DTMのマイク選び|ダイナミックとコンデンサーの違い

[記事公開日]2024/6/2 [最終更新日]2026/5/10
[編集者]神崎聡

マイク

ボーカルやドラムなどの生音を録音するときに使うマイクには、構造の違うさまざまな種類があります。同じボーカルでも「クリアに録りたいのか」「臨場感を出したいのか」で向き不向きが分かれますし、ドラムならスネアとバスドラムで別々のマイクを使うのが普通。このページでは、宅録・DTM環境で最初に揃えたいマイクの種類と特徴、そして2026年現在の現行モデルから1本目におすすめできる定番機を8機種紹介します。

マイクの種類

ギターやボーカルを録音して作品にしたいなら、選択肢の中心はダイナミックマイクかコンデンサーマイクのいずれかになります。カラオケで手に持って歌う一般的なマイクがダイナミック、レコーディング現場でシンガーがスタンドで構えていたり、ラジオ・テレビの番組で使われている一回り大きなマイクがコンデンサーです。

コンデンサーマイクとダイナミックマイクは何が違うのか?

ダイナミックマイクの特徴

ダイナミックマイク

ダイナミックマイクは、振動板に取り付けたボイスコイルが磁界の中で動くことで電気信号を生み出す電磁誘導型のマイク。構造がシンプルで頑丈、外部電源も要らないため取り回しがよく、ライブのボーカルマイクや、ギターアンプ・ドラムなどの大音量楽器の集音で標準的に使われます。指向性は単一指向性(カーディオイド)が中心で、正面の音を狙って拾い、横や後ろからのカブリを抑えてくれるのが特徴です。

  • 耐性:頑丈・衝撃や湿気に強い
  • 価格:比較的安い(1万円前後から)
  • 電源:不要
  • 音質:中低域が太く、迫力のあるサウンド
  • 用途:ライブのボーカル、ギターアンプ、ドラム、近接の大音量ソース

コンデンサーマイクの特徴

コンデンサーマイク

コンデンサーマイクは、薄い振動板(ダイアフラム)と固定電極の間の静電容量の変化を電気信号に変換する方式のマイク。動作にファンタム電源が必要な代わりに、振動板を非常に薄く軽くできるため、息づかいやブレスといった微細なニュアンスまで拾えるのが最大の強みです。アコースティックギターや歌、ナレーションなどの繊細な音源を録るならまずコンデンサー、というのがDTMの定石。一方で衝撃や湿気には弱く、保管にはやや気を遣います。

  • 耐性:衝撃や湿気に弱い
  • 価格:比較的高い(1万円〜数十万円)
  • 電源:必要(+48Vファンタム電源)
  • 音質:繊細で解像度が高い
  • 用途:ボーカル、アコースティックギター、ピアノ、ナレーション

注意!コンデンサーマイクを使うための必須アクセサリ

コンデンサーマイクは、本体だけでは録音できません。最低限、以下の3点をセットで揃えておくと安心です。

まずはファンタム電源。+48Vの電源をマイクに送る仕組みで、コンデンサーマイクが動作するために必須です。マイク入力(XLR端子)を備えるオーディオインターフェースやミキサーには、ほぼ標準で搭載されています。手持ちのインターフェースに「+48V」または「P48」のスイッチがあるか確認しましょう。あわせて、ファンタム電源を通せる両端XLRのマイクケーブルを用意します。

次にショックマウント。コンデンサーマイクはとても敏感で、マイクスタンドを伝ってくる足音や机の振動まで拾ってしまいます。これを避けるためにマイクをゴム紐などで宙吊り状態にして固定するのがショックマウント。本体に純正品が付属していることも多いので、まずは同梱品を確認しましょう。

最後にポップガード。「パ行」「バ行」「タ行」などを発音したときに息がマイクに当たって生じる「吹かれ」(ポップノイズ)を抑えるアイテムで、ボーカル録音には必須。スタンドに挟むタイプが一般的で、メッシュ製・金属製のものがあります。

マイクの「指向性」とは?

マイクが「どの方向の音をどれだけ拾うか」を表すのが指向性です。代表的なものは次の3種類。

  • マイクの正面の音を中心に拾う「単一指向性(カーディオイド)
  • 正面と背面の両方から拾う「双指向性(フィギュアエイト)
  • あらゆる角度の音を均等に拾う「無指向性(オムニ)

コンデンサーマイクには指向性を切り替えられる多パターン対応モデルもありますが、宅録ボーカルやアコギ録りなど一般的な用途では単一指向性のものを1本持っておけば十分です。

カーディオイド(単一指向性)とスーパーカーディオイド(超単一指向性)

ダイナミックマイクの単一指向性には、通常のカーディオイドよりさらに正面方向への指向性を狭めたスーパーカーディオイドと、もっと狭いハイパーカーディオイドというバリエーションがあります。
側面からの音をほぼ拾わなくなる代わりに、ステージ上のモニタースピーカーに対するハウリング耐性が高いのが特徴。
マイクの正面から外れたときの音量低下が大きいため、弾き語りなどで頻繁に顔の向きが変わる人には扱いが難しい一方、しっかり正面で歌えるシンガーにとってはクリアでヌケのよい音を引き出せる強力な選択肢になります。

