オーケストラ音源の選び方とおすすめソフト[記事公開日]2021年7月1日
[最終更新日]2021年07月2日

オーケストラ音源

オーケストラ音源は、弦楽器や管楽器、打楽器など、ストリングスを中心にオーケストラに必要なパートを一通り収録したトータル音源です。本格的なフルオーケストラの音源制作から映画音楽、ゲーム音楽、ジャズやロックといった音楽での用途まで、幅広い制作場面で使用することができます。収録されているサウンドの一つ一つが生々しく、音響や鳴りにもこだわっているため、うまく音を作り込めば本物のオーケストラ隊と謙遜のない仕上がりになるでしょう。

オーケストラ音源自体の歴史は古く、当時は非常に高価なソフトウェアだったためユーザーの殆どがプロフェッショナルでした。しかし今日では各社から様々なオーケストラ音源が販売されており、最近はDAWソフトに標準で付属されているものもあるなど、導入の敷居はどんどん下がっています。

オーケストラ音源の選び方

オーケストラ音源は、ソフトによって収録パートは異なるものの、基本的には以下の楽器で構成されています。

  • 弦楽器:バイオリン/チェロ/ビオラ/コントラバス
  • 木管楽器:フルート/オーボエ/クラリネット/ファゴット
  • 金管楽器:トランペット/トロンボーン/ホルン/チューバ
  • 打楽器:ティンパニ/シンバル/トライアングル/カスタネット

これらのパートが全て収録されている音源は高価な物が多く、100万円を超える完全プロ仕様のオーケストラ音源も存在します。逆に弦楽器だけを収録した「ストリングス音源」や、管楽器だけを収録した「ブラス音源」というものも存在します。フルオーケストラが必要なければ、単体で購入した方が安上がりかつ使い勝手も良いでしょう。

パソコンのスペック、ハードディスクの容量をチェック

オーケストラ音源は膨大な量のデータをサンプリングする必要があることから、容量が大きくなりがちなソフトウェアです。ソフトウェア単体で100GB,200GBというのが当たり前で、ダウンロードするだけでパソコンのハードディスクがいっぱいになる可能性もあります。フルオーケストラの編成を再現しようとなると、パソコンのスペックも重要になります。せっかく購入して重たいデータをダウンロードしたのに、フリーズして動かない、というのでは泣くに泣けませんね。あらかじめ注意しておきましょう。

使いたい音楽ジャンルをイメージしておこう

オーケストラ音源を選ぶポイントは「予算」と「環境」、もう一つ加えるとすれば「音楽ジャンル」です。上述にもあるように価格と品質は比例しますが、音楽ジャンルによっては「生々しすぎるサウンドが逆に合わない」というケースもあるので注意が必要です。したがってオーケストラ音源は「自分の目的に合わせて選ぶ」ようにすると良いでしょう。

オーケストラ音源の入門に最適なソフトウェア

オーケストラ音源をはじめて使う段階では、まず無償配布されているオーケストラ音源やDAWソフト内臓の音源を使用するのが良いでしょう。ですが無料のものはオーケストラ表現をするにはクオリティ面で不安があり、やはり有料のものを用意しておきたいところです。

まずは比較的安価で手に入れられるオーケストラ音源を見てみましょう。オーケストラ音源の特性上、安いといっても20,000円以上からのスタートとなります。またこのクラスでもプロの現場でしっかり使われている音源も存在します。

UVI Orchestral Suite

2015年3月に登場した「UVI Orchestral Suite」は、リーズナブルな価格設定ながらハイクオリティなサウンドを奏でるオーケストラ音源です。17000ものサンプルデータに60を超えるインストゥルメンタルを収録しており、本格的なフルオーケストラには対応できないものの、ポップスやロックといった軽音楽のジャンルで生々しいオーケストラサウンドを構築することができます。収録されている楽器は以下の通り。

  • ブラスアンサンブル、ブラスソロ
  • オーケストラ
  • パーカッション
  • ピッチドパーカッション
  • ストリングスアンサンブル、ストリングスソロ
  • クワイア
  • ウッドウィンズアンサンブル
  • 教会オルガン
  • チェレスタ
  • クラシックギター
  • ハープ
  • ハープシコード

これだけの楽器を収録しながら、パッケージは4GB程度の小容量を実現しています。オーケストラ音源はその容量からハードディスクを圧迫しがちなので、4GBにまとめられているのは大きなポイントです。パソコンの容量を気にせず気軽に導入することができるでしょう。国内の作曲家/プロデューサー/アレンジャーにも使用されており、オーケストラ音源の入門ソフトとしておすすめです。

