おすすめのボーカロイドライブラリ特集[記事公開日]2016年4月28日
[最終更新日]2022年03月31日

Vocaloid

VOCALOID(以下ボーカロイド)とは日本の楽器メーカーである「YAMAHA株式会社」が開発した音声合成技術のことです。2007年8月、この技術を応用した「初音ミクV2」というバーチャル・シンガーが若い世代を中心に大ヒットし、動画共有サイトであるニコニコ動画を中心に、様々なボカロ曲が投稿されました。

中でも有名なのが黒うさP氏が手がけた「千本桜」という曲で、この曲は日本の自動車メーカーであるTOYOTA社のCMソングにピアノアレンジで起用された他、歌手の小林幸子氏が2015年の紅白歌合戦でアレンジして披露するなど、地上波での露出も実現しています。ここでは、そんな新しい日本の音楽文化となりつつあるボーカロイドの専用ライブラリについて取り上げています。

ライブラリの基本的な選び方

自分が作りたい音楽ジャンルにマッチしたライブラリを選ぶ

ライブラリー「キャラクター」や「歌声」で選ぶのもありですが、基本的には「自分が作りたい音楽ジャンル」と「公式が発表しているライブラリの推奨ジャンル」がマッチしているものを選ぶことをオススメします。

例えば「アイドルポップ」を作りたい方がいるとしましょう。その場合、候補として真っ先に挙げられるのが「初音ミク」です。公式サイトにも記載されていますが、初音ミクの得意な音楽ジャンルはアイドルポップ、ダンス系ポップスであり、制作したい楽曲のジャンルと相性抜群です。

逆に「激しめのロック系サウンド」を作りたいとなった場合、「MEIKO V3」や「IA ROCK」などが候補に挙がります。これらのライブラリは調声次第ではあるものの、基本的にはパワフルで音抜けが良く、激しいギターやドラムに負けない歌声に仕上がっています。初音ミクは声の可愛らしさと高音の美しさが特徴のライブラリですが、ロック系(特にラウドなサウンド)は苦手な傾向にあるので、その持ち味を活かしたいのであればポップス系の楽曲で使用すると良いです。各ライブラリの推奨ジャンルは販売元の公式サイトに記載されているので、購入前に必ずチェックしましょう。

VOCALOID Editorとセットで購入しよう

ボーカロイドは音源単体では使用することができません。基本的にはYAMAHAが販売している「VOCALOID Editor」と呼ばれるソフトウェアと組み合わせて使います。

そのためYAMAHAでは、エディターと各音源をセットにいしたバンドルを販売しています。これからボーカロイドを始めるという方は(まだエディターを所有していない方)エディターとライブラリがセットで販売されているものを購入するようにしましょう。もちろんエディターおよびライブラリは単体でも販売されています。ちなみに、エディターの最新バージョンは4です。

VOCALOID4 – Supernice!DTM

最初の一本はクリプトン社製ライブラリがオススメ

これからボーカロイド音源を購入するという初心者の方は「Piapro Studio」が付属されたクリプトン社製のライブラリを選択することをオススメします。

Piapro Studioは「DAW上でVSTi(もしくAU)として使用できるエディター」であり、楽曲の制作とボーカル作成を並行して行うことができるプラグインです。通常、ボーカル作成は外部ソフトであるVOCALOID Editotを立ち上げ、オケとボーカルを別々に作成しますが、Piapro StudioがあるとDAW上で全て完結させることができます。

Piapro Studio自体はクリプトン社製のライブラリにしか付属しませんが、このプラグインは「他社製ボーカロイドライブラリ(V3およびV4)の読み込みに対応。IAやMegpoidなど、他社製ライブラリもPiapro Studioで読み込ませることができるため、最初に導入しておくことで、後々のボカロ曲制作が楽になることでしょう。一本目に他社製ライブラリを導入した方で二本目を検討している場合は、Piapro Studio目的にクリプトン社製ライブラリを選択するのもアリです。

