日本最多ユーザーのDAW「Cubase」の特徴

[記事公開日]2024/8/29 [最終更新日]2026/5/20
[編集者]神崎聡

Steinberg Cubase 15 のメイン画面

「Cubase」はドイツのSteinberg社が開発するDAWソフトウェアで、数あるDAWの中でも主要な一本に数えられ、日本ではもっとも使用ユーザー数が多いDAWとして知られています。Steinberg社は2004年12月よりヤマハの傘下に入っており、ヤマハ製や提携メーカーのオーディオインターフェース・MIDI機器に Cubase AI や Cubase LE が同梱されていることも多く、これを足がかりに導入したという方も多いのではないでしょうか。

最新版は Cubase 15(2025年11月リリース)。AIによるステム分離機能、メロディックパターンシーケンサー、新しいモジュレーター類など、現代の制作スタイルに合わせた機能拡張が継続的に行われています。

CubaseとSteinbergの歴史

現在のSteinbergは、1984年にKarl SteinbergとManfred Rürupらによってドイツ・ハンブルクで設立されました。Cubase 1.0が登場したのは1989年で、当時はAtari ST向けのMIDIシーケンサーとしてリリースされています。

その後、1991年にはMacintosh向けにオーディオレコーディング機能を備えた「Cubase Audio」、1995年にはマスタリング/オーディオ編集ソフト「WaveLab」を矢継ぎ早にリリース。コンピュータ単体でオーディオを録音・編集して音楽を制作するという、当時としては画期的なフローを切り拓きました。
1996年にはVST規格を採用した「Cubase VST」を発表し、エフェクトをプラグインとして DAW 内部で扱う、現在のDAWに通じる仕組みを世に広めます。

2004年12月にはSteinbergがヤマハの傘下に入り、2014年に発表された「Cubase Pro 8」以降は、最上位エディションが「Cubase Pro」の名で展開されるようになりました。
現在のSteinbergはCubaseシリーズに加え、WaveLab、モバイル向けのCubasis、ソフトシンセのHALion、ドラムサンプラーのGroove Agent、楽譜ソフトのDorico など、幅広いラインナップを揃えています。

Cubaseの特徴

VST/ASIO規格の先駆者

SteinbergがCubaseを通じて提唱した規格には有名なものが2つあります。VST(Virtual Studio Technology)とASIO(Audio Stream Input/Output)です。

VSTは音声加工のプログラムをホストアプリケーションの枠内で扱うための規格で、エフェクトとしてのVSTプラグイン、ソフトウェア音源としてのVSTインストゥルメント(VSTi)が広く知られています。1996年のCubase VSTで初めて実装され、その後30年近くにわたりサードパーティ製プラグインの標準フォーマットとして定着しました。

ASIOはOSとオーディオハードウェアのやり取りを低レイテンシー・多チャンネルで行うための規格で、Windows環境のオーディオインターフェースのセットアップやDAWとの連携に欠かせない存在です。

これらは現在パソコンで音楽制作を行う上で当たり前のように使われており、別規格を採用しているApple LogicやPro Toolsの使用者を除けば、ほぼすべてのクリエイターがその恩恵を受けています。Cubaseはもちろん、DAW/DTM全体を語る上でも切り離せない、重要な規格です。

国内最多のユーザー数

オーディオ機器やMIDIキーボードへの同梱、Win/Mac両対応といった事情もあって、Cubaseの国内シェアは圧倒的です。
それゆえに個人ブログや教則本などの数も非常に多く、操作で困ったときやTipsの情報が得やすいのは大きなメリット。実際のミキシング解説でもCubaseを題材にしているケースが多く、同じプラグインを使った再現がやりやすいのも嬉しいポイントです。
プロジェクトを複数人で制作する際にCubaseでファイルをそのまま共有できることは、生産性に直結する強みでもあります。

国外ではEDMやヒップホップが主流となっていることもあり、最多ユーザー数の地位はAbleton Liveに譲りますが、正統派DAWとしてのシェアは世界的に見ても低くはありません。
映画音楽家のハンス・ジマーは現在もCubase Proを主要DAWとして使い続けており、ジマー自身が「Cubaseは長年使い続けているDAW」だと公言しています。

付属ソフトとしてのCubase

冒頭で触れたとおり、親会社であるヤマハ製品には基本的に無償版の Cubase AI が付属していることが多く、それ以外のメーカーの製品にも Cubase LE が同梱されていることが少なくありません。
対象はオーディオインターフェース・MIDIキーボードのみならず、ギターアンプや電子ドラムなど、DTMに直接関係しないものにまで及びます。これからCubaseを試してみたい方は、同梱を狙ってそのような機材を候補に入れるのも有効でしょう。