UVI Orchestral Suite – Supernice!DTM

Heavyocity NOVO ESSENTIALS

シネマティック系の音源で名を馳せるHeavyocityのエントリー向けストリングス音源。上位に位置するNOVO Modern Stringsより、各楽器のソロ、単体セクションを排除し、全体での演奏のみを抜き出して収録することで、容量と価格を削減したものとなっています。下位グレード製品とは言え、ワーナーブラザーズスタジオにてレコーディングされた高品質なサンプルは上位のものと同じで、やや静謐で冷たさを感じるサウンドの特徴もそのまま引き継いでいます。生楽器を奏法やマイクポジション毎に収録したTraditionalインストゥルメントに加え、ストリングス音源にFX、ループなどをレイヤーしたパッド音源であるEvolvedインストゥルメントを同時収録しています。

Heavyocity NOVO ESSENTIALS – Supernice!DTM

SPITFIRE AUDIO ORIGINALS EPIC STRINGS

ヴァイオリンの音源などで高い評価を得るSpitfire Audioの入門用ストリングス音源。同社のフラッグシップ製品である総合音源のAlbion Oneより代表的なストリングスのサンプルを抜き出し、11の基本的な奏法、3種類のマイクポジションとともに収録されています。ロンドンのAir Studiosで録音されたサンプルの品質は極めて高く、3種類のマイクのミックスも相まって、入門用と言えど様々なサウンドを得ることができます。音色調整のためのインターフェースは同社の無料音源集LABSのものを引き継いでおり、簡素ながら分かりやすく初心者向け。値段もこのカテゴリの製品の中ではリーズナブルで、まさに一本目のストリングス音源として最適です。

SPITFIRE AUDIO ORIGINALS EPIC STRINGS – Supernice!DTM

Native instruments SESSION STRINGS PRO 2

SESSION STRINGS PRO 2

SESSION STRINGS PRO 2は、Native instrumentsの定番マルチ音源「KOMPLETE」に収録されているストリングス音源。22人中規模編成のアンサンブルが可能で、壮大なオーケストレーションはできないものの、ポップ/R&B/ダンストラックなどコンテンポラリーな音楽にマッチするサウンドを生み出すことができます。アンサンブルの内訳は以下。

  • バイオリン8台
  • ビオラ6台
  • チェロ4台
  • コントラバス4台

アーティキュレーション(演奏表現)は26種類を収録。プレイアシスト機能も豊富に用意され、リアルな表現が可能です。

《作編曲のための素材が全て揃うバンドル》Native Instruments Komplete 13

Steinberg HALion Symphonic Orchestra

CUBASEでお馴染み、Steinberg社のオーケストラ音源です。CUBASEユーザーはすぐに使うことができ、リーズナブルな価格ながら一通りのパートが収録されているのも嬉しいところです。ドライ気味に収録されたサウンドは、他社製のハイエンド製品と比べるとやや迫力に欠けるものの、リバーブを駆使することでカバーできるでしょう。同社製品らしい癖の無いサウンドは、ポップスやロックとの相性も抜群です。

収録されているバンドル:Steinberg Absolute 4 – Supernice!DTM

即戦力となるプロ向けのオーケストラ音源

ここから紹介するのは、目の前にオーケストラ隊がいるのかとリスナーに錯覚させるほどハイクオリティな音源です。導入しているユーザーはハイアマチュア〜プロが殆どで、その多くが商業利用されています。フルオーケストラや映画音楽など、本格的なオーケストラサウンドが欲しい方にオススメです。

しかしいずれの製品もDTM環境がしっかり整っていないと真価を発揮できないため、導入の敷居は高めです。パソコンの性能に自信があるという人はチェックしてみて下さい。

SPITFIRE AUDIO BBC SYMPHONY ORCHESTRA

Spitfire AudioがBBC交響楽団とタッグを組んで制作したオーケストラ音源。200時間に及ぶすべてのサンプルが、同楽団が1934年より本拠地とするMaida Vlae Studiosにて録音され、ストリングス、金管、木管、パーカッションなど、楽器数は55に上ります。それぞれセクション、ソロを含み、楽器毎のテクニックを合わせて418を収録。マイクポジションも11を数え、幅広いサウンドを志向することができます。緻密な音作りや幅広い奏法をフィーチュアしていますが、専用のプラグインが直感的で使いやすいのも見逃せない点でしょう。まさにオーケストラに特化した音源としてトップクラスの存在です。製品は下位から順にDiscover、Core、Professionalの3種に分かれており、自分のレベルや予算に応じても選択可能です。