ボーカロイドをMac OSで使う場合は…

Mac OSをご利用の場合、以下の3パターンで使用することになるので覚えておきましょう。

1,YAMAHA社のVOCALOID Editor for Cubaseを使用する
2,WindowsをBoot Campで立ち上げてを使用する

上述にもありますが、ボーカロイドライブラリはVOCALOID Editorと呼ばれる専用のエディターソフトウェアと組み合わせて使います。しかしながら、そのエディター自体が「Mac OSに対応していない」ので、上記で挙げた2パターンの方法で使用することになります。

Steinberg社のDAW、Cubaseを既に使っている方はVOCALOID Editor for Cubaseを導入することをオススメします。スペックに余裕があればBoot Campで使うと良いでしょう。もちろんライブラリが「MAC OSに対応している必要もある」ので、購入前のチェックは必須です。

VOCALOID Editor for Cubase

Crypton社のライブラリ

初音ミク

言わずと知れたボーカロイドの代名詞、初音ミク。声優の藤田咲氏を起用し、ボーカロイドブームの火付け役となった一番人気のライブラリです。初音ミクには複数のデータベースが収録されており、清楚で可愛らしい声の「ORIGINAL」をはじめ、甘く囁くような声の「SWEET」、落ち着きがあり憂鬱なイメージの「DARK」、物腰柔らかくおしとやかなイメージの「SOFT」、張り詰めた緊張感のある「SOLID」といった計5種類が用意されています。
英語で歌わせることができる「ENGLISH」と呼ばれるデータベースもあり、こちらは別のバンドル製品に収録されています。ボカロ初心者から上級者まで、幅広いユーザーに愛用されている定番ライブラリです。

初音ミクの特徴

・5種類のデータベースを収録(ENGLISHも含めると6種類)
・複数のデータベースが収録されているため様々な音楽ジャンルに対応できる
・調声がしやすいため初心者向き
・MAC OS対応

・CV:藤田咲
・推奨テンポ:70~150(ORIGINAL)
・推奨音域:A2~E4(ORIGINAL)
・得意ジャンル:アイドルポップス、ダンス系ポップス(ORIGINAL)

初音ミク VOCALOID3 – Supernice!DTM

鏡音リン・レン

声優の下田麻美氏を起用した一人二役のライブラリです。チャーミングで張りのある少女声のリン(女の子)と、どこか幼さを感じつつもパワフルな少年声のレン(男の子)が織りなすコンビネーションが魅力です。リンに3種類、レンにも3種類のデータベースが用意されており、作りたい楽曲のジャンルに合わせて選択すると良いでしょう。

初音ミクと比べると多少クセのある声なので、完璧に使いこなすにはそれなりのテクニックが求められます。
中〜上級者向け。

鏡音リン・レンの特徴

・計6種類のデータベース収録
・男女それぞれの声が使えるためお得感がある
・調声の難易度が高いため中〜上級者向け
・MAC OS対応

・CV:下田麻美
・リン推奨テンポ:50~170(POWER)
・リン推奨音域:F2~E4(POWER)
・リン得意ジャンル:ロック系ポップス
・レン推奨テンポ:60~170(POWER)
・レン推奨音域:D2~D4(POWER)
・レン得意ジャンル:ロック系ポップス

鏡音リン・レン V4X – Supernice!DTM

巡音ルカ

声優の浅川悠氏を起用した大人びた声が特徴の「バイリンガル・シンガー」です。初音ミクや鏡音リン・レンは新規で英語のデータベースを追加しなければならないのに対して、巡音ルカは始めから収録されているのが特徴。ルカの英語データベースは完成度が高く、本物の人間が歌っているかのような発音や滑らかさに仕上がっています。しっとりとした歌声はジャズやバラードなど、落ち着いた楽曲ジャンルと相性が抜群です。

