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シンセサイザーという言葉は知っていても、「結局どんな楽器なの?」と聞かれると答えに困る人も多いかもしれません。DAWに付属するソフトシンセや、キーボードのような形をした機材を思い浮かべる方もいるでしょう。しかし、シンセサイザーは単に「いろんな音が出せる機械」ではなく、奥深い歴史と構造、表現力を備えた楽器です。
本記事では、シンセサイザーの起源から、音の作られ方、さまざまな音源方式までをわかりやすく紹介。これからシンセを使ってみたい人はもちろん、DTMや音作りに興味がある人にもおすすめの内容です。
音楽プロデューサー、レコーディング・エンジニア、マニピュレーターとして椎名林檎のレコーディングに参加。マニピュレーターとして松任谷由実のレコーディングに参加。レコーディング&ミキシング・エンジニアとして、シンセサイザープログラマーとして、また作品のサウンド・プロデュースなど多方面で活躍する。リットーミュージックより「Pro が教える Vision for Macintosh」執筆。
日本語で直訳すると、合成機っていう事になりますが、それじゃ何か分かりませんね。今では、いろんな音が出せる楽器という所でしょうか。
多くのDAWにソフトウェアシンセサイザーが付いてきたり、プラグインとして、売られていたりします。DAWの中にあるのはソフトウェアのシンセサイザーですが、元々はハードウェア(固体)としての楽器でした。実はDAWよりも歴史が古いシンセサイザーの事を紹介しましょう。
何でも出来ますって、言い切ってしまいたい所ですが、細かい所では生楽器に追いついていない部分もあります。多くのミュージシャンの仕事を奪ってきたのも事実ですし、昨今のポップスの録音ではほぼ全ての伴奏や、ボーカロイドに至っては歌までも、シンセサイザーで作られています。
しかし、打ち込み等と言われる様に、生演奏より劣る表現であるという認識も多いと言わざるを得ません。生ストリングスみたいな音がチャチャっと出来るシンセとか無いの?と聞かれる事もありますが、生楽器を演奏する時にはそれなりに練習を沢山したのと同じで、シンセサイザーを扱うには、シンセサイザーを理解し、操作(演奏)する練習(学習)をしなければ生楽器の演奏を超える表現が出来ないからで、簡単に生演奏の様な音が欲しいと思っても無理なのです。
まずは、シンセサイザーを理解する事で、表現力溢れる演奏に近づける為に、少々、シンセサイザーの事を説明しましょう。
まだ、シンセサイザーと呼ばれる前、電子楽器と呼ばれていた頃、調べてみると1748年 デニスドール、1897年 テルハーモニウム等と記述はありますが、名前は分かっても、なかなか、どんなものか記録がなかなかみつかりません。
1920年にテルミンが登場します。木箱に向かって、左側にループ状のアンテナと、右側にポール状のアンテナがあります。アンテナですから触ったりはしないのですが、左のアンテナは音量をコントロールし、手を近づけると小さく、離すと大きくなります。右のアンテナは音程をコントロールし、手を近づけると高い音に、離すと低い音になります。音色は変えられません。
最近もMoog社から発売されていたので、僕も持っていますが、上手く演奏するのは大変です。
テルミン
1928年には オンド・マルトノが登場します。「刑事コロンボ」のテーマ音楽やNHK大河ドラマ「独眼竜政宗」で聞いた事があるという方もいらっしゃるのではないでしょうか?鍵盤で階段状の音階を、弦の様なコントローラーで連続可変の音程を表現出来ました。
1934年になると、Hammondオルガンが発売されます。教会のパイプオルガンをなんとか安価で提供出来ないかと開発されました。歯車の様なトーンホイールという装置で、各音階の音を発声させて、ドローバーと言われる倍音調整器(ミキサー)で音色を調整し、右手用上段鍵盤と、左手用下段鍵盤と、ベース演奏用の足鍵盤、ボリュームペダル等、両手両足をフルに使って演奏します。
レズリースピーカーとのコンビも素晴らしく、高音用と、低音用のスピーカーがそれぞれグルグル回って早く回ったり、遅く回ったり、音色をさらに変化させます。物理的なコーラス効果ですね。今でもオルガンと言えば、この音色的な代表的な音ですね。
1962年にはビートルズのストロベリー・フィールズ・フォーエバー等でもお馴染みの、メロトロンが登場します。
電子楽器と言えるのかどうか、35鍵の鍵盤に対応した再生専用テープレコーダーが鍵盤の下に用意されていて、鍵盤を弾くと、それに対応するテープが再生されるという仕組みで、音色を切り替えてフルートやストリングス等、最大18音色プリセット?されていました。録音されたものを、再生するという意味では、サンプラーの原型とも言えますね。
メロトロン
1960年前後から、ようやく、「シンセサイザー」と言われる、電子回路を組み合わせた加算合成方式(複数のオシレーターをミックスする)や減算合成方式(オシレーターで作られた音を、フィルター等で制限(曇らせたり)する)のアナログシンセサイザーが登場します。
ここからは、凄まじい種類のシンセサイザーが登場するので、音源方式別にざっと説明していきましょう。
