッチで調整できるのは非常に便利。リバーブの音の減衰を整えたりするのにも使用可能です。
Ground、Airy、Cosmicという3種のモードを備えた高品位なリバーブ。
Ground、Airyでは通常のルームやホールの音色に近いサウンドが得られ、Cosmicでは昨今流行している非現実な空間の響きを生み出すことができます。
高品位リバーブにありがちな各パラメータの難解さがなく、コントロールの数も少なめで、初心者でも使いやすいエフェクトになっています。
KOMPLETE 26で新たに加わった、iZotopeの定番マスタリング/ボーカル処理プラグインの入門エディション。
マスタリングの自動化アシスタントを備えるOzoneと、ボーカルEQ/コンプ/サチュレーションを統合的に扱えるNectarが、KOMPLETEの一部として利用可能になったことで、最終ミックス工程の品質が大きく底上げされます。
名門コンソールやサチュレーション/グリューコンプを忠実にモデリングしたプラグイン群。
KOMPLETE 26で追加されたこれらは、ハードウェアの質感をDAW内で再現するのに大きく貢献し、全体のミックスに統一感のある「奥行き」を持たせてくれます。
KOMPLETE 26で新たに追加された、ボーカルサンプルをベースにした幻想的なサウンドスケープ音源。
神秘的な質感を簡単に呼び出すことができ、シネマティックトラックやアンビエント、エレクトロニカ系の楽曲制作で重宝します。
Boom-Bap系のヒップホップサウンドを意識したドラム音源。
クラシックなブレイクビーツの質感を再現しながら、現代的な制作環境で扱いやすい形にまとめられています。

エレクトリックピアノ、クラビネット、オルガン系など、定番の電子鍵盤楽器を網羅したコレクション。
R&B、ソウル、ファンク、ジャズフュージョン系のトラック制作で中心的に使える、表現力豊かなライブラリです。
KOMPLETE 26で新たに収録された、楽曲制作の出発点として活用できる作曲ツールキット。
テーマやムードに沿ってあらかじめ組み合わされた音色・パターンが用意され、ゼロからの作曲に悩むときの突破口として機能します。
上記の楽器・シンセ・エフェクトに加え、KOMPLETEには多彩なエクスパンションが収録されます。
エクスパンションはジャンルごとにまとめられた拡張音源のセットで、それぞれ各ジャンルの最新のサウンドがフィーチュアされています。
内訳は、単独でのドラムループやサンプル、Batteryで使用可能なキット、そしてNIのハードウェアサンプラーMASCHINEで使えるキットとパターン、エフェクトなどから成り立つセット。
これらのエクスパンションは、スペーシーなもの、アンダーグラウンド系、エレクトリックR&B、テクノ、フューチャーソウル、モダンポップ系など、多彩なジャンルに及んでおり、クリエイターの創作意欲を掻き立て、優れたトラックを生み出すのに十分な量です。
グレードが上がるほど収録されるエクスパンションの数も増え、COLLECTOR’S EDITIONでは現在NIが提供するほぼ全てのエクスパンションを利用できます。
音楽クリエイターならば真っ先に揃えたいKOMPLETE。
音源やビートの素材としての量と質に加え、KOMPLETE 26ではミックスまでカバーできる構成へと進化し、右に出るものはない充実度を誇ります。
安くはない製品ですが、その価格を十分に補って余りある存在で、きっと誰もが払った金額以上の満足度が得られるでしょう。
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