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2007年、ポール・トムソン(Paul Thomson)氏とクリスチャン・ヘンソン(Christian Henson)氏によってロンドンに設立されたソフトウェア・メーカー「Spitfire Audio」社。
二人ともプロのコンポーザーとして活動するなかで、自分たちのために制作したサンプリング音源が同業者にも歓迎されたことをきっかけに会社を立ち上げました。
創業からおよそ20年、オーケストラ楽器を中心としたシネマティック系音源の製品ラインナップは拡充の一途を辿り、映画音楽の巨匠ハンス・ジマー氏とタッグを組んだシリーズなど、現在も精力的に新製品のリリースを行っています。
サンプル素材プラットフォーム大手のSpliceがSpitfire Audioを買収することを公表しました。買収金額は約5,000万ドルと報じられており、買収後もSpitfire Audioはブランド・製品体験ともに独立した形で運営される方針です。クリエイティブ面はPaul Thomson氏が引き続き統括します。
社の創設黎明期より映画音楽のコンポーザーへのアプローチを続けたSpitfireは、元よりオーケストラ系音源に強く、現在のラインナップもそのスタイルの延長上にあります。
多くの製品がロンドンのAIR Studios(Lyndhurst Hall)にて収録され、最高峰の音質にこだわって作られるだけあり、そのサンプルからはにじみ出すような空気感や濁りのないクリアーさ、生楽器特有の優れたダイナミクスが感じられます。
また、音質面のみならず、わかりやすいインターフェースや各種奏法の切替などが直感的に可能な点など、制作上での打ち込み易さにも定評があり、映画音楽やトレーラー、ゲームやドラマなど、いわゆるフィルムスコアと呼ばれるジャンルにおいて絶大な支持を得ています。
さらに、音質面においてはプロ仕様と言って差し支えないクオリティを持ちつつも、打ち込みやすく簡単に使用でき、製品によっては無理のない価格帯で手に入ることから、DTMの初心者にもヴァイオリンなどに特化した専用音源として人気があるところは特記すべき点でしょう。
BBC Symphony OrchestraのDiscoverエディションのように無料で入手できる入り口製品が用意されているのも、近年の特徴です。
それではSPITFIRE AUDIOのプラグインを見ていきましょう。ラインナップはストリング音源が中心となっていますが、様々な楽器のサウンドをミックスさせて壮大で風景的なサウンドを演出できる様なものや、シンセサイザー音源など、バラエティに富んだ多くの音源を世に送り出しています。
| 製品名 | カテゴリ | 録音スタジオ | エディション展開 |
|---|---|---|---|
| BBC Symphony Orchestra | 総合オーケストラ | Maida Vale Studios | Discover / Core / Professional |
| Abbey Road One | シネマティック・オーケストラ | Abbey Road Studio One | 本体+6拡張パック |
| Chamber Strings | 室内楽編成ストリングス | AIR Studios Lyndhurst Hall | Essentials / 標準 / Professional |
| Studio Strings | 近接スタイル・ストリングス | AIR Studio One | 標準 / Professional |
| Solo Strings | ソロ・ストリングス | AIR Studios Lyndhurst Hall | 単一エディション |
| Albion ONE | シネマティック総合 | AIR Studios Lyndhurst Hall | 単一エディション(V2.0) |
| BT Phobos | ハイブリッド・シンセ | — | 単一エディション |
| Hans Zimmer Percussion | シネマティック・パーカッション | AIR Studios Lyndhurst Hall | 単一エディション |

Spitfire AudioがBBC交響楽団と連携して作り上げたオーケストラ専用音源。
弦楽器、パーカッション、木管、金管のすべてをBBCのMaida Vale Studiosで収録しており、トータル200時間・100万サンプルを超える大容量となっています。
サンプルはグループとソリストにそれぞれ分かれ、Professional版では67種類の楽器、468種のテクニック、11種のマイクポジションを含む20系統のシグナルが揃います。
マイクポジションはそれぞれを自在にミックスすることで、アンビエンス成分やオーケストラの規模感などを細やかに調整できます。
膨大なサンプル数とは裏腹に使いやすくまとめられたインターフェースも極めて優秀で、奏法や表現の切替もキースイッチのみならず、制作スタイルに合わせて数種類に対応します。
エディションはDiscover・Core・Professionalの3段階で、入門用のDiscoverは無料配布の34楽器、Coreは44楽器、Professionalは67楽器と630GBあまりのライブラリを擁し、メインとなるProfessional版の桁違いなスペックがここからも窺い知れます。
エディション間はモードスイッチで切り替えられる設計のため、後からアップグレードしても操作感を維持したまま移行できます。
SPITFIRE AUDIO BBC SYMPHONY ORCHESTRA – Supernice!DTM機材

