オーケストラ系に強いプロ仕様の音源。SPITFIRE AUDIOのプラグイン特集[記事公開日]2021年10月11日
[最終更新日]2021年10月11日

SPITFIRE AUDIO

2007年、ポール・トンプソン氏とクリスチャン・ヘンソン氏によってロンドンに設立されたソフトウェア・メーカー「Spitfire Audio」社。二人は真に迫った最高のクオリティを持つサンプリング音源を作るという目的のために手を取り合い、主に映画音楽のプロジェクトに関わっていきました。ブランドの名を世界に知らしめた映画「アバター」でのライブラリ制作に端を発してからおよそ10年、オーケストラ楽器を中心としたシネマティック系音源の製品ラインナップは拡充の一途を辿り、現在も映画音楽の巨匠ハンス・ジマー氏とタッグを組んだ新シリーズなど、精力的に新製品のリリースを行っています。

SPITFIRE AUDIOプラグインの特徴

社の創設黎明期より映画音楽のコンポーザーへのアプローチを続けたSpitfireは、元よりオーケストラ系音源に強く、現在のラインナップもそのスタイルの延長上にあります。ほとんどの製品がロンドンのAir Studiosにて収録され、最高峰の音質にこだわって作られるだけあり、そのサンプルからはにじみ出すような空気感や濁りのないクリアーさ、生楽器特有の優れたダイナミクスが感じられます。また、音質面のみならず、わかりやすいインターフェースや各種奏法の切替などが直感的に可能な点など、制作上での打ち込み易さにも定評があり、映画音楽やトレーラー、ゲームやドラマなど、いわゆるフィルムスコアと呼ばれるジャンルにおいて絶大な支持を得ています。

さらに、音質面においてはプロ仕様と言って差し支えないクオリティを持ちつつも、打ち込みやすく簡単に使用でき、製品によっては無理のない価格帯で手に入ることから、DTMの初心者にもヴァイオリンなどに特化した専用音源として人気があるところは特記すべき点でしょう。

動作にはNative Instruments「KONTAKT Player」が必要

Spitfireの音源にはホストサンプラーとしてNative InstrumentsのKONTAKT Playerが必要なものが少なくありません。KONTAKT Playerはフリー版も存在するため入手は容易ですが、Spitfireの音源を検討している方でKONTAKTを持っていないという場合は、そちらもあらかじめ調べておくと良いでしょう。

代表的なプラグイン

それではSPITFIRE AUDIOのプラグインを見ていきましょう。ラインナップはストリング音源が中心となっていますが、様々な楽器のサウンドをミックスさせて壮大で風景的なサウンドを演出できる様なものや、シンセサイザー音源など、バラエティに富んだ多くの音源を世に送り出しています。

BBC SYMPHONY ORCHESTRA

Spitfire AudioがBBC交響楽団と連携して作り上げたオーケストラ専用音源。弦楽器、パーカッション、木管、金管の全てをレコーディングし収録しており、トータルにして200時間、100万サンプルを超えるほどの大容量となっています。サンプルはグループとソリストにそれぞれ分かれ、音階楽器については33のレガート、418のテクニックを含む55種が収録されており、マイクポジションについても11種を確保。マイクポジションはそれぞれを自在にミックスすることで、アンビエンス成分やオーケストラの規模感などを細やかに調整できます。搭載された膨大なサンプルや楽器の数とは裏腹に使いやすくまとめられたインターフェースも極めて使いやすく、奏法や表現の切替もキースイッチのみならず、制作スタイルに合わせて数種類に対応します。エディションにはそれぞれDiscover、Core、Professionalと分かれており、制作レベルや価格によって選択可能。入門用のDiscoverは200MB、Coreは23GB、Professionalは600GBものサンプルが収録され、メインとなるProfessional版の桁違いなスペックがここからも窺い知れます。

