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DTMでの音作りに欠かせないプラグインの筆頭であるイコライザー。各楽器の音質を整え、不要な帯域をカットしたり楽曲の分離を高めたりすることで、ミックス全体のクオリティを引き上げてくれます。
ミックス作業のなかでも地味な工程ですが、この処理を丁寧に行うことで、楽曲は説得力のある生き生きとした仕上がりに変わります。
このページでは、ボーカル/ギター/ベース/ドラムなど、ポップスを中心とした現代音楽に使われる楽器のイコライジング例を紹介していきます。
イコライザーには大きく分けて、グラフィックイコライザーとパラメトリックイコライザーの二種類があります。
グラフィックEQはあらかじめ決められた周波数ごとにフェーダーが並んでいるタイプで、パラメトリックEQは増減する周波数帯域そのものをユーザーが自由に調整できるタイプです。
グラフィックEQはギターのエフェクターやベースアンプ、PAシステムでよく見かけるためプレイヤーにはなじみ深い方式ですが、楽曲制作ではパラメトリックEQがほぼ標準で使われます。以下の説明も基本的にパラメトリックEQを前提に進めます。

ほとんどのイコライザープラグインには、再生されている周波数成分をリアルタイムでグラフ表示するアナライザーが搭載されています。
音を聴きながら視覚的にチェックすることで、ピーク帯域やこもりの原因となる帯域を見つけやすくなり、正確なイコライジングの手助けとなってくれます。
イコライザーをかけるときはバランスが崩れるのを避けるため、トラック単体だけを聴いて作業するのではなく、常に全体の鳴りを意識しながら調整しましょう。
イコライザーを使うにあたって大切なのは、音を持ち上げることよりも不必要な音をカットする作業であるという意識です。
不必要な音域を削ることでアンサンブルがスッキリと整い、各パートの輪郭がはっきりしてクオリティの高い楽曲に仕上がります。
まずトラック単体に対し、特定の周波数だけを強調するようにイコライザーをかけ、ポイントを左右にずらしながらいちばんうるさく感じる位置を特定します。

Logic Proの旧イコライザー「Channel EQ」
ハウリングしたりキンキンと耳障りなポイントが1〜2カ所見つかれば、その部分をカットします。

うるさい場所の音量をちょっと下げる
低域があまり必要でない楽器にはハイパスフィルターをかけて低域全体をカットしておくと、最終的なミックスで低音がだぶつくのを防げます。
とくに20Hz以下は人間の可聴範囲を外れる「インフラサウンド(超低周波)」と呼ばれる領域で、楽曲には寄与せずスピーカーの無駄な振動を招くだけなので、あらかじめカットしておくのが一般的です。
30Hz前後までの超低域も、聴感的にはほとんど認識されないため不要な場合が多いです。
他にも気になるトラックに同じ方法を施せばOK。
ベース、ギター、ボーカルなどがゴチャっとして聞こえるときは、この方法を試してみてください。聞こえ方が劇的に改善します。
不必要な帯域をカットしすぎると、逆に曲全体が物足りなく感じられることがあります。カットしつつ、欲しい帯域は持ち上げるのがバランスのよい使い方です。
帯域カットと同じ要領で、ブーストしたい帯域を探していきます。特に生楽器は倍音を持ち上げると音にツヤが出やすくなります。
また、補正という枠を超えた大胆なブーストも、音色作りの観点では有効な手段です。もともとイコライザーは「平均化」という意味の言葉ですが、現在では均すどころか、音作りのための積極的なツールとして扱われており、大胆なブーストは一般的なテクニックになっています。
具体的には、
など、楽器によってさまざまな使い方ができます。
では実際に、各楽器に対してどのようにイコライザーを使っていけばよいでしょうか。いくつか代表的な使用例を見ていきましょう。
EQプラグインの中にはあらかじめプリセットが用意されているものもあり、ドラムのキックやスネア、男性ボーカル/女性ボーカル、エレキギターなど用途に合わせたプリセットを呼び出せます。
手持ちのプラグインにプリセットがあれば、最初のとっかかりとして参考にしてみるとよいでしょう。
ボーカルの基音は100Hzよりも上から始まるため、それよりも下の帯域はカットします。音のコシを出すために200Hzより少し上を若干持ち上げ、3kHz以上の倍音部分をブーストすることで抜けのよい質感が得られます。10kHz以上の高域は空気感を調整できる帯域で、ここも少し上げてやると存在感を増せるでしょう。
サ行、タ行などの耳障りな音(歯擦音)はおおむね4kHz〜10kHzに存在しますが、これを抑制するためにディエッサーと呼ばれる専用のコンプを使用するのが一般的です。

低域をカットし、高域を上げることで抜けをよくする方向で処理します。
2kHz〜5kHzあたりをブーストしたうえで、5kHz以上の高域をシェルビングで軽くブーストし、100Hz辺りから下はすべてカット。500Hz〜1kHzあたりの中域に耳障りな成分が現れることがあるので、Qを大きく取ってピンポイントでカットできるとよいです。

