映画音楽の巨匠、ハンス・ジマーの音楽を再現するソフトウェア音源

[記事公開日]2021/12/10 [最終更新日]2022/3/31
[編集者]神崎聡

ハンス・ジマー・ソフトウェア

映画音楽の世界でも随一と言ってよい作曲家Hans Zimmer(ハンス・ジマー)。DTMに関する情報の中でもよく耳にする名前ですが、一体いかなる人物なのか。ここではハンス・ジマー氏のこれまでの功績や制作スタイルについて迫ってみましょう。


映画『インセプション』予告編
ハンス・ジマーが音楽を手掛けた2010年のSFアクション映画。クリストファー・ノーラン監督とは『バットマン ビギンズ』、『ダークナイト』に次ぐ通算3回目のコラボレーションとなり、作中でのギターを元ザ・スミスのジョニー・マーが担当している。エレクトロニックなスコアが特徴的。

映画音楽の巨匠、ハンスジマーとは?

1957年、当時西ドイツのフランクフルトに生まれ、現在ロサンゼルスに在住する作曲家。映画音楽の作曲をメインとして活動し、多くの映画の音楽を作り上げてきた巨匠として知られています。氏がメインの仕事対象とする映画音楽は、フィルムスコア、あるいは劇判(劇の伴奏の意)などと呼ばれ、しばしば一つのジャンルとしてピックアップされます。また、映画のBGMでありながら、単一の音楽としても十二分に聴くに堪える存在感を持つのも氏の音楽の特徴であり、サウンドトラック盤が単なる脇役と思えないほどの売り上げを記録したことも少なくなく、フィルムスコアそのものの地位を押し上げた無二の作曲家としても高く評価されています。作風はオーケストレーションを軸とした従来の映画音楽の手法に加え、シンセサイザーの大胆な使用が挙げられ、しばしばオーケストラとシンセを融合させた第一人者として言及されます。

プラグイン音源の雄Spitfire Audio社からその名を冠した音源が発売されており、またドイツに本拠を置くUJAM社の創業に関与しています。使用DAWソフトはCubaseであることを名言しており、DTMを行うミュージシャンにとっては特に身近に名前を聞くことの多い音楽家でもあります。

来歴

1957年、フランクフルトにて生誕。1970年代、ロンドンに移住していたジマー氏はキーボードプレイヤーとしてクラカトアというバンドで活動を始め、70年代後半には「ラジオスターの悲劇」で有名なバグルスというバンドと仕事をするなど、はじめはロックポップス系プレイヤーとして世に出ていました。その後、映画音楽家スタンリー・マイヤーズ氏との出会いから映画音楽の世界へ足を踏み入れることとなり、ジマー氏は彼に師事を受ける形で、いくつかの映画において共同作曲なども行います。

転機となったのは80年代後半、映画監督ハリー・レヴィンソン氏がジマー氏をハリウッドに招聘したことでした。ジマー氏にとってハリウッドでの一本目の仕事となった、1988年「レインマン」の音楽はアカデミー賞にノミネートされ、若き作曲家の名は広く知れ渡ることになります。その後「オーケストラとシンセサイザーの融合」という独自の世界を確立したジマー氏はハリウッドの代表的音楽家の一人として名を連ね、94年「ライオン・キング」でアカデミー賞、ゴールデングローブ賞を受賞すると、飛ぶ鳥を落とす勢いで活躍。現在に至るまで150を超える映画の音楽を作曲しています。

主な実績・作風

前述のアカデミー賞にノミネートされた出世作「レインマン」(1988)、そして受賞を果たした「ライオン・キング」(1994)、その他にもゴールデングローブ賞を受賞した「グラディエーター」(2000)、アカデミー賞ノミネートとなった「インターステラー」(2014)、「シャーロック・ホームズ」(2009)などがあります。これらの作品の他、日本では「バックドラフト」(1991)、「パイレーツ・オブ・カリビアン」(2003)、「ラストサムライ」(2003)などは特に知られているところです。

オーケストラにシンセサウンドを融合させた第一人者として評価を得るハンス・ジマーですが、実際には画が求める音を表現するために様々な手法で音楽を制作しており、シンセはその中の一つの武器として用いられています。


Rain Man – Main Theme
ジマーにとってのハリウッド第一作にして、出世作となった1988年作品。前半は彼の持ち味の一つでもある親しみやすく哀愁の漂うメロディを軸に静かに展開しますが、後半にパーカションが現れてからは、動きのあるベースと重厚なオーケストレーションが混ざり合った独特の音世界を作り出します。壮大でありながら仰々しくなりすぎない展開が見事。


The Last Samurai – A Way Of Life
2003年作「ラストサムライ」では、叙情的なオーケストレーションをメインに進行する音世界が構築されています。メロディやアレンジに過度に日本的な部分は感じられませんが、太鼓や尺八、かけ声が使われる曲もあり、ハリウッド映画に日本的スパイスを散りばめるという意味で絶妙なバランスを求めていたことがわかります。このバランス感覚からは映画に寄り添う音楽家としての矜持を垣間見ることができます。


Interstellar – No Time For Caution
2014年作品「インターステラー」からの一曲。シンセパッドを軸とした静かな導入部に始まり、オーケストレーションによるリフレインとシンセリードによる通奏音がバックを彩る中間部を経て、4分音符での重厚なパーカッションが目立つドラマティックな展開でラストまで駆け抜けます。ジマーが先鞭をつけた、オーケストラサウンドとシンセが絡み合うサウンドで、彼を象徴する作風と言ってよいでしょう。