アナログ音源はあらかじめ用意された、Sine波、ノコギリ波、パルス波等を幾つか混ぜてフィルターやVCA(音量調整)で加工する方式、代表するメーカーはMoog,Oberheim、シーケンシャルサーキット(Prophet)、ARP、YAMAHA、Roland、KORG等60年代後半から90年代まで、実に多くの機種が販売されました。
シンセブラス(Brassをシミュレートした音)やStringsPad等はよく聞きますね。 僕が参加した作品の中でも、広瀬香美「ロマンスの神様」やおニャンコクラブ「セーラー服を脱がさないで」、国生さゆり「バレンタインデーキッス」等で聞くことが出来ます。
Moog3 & Roland 100M
1980年代、デジタル技術が発達すると、音をデジタル的に記録して、演奏(再生)する楽器が登場します。自分で録音したものを演奏出来るサンプラーと、あらかじめサンプルされた音が用意されている、サンプルプレイバックシンセがありました。
初期には、フェアライトやイミュレーターの様な数百万円から数千万円する機材もありましたが、AKAI等が比較的安価で高機能なサンプラーを登場させ一般的になりました。昨今のシンセはサンプルプレイバックシンセが多くの割合を占めます。
デジタル音源の代表みたいな、FM音源は、フリケンシー・モジュレーションの略ですから、ビブラート(基本のオシレーターを別のオシレーターで揺らす)みたいなものなので、アナログシンセでも構成は可能ですが、それを多くのオシレーターで倍音的に高速でする為にDSP(デジタル・シグナル・プロセッサー)を用いて発音したのが、シンクラビアやYAMAHA DXシリーズに代表される音源です。
何気に使ってしまうデジタルエレクトリックピアノ(デビットフォスター等で有名)みたいな音でよく聞くかと思いますが、FM音源のエレクトリックピアノの音をサンプルした音はよくシンセのプリセットでは見かけますね。
Native Instruments MASSIVE
サンプラーより短い1波長分の波形(Wavetable)をループさせてオシレーターの代わりにして、発音する方式です。フィルター部分も、デジタル演算でフィルターさせたりしましたが、構成的にはアナログシンセと同様です。PPG Waveシリーズや、 Wordorf、Native Instruments MASSIVEシリーズ 等があります。
1990年代になると、コンピューターの計算速度も随分早くなってきたので出来た、最も新しい発音方式だと思われる音源方式です。
コンピューター上のシミュレーションで、ドライバーと言われる、トランペットのマウスピース、木管楽器のリード、弦楽器やピアノ等の弦、等をシミュレートして発音し、モディファイヤーと言われる、トランペットの菅、木管楽器の菅、弦楽器やピアノ等のボディ、等をシミュレートして音を増幅、それらを鍵盤やブレスコントローラー等でコントロール、演奏します。
YAMAHA VLシリーズ や Sample Modeling等の製品があります。
サンプラー等と違って、弱い音から強い音への連続変化の様な生楽器でしか出来なかった表現や、トランペットの発音で、ピアノの音量増幅方式等という、あり得ない楽器を作り出したり出来ます。
音源方式ではありませんが、ドラム、パーカッションに特化した、アナログシンセ(TR-808やSimmons、シンドラム等)や、サンプルプレイバックシンセに専用シーケンサーを付けたドラムマシーン(LinnDrum、各メーカードラムマシーン)や、ピアノ音源、オルガン専用音源等がありました。
1990年代、初期はサンプラーでレコード等を録音して部分的に繰り返し使用する、フレーズサンプリングと言われた手法がだんだん一般的になってくるとLoopと言われる様になり、リズムを切り刻んで正確にしたり、組み替えたりするソフトウェアも開発されました。Recycle等は自分でリズムを正確にしたり、スウィング具合を変えたり、組み替えたり、Stylus等は膨大なリズムループを用意してありました。
シンセサイザーはプリセットを選んで使うだけって言う人が殆どだと思いますが、ビブラートを掛けた時の揺れのスピードや、鍵盤を離してから音が無くなるまでのリリース等、ちょっと変えればその曲に更に合う音を作る事が出来ます。
又、シンセサイザーの部分的パーツはオーディオのエフェクターと共通してる部分が随分あります。シンセサイザーをちょっと理解する事で、いろんな音を表現する手段が増えるので、基本を紹介しましょう。
シンセサイザーの種類もいろいろありましたが、基本的な構造は同じです。VCOからVCFへ、VCFからVCAへと音は流れて、それを周りのLFOやエンベローブでコントロールするのが基本です。いきなり3文字英字の記号みたいな文字が出てきましたけど、順に説明していきますね。
今はソフトシンセ等、パソコン上でコントロールされるので、電圧でコントロールされている訳ではありませんが、アナログシンセサイザーが登場した当時は、電圧でオシレーターの周波数の高低やVCAの音量等様々な事をコントロールしていた為、未だにボルテージコントロールオシレーターという表現をされます。以下のボルテージコントロールフィルターやボルテージコントロールアンプ等も同様です。
