シネマティック音源とは?ゲーム・劇伴制作に適したソフトウェア

[記事公開日]2024/4/25 [最終更新日]2026/5/14
[編集者]神崎聡

シネマティック音源

映画、テレビドラマやゲームなどの映像のバックで流されるバックグラウンドミュージック。劇伴とも言われ、映像とリンクする情景的なサウンドが求められる世界です。
そのような音楽に必要なサウンドが手軽に得られる音源が「シネマティック音源」と総称されるもので、昨今人気が高まっています。このような音源について掘り下げてみましょう。

シネマティック音源とは?

シネマティック音源とは、文字通り”映画的な音楽”に使われる音源を意味します。
映画のBGMやトレーラーで使われるようなものを筆頭に、テレビドラマ、あるいはゲームなどでよく聴かれるようなサウンドをまとめ上げたもので、その内訳は映画音楽のイメージそのままの仰々しく壮大なものから、もの悲しい寂寥感を感じる叙情的なものまで、多彩な楽器やサウンドがフィーチュアされます。
共通した要素として、深い残響や緩やかな減衰などがあり、単一の楽器だけでも心地よい、あるいは劇的なサウンドになっているものが多く見られます。

シネマティック音源に使われる楽器

オーケストラ楽器

オーケストラ楽器

シネマティック音源のメインとなり得るカテゴリー。ひとくちにオーケストラ楽器と言っても、内部でストリングス系、金管、木管など分かれており、まとめてパッケージされた総合音源から、個々の楽器のみが収録されている音源まで、多様な製品が展開されています。
例外なく幅広いダイナミクスを持ち、深みのあるリバーブ成分を含んでいます。

ギター、ピアノなど

オーケストラ系同様、深い残響成分が含まれていることが常。減衰する音の上にシンセのパッド成分が乗ってきたり、ギターについてはアタックを消し去ったスウェル奏法のサウンドが含まれるなど、通常の音色の延長に加工が施されたものも多く見られます。

ドラム、パーカッション

他楽器同様、広大な世界をイメージするための深く広い残響がセットされ、パンチの効いた強いサウンドを持ち、幅広いダイナミクスに対応します。
音の減衰が緩やかなものが多く、スパッと切れるようなタイトさは無い場合がほとんど。大口径のバスドラムやシンバル系は大きくフィーチュアされやすく、ラテンパーカッション系のサウンドも、深いリバーブとともに搭載されることがあります。

ボーカル

シネマティックサウンドに合わせたコーラス系、女性ボーカルのヴォカリーズ系サウンドを軸とし、それを複数重ねたパッド音、素材としてループさせたものなどが音源となっています。

シンセ系

オーケストラ系に並び、幅広く豊富かつシネマティック音源のメインとなっているのがこのシンセ系音源。
宇宙的なパッド音や、地を這うような強力なシンセベースなど、使われるサウンドのバリエーションも多岐に渡り、生のストリングスや木管系にシンセ音を混ぜた、オリジナルのハイブリッドな音色がフィーチュアされることも珍しくありません。シンセ音を軸にしたループ素材なども人気があります。

Epicとは?

シネマティック系サウンドが大きく使われた音楽の中に、Epicと呼ばれるものがあります。これは通常の映画音楽的なものに比べて、より歴史的、詩的、民族的とも呼べるサウンドのもので、より物語的要素の強い音楽のことを指しています。
壮大さよりも叙情的であったり勇壮的であったり、雰囲気が重視される傾向にあり、映画音楽やゲーム音楽などのサブジャンルとして昨今よく知られています。
中には仰々しいものもありますが、土臭くもの悲しい雰囲気の楽曲が多いこともあり、民族音楽に由来する音源も好まれて使われています。
ヨーロッパ土着のフォーク音楽で使われる特殊な民族楽器や、上で紹介したシネマティック音源類の中でも、木管系やボーカルは相性が良いようです。

世界的に著名な劇伴作家

ハンス・ジマー

ドイツ生まれ、アメリカ在住の作曲家。150本を超える映画音楽を手がけ、1994年「ライオンキング」で初のアカデミー賞作曲賞を受賞、その後27年の時を経て2021年「DUNE/デューン 砂の惑星」でも同賞を受賞しています。
日本では「パイレーツ・オブ・カリビアン」や「バックドラフト」のテーマ曲がよく知られています。

