《作編曲のための素材が全て揃うバンドル》Native Instruments Komplete 13[記事公開日]2020年12月3日
[最終更新日]2022年03月31日

Native Instruments Komplete 13

1996年、ドイツのベルリンで設立されたNative Instrumentsの代表的なバンドル製品であるKomplete。同社の誇る膨大な数の音源やエフェクトプラグインをセットにしたこの製品は、アマチュア、プロフェッショナルを問わず、DAWでの製作におけるスタンダードとして広く認知されています。業界標準のサンプラーKONTAKTと、それに対応する生楽器のサンプリング音源、MassiveやAbsynthなどのシンセサイザー、ドラム用サンプラーのBatteryなど、定番として認知される製品を数種類以上も含み、特に編集よりも創作に力を発揮するバンドルです。

Kompleteでどんなことができるの?

再生用サンプラーKONTAKTとそれに付随する音源の数々はKompleteの中心を担っています。鍵盤、弦楽器、管楽器、シンセ、民族楽器に至るまで、いかなるジャンルでも、とりあえずこれがあれば何とかなるというほど、豊富な種類と使えるクオリティを備えており、作編曲の場面において強い味方となってくれます。さらに、一時期はEDM系の音楽において誰もが使用したMassive、無限の柔軟性を備え、自分でサウンドを構築できるReaktor、広がりのあるパッド系サウンドに特に強みを発揮するAbsynthなど、シンセサイザーも14種類(スタンダード版)収録。リズムの構築には、元よりKONTAKT音源に付随するドラム音源が優秀な上、ドラム用サンプラーのBattery、アコースティックとエレクトリックを融合させるDrumlabなど、十分な素材とツールが揃っています。

エフェクトプラグインについては、ダイナミクス系のSolid Bus Compや、アタックとリリースを直感的に制御できるTransient Masterなど、かゆいところに手が届くものが含まれます。

以上のように、ジャンルを一切問わず、ほぼ全ての音楽が作れるようにセットされており、これ一つで作編曲のための素材は全て揃うと言って過言ではありません。唯一、エフェクトプラグインについては網羅しているとまでは言えず、実際の制作では素材やツールをKompleteに頼り、エフェクトはWavesなど、他社のものをメインに使用するというケースが多いようです。数々の音源、シンセ、サンプラーなどがKompleteの真骨頂と言って良いでしょう。

グレードの違い

KOMPLETE13:4つのグレード

2020年11月時点での最新バージョンであるKOMPLETE13における各グレードを見てみましょう。

インストゥルメント エフェクト エクスパンション
(拡張音源)
主なインストゥルメント
SELECT 12 4 5 Massive、The Gentleman、Vintage Organs、Drum Lab、West Africa
STANDARD 52 16 24 Massive X、Super 8 、Absynth 5、Reaktor 6、Session Guitarist、Session Strings 2、Battery 4
ULTIMATE 92 26 39 21種のオーケストラ音源Cinematic Instruments、Session Strings 2 Pro、Alicia Key’s、Damage、Abbey Road Drummer全シリーズ
ULTIMATE
Collector’s Edition
96 26 73 Native Instrumentsの提供するほぼ全ての音源

KOMPLETE13のラインナップ

代表的な内容製品について

膨大な数に上る収録製品の中の一部を紹介。バージョンナンバーは2020年12月現在の最新版Komplete 13に収録されたものに基づきます。

KONTAKT 6

KONTAKTはKompleteの中核をなすサンプラーで、メモリー管理や編集のし易さ、動作の軽さ、サウンドデザインの明快さなど、多数の優れた点によって、世界中で使われています。Kompleteに収録される音源の全てがKONTAKTの枠組みの中で動作し、NI純正のもののみならず、世界中のブランドから膨大なKONTAKT用の音源が生み出されており、現在ではデファクトスタンダードとしての地位を不動のものにしています。

製品版のKONTAKTに初期収録されている「Factory Library」は、オーケストラ、ロック、民族楽器に至るまで、世界中のあらゆる楽器のサンプルが43GB以上も収録されたパッケージで、ベーシックな存在ながら非常に高いクオリティを持っています。KONTAKT 6からはそれに加えてAnalog Dreams、Ethereal Earth、Hybrid Keysの3種のシンセが追加収録されました。Kompleteにはさらに個別の楽器に特化した30種もの音源が別途に付随しており、その中でも代表的なものを下に抜き出して解説しています。

