アンダーワールド(Underworld)[記事公開日]2014年11月8日
[最終更新日]2021年06月21日

Underworld(アンダーワールド)は、イギリス出身のエレクトロニック・ミュージック・グループです。
知名度の高い作品では映画「トレインスポッティング」やトヨタのCMで使われた「ボーン・スリッピー・ナックス」そして、ソニーのCMで使われた「トゥー・マンス」などが有名です。また彼らの最初のヒット作品である、「レズ」は全世界で大ヒットし、彼らの名をクラブミュージックシーンに轟かせた一曲でもあります。
そして2012年の記憶に新しいロンドン五輪では、開会式の音楽監督を務めるなど、幅広い活動をしています。

さらにその幅広い活動の中の一つとしてデザイン会社「TOMATO」の設立メンバーでもあり、近年のアンダーワールドのビジュアルを担当しているほか、テレビ朝日のロゴも「TOMATO」が担当しているなど、音楽以外の活動も積極的に行っています。
結成当初から度重なるメンバーチェンジを経て、現在はリック・スミスとカール・ハイドの2人組で活動をしています。

BioGraphy

リック・スミスとカール・ハイドはアンダーワールドを結成する前に、前身バンド「Freur」に所属していました。アルバムをリリースしスマッシュヒットしたものの、その後出した2枚のアルバムの売れ行きは好調とはいかずに停滞してしまいました。
そして3年後である1986年、前身バンドに新たなメンバーを加えてアンダーワールドとしてレコード会社と契約し、彼らのファーストアルバムである「アンダーニース・ザ・ レイダー」をリリース後、前身バンドの初期メンバーである、バーン・バロウズが脱退し、新たにパスカル・コンソーリが加入しました。
1988年、セカンドアルバム「チェンジ・ザ・ウェザー」をリリースし、翌年ユーズリミックスというバンドの解散ツアーに同行しますが、1991年にサードアルバムを製作中に当時所属していたレコード会社との契約が切れてしまい、それまでリック・スミスとカール・ハイドと共に活動し続けて来た初期メンバーであるアルフィー・トマスが脱退してしまい、バンドはほとんど解散状態になってしまいました。

テクノグループとしてのUnderworld

そんな中、翌年に新たなメンバーであるDJのダレン・エマーソンがメンバーとして加入し、テクノグループとして活動を再開します。そして新たなレコード会社と契約を結び、1993年にアンダーワールドとして公式なファーストシングルである、「ンー…スカイスクレイパーアイラブユー」をリリース後、ついにクラブミュージックシーンを沸かせた「レズ」をリリースし、一躍テクノシーンにおける重要な存在になります。

彼らはアナログ・シンセサイザーを用いて、レゾナンス(シンセサイザーのフィルターの一種でカットオフやフリケンシー付近の音を強調し、音色を変えるもの。原音に対して得意手の倍音を強調し、新たな倍音を付加する。)を変調させていくアシッドな感覚を生み出しました。ちなみに「レズ」というタイトルはレゾナンスからとったと言われています。この頃、日本のアンダーグラウンドなテクノシーン界隈でもじわじわとアンダーワールドの存在は注目されていきます。またアンダーワールドを含めたイギリスのミュージシャン達は新しいハウスの流れを作り出し、その音楽はプログレッシヴ・ハウスと呼ばれていきます。その大きな流れの中で、アメリカなどのアシッド・ハウスやデトロイト・テクノに触発されていきますが、アンダーワールドを軸にしてきたプログレッシブ・ハウスは独自の進化を遂げていき、現在も続いているUKのクラブシーンに受け継がれていきます。

その後「トレインスポッティング」の音楽監督などの活動を経て、1999年にダレン・エマーソンが脱退し、現在の二人組の体制になりました。現在も映画音楽の制作をしたり、ワールドツアーなどで世界各地を回り、記憶に新しいロンドン五輪の音楽監督なども担当。また他のアーティストなどとのコラボレーションも行い、現在もめざましい活動を続けています。

サウンドの特徴

彼らの個性的な作品から想像し難いですが、意外にもブルースや民族音楽など、様々なジャンルの音楽から影響を受けています、レッド・ツェッペリンやロバート・ジョンソンを含め、彼らが最も影響を受けたのがテクノの系譜を作り上げたクラフト・ワークの存在です。そして彼らが吸収した様々な音楽達が、今のアンダーワールドの唯一無二な音楽を支えている重要な彼らのルーツなのです。