SPITFIRE AUDIO BBC SYMPHONY ORCHESTRA – Supernice!DTM

IK Multimedia Miroslav Philharmonik 2

2015年12月に登場したIK Multimedia社のMiroslav Philharmonik(ミロスラフ・フィルハーモニック)2は、フルオーケスラを実現する多数の楽器と奏法が1000以上のハイレゾサンプル・55GBを超えるライブラリデータで収録、同社が販売しているプラグインの開発技術を投入したプロクオリティのエフェクト群によってソフト内でのミキシングおよびマスタリングを可能にした、本格的なオーケストラ音源です。

他社でも高品質なオーケストラ音源は出ていますが、どれも本物を求めすぎて気軽に試せる価格ではないのが難点でした。Miroslav Philharmonikは単独のVST Instrumentとしてだけでなく同社のマルチ音源であるSampleTank 3の追加ライブラリーとしても使え、また一般ユーザーでも手の届きやすい価格という点が大きな魅力です。

Miroslav Philharmonikの特徴と得意ジャンル

Miroslav Philharmonikは本格的なオーケストラ音源ですので、当然のことながら大編成のオーケストラサウンドをシミュレートすることが可能です。収録されている音自体が実際にホールで演奏しているような質感ですので、EQやリバーブをあれこれ操作する必要なく手軽にオーケストラサウンドを作れるのがこの音源の利点ですね。

他にも壮大なイメージの映画音楽、ファンタジー系のゲーム音楽、ポピュラー・ミュージックのバラードアレンジなど、アイディア次第ではオーケストラのシミュレートに限らず幅広く活躍してくれます。またロック・バンドがオーケストラを従えて演奏するようなジャンルにも使うことができます。例えばシンフォニック・ヘヴィ・メタルやゴシックメタル、疾走感のあるシンフォニック・ロックを制作するときにも重宝するでしょう。


打楽器のみ他のシンセサイザーを使用している様子ですが、オーケストラだけではなくこのような壮大な映画音楽のようなサウンドも制作可能となります。

歯切れの良いサウンドは苦手

Miroslav Philharmonikにはトランペット、トロンボーン、サックスなどいわゆるブラス・セクションと呼ばれる金管楽器も収録されていますが、ファンク・ミュージックで演奏されるような歯切れのよいブラス・サウンドは苦手な印象があります。コンプレッサーが内蔵されているのでアタックを強調することは可能なのですが、やはり少々不自然な感じになってしまいますね。

これはやはりオーケストラ音源という性質上、収録されている音自体がコンサートホールで聴かれるようなウェットな質感になっているためだと思います。最初からホール・リバーブが付加されているというわけではないのですが、おそらくこの質感を出すためにわざと遠い場所から狙ってマイキングされているのだと思います。

最近ではアイドルグループが歌うようなJ-POPアレンジにもファンキーなブラス・サウンドが頻出するようになりましたが、そういった音を求めている場合はMiroslav Philharmonikのようなオーケストラ音源ではなくファンク専用のブラス音源を検討するべきでしょう。


「2」の公式動画。初代Miroslav Philharmonikの弱点とも言える早いパッセージへの反応が改善されているようにも感じますね。

SampleTank 3の拡張音源データとしても使用可能

Miroslav Philharmonikの販売元はIK Multimediaですが、同社のもっとも有名な音源といえばやはりSampleTankではないでしょうか。Miroslav Philharmonikはその最新バージョンであるSampleTank 3と互換性がありますので、SampleTank 3のライブラリー画面から音色データを読み出せるのも大きなメリットとなっています。

SampleTank 3はマルチ音源として様々な楽器や音色が揃っていますが、そのオーケストラ楽器の拡張音源としても使用することができるのです。実際にバンドサウンドやJ-POP系アレンジでもほんのアクセントとしてストリングス・セクションやクワイヤが欲しくなる部分はよくありますので、こういった場合に非常に重宝すると思います。

スタンドアローンでも使用可能

Miroslav PhilharmonikはVST・AudioUnitに対応しているため基本的にはDAWから呼び出して使用するのですが、実はスタンドアローンでも使用可能です。通常DAWはソフト自体の起動に加えて各種プラグインの読み込みがあるため、起動開始から実際に音が鳴らせるまでに数十秒は掛かってしまうものですが、Miroslav Philharmonikをスタンドアローンで起動する場合は1~2秒で完了です。そこから音色データを読み込む必要はありますが、ライブラリーを速度の早いSSDに保存しておけばそれすらも一瞬です。ふと浮かんだメロディーやアレンジを即座に記録したいと思うようなときにDAWの起動なんて待っていられませんから、そういうときこそスタンドアローン版の起動の速さは重宝します。

Miroslav Philharmonikは本格的なオーケストラをシミュレートする場合だけではなく、バンド・アレンジやJ-POPアレンジのアクセントとして使うこともできます。このような音源を一つ持っておくと楽曲制作での様々な場面で活躍すると思います。お手頃な価格で普段使いにも対応できるオーケストラ音源が欲しいという場合にはおすすめのソフトシンセです。