数多くの付属プラグイン

Cubaseは歴史あるDAWであり、その中で培われてきたプラグインが多数付属しています。特にエフェクトプラグインは充実しており、Cubase Pro 15ではアナライザー・ダイナミクス・EQ・モジュレーション・リバーブなど94種のVSTエフェクトが標準搭載されており、それだけで十分にハイクオリティな音源が作れるほどです。
反面、VSTインストゥルメントはHALion SonicやGroove Agent SE 6を除くとシンセ系に寄っており、ジャンルによっては別途音源を追加したくなる場面もあるかもしれません。

Cubase 15の新機能

AIステム分離(Stem Separation)

2025年11月に登場したCubase 15で目玉となる機能のひとつが、AIを活用したステム分離です。1本のミックス済みオーディオファイルからボーカル・ドラム・ベース・その他楽器を自動的に抜き出してそれぞれ独立したトラックに展開できる仕組みで、リミックスや採譜、トラックメイクの素材作りに幅広く活用できます。
処理はCPUローカルで完結し、分離した4つのステムは自動的にフォルダトラックにまとめられます(Pro限定機能)。

メロディックパターンシーケンサー

Cubase 15 メロディックパターンシーケンサー

Cubase 14で導入された Drum Machine/Pattern Editor に加え、メロディックパターンを生成する新しいシーケンサーが搭載されました。
スケールやコードに沿ってMIDIフレーズをステップシーケンサー上で組み立て、ノートの繰り返し・確率・ベロシティのばらつき・ゲートタイムなどを細かく揺らしながらリアルタイムで展開できます。

強化されたモジュレーター

Cubase 15 モジュレーターと UltraShaper/PitchShifter

Cubase 14世代のモジュレーター(LFO/Envelope Follower/Shaper/Macro Knob/Step Modulator/ModScripter)に、Cubase 15で6種類のモジュールが追加され合計12種類に。
Random・Sample & Hold・Morph LFO・Wavefold LFO・Crossfader・Attack Decay などを組み合わせて、シンセサイザー的なサウンドメイクをDAW全体のパラメータに適用できます。
あわせて新エフェクトのUltraShaper(リッチなトランジェント/サチュレーション処理)や、原音保持を強化した新 PitchShifter も追加され、サウンドデザインの幅が一段広がりました。

Cubaseのラインナップ

Cubaseは無償版を含めると計5つのエディションが提供されています。それぞれの違いは下記の通りで、いずれもWindows/macOSに両対応しています(Apple Silicon ネイティブ動作)。

項目 Pro Artist Elements AI LE
位置付け 最上位グレード。VSTi・エフェクト・付属コンテンツすべてが最大規模 中位グレード。プロ志向の基本機能はほぼ網羅 下位グレード。トラック数に上限があり付属コンテンツも限定的 主にヤマハ/Steinberg製品に同梱される無償版 サードパーティ製品に同梱される無償版
オーディオトラック数 無制限 無制限 48 32 16
インストゥルメントトラック数 無制限 無制限 24 16 8
付属VSTインストゥルメント HALion Sonic 7/Groove Agent SE 6/Padshop/Retrologue/Backbone 他 HALion Sonic 7/Groove Agent SE 6/Padshop/Retrologue 他 HALion Sonic 7/Groove Agent SE 6/Iconica Sketch 他 HALion Sonic 7/Groove Agent SE 6 HALion Sonic 7/Groove Agent SE 6
付属サウンドコンテンツ 50GB超/3,000以上のサウンド 中規模 25GB超/1,000以上のサウンド 限定 限定

本格的に音楽制作へ取り組むなら、迷わずProを選ぶのがおすすめです。付属プラグインやサウンドの数が段違いで、Cubase 15の目玉であるステム分離やモジュレーターなどの新機能もPro限定の要素が多くなっています。
あまりエフェクトをたくさん使わない、もしくはサードパーティ製プラグインを積極的に追加する方であればArtistでも事足りますし、練習や編集をメインとするライトユーザーであればElementsから始めるのも良いでしょう。
AI/LEでもサードパーティ製プラグインの追加は可能ですが、トラック数の制限が厳しい点には留意が必要です。

Cubase Pro 15

Cubase Pro 15

最上位エディション。Cubase 15の全機能を利用でき、AIステム分離・メロディックパターンシーケンサー・全12種のモジュレーター・新エフェクト群が漏れなく揃います。
HALion Sonic 7やGroove Agent SE 6といった主要なVSTiに加え、シンセ系のPadshop/Retrologue、ドラムシンセのBackbone、サラウンド/Dolby Atmos対応など、プロが必要とする要素は基本的にこのエディションで完結します。