ルドウィグ・ゴランソン

スウェーデン・リンショーピング出身、ロサンゼルス在住。2018年公開の「ブラックパンサー」で伝統的なアフリカ音楽の要素を取り入れた劇伴を制作し、翌年のアカデミー賞作曲賞を受賞。その後「オッペンハイマー」(2023年)、「シナーズ」(2025年)でも同賞を獲得し、計3度の作曲賞受賞を達成しています。
映画作曲家としてのみならず音楽プロデューサーとしても活動しており、彼が手がけたドナルド・グローヴァー(Childish Gambino)の作品はグラミー賞を多数受賞するなど、その才能をいかんなく発揮しています。

アラン・メンケン

ニューヨーク州ニューロシェル出身の映画およびミュージカル音楽作曲家。
「リトル・マーメイド」「美女と野獣」「アラジン」「ポカホンタス」などのディズニー映画における楽曲でアカデミー賞を計8度受賞しており、エミー賞・グラミー賞・オスカー・トニー賞のいわゆるEGOTを達成した稀有な作曲家でもあります。
映画に携わる以前からミュージカルへの指向は強く、90年代よりミュージカルの作曲も精力的に行っています。

おすすめのシネマティック音源

通常のオーケストラ系楽器などに深いリバーブを掛けて、それらしい雰囲気のものを作り出すことはできます。しかし、シネマティック音源専用に作られた製品は、相応のサウンドデザインが施されており、何よりその目的でわざわざレコーディングが行われているため、素材からしてたどり着くのは難しいと言わざるを得ません。シネマティック音楽を指向するのであれば、是非専用音源を用意したいものです。

ここでは、オーケストラ総合系から民族楽器・自然音までを網羅する代表的なシネマティック音源を紹介します。動作環境や得意領域を一覧で把握できるよう、まずはスペック比較表で全体像を整理しておきましょう。

製品名 カテゴリ 動作ホスト 録音場所/編成 容量
Spitfire AudioAlbion ONE オーケストラ総合 Kontakt PlayerNKS対応 Air Studios London/109名 約56GB
Spitfire AudioAlbion Tundra 叙情系オーケストラ Kontakt Player Air Studios London/100名ヴィオラ除外 約89GB
OUTPUTAnalog Strings ストリングス+シンセ Kontakt Full BMC Hall, Budapest/60名+22名 約39GB
OUTPUTAnalog Brass & Winds ブラス・ウィンズ+シンセ Kontakt Player BMC Hall, Budapest/18名×2 約28GB
HeavyocityNOVO: Modern Strings ストリングス Kontakt Player Eastwood Scoring StageWarner Bros. 約40GB
HeavyocityDAMAGE 2 シネマティック・パーカッション Kontakt Player Skywalker Sound(カリフォルニア)約1,600種の打楽器 約60GB
HeavyocityVocalise 2 ヴォーカル Kontakt Player Heavyocity HQ, NYC 約3.4GB
Best ServiceCeltic ERA 2 ケルト・民族楽器 Engine Player Eldana Studios(スペイン)36楽器 約12GB
Best ServiceForest Kingdom 3 民族楽器・自然音 Engine Player 400+ パッチ・20,000+ サンプル 約19GB

Spitfire Audio Albion ONE

Spitfire Audio Albion ONE

ヴァイオリンの高品質音源などを多数リリースする、Spitfire Audioの代表的シネマティック音源。
109名の演奏家によって実際の映画音楽と同じロンドンのAir Studiosで収録された数々のオーケストラ、ドラム音源を筆頭に、膨大なパーカッションループ集”Brunel Loops”、オーケストラのサウンドをベースに構築された無数のシンセ音源”Stephenson’s Steam Band”から成る、統合型音源となっています。

オーケストラにおける様々な演奏テクニックが網羅され、録音に使うためのマイクポジションは4種を自在にミックスしてサウンドをデザイン可能。
2024年には10周年アップデートでUIが刷新されNKS対応となり、新たに15種のオーケストラ・コンビ・パッチ、Stephenson’s Steam Synthへの63音と67プリセット、78種類のBrunel Loops録音と90プリセットが投入されました。
全てのシネマティック音源の出発点にして、トータルなマルチ音源として非常に強力な存在で、これ一本でほとんどの部分は賄えるでしょう。

SPITFIRE AUDIO ALBION ONE – Supernice!DTM機材

Spitfire Audio Albion Tundra

Spitfire Audio Albion Tundra

北欧の森の香りをイメージするオーケストラ音源と銘打たれた“ツンドラ”オーケストラを筆頭に、静謐かつ冷たいサウンドという軸を元に構築されたマルチ音源。
100名規模のオーケストラはヴィオラを外した編成で録音され、38名のヴァイオリンを左右対向に配し、12名のチェロと6名のコントラバスを中央に据える独特なセクション配置が採られています。

