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ドイツ発祥の音響機器メーカーBEHRINGER(ベリンガー)の名物といえば、定番機材を圧倒的な低価格で提供する商品展開。なかでもボーカル用ダイナミックマイクの「Ultravoice XM8500」は、実売2,000円台というSHURE SM58のおよそ1/5以下の価格でありながら、ライブ・宅録・配信の現場で常用している人が多い超ロングセラーです。
1989年にドイツWillichで創業し、現在はMusic Tribe(フィリピン拠点)傘下で中国・中山の自社工場で生産されているブランドで、XM8500自体は2000年前後の登場以来、現在まで一度も廃番になっていない現行モデルです。
「安いから音もそれなり」という先入観で評価されがちですが、ダイナミックマイク特有の堅牢さや、ボーカルに必要な周波数特性はしっかり押さえており、定番マイクに迫る使いどころを持っているのがこのマイクの本当の特徴です。
XM8500は50Hz〜15kHzのフラット寄りな周波数特性に、ボーカルの抜けを担保するための4kHz・10kHz付近のプレゼンスピークを持つ典型的なボーカル用ダイナミックマイクの設計です。
同じ価格帯の安価マイクが「中域がこもる」「サ行が刺さる」といった偏りを抱えがちな中で、XM8500はSHURE SM58と比較しても素直なEQカーブを描き、ライブ会場でそのまま卓に挿しても扱いやすいキャラクターに仕上がっています。
ただしSM58に比べて近接効果(音源を近づけるほど低音が強調される現象)がやや強めに出るため、ボーカルが口元をマイクに密着させる歌い方の場合は、卓側で軽くローカットすると音がスッキリ抜けるようになります。
内部にはショックマウントシステムを内蔵し、マイクスタンドからの振動やハンドリング時のタッチノイズを軽減する構造を採用。外装はメタルボディ+スチール製のグリルメッシュで、ステージで床に落としたりケーブルを踏まれて引きずり倒されたりといった現場のラフな扱いを前提とした作りになっています。
価格は安価でも「使い捨てマイク」ではなく、定番ダイナミックマイクと同じくメンテナンスしながら長く使う設計です。
付属品はマイクホルダーとハードケースが標準同梱(販売チャネルによってはウィンドスクリーンも同梱)。
ハードケースはSM58を含む同形状のマイクが収まるサイズで、SM58専用のキャリングケースとして転用しているユーザーもいるほどです。XLRケーブルは付属しないため、ライブハウス備え付け/自分で1本持参が前提です。
XM8500が含まれる「Ultravoice」シリーズには、用途別に派生モデルが用意されています。
複数本まとめて使う現場ではXM1800S(3本セット)がよく選ばれており、シリーズ全体でSM58クローン系のXM8500と、SM57/Beta系の方向性に近いXM1800Sを住み分けています。
| 項目 | XM8500 | XM1800S |
|---|---|---|
| 形式 | ダイナミックマイク | ダイナミックマイク |
| 指向性 | カーディオイド(単一指向性) | スーパーカーディオイド |
| 周波数特性 | 50Hz〜15kHz | 80Hz〜15kHz |
| 感度 | -70dB(約0.3mV/Pa) | -52dBV(約2.5mV/Pa) |
| 出力インピーダンス | 150Ω | 600Ω |
| サイズ | 約165mm | 約175mm |
| 重量 | 約240g | 約230g |
| ON/OFFスイッチ | なし | あり |
| ショックマウント | 内蔵 | 内蔵 |
| 付属品 | マイクホルダー、ハードケース | マイクホルダー×3、3本収納ハードケース |
XM8500は単体販売されるシリーズの主役で、まず1本買うならこれ。指向性は標準的なカーディオイドで、ライブハウスのモニターから卓のメインまでオールマイティに使えます。
XM1800Sは3本セットで販売されるスーパーカーディオイド・ダイナミックマイクで、ON/OFFスイッチを搭載しMC・カラオケ・スピーチ会場での運用に特化。低域は80Hzからの立ち上がりに調整され、ハウリング耐性とかぶり遮断を重視した設計です。
XM8500を1〜2本足していくよりも、3本まとめて揃えたい用途ではXM1800Sが結果的に1本あたりの単価が下がるため、バンド/劇場/自治会のPA担当などはこちらを選ぶケースが多くなります。
SHURE SM58との比較で言うと、XM8500は近接効果がやや強く、低域がふくよかに乗る方向のキャラクターです。
SM58が「現場でEQをいじらなくてもボーカルが前に出る」設計なのに対し、XM8500は「卓で軽くローカットを入れるとSM58に近い抜けに寄せられる」マイク。男性ボーカルや太い声質のシンガーは、XM8500のローの厚みがそのまま強みになることも多く、価格を抜きにしても選ぶ理由のあるサウンドです。
一方で、ハウリングマージンやキャラクターの一貫性を最優先するプロの本番現場では、長年の運用ノウハウが蓄積されているSM58を選んでおくのが結局は無難です。「メイン=SM58、予備や練習用=XM8500」という揃え方は、コスパと安心感のバランスが取りやすい王道パターンです。
自宅で配信や収録を行う場合、コンデンサーマイクは音質こそ良いものの、エアコンや冷蔵庫のノイズ・部屋の反響まで拾ってしまうのが定番の悩み。
XM8500はダイナミックマイク特有の指向性の鋭さと感度の低さで、口元の音だけを抜き、生活音を下げて録れるため、ルーム処理ができていない部屋ほど相対的に有利になります。
価格的にも、まずダイナミックマイクで宅録・配信環境を組み、必要になったらコンデンサーを買い足すというステップアップ運用に向いています。
XM8500はそのキャラクターと「壊れても財布へのダメージが小さい」性格を活かして、コンガ・ジャンベ・ドラムセットのタムなど叩いてしまう可能性のある低音域楽器の集音に使われることがあります。
スネアトップにSM57、タムにXM8500という組み合わせや、ライブ会場で予備マイクをスタンバイさせておく用途など、価格と耐久性のバランスがそのまま強みになる場面が多くあります。
XM8500は「とにかく安い」だけのマイクではなく、定番ボーカルダイナミックマイクと同じ設計思想で必要十分な性能を実現したマイクです。SM58をすでに持っているプロが「2本目・予備・ラフな現場用」として常備していたり、宅録ビギナーが最初の1本として導入したり、ポッドキャストの収録部屋に複数本並べたりと、価格×性能のレンジが広い分だけ運用の幅も広いのがこのマイクの強み。
これからマイクを揃える人にとって、XM8500を1本最初に持っておけば「ダイナミックマイクとはどういう音で、どう使うものか」が体験として身に付くのは間違いありません。
そのうえで、より一貫性のあるキャラクターが必要になればSM58、ハウリング耐性が必要になればBeta 58A、というふうに上位機へステップアップしていく道筋がもっとも学習効率が高い揃え方です。
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