世界でもっとも有名なスタジオと言っても過言ではないAbbey RoadスタジオのStudio Oneで収録されたシネマティック・オーケストラ音源。
フィルムスコアリングの世界において大変著名なこのStudio Oneルームは、スターウォーズやハリーポッターなど、世界的に有名な映画のサウンドが収録された歴史を持ちます。
本体「Orchestral Foundations」では90人編成のシンフォニーオーケストラの基礎構成(弦楽器・金管・木管)が収録され、その後にSparkling Woodwinds、Legendary Low Strings、Grand Brass、Wondrous Flutes、Vibrant Reedsの拡張パックが順次追加。
完結編としてリリースされたSoaring High Strings(1stヴァイオリン16名・2ndヴァイオリン14名のユニゾン)の登場で、シリーズはひとまずコレクションとして完成しました。
収録にはAbbey Roadスタジオで実際に使用されるヴィンテージマイクが投入され、それらを使ったミキシングをヴァーチャルに再現できるところも魅力。
マイクの自在なミックスによりサウンドの質感などを表現できるのは、前述のBBC Symphony Orchestraと同様です。
SPITFIRE AUDIO ABBEY ROAD ONE – Supernice!DTM機材

いわゆる大編成のオーケストラではなく、小規模な編成での弦楽器アンサンブルを専門に収録した音源。
チェンバー・ストリングスという名前もそこに由来します。1stヴァイオリンのみ4名、2ndヴァイオリン・ヴィオラ・チェロ・コントラバスはいずれも3名ずつの16人編成で収録され、大編成では得られない繊細な表現を可能にしているところが魅力。
また、大げさになりすぎない音色からか、クラシック系楽曲以外にもよく使用されています。
サンプリングにはマイク、プリアンプ、レコーダーまでヴィンテージの機材にこだわり抜かれ、AIR StudiosのLyndhurst Hallで2インチStuderテープ経由・96kHz収録という贅沢なシグナルチェーンで取り込まれています。
音の長さに応じてshort、long、legatoなどにカテゴライズされた244種類ものアーティキュレーションが収められており、弦を弾くポジショニングに応じたサウンドが収められていたり、FXという幾分変わったユニークな奏法を含むカテゴリがあったり、奏法で困ることはまずありません。
マイクの距離をスライダーで設定するだけで距離感を調整できるなど、インターフェースだけでもかゆいところに手が届く使いやすいものになっており、また、3つのマイクポジションをそれぞれに自由にミックスすることで、サウンドの質感やアンビエンスをコントロールできます。
エディションはEssentials・標準・Professionalの3段階で、Professional版は4つのマイクポジションとJake Jackson氏によるステレオミックスを追加収録します。
SPITFIRE AUDIO SPITFIRE CHAMBER STRINGS – Supernice!DTM機材

前述のCHAMBER STRINGSに比べると、より小さな部屋(AIR Studio One)で鳴らしたサウンドになっているものがこのSTUDIO STRINGS。そのため楽器までの距離感はやや近接している感覚があり、アンビエンス成分が少ない分、ポップスなどにより使いやすいサウンドになっています。
アンビエンスは少ないものの、セクションの人数はChamber Stringsよりもやや多く、1stヴァイオリンが8名、2ndヴァイオリン・ヴィオラ・チェロが6名、コントラバスが4名で計30人の編成になっています。
マイクポジションは「Tree」一つのみで奏法もChamber Stringsに比べると少なめ。13GB前後の小回りの効くライブラリで価格もかなり安いため、初心者用や初めてのストリングス音源におすすめできる製品です。
また、この製品にはProfessional版があり、こちらは大編成(16・12・12・12・4)と2系統のディヴィジ編成(4・3・3・3)を別途収録し、7系統のマイクポジション+2種のステレオミックスをミックス可能。
ライブラリは210GBを超える大容量で、約218,700サンプルを擁します。通常のStudio Stringsとは別物と言えるほどの差があり、Professionalが通常版、Studio Stringsをライト版と見る向きもあるほど。
どちらかを選ぶ際には自身の制作にどれほどのものが必要か、よく考えて選択すると良いでしょう。
SPITFIRE STUDIO STRINGS – Supernice!DTM機材

