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ボーカル用ダイナミックマイクの世界標準「SHURE SM58」の上位機種にあたるのが、この「SHURE BETA 58A」です。
1989年に登場した初代「Beta 58」の系譜を引き継ぎ、現行のカートリッジ設計に刷新されたのが1996年。以来30年近くにわたり、SM58と並んでステージ・スタジオで定番の地位を保ち続けるロングセラー機です。
ネオジム磁石採用のハイゲイン設計とスーパーカーディオイドの鋭い指向特性により、SM58よりも一段抜けが良く、ハウリングにも強いキャラクターに仕上がっています。
外見はSM58と瓜二つで、グリル根元の青いアクセントリングと「BETA 58A」のロゴ以外は見分けがつきにくいほどですが、サウンドは別物。
シャウト系のロックボーカルや、モニター環境がシビアなライブ現場で「もう一歩抜けが欲しい」「フィードバックマージンを稼ぎたい」と感じたときの、最初の選択肢として広く採用されています。
日本国内での正規流通は完実電気が取り扱う「BETA58A-X」が現行モデルで、実売価格は3万円前後が目安です。
BETA 58A最大の特徴は、トランスデューサにネオジム磁石を採用していること。同じSHUREのSM58と比べて出力レベルがおよそ+4dB高く、プリアンプのゲインを稼ぎにくい家庭用オーディオインターフェースでもS/N良く録れるのがメリットです。
周波数特性はSM58の50Hz〜15kHzに対して50Hz〜16kHzと高域が1kHz分広く、特に5kHz以上の高域でレスポンスが明らかに伸びているため、ボーカルの子音や輪郭がパキッと前に出てきます。
ピックアップパターンはSM58のカーディオイドに対して、より鋭いスーパーカーディオイドに変更。正面〜±30度の感度を保ったまま、真横(90度方向)からの音をしっかり遮断するのが特徴で、ステージ上で隣のシンバルや他のメンバーのボーカルが回り込むようなライブ現場でも分離感を保ちやすくなっています。
モニターを正しい位置(マイク後方やや斜め)に配置すれば、ハウリングマージンもSM58より稼げます。

ハンドリングノイズ対策として内部にニューマチック・ショックマウント(空気圧式の防振機構)を内蔵し、マイクスタンド経由の振動やマイクを握り直したときのノイズを軽減。グリルは凹みに強い硬化スチールメッシュを採用し、ステージのラフな扱いに耐える堅牢な作りです。重量は278gとSM58(298g)よりわずかに軽く、長時間のハンドマイクでも疲れにくい設計になっています。

ボーカル用マイク選びで必ず比較対象になるのが、姉妹機の「SM58」です。
両者はカートリッジの設計思想自体が違うため、BETA 58Aが常にSM58の上位互換になるわけではありません。
Shure公式も「用途と好みで選ぶべき」と明言しており、ヘビーメタルなど大声で歌うシンガーにはむしろSM58の控えめな感度のほうが扱いやすい、というケースもあります。
| 項目 | SHURE SM58 | SHURE BETA 58A |
|---|---|---|
| 指向特性 | カーディオイド | スーパーカーディオイド |
| 周波数特性 | 50Hz〜15kHz | 50Hz〜16kHz |
| 感度 | -54.5 dBV/Pa | -51 dBV/Pa(約+4dB高い) |
| 磁石 | フェライト | ネオジム |
| ショックマウント | ニューマチック式 | ニューマチック式(強化) |
| キャラクター | ナチュラル・中域寄り | 派手め・高域寄り |
| スイートスポット | 広い(誰でも扱いやすい) | 狭い(マイク扱いの基本が必要) |
| 主な用途 | ボーカル全般・MC・コーラス | シャウト系ボーカル・ハウリング厳しい現場 |
ざっくり言えば、「迷ったらSM58」「もう一歩抜けが欲しいならBETA 58A」という選び方になります。
バンドのメインボーカル=BETA 58A、コーラス・MC=SM58という使い分けや、リハーサルではSM58、本番のフロアモニターを返す現場ではBETA 58A、といった現場ごとの併用もよく見るパターンです。
鋭指向性ゆえに、エアコンのファン音や生活音などの暗騒音をカットしやすいのもBETA 58Aの強みです。
コンデンサーマイクほど繊細ではない一方、ダイナミックマイクとしては感度が高めで、宅録のボーカルブースが取れない環境でも実用的なS/Nで録れます。
家庭用オーディオインターフェースでゲインが足りないと感じることが多い方にもおすすめできるマイクです。
口元10〜15cm程度の距離で使うことを想定した設計のため、配信・ゲーム実況・ナレーション収録など口元に近づけて使う用途とも相性良好。
コンデンサーマイクのように空調・キーボード・マウスのカチカチ音を拾い込む心配が少なく、室内環境を選ばずに導入できます。
XLR接続のため、別途オーディオインターフェース(48Vファンタムは不要)が必要になる点だけ注意してください。
スーパーカーディオイドはカーディオイドよりスイートスポットが狭いため、マイクを口の正面から大きく外したり、角度を頻繁に変えると音量・音色の変動が激しくなります。
「マイクは常に口元に正対させる」「歌の最中に大きく動かさない」という基本ができていないと、客席や録音物で「声が出たり引っ込んだりする」聞き苦しい収音になりがちです。
加えて、近接効果(近づくほど低音が膨らむ)はSM58よりも明確に感じ取れるため、近づければ低音リッチに、離せばすっきりと高域寄りにキャラクターをコントロールできます。
歌い手側に多少のマイク扱いのスキルを要求する一方、それに応えてくれるだけの表現幅があるのがBETA 58Aの面白さです。
ポップノイズ(破裂音)にはSM58より敏感に反応するので、サ行・パ行が強く出やすい人は、マイクをわずかに下向きに角度を付けるかオフマイク気味にセッティングすると改善します。
「高音の抜けが良い=音が硬くなりやすい」「鋭指向性でハウリングに強い=スイートスポットが狭い」──BETA 58Aはメリットがそのままデメリットになる、いわば玄人志向のマイクです。
SM58のように誰が使ってもそれなりに鳴ってくれるマイクではなく、特性を理解した上でマイクコントロールを身につけて初めて、本来の抜けの良さ・ハウリングマージン・分離感が活きてきます。
逆に言えば、このマイクを使い続けることで歌い手のマイク扱いが上達するとも言えるマイクで、プロフェッショナルなボーカリストに長く愛されているのもこの一面ゆえです。
1本目のマイクとしてはやや上級者向けですが、SM58に物足りなさを感じ始めた人や、ライブと宅録の両方で1本ハイクオリティな定番を持っておきたい人にとっては、いまも第一選択肢になりうる名機です。
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