アンビエンスより楽器の生音を優先する方針でレコーディングされた結果、Albion ONEのオーケストラに比べ、冷たく硬めのサウンドが実現されています。
マイクポジションはClose/Tree/Outrigger/Ambientsの4種を自在にミックス可能。
その他、本作のために開発された静謐で幻想的なグラニュラーシンセ“Vral Grid”、Albion ONE同様Stephenson’s Steam Band、Brunel Loopsも搭載され、こちらはイメージに合わせて異なるアプローチで制作されています。

SPITFIRE AUDIO ALBION TUNDRA – Supernice!DTM機材

OUTPUT Analog Strings

OUTPUT Analog Strings

アメリカ発、その独創的なサウンドが人気のブランドOUTPUTが送り出すストリングス系音源。
ハンガリー・ブダペストのBMC Hallにて60名規模の弦楽オーケストラと22名規模の弦楽アンサンブルが緻密にレコーディングされ、通常の奏法のみならず、あまり使われない独特な奏法までを収録しています。

オーケストラの他にも、ストリングス系のシンセ音源、その他ピアノやギターの音をソースとした独自のサウンドを“Creative”とカテゴリしパッケージング。
全体的にドラマティックで、インパクトの強いサウンド傾向を持っており、シンセ系音源などでは特に複雑にレイヤーが重ねられた独特なサウンドが特徴。
編集の柔軟性も非常に高く、幅広く活躍できること間違いないでしょう。

OUTPUT ANALOG STRINGS – Supernice!DTM機材

OUTPUT Analog Brass & Winds

OUTPUT Analog Brass & Winds

上のストリングス系に対し、こちらは金管、木管系のサウンドに特化したパッケージ。
Analog Stringsと同じくブダペストのBMC Hallにて18名規模のブラスセクションと18名規模のウッドウィンズセクションが収録されています。

サウンドの傾向もAnalog Stringsと同じ路線で、派手で複雑かつ独創的。
通常のオーケストラ系の他、ブラス・ウインズ系シンセ音源、実際のブラスやウッドウィンズやピアノなどを重ねた独自のCreativeカテゴリの3種からなるパッケージです。

OUTPUT ANALOG BRASS & WINDS – Supernice!DTM機材

Heavyocity NOVO: Modern Strings

Heavyocity NOVO: Modern Strings

シネマティック音源の代表的ブランドであるHeavyocityのストリングス専用音源。
ワーナー・ブラザース・スタジオ内のEastwood Scoring Stageにて録音されたストリングスサウンドを元にして、通常のストリングス音源であるTraditional、またそれにサウンドデザインを施した独自のEvolveという2種のインストゥルメントがパッケージされています。

様々な奏法とアーティキュレーションを細かく調整可能で、スタッカート奏法などについてはダウンボウとアップボウのサウンドが別に収録されるほど細やか。
マイクポジションは3箇所での録音を指定あるいはブレンド可能と、ストリングス専用だけあり、極めて緻密なサウンドデザインが行えます。
Evolveインストゥルメントについてはシンセのようにサウンドを作り替えていくことができ、独自のシーケンサーやグリッチエフェクトなども搭載。
3チャンネル400以上のループも搭載され、全体的に静謐で落ち着いた冷たいサウンドの傾向があり、Epic系の楽曲にも最適でしょう。

Heavyocity NOVO: MODERN STRINGS – Supernice!DTM機材

Heavyocity DAMAGE 2

Heavyocity DAMAGE 2

Damageという名の通り、迫力のあるパーカッション系専用音源。
カリフォルニア州ニカシオのSkywalker Soundにて録音された素材を基盤に、24〜72インチのグランカサス(大型バスドラム)、24〜60インチの太鼓、その他スネア、タム、シンバルからゴミ箱やポールに至るまで、あらゆる打楽器1,600個分のサウンドが収録されています。

それらのソースを使いこなすためのツールとして、奥行きやマイクポジションなどを含めたサウンド編集を行うEnsemble Designer、単一の音色を組み合わせ独自のドラムセットを構築するKit Designer、リズムパターンを重ね合わせて独自のループを作り上げるLoop Designerの3種を搭載。
特にLoop Designerの完成度の高さは、この製品の魅力に直結しており、プリセットを流すだけで迫力のある音世界を簡単に構築できるほどです。
シネマティック音源のカテゴリですが、映画音楽やゲーム音楽のみならず、通常のロック等にも使えるほどの守備範囲の広さを感じます。