SPITFIRE AUDIO BBC SYMPHONY ORCHESTRA – Supernice!DTM

ABBEY ROAD ONE

世界でもっとも有名なスタジオと言っても過言ではないAbbey RoadスタジオのStudio Oneで収録されたオーケストラ音源。フィルムスコアリングの世界において大変著名なこのStudio Oneルームはスターウォーズやハリーポッターなど、世界的に有名な映画のサウンドが収録された歴史を持ち、この音源の制作にあたってはエンジニアSimon Rhodes氏の監修によってサンプルのレコーディングが行われました。ライブラリは弦楽器、金管、木管をメインとし、パーカッションは複数楽器でのアンサンブルとして収録。弦楽器は特に圧倒的な充実度を誇っています。収録にはAbbey Roadスタジオにおいて実際に使われるヴィンテージマイクなどが使用され、それらを使用したミキシングなどをヴァーチャルに再現できるところも魅力。マイクの自在なミックスによりサウンドの質感などが表現できるのは、前述のBBC Symphony Orchestraと同様です。69GBあまりのサンプルを有し、質量ともに通常のオーケストラサウンドを作り上げるにおいて十分なものを備えています。

SPITFIRE AUDIO ABBEY ROAD ONE – Supernice!DTM

SPITFIRE CHAMBER STRINGS

いわゆる大編成のオーケストラではなく、小規模な編成での弦楽器アンサンブルを専門に収録した音源。チェンバー・ストリングスという名前もそこに由来します。1stヴァイオリンのみ4名、2ndヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバスはいずれも3名ずつの編成で収録され、大編成では得られない繊細な表現を可能にしているところが魅力。また、大げさになりすぎない音色からか、クラシック系楽曲以外にもよく使用されています。サンプリングにはマイク、プリアンプ、レコーダーまでヴィンテージの機材にこだわり抜かれ、96kHzデジタル形式で80GBあまりにのぼる大容量。音の長さに応じてshort、long、legatoなどにカテゴライズされた系244種類ものアーティキュレーションが収められており、弦を弾くポジショニングに応じたサウンドが収められていたり、FXという幾分変わったユニークな奏法を含むカテゴリがあったり、奏法で困ることはまずありません。マイクの距離をスライダーで設定するだけで距離感を調整できるなど、インターフェースだけでもかゆいところに手が届く使いやすいものになっており、また、3つのマイクポジションをそれぞれに自由にミックスすることで、サウンドの質感やアンビエンスをコントロールできます。4つのマイクを追加収録したProfessional版もラインナップ。

SPITFIRE AUDIO SPITFIRE CHAMBER STRINGS – Supernice!DTM

SPITFIRE STUDIO STRINGS

前述のCHAMBER STRINGSに比べると、より小さな部屋で鳴らしたサウンドになっているものがこのSTUDIO STRINGS。そのため楽器までの距離感はやや近接している感覚があり、アンビエンス成分が少ない分、ポップスなどにより使いやすいサウンドになっています。アンビエンスは少ないものの、セクションの人数はChamber Stringsよりもやや多く、1stヴァイオリンが8名、2ndヴァイオリン、ヴィオラ、チェロが6名、コントラバスが4名になっています。マイクポジションは一つのみで奏法もChamber Stringsに比べると少なめ。10GBあまりの小さめなライブラリで小回りが効き、値段もかなり安くなっているため、初心者用や初めてのストリングス音源におすすめできる製品です。
また、この製品にはProfessional版があり、こちらは、各楽器ごとに倍の人数、そして半分の人数(ディヴィジ)のものをそれぞれ収録し、6種類のマイクポジションをミックス可能。ライブラリは200GBを超える大容量となっており、通常のStudio Stringsとは別物と言えるほどの差があります。そのためProfessionalが通常版、Studio Stringsをライト版と見る向きもあります。どちらかを選ぶ際には自身の制作にどれほどのものが必要か、よく考えて選択すると良いでしょう。