デジタルシンセサイザーの場合はVCOの部分はもっと多くの波形のサンプル等になります。
サンプラーだったら録音された音を鍵盤毎、ベロシティ毎にアサインして音作りが出来ます。
Sampler Key Map
既に、いろいろな音色が出るシンセはこの様なデータを既に用意してあって、自分では変えられませんが、基本的には、サンプラーと同じデータが用意されてあります。いろんなシンセサイザーはオシレーターの発音方式が違うだけで、その後に繋がる物は一緒です。
加算合成と日本語で書くと難しく感じますが、いわゆるミキサーです。複数のオシレーターの音を混ぜます。一方のオシレーターの音を位相を反転(マイナスの掛け算)をして混ぜれば、引き算になりますね。
エンベローブの仕組みは解りましたか?では、それで何をするのでしょう。
エンベローブでVCAをコントロールする場合、それは、鍵盤を押してから離して音が消えるまでの音量の変化です。
オルガンの様にアタックが速く、リリースも早い音や、ピアノの様にアタックは速く、弾きっぱなしでもサスティーンレベルが小さく、どんどん減衰してく音、ベルの様にリリースが長い音、いろんな状況を作り出す事が出来ます。
エンベローブでVCFをコントロールすれば、音色の変化になります。
「シャンーーー」と最初は明るい音だけどすぐに丸い音になってしまう変化や、「シャーーンーーーー」と言う様にだんだん丸くなっていう変化はディケイの長さで調整します。
時にはVCOをも変化させピッチを変化させる事も出来ます。「ピューン」と高い音から低い音へ変化していくUFOのイメージ音なんか想像すると解るかな?
図:Synth 基本構造2
エンベローブフォロアーという音(楽器や声の音)から音量を電圧として出力するエンベローブフォロアーというモジュールもあります。
エンベローブフォロアーをVCFに掛けてレゾナンスをちょっときつめに掛けると「タッチワウ」というギターによく使うエフェクターになります。
VCFにボリュームペダルの様なペダルでコントロールすると「ワウワウ」になります。
図:Synth 基本構造3「ワウワウ」
以上が基本的構造ですが、音源部分を操るキーボードやホイール等も説明しておきましょう。
メロディ等ある音程から次の音程に移った時に、急激な変化では無く、なだらかに次の音程に移る事をポルタメントと言います。
歌なら、「あ〜(A2)あ〜(A3)」と歌う時など想像しやすいかな?
トロンボーンとかは得意ですね。トランペットは苦手かな?
シンセサイザーではその時々でポルタメントをオンオフしたり、次の音程に移るまでの時間を変化させたりして、表現します。
殆どの場合、鍵盤の左に付いている、円盤を縦にした様な入力装置です。
音程関係でまとめて説明すると、シンセベースや、サックス、シンセリード、ハーモニカ等、ピッチをしゃくったりする表現を多く聞きますが、その時は、ピッチベンドを使って入力します。
多くの場合、鍵盤を弾き始める前に少しピッチベンドを下げておいて、鍵盤を弾くと同時に上げ始め、音程が落ち着きたい所までに元の音程に戻します(ピッチベンド=0)
ピッチベンドにはバネが付いていて、手を離すと、元の音程になります。
モジュレーションホイール ピッチベンドのすぐ右にある、主にビブラートの深さ(LFO-VCO)のかかり具合を調整する入力装置です。
ビブラート以外もコントロールする為に、2つ付いている機種もあります。 ボリュームペダル 自動車のアクセルの様な足で操作し、音量を変化させる入力装置です。 オルガンや、ストリングスやブラス、木管等の表現では必須ですね。
ピアノに付いているペダル(ダンパーペダル)と同様、音が鳴っている長さを調整します。
説明する順番が逆になってしまいましたが、言わずと知れた鍵盤。
意外と複雑で、音程、弾き始めるタイミング、鍵盤を押す強さ、弾き終わるタイミング、中には鍵盤を離す速さや鍵盤を押し込む圧力など、多くの情報を音源に伝えます。シンセサイザーとエフェクターとミキサーは親戚同士
シンセサイザーのモジュールを幾つか組み合わせるとコンピュミックスにワウやトレモロ等、エフェクターを作り出す事が出来ます。ディレイ等も組み合わせるといろんな事が出来ます。LPF(ローパスフィルター),HPF(ハイパスフィルター)は、そのまま、ミキサーに着いている機種もあります。みんな親戚同士なんです。
シンセサイザーや、いろんなエフェクター等の仕組みが解ると使い方もしっかり解りますよね。
解らないで、ツマミをいじくって、たまたま、うまくいくのか、狙った音を自由に作り出せるのでは随分意味が違いますから、基本をしっかり覚えてください。自分が思いついた音色に到達するまでの時間が格段に早くなるはずです。
音が無くなるまでの時間、ADSRのRや、ビブラートのスピード、LFOのスピード等はいじってみると、曲に合わせて音色を用意する事が出来ます。
音色を選ぶだけじゃなくて、ちょっと、エディットもしてみてください。
シンセサイザーの売れ筋を…
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