DTMの基礎知識《準備編》部屋の作り方

[記事公開日]2024/9/15 [最終更新日]2024/9/15
[編集者]神崎聡

DTM部屋の作り方

自宅等では、スピーカーはセッティングしっぱなしになるでしょうから、いきなりスピーカーのツマミやアンプのトーンコントロールをいじるより、まずはスピーカーのセッティングや部屋の調整をしましょう。

北城浩志"

ライター
シンセサイザー・プログラマー、音楽プロデューサー、レコーディング・エンジニア、マニピュレーター
北城 浩志

音楽プロデューサー、レコーディング・エンジニア、マニピュレーターとして椎名林檎のレコーディングに参加。マニピュレーターとして松任谷由実のレコーディングに参加。レコーディング&ミキシング・エンジニアとして、シンセサイザープログラマーとして、また作品のサウンド・プロデュースなど多方面で活躍する。リットーミュージックより「Pro が教える Vision for Macintosh」執筆。


  1. 自宅環境改造法
  2. 定在波とは?
  3. 音場調整グッズ
  4. 残響と音圧

自宅環境改造法

楽器店等でも、吸音材やパネル等は売っていますが、一番簡単で安価に調整出来る方法はカーテンです。カーテンが部屋に付いていたら閉めてみたり開けてみたりして聞いてみてください。閉めても、まだ、部屋が響いている(短いリバーブの掛かってない音がまだ響いた音で聞こえる)場合、壁の前にカーテンをつり下げたりするのも効果があります。
スピーカーに向かっている自分の後ろ側やスピーカーの後ろに吊り下げてると、低音の出過ぎや定在波に効果があります。
スピーカーの右や左、自分の右左に吊り下げると、位相や残響に効果があります。床の場合、カーペット等も大きな効果を得られます。
部屋に物が少ないと響きが多くなってしまいます。スッキリとしていいですが、多少、物を置くと吸ったり乱反射したりして、良い結果を得られる事があります。

スピーカーの置き方

出来る事ならば、スピーカーは部屋の左右どちらかに寄らない様に、スピーカーに向かって部屋の左右の真ん中で聞ける様にセッティングするべきです。扉等それを許されない場合もありますが、セッティングする部屋の向き等を考えてなるべく真ん中で聞ける様に考えましょう。
どちらかに寄ってしまうと片側から早く反射音が聞こえる事になり、左右のバランスがとれなくなります。

セッティングの向き

殆どの部屋は長方形に出来ていると思います。正方形は音にとっては最悪ですが、長方形でも、部屋の短い側の壁にスピーカーを置いているか、長い側の壁にスピーカーを置いているかでも音は変わります。模様替えが出来るのであれば、まずスピーカーを仮に動かしてみるのもいいでしょう。
短い側の壁にスピーカーを置いた場合、低音の定在波等をコントロールしやすくなります。音質もいいですが、左右に壁が迫っていると左右の位相が悪くなります。左右のスピーカーの真ん中が部屋の半分の位置じゃないと、近い側からの反射が速く聞こえるので、尚更、位相が悪くなります。長い側の壁にスピーカーを置いた場合、低音の定在波等をコントロールしにくくなりますが、左右の壁が遠くなる分左右の位相は良くなります。

定在波とは?

先ほどから定在波という言葉が登場しました。部屋の後ろに行くと低い部分が大きく聞こえるのに、真ん中あたりではすごく減少して聞こえたり、特定の音程が小さく(大きく)聞こえたりするのがそれです。部屋の中で動いて聞いてみると分かると思います。
低音で、顕著に確認する事が出来ますが、スピーカーから出た音と壁から反射してきた音が丁度同じ位相でぶつかる場所では、音が大きくなり、逆相でぶつかる場所では、音が小さくなります。
高い周波数では、部屋の乱反射によりあまり発生しませんが、部屋の大きさ次第で、特定の周波数で発生します。

音は温度が20度の場合1秒間に約343m伝わります。(マッハ1はそのスピードです)例えば200Hzの音の場合343mに200回の振動があります。200Hzの1回の振動が進む距離は1.7mです。畳1枚に近いですね。6畳間の長い方では3.5mぐらいですから200Hzの音は2回振動して反射して帰ってきます。自分の座っている場所に壁から帰って来た同じ向きの波があると増幅し、反対向きの波があると打ち消し合うので、ベースの特定の音が大きくなったり小さくなったりしたら定在波を疑いましょう。

逆相
返ってくる音が逆相になっていて打ち消し合う

同相
返ってくる音が同相になっていて増幅しあう

定在波のコントロール

定在波は元音と反射音で出来ますから、その距離や減衰をコントロールすれば軽減出来ます。
距離は幾つかのポイントがあります。
スピーカーを壁と壁の間のどの位置にセッッティングするかで変わりますが、壁からあまり離してセッティング出来ない場合は、カーテン等で減衰させて、反射音を小さくする事で反射音を少なくします。自分の後ろ側に多く吊るすと効果が大きいでしょう。

定在波を減らす方法
カーテンで返ってくる音を小さくする事で、定在波を減らす方法

スピーカーを天井と床の間のどの位置に置くかでも変わります。真ん中は前後だけでなく、上下にも定在波を生み易いので避けましょう。
壁と壁の間や、床と天井の間を奇数で割って、その中の耳に近い所に置くと定在波の発生を最小限に抑えられます。
置く位置と吸音でコントロールしてみてください。
左右も同様に奇数分割した中でいい位置を探してみましょう。

音場調整グッズ

スピーカースタンドも効果があります。 ツイーター(高音スピーカー)が耳の高さになる様に高さを調整するのが基本です。自分と2本のスピーカーが正三角形を作る様に場所、スピーカーの向き等を調整してください。

SP Stand
SP Stand

スピーカーのセッティングの理想は空中に浮いている事ですが、そうもいきません。 スタンドの足が尖っていたり、振動しない素材で出来ていたり、音を床に伝えない為の工夫がいくつもされていると思います。

鉄製のスピーカースタンドや合板のカラーボックス等が場合、それ自体が共振してしまう事があるので、砂を詰めるとスタンドが振動しなくなります。カラーボックスには一旦小さな穴をあけて砂を入れた後に塞ぎます。

砂

カラーボックス
カラーボックス

自宅等で棚と共用にしなければならない場合、ワイヤーで出来た棚も効果があります。ワイヤーなので、スピーカーの下に板が無く、半分浮いている状態に近くなります。こちらも棚自体が共振しない様に注意が必要です。

インシュレーターと言う、スピーカーの下に挟んで、下方に振動を伝わらなくするのも効果があります。机や棚に置かなければいけないとき等、下の板が振動するのを防ぎます。

インシュレーター
インシュレーター

残響と音圧

部屋が響きすぎていてもリバーブを掛ける量が少なくなったり、位相が悪くなったりしますが、響いているからと言って吸音材等で吸い過ぎると、幾らボリュームを上げても聞こえにくい様な詰まった音になり、気持ちいい音圧を得られなくなります。
音圧と残響は相反する物ですが、両方が適度になる様に考えながら調整しなければなりません。

これはコントロールルームの音場調整をしていた時の写真ですが、化粧壁の中は、前方の壁には吸音材の手前に木を張って音圧を高めてあります。後方の壁は吸音のみです。

コントロールルーム壁
コントロールルーム壁

コントロールルーム後壁
コントロールルーム後壁

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