基本的には男性ボーカルと似たような処理になりますが、200Hz〜500Hzあたりを少しブーストすると、どっしりとした重みのあるボーカルになります。
高域の抜けをよくしたい場合は8kHz辺りから上をシェルビングで持ち上げるとよいでしょう。耳障りな成分は1kHzよりも上に出ることがあるので、こちらも探し出してピンポイントでカットできると効果的です。
DTMで打ち込みトラックを作成する場合は、生ドラムではなくドラム音源を使うケースがほとんどかと思います。
マルチ出力でパラアウトしつつ以下のように丹念にイコライジングを施すことで、見違えるほど立体的なドラムトラックが得られます。

バスドラムの主な周波数帯域は75Hz周辺。50〜100Hzあたりに「ドスっ」というローエンドの音が存在します。ほんの気持ちだけ持ち上げることでキックの圧力が上がります。
そのほか
があります。それぞれ曲調に合わせて必要な部分を上げ下げしていきましょう。

200Hz周辺を上げ下げすることで、スネアの重みをコントロールできます。
ブーストの場合、重くなりすぎないようにバランスを考えて、その少し上の帯域をカットしておくと中低域の不要なだぶつきが防げます。
いまいち抜けてこないときは、2kHz〜5kHzの上の部分をブーストすると効果的。
スネアはセンターに定位している上に、ボーカルやギターと帯域がかぶる楽器ですので、それぞれの音をよく聞き比べながら音決めしていきましょう。

400Hz以下のロー部分をバッサリとカット。8〜10kHzをブーストすることでハイファイで抜けのよいシンバル感が得られます。

ドラムの上からマイクを2本立てて、主にシンバル類を中心に全体を集音するのがオーバーヘッドです。シンバルを中心とした音作りになるため、ハイハットと似たような処理になります。

ベースは楽曲でもっとも下を支えているため、80Hz付近を軽くブーストして太い低域を確保します。
その少し上の200Hz周辺は低音が膨らみやすいポイントなので、場合によってカットすることでスッキリさせられます。
1kHz辺りにピッキングのアタック音があるため、必要に応じてブースト・カットを行いましょう。
ピック弾きの場合は600Hz〜1kHzあたりにゴリゴリとした成分が現れやすく、こちらもカットしておくと他のトラックとの干渉が抑えられます。
ディストーションとクリーン、バッキングとソロでそれぞれ異なる設定が考えられます。
共通しているのは低音域の大胆なカット。特にディストーションギターのバッキングは、低音をそのまま残すとアンサンブルを壊しかねません。
それぞれ強調されます。

ディストーション・ギターのイコライジング例
まず無駄な低域である100Hz以下をカット。
400Hz周辺は、上げるとふくらんだ音になり、カットするとすっきりした音になります。
ディストーションギターのバッキングなどではカットが有効です。
1.4kHz〜2.5kHz辺りは歪んだギターのツヤを出すために重要となる部分で、特にリードギターでは持ち上げると魅力的な音になります。
ボーカルと被る場合は下げるという判断もアリです。
クリーントーンのイコライジング例
クリーントーンのアルペジオやカッティングなどの場合は、高域部分が要になります。
6kHz以上をブーストすると煌びやかになり、10kHzは質感・空気感を強調できます。
1kHz〜2kHzあたりはブーストすると抜けやすくなりますが、耳に痛くなりやすいポイントなので全体を聴きながら慎重に調整しましょう。
低域はハイパスでばっさりカットしても問題ありません。
バンドアンサンブル内のアコースティックギターのストロークは、低域を大きくカットして右上がりになるよう調整します。
アコギの低域はパワーが大きく、そのまま出すとバンドサウンドの土台を侵食してしまうためです。

ソロギターや弾き語りなど、伴奏が一人または少数の場合は逆に低域をしっかり出して、ベースのいない分の帯域をカバーする方向で考えます。
どちらの場合でも、8kHz以上の高域がアコギのシャリシャリした成分に相当しますので、不自然にならない程度にブーストすると鮮度の高いサウンドになります。

イコライザーの基本的な使い方について見てきました。ここで紹介した「不要帯域のカット」と「必要帯域のブースト」だけでも、ミックスのクオリティは大きく変わります。
さらに現代のEQプラグインでは、特定の閾値を超えたときだけEQが効くダイナミックEQ、位相のズレを生じさせないリニアフェーズEQ、ステレオの中央と両端を別々に処理できるMid/Side処理、各バンドだけを単独で聴けるソロ視聴といった、無償プラグインでは対応しきれない高度な機能が標準搭載されつつあります。
次のページでは、こうした高機能を備えた有償EQプラグインを紹介していきます。
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