DTM君

DTM君「動画16:33〜、ギター以外のトラックは全てDAMAGE 2で作りました。あらかじめ作り込まれたサウンドは、そのままでクオリティめちゃ高いです。なかなか自分でこのサウンドを作り出すのは難しいですよね。色々なところで使っていけそうな音源ですよ!」

Heavyocity DAMAGE 2 – Supernice!DTM機材

Heavyocity Vocalise 2

Heavyocity Vocalise 2

Heavyocityのボーカル音源。
Heavyocity HQ(ニューヨーク)でレコーディングされたボーカルに独自のサウンドデザインが施されており、テンポシンク対応のメロディックフレーズ192種、シラビックペダル24種、リミックス/スタッターモチーフ48種、ダイナミック&ムービングボーカル10種、3チャンネルの複雑なパッド10種、ユニークなボーカルスケープ48種など、約700のサウンドソースと190以上のインストゥルメント(NKI)が収録されています。

サウンドは全体的に冷たく静謐なものが多く、深いリバーブも相まって、ケルティック系のサウンドなどを彷彿させますが、シンセ系音源などと同じく、EQやフィルターによる編集でさまざまな表情のものを作ることができます。
また、搭載されるシーケンサーを使い、エフェクティブなサウンドを構築することも可能。民族音楽などをベースとしたEpic系に好相性ですが、元が歌だけあって、通常のロックポップス系音楽に合わせることも可能でしょう。

Heavyocity Vocalise 2 – Supernice!DTM機材

Best Service Celtic ERA 2

Best Service Celtic ERA 2

ドイツに本社を置くBest Service社の送るケルティック楽器専用の音源。
Eduardo Tarilonteのプロデュースのもと、アイリッシュ音楽のプレイヤーたちによってスペインのEldana Studiosで録音された36種の伝統楽器は非常に多岐に渡っており、バウロンを始めとするパーカッション、アイリッシュフルートやユリアンパイプ、ティンホイッスルなどの管楽器、ケルティックハープ、アコースティックギターなど弦楽器、さらに青銅器時代から使われていた古楽器まで、楽器毎の特徴的な奏法やアーティキュレーションを含めて25,000を超えるサンプル数で収録されています。

パーカッションや弦楽器についてはフレーズがマッピングされており、あらかじめセットされたスタイルを使う事で、自然な演奏を再現する事が可能。また、シンセやベルなどを重ねたサウンドスケープ音源も多数を収録し、多彩なシチュエーションに対応できます。
ジャンル的にも、世界観が明確な映画やゲームなどで本領を発揮する音源ですが、他の製品とは違い、リバーブの掛からないドライな状態のサンプルが収録されており、幅広い用途が見据えられていると言えそうです。
ちなみに、Best Serviceの音源はいずれもホストがNI Kontaktではなく、長年のパートナーEngine Audio社が開発した「Engine Player」(旧Engine 2の後継プレイヤー)に対応となっています。

BEST SERVICE CELTIC ERA 2 – Supernice!DTM機材

Best Service Forest Kingdom 3

Best Service Forest Kingdom 3

森林、雨、鳥の鳴き声など、自然をイメージする音源が多数揃えられたパッケージ。
同社のForest Kingdom、Forest Kingdom 2の全音源に、新しく様々な楽器が追加収録されたシリーズ決定版とも呼べるものです。

従来のシリーズに含まれていた無数のパーカッション、カリンバやケルティックハープ、ブルガリアンフルートやバグパイプなどの民族楽器、シャーマンの詠唱や透き通る女声などのボーカル音源から、3で新しく収録されたネイティブアメリカンフルートまで、400を超えるパッチと20,000を超える個別サンプルに集約されています。
複数のインストゥルメントをレイヤーしたSoundscapeカテゴリでは、神秘的なサウンドを創出できるものが連なり、いずれもモジュレーションホイールでサウンドスケープを変化させ、動的な演出が可能。
300の演奏マルチトラックグルーヴも収録されており、いわゆる他のシンフォニックなシネマティック音源とは一線を画した、“土臭い”サウンドはなにより魅力で、まさに音で情景を描くことができる音源と言えるでしょう。

BEST SERVICE FOREST KINGDOM 3 – Supernice!DTM機材

重厚的なサウンドが手軽に得られるのがシネマティック音源の魅力。それを使いこなすためのテクニックや知識は必要ですが、何より真に迫ったサウンドが自宅で簡単に再現できるのは、この上ない武器となるでしょう。このような音楽性を志向する方であれば、確実に揃えていく価値があるはずです。

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