DTMの基礎知識《準備編》モニタースピーカーの選び方

[記事公開日]2024/9/14 [最終更新日]2024/9/15
[編集者]神崎聡

モニタースピーカー

録音機材の中で一番大切なのがモニタースピーカーです。
何かを録音していても、ミックスをしていても、常に聞いて判断するのは、モニタースピーカーから出ている音だからです。私たちエンジニアが小さなスピーカーや大きなスピーカーを使ったり、ヘッドホンで聞いてみたりするのにも理由があります。

大きなスピーカーは、音質は良くわかりますが、バランスは大きい音量ゆえに間違う事が多いです。小さなスピーカーはバランス、ピッチ、タイミング等は良くわかりますが、低音が無かったり、高音も聞こえにくかったり、音質は良くわかりませんので、何を確かめたいかに寄って切り替えて使っているのです。

北城浩志"

ライター
シンセサイザー・プログラマー、音楽プロデューサー、レコーディング・エンジニア、マニピュレーター
北城 浩志

音楽プロデューサー、レコーディング・エンジニア、マニピュレーターとして椎名林檎のレコーディングに参加。マニピュレーターとして松任谷由実のレコーディングに参加。レコーディング&ミキシング・エンジニアとして、シンセサイザープログラマーとして、また作品のサウンド・プロデュースなど多方面で活躍する。リットーミュージックより「Pro が教える Vision for Macintosh」執筆。


  1. 位相の話
  2. モニタースピーカーの選び方
  3. 自分の基準(リファレンス)を作る

位相の話

空気の波、電気の波、音楽はいろんな波を扱います。波は一つでは無く、和音の様に一度にいろんな波(音)が存在します。
位相は 波と波の関係で、複数の波があれば、位相が生じます。
位相がいろんな事の邪魔をして悪く働いたり、位相をコントロールして音を加工したりもします。
二つの音が全く同じで全く逆の動きをする場合、それを足すと打ち消し合って無くなってしまいます。

逆相
逆相

反対に同じ動きをしている場合は、それを足すと倍に大きくなります。

正相
正相

いろんな場面で位相という言葉が出てきますので、覚えておいて下さい。

モニタースピーカーの位相

モニタースピーカーがアンプとの間をスピーカーケーブルで繋がれている場合、アンプのアウトのプラスとマイナス、スピーカーの端子のプラスとマイナスが合っていなくてどこかで逆に繋がってしまったら、2つのスピーカーから同じ音が出てくるボーカルやKick,Snare等、スピーカーの真ん中に定位するはずの音は両方のスピーカーが同じ方向に同じ量で動作するはずですが、逆方向に動作すると真ん中に定位するはずの音が真ん中で打ち消し合って、真ん中に定位しなくなって、耳の後ろにへばりつく様な、逆相の気持ち悪い音になります。まずは自分のスピーカーを確認してみて下さい。

モニタースピーカーの位相

モニタースピーカーの選び方

自分の作業用のスピーカーを購入する場合、どんなスピーカーを選んだらいいか、よく聞かれます。 まずは、その作業スペース(部屋)でどのぐらいの音量が適しているか?考えます。
自宅等の場合は近所迷惑も考えなければいけませんが、部屋に対して大きすぎるとスピーカーは十分に動く事が出来ずに、細かい部分を再生出来ません。折角大きなスピーカーを買っても、残念な結果になってしまいます。
その部屋で聞き続けられる音量、それが適正音量です。その音量を多少の余裕をもって鳴らせるスピーカーがその部屋に対して適正なスピーカーです。
自宅ならラジカセやコンポでも十分な音量が得られるでしょう。プロの自宅スタジオでもニアフィールドスピーカーをメインにしている方が多くいます。

スピーカーを補うヘッドホン

多分、自宅等で作業する場合、そんなに大きなスピーカーは選べないでしょう。ニアフィールドスピーカーと言われるスピーカーで十分ですが、どちらかと言うと小さなスピーカーの部類で低音は聞こえません。でも大きなスピーカーも置けないし、そんな時に役立つのはヘッドホンです。
ヘッドホンはどちらかというと大きなスピーカーで聞いているのと同じ効果を得られます。低音も聞こえて、高音も細かい所まで聞く事が出来ます。
しかし、大きなスピーカーと同様、ピッチやバランスは分かりにくいのです。
ヘッドホンとスピーカー、両方を使って判断しましょう。

録音用途なら:密閉型ヘッドホン

ヘッドホンもいろいろ種類があって選ぶのに困りますが、ボーカルやアコースティックギター等を録音する場合にも使う事があるのであれば、密閉型、もしくはイヤホン、インイヤー型じゃないと音が漏れて録音されてしまいます。
スタジオによく用意されているのは SONY MDR-CD900です。

SONY MDR-CD900
SONY MDR-CD900

ミックスで使うなら:オープンエアー型ヘッドホン

ミックスだけで使うのなら、オープンエアー型のヘッドホンをおすすめします。どちらかというとミッドフィールドスピーカー的に細かい音も聴こえるけど、長く聞いていても疲れません。聴いている時にヘッドホンの外にも音は聴こえますから、電車の中や、演奏を録音する時には使用出来ません。

Audio Technica ATH-AD1000
Audio Technica ATH-AD1000

自分の基準(リファレンス)を作る

どの様なスピーカーやヘッドホンを選んだとしても、それらを十分理解する事が大切です。いろんな音楽をそのスピーカーで聞いてみたり、そのスピーカーで作業した物を他で聞いてどう聞こえるか比べてみたり、そのスピーカーでこう鳴っているから大丈夫と言える自分の基準(リファレンス)を作らなければなりません。
スピーカーから出てくる音は部屋に影響を受けます。同じスピーカーを持ち歩いてレコーディングスタジオのコントロールルームにセッティングしても、スタジオによって音が変わります。
低い部分は顕著に現れますが、低音成分が持ち上がってブーミーに聞こえると、結果的にあまり低音成分を出さずに録音してしまう結果になり、他の所で聞いてみると低音が足りなく感じたりします。

よく聞いているCD等(リファレンスCDと呼ばれる事もあります)を聞いたりして、そのスピーカーがその部屋でどんな鳴り方をしているか、確かめる方法もあります。
しかし、注意しなければならないのは、売られているCDはミックスダウン・マスタリングという作業を経て作られていて、その作業では、どんな場所でも、ある程度いい音で鳴る様に考えられているので、CDでそのスピーカーがその部屋でどの様に鳴っているかをすぐに全て把握出来る訳ではありません。幾つかのCDを聞いて、このCDでは低音が解るとか、このCDでは位相が解るとか、決めて聞いてみるといいでしょう。

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