巡音ルカの特徴

・日本語と英語それぞれ2種類のデータベースを収録
・低音と高音のバランスが良い
・調声の難易度は普通
・MAC OS対応

・CV:浅川悠
・推奨テンポ:50~170
・推奨音域:E2~F4
・得意ジャンル:バラード、ジャズ、ラテン

巡音ルカ V4X – Supernice!DTM

MEIKO V3

MEIKO V3は初代ボーカロイドである「MEIKO」をベースにバージョンアップを行ったライブラリです。その特徴として「爽やかでコシのある歌声」が挙げられ、ポップスからオルタナティブ、ヘヴィメタルまで幅広い音楽ジャンルを得意とします。
データベースは基本となるPOWERからSTRIHT、DARK、WHISPER、ENGLISHの計5種類を収録。英語版のデータベースも用意されているため、洋楽ロック系の楽曲との相性もグッド。明るい曲から暗い曲まで、様々な曲調に対応するオールラウンダーです。


MEIKO V3の特徴

・日本語と英語を含め計5種類のデータベースを収録
・ロックなどパワフルなオケに負けない力強い歌声
・テンポの速い楽曲も得意とする
・MAC OS対応

・推奨テンポ:65~180(POWER)
・推奨音域:B2~F4
・得意ジャンル:ロック系全般、ダンス、エレクトロニカ

MEIKO V3 – Supernice!DTM

KAITO V3

KAITO V3は初代男性ボーカロイドライブラリである「KAITO」の最新バージョンです。クリアでスムースな発音が特徴で、爽やかでありながら男性ボーカル特有のパワー溢れる歌声が特徴。厚みのある低音と伸びやかな高音のバランスが良く、MEIKO同様オールラウンドに活躍するライブラリです。
スタンダードなSTRAIGHT、バラードなどと相性の良い柔らかなSOFT、甘いヴォイスのWHISPER、英語版となるENGLISHといった計4種類のデータベースを収録しています。

KAITO V3の特徴

・日本語と英語を含め計4種類のデータベースを収録
・低音と高音のバランスが良い
・男性声
・MAC OS対応

・推奨テンポ:90~200(STRAIGHT)
・推奨音域:E1~C3(STRAIGHT)
・得意ジャンル:ロック系全般、ポップス、民謡

KAITO-STRAIGHT デモソング

KAITO V3 – Supernice!DTM

Internet社のライブラリ

Megpoid

歌手・声優の中島愛氏を起用したボーカロイドライブラリ。5種類の系統が異なるライブラリをラインアップしており、スタンダードな「NATIVE」、太く大人びた声の「ADLUT」、迫力ある声の「POWER」、子供っぽく甘い声の「SWEET」、優しく囁くような声の「WHISPER」が存在します。
注意しなければならないのは、これらはライブラリのラインナップであり「データベースの種類では無い」ということ。それぞれ単体で販売されており、その中にはVOCALOID4専用のライブラリと、VOCALOID3をリファインしたライブラリの2種類が収録されています。全種類のライブラリを収録した「COMPLITE」と呼ばれるパッケージも販売されているので、一気に揃えてしまいたい方はこちらを購入することをオススメします。

Megpoidの特徴

・系統の異なる全5種類のライブラリをラインナップ
・滑舌に優れているためナチュラルに歌わせることができる
・調声がしやすいので初心者にもオススメ
・MAC OS対応

・CV:中島愛
・推奨テンポ:60~175
・推奨音域:F2~A4
・得意ジャンル:ポップス、ロック、ダンス、テクノ

Megpoid V4 – Supernice!DTM

1st place社のライブラリ

IA

歌手のLia氏を起用したボーカロイドライブラリ。突き抜けるようなクリスタルヴォイスが特徴で、高音の煌びやかさは他の追従を許しません。推奨音域の幅がとても広く、低音から高音までバランス良く歌い上げます。速めのテンポにも柔軟に対応し、ベタ打ちでもそれなりに滑舌が良く、調声がしやすいのもグッド。

オールラウンドに使うことができますが、声質の関係から激しめのロック系ジャンルは苦手です。そこをカバーした「IA-ROCK」と呼ばれる別系統のライブラリが登場しているため、ロック系をメインにしている方はこちらをチョイスすると良いでしょう。

IAの特徴

・スタンダードなIA -ARIA ON THE PLANETSとロック系と相性の良いIA-ROCKの2種類をラインナップ
・高音の美しさはボーカロイドライブラリ随一
・推奨音域の幅が広い
・調声がしやすいので初心者にもオススメ
・MAC OS対応