初期の作品ではギターの音を取り入れたバンドスタイルのような曲が多い中、DJであるダレン・エマートソンが加入した後は、バンドスタイルから一転し現在のダンススタイルになり、ダレン・エマートソン脱退後もダンススタイルを維持しています。ダンススタイルならではの洗練された美しい音楽の中に時折見せる、音楽的な崩し、つまりサンプラーなどを用いた複雑なリズムパターンが同時に進行していきます(これを「ポリリズム」と言います)。普遍的なリズムを重ねていくことで、より複雑になっていき独特のパターンが生まれていきます。
またボーカルエフェクトを駆使した、ヴォーカルのフレーズは通常のフレーズとは違い、音として耳に飛び込んできます。こうしたエフェクターを用いた演奏はアンダーワールドの世界観をより一層深めていく要因となっています。

使用機材

メインで使用しているDAWソフトはLogic proを使用しています。Logic proといえば著名なミュージシャンが愛用している有名なDAWソフトの一つです。音楽的な自由度の高さは今でもプロ・アマ問わずに愛され続けています。
サンプラーはAKAI/MPC2000や同じくAKAI/S3200XLなどを使用しています。このサンプラーでは既に設定されたフレーズを鳴らすほか、ライブでビートにアクセントを付けていく際に使用していきます。
シンセサイザーは主にRolandやKorgなどの製品を使用しています。シンセサイザーは彼らの音楽の要となっています。彼らの世界観を担うシンセサイザーは、攻撃的な音やリズミカルなメロディーなど様々な音色を作り上げていきます。アンダーワールドの音楽を追体験したい場合は、シンセサイザーが鍵になって来ることでしょう。

エフェクターはRoland/RE-201(Spaceecho)や、Rolandが90年代初頭に発表したリバーヴ・エフェクターRoland/SRV-330などを利用し、独特の世界観を演出しています。Roland/RE-201(Spaceecho)はテクノ・ハウス界隈に留まらず様々な人に愛され続けています。アンダーワールドの曲中に出てくる、広がるような音響の数々はこのエフェクターが使用されています。
その他の機材は以下の通り

  • ARP 2600 シンセサイザー
  • Clavia Nord Lead シンセサイザー
  • KORG MS-10 シンセサイザー
  • Novation Super Bass Station シンセサイザー
  • Roland CR-78 リズムマシン
  • Roland JD-800 シンセサイザー
  • Roland JP-8000 シンセサイザー
  • Roland Juno-106 シンセサイザー
  • Roland Jupiter-8 シンセサイザー
  • Roland MC-202 シンセサイザー
  • Roland TB-303 シンセサイザー
  • Roland TR-909 リズムマシン
  • Roland VP-330 エフェクター, シンセサイザー
  • YAMAHA DX7 シンセサイザー

Discography

エヴリシング・エヴリシング (Everything, Everything)

Everything, Everything

ダレン・エマートソンが参加している最後のアルバム、このアルバムはスタジオ収録ではなく、1999年にベルギーで行われたライブを収録したものです。ライブ版と言っても彼らの魅力を存分に味わうことのできるアルバムになっています。選曲も素晴らしく、アンダーワールドを聞くのが初めての人にも、そして聞き慣れた人にも素晴らしい体験をさせてくれる名盤です。
2000年リリース

2番目のタフガキ (Second Toughest in the Infants)

Second Toughest in the Infants

タイトルのインパクトも去ることながら、アルバムとしての構成が素晴らしく聞けば聞く程、味の出てくる素晴らしいアルバムになっています。テクノミュージックの奥深くへとあなたを連れてってくれることでしょう。
1996年リリース

ダブノーベースウィズマイヘッドマン (Dubnobasswithmyheadman)

Dubnobasswithmyheadman

1993年にリリースされたファーストアルバムの再販盤となっている本作。名曲である「レズ」はもちろんのこと、アンダーワールドの世界観をたっぷりと堪能できるアルバムになっています。彼らのエフェクターを駆使した楽曲やメロディそして洗練されたリズムなど、アンダーワールドとしての原点がこのアルバムには収まっています。
1993年リリース