Remoto Control Studios

ハンス・ジマー氏はRemote Control Productionsというフィルムスコア専門の作曲チームを主宰し、そのメインの作業場としてスタジオをカリフォルニア州サンタモニカに構えています。ここは多くの有名な映画音楽が生まれた場所であり、ジマー氏のメインの仕事場となっています。氏と仕事をしたりしない限り一般的には縁のない場所ではありますが、氏が創業に携わったUJAM社のプラグイン「DRUMS」や「STRIIIINGS」などのプラグインでは、サンプリングがこのスタジオで行われました。氏自身はDAWソフトとしてCubaseを使用していますが、複数の制作家による同一ファイルの編集への言及があることから、スタジオでもメインのDAWソフトとしてCubaseがインストールされている可能性が高いと思われます。

ハンスジマーの音楽を再現する音源

巨匠の音楽を再現する、ハンス・ジマーの名をその製品名に冠したシリーズ。全てSpitfire Audio社から発売されており、氏の監修によって制作されました。いずれも膨大なサンプリング数と容量を確保、最高峰の音質をもって製品化されています。

HANS ZIMMER PERCUSSION

ハンス・ジマー氏が主導し、グラミー賞を受賞した制作チームの協力で、繊細なサンプリングが行われたパーカッション専用音源。ジマーのこれまでのキャリアにおいて使用されたパーカッションサウンドをフィーチュアして楽器や音色が選ばれており、複数楽器による”Ensembles”と単一楽器のサンプリングである”Solo”の二種のライブラリのうち、楽器数は延べEnsemblesで21種、Soloは9種を数え、巨大で派手なものから小さく繊細なものまで幅広いパーカッションサウンドが収められています。同音連打におけるナチュラルさを生み出すためのラウンドロビンには9つのバリエーション、ダイナミックレイヤーは6段階が用意され、繊細なアーティキュレーションの表現にも十二分に耐えられます。通常版の他、マイクミックスなどが拡張されたプロフェッショナル版も用意されています。

SPITFIRE AUDIO HANS ZIMMER PERCUSSION – Supernice!DTM機材

HANS ZIMMER STRINGS

他のSpitfire社の音源でおなじみ、ロンドンのレコーディングスタジオ「Air Studios」に、なんと総勢344名の奏者が集められ、147種のテクニックが、26カ所のマイクポジションにおいてサンプリングされ、総容量200GBにせまる圧倒的な音源が作り上げられました。ジマー氏はこの音源制作において「現実では不可能なサウンドを作ること」を命題に置き、生演奏での実現が難しいサウンドを追求しており、その結果、60名でのチェロの合奏などという途方もないサンプリングも含まれています。344名の内訳は、ヴァイオリン、チェロについて60名での合奏を含め、20名ずつが左右及び中央でそれぞれ録音した5種類ずつ、そしてヴィオラが中央と両端の2種類、コントラバスは中央での24名合奏となっています。圧倒的存在感を持つストリングスの音源というだけでなく、インターフェイスも他のSpitfire製品同様、明快で非常に使いやすくまとめられています。

SPITFIRE AUDIO HANS ZIMMER STRINGS – Supernice!DTM機材

HANS ZIMMER PIANO

ジマーが気に入ってしばしば弾いていたというAir StudiosのSteinway Model Dがモチーフとなったピアノ音源。サンプリングに当たってはピアノ本体とホールに計60本ものマイクが設置され、サンプリングされた音は丁寧に約一年を掛けてエディットされました。あらゆるテクニック、多くのラウンドロビンサンプル、ダイナミックレイヤーを含み、その総容量はなんと211GBに及びます。使用に際しては16本のマイクポジションから4つを選別しミックスさせるだけで、実際にホールで演奏されたようなサウンドを簡単に得ることができ、世界トップクラスのスタジオの残響が得られるのも当音源の強みと言えます。本物に迫る音質という点において、他の追随を許さない存在感を持つ圧倒的なピアノ音源です。

SPITFIRE AUDIO HANS ZIMMER PIANO – Supernice!DTM機材

HANS ZIMMER DRUMS

映画会社20th Century Fox社の持つレコーディングスタジオ「Newman Scoring Stage」に、故ジョン・ボーナム氏の息子としてレッド・ツェッペリンにも帯同したジェイソン・ボーナム氏所有のDW Vistaliteドラムキットを設置、入念にレコーディングとミックスが行われたドラムサンプル音源。同音連打の際に機械的にならないようにするラウンドロビン・サンプルにはジマー氏直々の徹底的な監修が行われ、人間味を付加するためのダイナミック・レイヤー、さらに複数のビータータイプ、多彩なプレイスタイルをカバーするサンプルを大量に収録。全て含め25.7GBに達する膨大なドラム音源となっています。シネマティック音源として壮大な音のなかに使うのはもちろん、単なるロックバンドスタイルのドラム音源としても非常に良い素材となり、多くのシーンで使えるものとなるでしょう。


ジマーは30年以上も映画音楽の第一人者としてひた走る天才作曲家ですが、「映像が音楽を完成させてくれる」と述べています。この言葉からは、音楽制作の際に常に画との組み合わせに細心の注意を払っていることが透けて見えてきます。だからこそ映画は何倍にも説得力を持ち、音楽はより感情的になるのでしょう。

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