・CV:Lia
・推奨テンポ:95~228(IA -ARIA ON THE PLANETS)
・推奨音域:B2~A4(IA -ARIA ON THE PLANETS)
・得意ジャンル:バラード、ポップス、ダンス(IA -ARIA ON THE PLANETS)

IA -ARIA ON THE PLANETES – Supernice!DTM

YAMAHA社のライブラリ

VY1V4

YAMAHA社純正のボーカロイドライブラリ。パッケージを見て分かるようにライブラリのモチーフと言えるキャラクターが存在しません。このライブラリに関しては、ボーカロイドを「純粋な楽器として使って欲しい」という同社の考えがあり、キャラクターだけでなくサンプリング元であるCVの人物名も公開していません。
本ライブラリの特徴として、ハイトーンがとても力強く、人間らしい豊かな響きの歌声を持っていることが挙げられます。調声次第で生の歌声と謙遜の無い仕上がりになるため、いわゆる神調教を目指すボカロPにもオススメします。

VY1V4の特徴

・4種類のデータベースを収録
・人間的な歌声を持つライブラリ
・様々な楽曲ジャンルに対応
・MAC OS対応

・推奨テンポ:60~200
・推奨音域:D2~F4

YAMAHA VOCALOID4 Library VY1V4 – Supernice!DTM

有名歌手のボーカロイドライブラリ

がくっぽいど

「GACKT」氏のボーカロイドライブラリ。販売元はInternet社。GACKT氏の基本的な声質であるNATIVE、男らしくパワフルな歌声のPOWER、ソフトで囁くようなWHISPERといった3種類のライブラリを用意しています。その声色はまさしくGACKT氏そのもの。細かいところまで忠実に再現しており、ファンの方はもちろん、男性ボーカル曲を作りたい方にもオススメです。

がくっぽいどの特徴

・3種類のライブラリをラインナップ
・歌手のGACKT氏を起用
・様々な楽曲ジャンルに対応
・MAC OS対応

・CV:GACKT
・推奨テンポ:60~150
・推奨音域:A1~C4

がくっぽいど – Supernice!DTM

Sachiko

日本を代表する演歌歌手である「小林幸子」氏のボーカロイドライブラリ。その歌声はやはり本人そのものであり、小林幸子氏が持つソウルフルな歌声と力強いこぶしまで忠実に再現しています。このライブラリには専用のジョブプラグインであるSachikobushiを付属。これにより、往年の演歌や歌謡曲で耳にするしゃくりあげやこぶしといった歌い方を実現しています。
特典として、本人の声で録音した「歌います!」「降臨!」といったサンプルも収録しています。上述のように歌謡曲や演歌などのジャンルと相性抜群ですが、ポップスやロックなどとも相性が良いので、ジャンルを選ばずに使えるオールラウンダーでもあります。

Sachikoの特徴

・重厚な低音とロングトーンのパワフルなビブラート
・演歌歌手の小林幸子氏を起用
・ジョブプラグインであるSachikobushiを付属
・MAC OS対応

・CV:小林幸子
・推奨テンポ:60~175
・推奨音域:D2~B3

初音ミク VOCALOID3 – Supernice!DTM

Fukase

日本のロックバンド、SEKAI NO OWARIのボーカルである「Fukase」氏のライブラリ。伸びやかで透明感のある少年ヴォイスはクオリティが高く、本人だけが持つ独特のクセまで忠実に再現しています。
SEKAI NO OWARIの楽曲でも頻繁に用いられるケロケロボイスですが、本ライブラリにはジョブプラグインであるElectronica-Tuneが付属されており、それを用いることで簡単に加工することができます。ポップスとの相性に優れており、ファンタジー路線の楽曲を作りたい方にオススメです。

Fukaseの特徴

・伸びやかで透明感のある声質
・SEKAI NO OWARIのボーカルであるFukase氏を起用
・ジョブプラグインであるElectronica-Tuneを付属
・MAC OS対応

・CV:Fukase
・推奨テンポ:80~160
・推奨音域:F2~A3

Yamaha VOCALOID4 Library Fukase – Supernice!DTM