KONTAKTの音源には、楽器毎にその楽器特有の表現を生かした自動アルペジエーター機能が備わっているものが多く、始めからキーボードの特定の音にそのバリエーションが適用されていたり、Animatorという機能によって使えたりします。

Session Guitarist

実際の演奏を忠実に再現したギター用拡張音源シリーズ。実際のリフ、ストローク、アルペジオなどを簡単に曲中に呼び出すことができ、エレキギター用のものではメロディプレイまでも対応可能。エレキギター用のものと、アコースティックギター用のものをあわせて複数収録されており、ジャンルやサウンドに合わせて使い分けることができます。

Session Strings 2

11人編成のストリングスアンサンブルを収録した音源。ポップスやR&B系に最適な音色のものが収録されています。トレモロやグリッサンドなど奏法に応じて別々に音源が収録されており、うまく打ち込むことで、生楽器さながらの表現力が得られます。他の音源と同じく、自動アルペジエーター機能”Animator”では、刻んだリズムなどを表現力豊かにワンタッチで発動可能。Ultimate以上に付属するProは、11人編成の倍の22人のものまで使用可能で、ストリングスセクションのみならず、各楽器の個別の音源まで収録されています。

The Giant

Kompleteのスタンダード版以上に含まれるアップライトピアノのサンプル音源。通常のピアノ音源としても優秀なサウンドを持ちますが、ピアノのサウンドから外れたノイズの創出や、劇的な空間に響かせるSpace成分など、純粋なピアノ以上のサウンドを構築できるのが強み。インパルスレスポンスを使用したコンボリューションリバーブの空間創出能力には素晴らしいものがあります。

West Africa Percussion

下位バージョンのKomplete Selectにも収録されるアフリカンパーカッションの音源。26のパーカッションが収録され、それを複数使用してのアンサンブルや単一のソロ楽器として使用可能。いずれについてもリズムパターンが多数収録され、特に複数のパーカッションが入り乱れる複雑なポリリズムパターンは、KONTAKTの内部でシーケンサー的に細かく編集することも可能です。

Abbey Road 60s Drummer

アビーロードスタジオにおける60年代のドラムを再現した音源。現代のハイファイな音色とはまた違った、当時の太く鈍いサウンドは独特の存在感があり、特定のジャンルにおいて活躍を見せてくれるでしょう。Abbey Roadシリーズはこの他に50s、Vintage、70s、80s、Modernのラインナップがあり、Ultimate版以上には全て収録されます。

Scarbee MM-Bass

ベーシスト、プロデューサーのThomas Hansen Skarbyeによって作成されたベース音源。Chicの伝説的ベーシストBernerd Edwardsのサウンドをモチーフとしており、Chicのようなダンサブルなジャンルにはもちろん、その他のジャンルにも幅広く適応できるサウンドを持っています。弦ごとのサウンドの違いや各種奏法に至るまで緻密にサンプリングされ、正確に打ち込むことで本物さながらのグルーブが得られるでしょう。

Factory Library

製品版KONTAKTに初期収録される音源。初期収録とは言え、全ての楽器においてとてつもないクオリティを持っており、この付属音源のクオリティにおいてKONTAKTはスタンダードとなり得ていると言っても過言ではありません。Kompleteには上に並べたような、各楽器に特化した音源も収録されていますが、そこに存在しない楽器はもちろん、他の楽器との兼ね合いによってはこのFactory Library内部のものの方が良い結果が出ることもあります。また動作が軽いのも魅力です。

Massive X

今や伝説となっているMassiveシンセの後継バージョンで、2019年に登場しました。2種のオシレーターは波形を加工する機能を備え、前バージョン同様個性的なモードを備えています。作り上げた波形のサウンドをベースに、フィルター、エフェクトなどを含めた、柔軟なルーティングによるサウンドの構築が可能で、このルーティングの自由度が今バージョンを象徴する機能となっています。音色はかなり派手で、良い意味で現代風に仕立て上げられたサウンドです。

Reaktor 6

Kompleteを代表するシンセ。それだけで音を発するというよりは、シンセのエンジン部分そのものといった方が良く、様々な部品を繋いでいくことで自分だけのシンセが作れるという、およそ他に見られないソフトウェアです。できることの幅が劇的に広い分、実際に使いこなすのは相応に難しく、Reaktorの使い方についての指南がネット上で多数アップされているほどですが、ver6よりグラフィカルな編集に特化したReaktor Blocksが同梱され、そのハードルは下がりました。たとえ自分でゼロから作るというところに触れずとも、プリセットのサウンドだけでも十分に魅力的なものが揃っており、またKompleteに含まれるMONARKやROUNDSなど、他のシンセにはこのReaktor上でそのエンジンをベースに動かすものがいくつかあるため、そのために起動する機会は十分あるでしょう。