Cubase Artist 15

Cubase Artist 15

中位エディション。トラック数は無制限のままで、Proにある一部の上位機能(サラウンド/Dolby Atmos、コントロールルーム、外部ハードウェア統合など)が省かれた構成です。
インストゥルメントやエフェクトの数も控えめになりますが、Padshop・Retrologue・Groove Agent SE 6・HALion Sonic 7 などの主要音源は揃っており、サードパーティ製プラグインを足す前提であれば十分に通用するエディションです。

Cubase Elements 15

Cubase Elements 15

入門向けエディション。オーディオトラック48・MIDIトラック64・インストゥルメントトラック24という制限はあるものの、CubaseのワークフローやVST/VSTiの取り扱いは一通り体験できます。
HALion Sonic 7・Groove Agent SE 6・Iconica Sketchなど、楽曲制作に必要な音源も最初から揃っており、25GBを超えるサウンドコンテンツが付属するため、これから本格的にDAWを始めたい方の最初の一本としても適しています。

Cubase AI/LE

製品同梱専用のエディション。Cubase AIは主にヤマハ/Steinberg製品(オーディオインターフェース、MIDIキーボード、電子ピアノ、ステージピアノ等)に、Cubase LEはZOOMやTASCAMといったサードパーティの対応機材に付属し、単体販売は行われません。トラック数は AI が32/16、LE が16/8と制約は大きめですが、Cubaseの操作感を試してみるには十分な機能を備えています。

付属プラグインなど

Cubase Pro 15に標準搭載されている代表的なプラグインから一部を紹介します。

Tube Compressor

真空管コンプレッサーをモデリングしたアナログ系コンプ。音量を揃えるという以上に、音色の質感を変える目的で使われることが多いタイプのプラグインで、サチュレーションを足すDriveや明るさを加えるCharacterなどのパラメータをいじることで音質を直感的にコントロールできます。
狙った効果が得やすく、Cubase標準搭載のコンプの中でも使いやすい一本です。

RoomWorks

Cubase Proに付属するアルゴリズミック・リバーブ。ナチュラルな掛かり方が特徴で、操作が簡便なうえに低負荷と、非常に使い勝手のよいプラグインです。
Cubaseの歴史でもっとも長く付属しているプラグインの1つで、外観もUIもほぼ変わらず20年以上にわたりレギュラーの座を守り続けています。登場時点での完成度の高さを物語る、Cubaseを代表するエフェクトです。

VST Amp Rack

ギターアンプ・キャビネット・エフェクターをまとめて扱えるシミュレーター。実際に録音したテイクに掛ける用途のほか、MIDIトラックに掛けることでギターらしいサウンドを作り出すこともできます。
同種のものは現在では多くのDAWに付属していますが、VST Amp Rackは品質も高く、有名なギターアンプモデルがほぼ網羅されており、ジャンルを問わず幅広く対応可能です。

REVerence

Cubase付属のIR(コンボリューション)リバーブ。実在のホールやスタジオで収録したインパルスレスポンスを使って残響を再現するタイプで、通常のアルゴリズミック・リバーブでは得難いリアル感が得られます。
REVerenceはバンドル品の枠を超えた品質を持ち、メインのリバーブとして十分に使えるクオリティ。反面、CPU負荷が高く、中域に密度のあるサウンドになるため、前述のRoomWorksとの使い分けが鍵になります。

Groove Agent SE 6

付属するインストゥルメントのなかで唯一のドラム専用音源。原理としてはサンプラーですが、最初から数多くの高品質ドラムサンプルやリズムパターンが内包されており、ジャンルを選んでパターンを貼り付けるだけで、ドラムに疎い方でもパワフルなドラムトラックを構築できます。Cubase 15世代ではUIがスケーラブル化し、内蔵ミキサーや新エフェクト群を備えた Groove Agent SE 6 へ刷新されました。パラアウトにも対応しており、Cubase付属音源の中でも一、二を争う人気を誇ります。

HALion Sonic 7

ピアノやギターはもちろん、ヴァイオリン、フルート、サックス、シンセサイザーや民族楽器まで、幅広い楽器を1つで賄える総合音源。プレイヤー本体である HALion Sonic 7 は Cubase 15 の全エディションに共通で付属し、Pro/Artist/Elements/AI/LE で同梱されるサウンドコンテンツの規模が段階的に分かれる構成です(Cubase Pro 15では合計50GB超のサウンドコンテンツがバンドル)。総合楽器メーカーであるヤマハの力もふんだんに注ぎ込まれた品質には定評があり、Cubase付属音源の中心となる存在。内部で16トラックに分けて使えるマルチティンバー音源なので、トラック数に制限のあるAI/LEでもこれを活用すればうまく音色を捌くことが可能です。

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