Miroslav Philharmonik – Supernice!DTM

EastWest Quantum Leap Hollywood シリーズ

Hollywood シリーズ

Hollywoodは、上記「QLSO」を凌駕する音質と表現力を持った、完全プロ仕様のフルオーケストラ音源シリーズです。

  • Hollywood Strings:57人編成のストリングス音源
  • Hollywood Brass:金管楽器コレクション
  • Hollywood Orchestral Woodwinds:木管楽器コレクション
  • Hollywood Orchestral Percussion:パーカッション音源
  • Hollywood Orchestra:上記4つを組み合わせた300GB超の豪華バンドル

という5種類のパッケージが用意されています。全てを揃えたフルインストール時の最大容量は600GB以上。パッチの読み込みに時間がかかるため、公式がインストール先にSSDを推奨している程です。アマチュアでも頑張れば手が出る価格帯ではありますが、それを快適に動作させる環境が必要となるため、やはり導入の敷居は高いでしょう。自宅でプロクオリティのオーケストレーションを制作したい方は検討してみてはいかがでしょうか。

EastWest Hollywoodシリーズ – Supernice!DTM

VIENNA SPECIAL EDITION

QLSOと肩を並べる定番音源です。4種類のボリュームをラインナップしており、QLSO同様、目的に合わせてチョイスできるのがポイントです。音質はもちろんのこと、非常に生々しく綺麗に繋がるレガートが高く評価されており、音程の切り替わり方は生演奏と謙遜ありません。

収録されているサウンドはとてもドライな傾向にあり、良質なリバーブと組み合わせることで、様々な音楽ジャンルに対応できるポテンシャルを持ちます。その反面、ハイクオリティなサウンドに仕上げるには知識と技術が必要になるため、中級〜上級者向けの音源だと言えます。

VIENNA SPECIAL EDITION – Supernice!DTM

AudioBro LA SCORING STRINGS

ドライで抜けが良く、ポップス系のトラックとの相性の良いストリングス音源。バイオリン/バイオリンII/ビオラ/チェロ/コントラバスの5つの楽曲を収録。オケに必要な奏法も十分に収録されている他、各楽器プレイヤーの人数の調整ができ、小規模のオケから大規模で壮大な楽曲での使用にも対応できます。クオリティは非常に高く、中上級者向けのソフトウェアとなっています。

AudioBro LA SCORING STRINGS – Supernice!DTM

ソロ音源

SPITFIRE AUDIO SPITFIRE SOLO VIOLIN

Spitfire Audio発のヴァイオリン・ソロ音源。他のSpitfire製品同様、ロンドンのAir StudiosにてJack Liebeck氏の演奏を収録。スピカート、スタッカート、トレモロなど多彩な奏法と、表現豊かなヴィブラートを再現できますが、中でも本製品の最大の特徴はキースイッチで奏法を切り替えなくても良いというところでしょう。ノートの長短により自動で奏法を切り替えてくれるため、直感的な打ち込みが可能です。表現にもっとも重要な働きをするボウイングの強弱も、Dynamicsコントロールをオートメーションで適宜書いていくことで、実に簡単にそれらしく仕上がります。値段も高くなく、ソロバイオリン音源の定番の一つと言って間違いないでしょう。

SPITFIRE AUDIO SPITFIRE SOLO VIOLIN – Supernice!DTM

EMBERTONE JOSHUA BELL VIOLIN

高品質な音源を低価格で多くリリースするEmbertone社によるソロヴァイオリン音源。グラミー賞も獲得したヴァイオリニストJoshua Bell氏の演奏をニューヨークのAvatar Studiosで細やかに収録し、製品名もそれに準じたものになっています。12種類を超える奏法や表現を収録しており、軽く打ち込んだり弾いたりするだけで、それなりの表現を織り込んだ演奏として再現してくれます。しかし、音源の最大の魅力はストラディヴァリウスを用いたジョシュア氏の音色。包み込むような温かさは他のヴァイオリン音源ではなかなか得られないもので、心地よいサウンドを生み出すことができます。オンマイクで収録されたドライな音色であるため、多様なジャンルにも使う事ができるでしょう。

EMBERTONE JOSHUA BELL VIOLIN – Supernice!DTM


以上、価格帯毎のオススメのオーケストラ音源を紹介しました。この他にも各社から様々なオーケストラ音源がリリースされていますので、他のソフトウェアについても知りたいという人は以下のリンクで確認してみて下さい。

オーケストラ音源一覧 – Supernice!DTM