Absynth 5

広大なサウンドスケープ、包み込むようなパッドやダイナミックなサウンドを得意とするセミモジュラーシンセサイザー。ウェーブモーフィングにより波形を自分で編集でき、高品位で強力なエフェクト、独創的なフィルターなど、オリジナルな音色を作るためのツールとしても強力な存在ですが、プリセットだけでなんと1800も存在し、そこから選ぶだけでもかなりのシチュエーションに対応できるでしょう。

Battery 4

Kompleteを代表する打楽器用サンプラー。ドラムサンプラーとして世界的に定番の地位にあり、付属する143キットからなるライブラリ、波形を自在に編集できる分かりやすいエディター、EQ、コンプ、リバーブなどの高品位な内臓エフェクトをも装備し、様々なドラムキットによる洗練されたビートを作成可能です。特にアナログシンセばりの自由で高品位な編集能力、付属されるサンプルのクオリティは非常に高く、それだけであらゆるリズムを構築できる幅広さを備えています。また、NI純正のエクスパンションや、他社からリリースされているキットを導入することで、さらなる拡張が可能です。

Guitar Rig 6

エレキギター用のアンプシミュレーター。アンプのみならず、ギター用エフェクターやキャビネットのシミュレートも搭載し、エレキギターの音色が一手に賄えます。ギターのみならずベースアンプのモデリングも含み、さらにオルガンやドラムなど、別の楽器に使用することで、通常のディストーションエフェクトでは得られない存在感のある音色を獲得できます。

エフェクトプラグイン

Solid Bus Comp

Kompleteのかなり前のバージョンから標準搭載されている、NIの定番コンプレッサー。Solid State Logic社のコンプをモチーフとしたモデルで、複数のトラックをまとめたバストラックに掛けるのが主な役割。色付けの少ないナチュラルな掛かり方が持ち味で、複数のトラックのまとめ役として機能します。ミックスの最終段階や、もちろん単独トラックに掛けるのもありで、Dry/Wetコントロールにより、一台でパラレルコンプが掛けられるところは、地味でありながら非常に有用な点です。

Transient Master

打楽器の音の減衰の部分をワンタッチで制御できる、便利なダイナミクスエフェクト。アタックとリリースしかないという非常に簡便なコントロールとなっており、これだけで自在に減衰の長さが操れます。普通はコンプレッサーで煩雑な手順を踏まなければならないのが、ワンタッチで調整できるのは非常に便利。リバーブの音の減衰を整えたりするのにも使用可能です。

RAUM

Ground、Airy、Cosmicという3種のモードを備えた高品位なリバーブ。Ground、Airyでは通常のルームやホールの音色に近いサウンドが得られ、Cosmicでは昨今流行している非現実な空間の響きを生み出すことができます。高品位リバーブにありがちな各パラメータの難解さがなく、コントロールの数も少なめで、初心者でも使いやすいエフェクトになっています。

エクスパンション

上記のシンセや音源、エフェクトの他にエクスパンションが24種収録されます。エクスパンションはジャンルごとにまとめられた、数百にも及ぶ拡張音源のセットで、それぞれ各ジャンルの最新のサウンドがフィーチュアされています。内訳は、単独でのドラムループやサンプル数百、Batteryで使用可能な数十のキット、そしてNIのハードウェアサンプラーMASCHINEで使えるキットとパターン、エフェクトなどから成り立つセットが17種。そしてMassive Xのプリセット150が一つのパッケージになったものが7種。これらのエクスパンションは、スペーシーなもの、アンダーグラウンド系、エレクトリックR&B、テクノ、フューチャーソウル、モダンポップ系など、多彩なジャンルに及んでおり、クリエイターの創作意欲を掻き立て、優れたトラックを生み出すのに十分な量です。


音楽クリエイターならば真っ先に揃えたいKomplete。音源やビートの素材としての量と質から言っても、右に出るものはない充実度を誇ります。安くはない製品ですが、その価格を十分に補って余りある存在で、きっと誰もが払った金額以上の満足度が得られるでしょう。