セクションではなく、ソロ演奏として収録された弦楽器の音源。
ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバスの全てが収録されており、Spitfireの他製品と同じくロンドンのAIR Studios・Lyndhurst Hallでサンプリングが行われました。
現行版ではヴァイオリンに性格の異なるVirtuoso・1st Desk・Progressiveの3バージョンが用意され、ソロ・ヴァイオリンとソロ・チェロには「Total Performance」と銘打たれたノートを重ねるだけで自然なレガートや奏法切替が自動で行われる機能が搭載されています。
キースイッチに頼らず、ノートを重ねたり、オートメーションを書いたりすることで自動的に奏法の切替やダイナミクスの調整などを行う仕組みは、その直感的な打ち込みの簡便さで特にこの製品の人気に繋がっています。
また、そのため演奏上での音色の自然さを表現しやすく、特にオートメーションを生かしてのダイナミクスやヴィブラートの表現は、細やかに設定することで、驚くほどに真に迫った演奏を打ち込むことも可能。
なお、ヴァイオリンの音色だけを使いたいという方向けには派生製品の「SOLO VIOLIN」も用意されており、こちらはヴァイオリンに特化したバージョンとなっています。
SPITFIRE SOLO STRINGS – Supernice!DTM機材

昨今多数のメーカーより送り出されるシネマティック音源。
映画音楽のような壮大な音世界を作り出すための音源という意味で一つのカテゴリとなっていますが、このALBION ONEはその中でも代表的存在。
AIR StudiosのLyndhurst Hallで収録されたロンドン最高の演奏者109名によるオーケストラサウンドは、ロングノートからトレモロやピチカートなどの標準テクニックがフィーチュアされ、4つのマイクポジションを自在にミックスすることでオーケストラの広がりなどもコントロール可能。
通常のオーケストラサウンドのみならず、シーンを演出する派手なパーカッション、躍動感のあるループ、オーケストラをモチーフに作られた壮大なサウンドのシンセ(eDNAエンジン搭載「Stephenson’s Steam Band」)などをあわせて収録することで、文字通りシネマティックというカテゴリを体現する幅広いサウンドをフィーチュアしたものとなっています。
10周年を機にV2.0へとアップデートされ、UIや収録音色の刷新、ブラスやストリングス・ホルン・トランペットの極大ダイナミクス(FFF)追加など、現在も成長を続ける一本です。
SPITFIRE AUDIO ALBION ONE – Supernice!DTM機材

ここで紹介する中では唯一となるシンセサイザー音源。
映画音楽にも携わるエレクトロニック・ミュージックのコンポーザーBT氏とともにタッグを組み制作されており、Spitfireらしい壮大で風景的なサウンドを得意とするシンセに仕上がっています。
リバーブやギターアンプシミュレーターなどにも使われるインパルスレスポンスをソースとして、それを三カ所で別々に合成、最終的に発音に持っていく「ポリコンボリューション」という、他に類を見ない新しいエンジンが使われた、極めて先進的なシンセサイザーであり、非常にパワフルかつアグレッシブ、そして時に幻想的なサウンドを生み出すことができます。
音色の存在感は既存のシンセサイザー以上で、フィルムスコアにオーケストラとともに合わせてもしっかりとした存在感を演出できるサウンドです。
ソースとなるインパルスレスポンス音源は20GB以上に達し、プリセットは650以上。操作は簡単ではありませんが、プリセットだけでも十二分に即戦力として使う事ができるでしょう。
SPITFIRE AUDIO BT PHOBOS – Supernice!DTM機材

ハリウッド映画音楽の巨匠ハンス・ジマー氏とSpitfireのタッグによって作り出された、シネマティック・パーカッション音源。
パーカッション複数でのアンサンブルをまるごとサンプルしたEnsembles、そしてそれぞれのパーカッションをソロで収録したSoloの二種類のカテゴリからなり、いずれも深く静謐なアンビエンスとともに収録されています。
ジマー氏自身が大作を手がけるAIR Studios・Lyndhurst Hallで、96本ものマイクとNeve Montserratプリアンプ・Neve 88R卓を経由して収録され、ミキシングと最終仕上げにはジマー氏本人も参加。
深い低域と轟音が魅力なアグレッシブな打楽器から、民族的で繊細な質感のものまで、様々なシチュエーションにあったパーカッションが収録されており、特に民族楽器に強いのが特徴。
Ensembles側にはFrank Ricotti・Gary Kettel・Stephen Henderson・Paul Clarvisの4名による演奏が収められ、Solo側はPaul Clarvis氏の演奏が中心です。
フィルムスコアにもっとも適した製品ですが、他にも叙情的なフォーク系音楽にも対応でき、通常の生ドラムの中にプラスアルファとして混ぜるなど、様々な使い方が可能な幅広い汎用性を持ったパーカッション音源です。
SPITFIRE AUDIO HANS ZIMMER PERCUSSION – Supernice!DTM機材
フィルムスコアに強く、特にオーケストラ音源にはこれ一本で何とかなると思わせるクオリティを備えるSpitfireの製品群。
劇伴やオーケストラを使用した音楽にはもちろん、ポップスにストリングスを入れたい時なども候補の第一に挙がるのは間違いありません。
値段やグレードも様々なものが揃っているため、自分の使用頻度や制作スタイルにも合わせることができます。ぜひ一度試してみてはいかがでしょうか。
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