SPITFIRE STUDIO STRINGS – Supernice!DTM

SPITFIRE SOLO STRINGS

セクションではなく、ソロ演奏として収録された弦楽器の音源。ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバスの全てが収録されており、Spitfireの他製品と同じく、ロンドンのAir Studiosでサンプリングが行われました。キースイッチに頼らず、ノートを重ねたり、オートメーションを書いたりすることで自動的に奏法の切替やダイナミクスの調整などを行う機能を持ち、その直感的な打ち込みの簡便さは特にこの製品の人気に繋がっています。また、そのため演奏上での音色の自然さを表現しやすく、特にオートメーションを生かしてのダイナミクスやヴィブラートの表現は、細やかに設定することで、驚くほどに真に迫った演奏を打ち込むことも可能。ちなみに、この製品から「SOLO VIOLIN」が派生しており、こちらはヴァイオリンの音色のみを簡略化して収録したバージョンになっています。ヴァイオリンだけが欲しいという方はこちらも視野に入れてみると良いでしょう。

SPITFIRE SOLO STRINGS – Supernice!DTM

ALBION ONE

昨今多数のメーカーより送り出されるシネマティック音源。映画音楽のような壮大な音世界を作り出すための音源という意味で一つのカテゴリとなっていますが、このALBION ONEはその中でも代表的存在。ロンドンの最高の演奏者109名によるオーケストラサウンドはロングノートからトレモロやピチカートなどの標準テクニックがフィーチュアされ、4つのマイクポジションを自在にミックスすることで、オーケストラの広がりなどもコントロール可能。通常のオーケストラサウンドのみならず、シーンを演出する派手なパーカッション、躍動感のあるループ、オーケストラをモチーフに作られた壮大なサウンドのシンセなどをあわせて収録することで、文字通りシネマティックというカテゴリを体現する幅広いサウンドをフィーチュアしたものとなっています。

SPITFIRE AUDIO ALBION ONE – Supernice!DTM

BT PHOBOS

ここで紹介する中では唯一となるシンセサイザー音源。映画音楽にも携わるエレクトロニック・ミュージックのコンポーザーBT氏とともにタッグを組み制作されており、Spitfireらしい壮大で風景的なサウンドを得意とするシンセに仕上がっています。リバーブやギターアンプシミュレーターなどにも使われるインパルスレスポンスをソースとして、それを三カ所で別々に合成、最終的に発音に持っていく「ポリコンボリューション」という、他に類を見ない新しいエンジンが使われた、極めて先進的なシンセサイザーであり、非常にパワフルかつアグレッシブ、そして時に幻想的なサウンドを生み出すことができます。音色の存在感は既存のシンセサイザー以上で、フィルムスコアにオーケストラとともに合わせてもしっかりとした存在感を演出できるサウンドです。ソースとなるインパルスレスポンス音源は20GB以上に達し、プリセットは650以上。操作は簡単ではありませんが、プリセットだけでも十二分に即戦力として使う事ができるでしょう。

SPITFIRE AUDIO BT PHOBOS – Supernice!DTM

HANS ZIMMER PERCUSSION

ハリウッド映画音楽の巨匠ハンス・ジマー氏とSpitfireのタッグによって作り出された、シネマティック・パーカッション音源。パーカッション複数でのアンサンブルをまるごとサンプルしたEnsembles、そしてそれぞれのパーカッションをソロで収録したSoloの二種類のカテゴリからなり、いずれも深く静謐なアンビエンスとともに収録されています。深い低域と轟音が魅力なアグレッシブな打楽器から、民族的で繊細な質感のものまで、様々なシチュエーションにあったパーカッションが収録されており、特に民族楽器に強いのが特徴。ハンス・ジマー氏の監修によるだけあってフィルムスコアにもっとも適した製品ですが、他にも叙情的なフォーク系音楽にも対応でき、通常の生ドラムの中にプラスアルファとして混ぜるなど、様々な使い方が可能な幅広い汎用性を持ったパーカッション音源です。

SPITFIRE AUDIO HANS ZIMMER PERCUSSION – Supernice!DTM


フィルムスコアに強く、特にオーケストラ音源にはこれ一本で何とかなると思わせるクオリティを備えるSpitfireの製品群。劇伴やオーケストラを使用した音楽にはもちろん、ポップスにストリングスを入れたい時なども候補の第一に挙がるのは間違いありません。値段やグレードも様々なものが揃っているため、自分の使用頻度や制作スタイルにも合わせることができます。ぜひ一度試してみてはいかがでしょうか。