楽器用とボーカル用

ダイナミックマイクは、用途別に「ボーカル用」「楽器用」と分かれているモデルが少なくありません。
代表的なのはShure SM57(楽器用ダイナミックの定番)とShure SM58(ボーカル用の定番)の関係で、ほぼ同じカプセルを使いながら、グリル形状や周波数特性のチューニングを変えて棲み分けています。購入時には用途表記を確認しましょう。

一方コンデンサーマイクは万能寄りで、よほど特定のキャラクターを狙わない限り、ボーカルもアコギも1本でカバーできるモデルが多数派です。

マイクの選び方

ここからは、宅録・DTMの最初の1本としておすすめのマイクを「ダイナミック/コンデンサー」「入門価格帯/少し予算あり」の4カテゴリに分けて紹介します。

初めての1本におすすめのダイナミックマイク

Shure SM58

1966年の登場から60年近く、世界中のステージで使われ続けている「キングオブダイナミックマイク」。中域を中心とした密度感のあるサウンドはどんなジャンルにも馴染み、ライブでも宅録でも安心して使える万能機です。重量・形状・耐久性のバランスが絶妙で、落としても壊れにくいタフさは数あるダイナミックマイクの中でも群を抜きます。1万円を切る入手しやすさもあり、迷ったらまずSM58、というのが業界共通の答え。日本国内では通常版に加え、スイッチ付きのSM58-SE、USBアダプター同梱のSM58X2uなどのバリエーションも現行で展開されています。

AKG D7

オーストリアの名門マイクメーカーAKGが手がけるリファレンスダイナミックボーカルマイク。指向性はスーパーカーディオイドで、正面方向への指向性が鋭くハウリングに強いのが特徴です。AKG独自のデュアルレイヤーVarimotionダイアフラムを採用し、ダイナミックマイクとしては開放感のある高域と、コンデンサーに近い繊細な解像感を両立。ゲインが高く小さな声から大きな声まで余裕をもって再現できるため、宅録のボーカル録りはもちろん、ライブのリードボーカル用としても定評があります。

AKG D7 – Supernice!DTM機材

初めての1本におすすめのコンデンサーマイク

Audio-Technica AT2020

Audio-Technica AT2020

国産マイクメーカーのトップランナー、オーディオテクニカが手がけるエントリーコンデンサーの定番。1万円前後で手に入りながら、最大SPL 144dB・自己ノイズ20dBと数字面でも実用十分なスペックを備えています。オーディオテクニカらしいクセの少ないニュートラルなサウンドが持ち味で、声・アコギ・ナレーションなど何を録っても素直に収録できるため、後段のEQ・コンプでも扱いやすいのが宅録初心者にうれしいポイント。USB版の「AT2020USB+」もありますが、オーディオインターフェースを持っているなら音質的に有利なXLR版の本機がおすすめです。

audio technica AT2020 – Supernice!DTM機材

Lewitt LCT 440 PURE

Lewitt LCT 440 PURE

AKG出身のRoman Perschonが2009年にオーストリア・ウィーンで設立したマイクメーカーLewitt。同社のロングセラー入門機が、この1インチ大口径ダイアフラムを搭載した「LCT 440 PURE」です。自己ノイズわずか7dB(A)・ダイナミックレンジ133dB(A)という上位機級のスペックをエントリー価格で実現し、繊細で抜けのよい高域、解像感のあるアコギ録りで高い評価を獲得しています。AT2020と比べるとやや派手で煌びやかなキャラクターで、ボーカルの抜けやアコギの弦の鳴りを前面に出したいときに好適。なお2026年4月にはマッチドステレオペア仕様も追加され、宅録のステレオ収録にもLCT 440 PUREを選べるようになりました。

Lewitt LCT 440 PURE – Supernice!DTM機材

少し予算がある人におすすめのダイナミックマイク

Sennheiser e 935

Sennheiser e 935

ドイツ・ゼンハイザーの「evolution 900」シリーズに属するハンドヘルドダイナミック。指向性は単一指向性(カーディオイド)で、40Hz〜18kHzのワイドレンジな周波数特性を持ち、ボーカルの息づかいまでクリアに描き出します。アルミダイキャストの堅牢な筐体・ショックマウントカプセル・ハム抑制コイルなど、ステージで酷使される前提の作り込みが行き届いており、ライブから宅録まで幅広く対応可能。タイトな低域とクリアな高域でアコースティックギターのオンマイクにも転用できる懐の深さがあり、SM58の次に欲しい1本としてYouTubeなどでも人気を集めています。

SENNHEISER E935 – Supernice!DTM機材

Shure KSM8 Dualdyne

Shure KSM8 Dualdyne

2016年に発表された、世界初のデュアルダイアフラム方式を採用したハンドヘルドダイナミック。前後2枚のダイアフラムを組み合わせることで、ダイナミックマイクの最大の弱点といわれる近接効果(マイクに口を近づけると低域が膨らむ現象)を抑え、距離が変わってもバランスの崩れない明瞭なサウンドを実現しています。ダイナミックマイクでありながら、ソースの空気感や質感までしっかり捉える解像感の高さが特徴で、ボーカルだけでなくスピーチ・配信用途でも活躍。価格はダイナミックマイクとしてはかなり高価ですが、コンデンサー上位機ほどではなく、「ライブとレコーディングの両方を1本でこなしたい」プロ志向のユーザーから根強い支持を得ています。

SHURE KSM8 – Supernice!DTM機材

少し予算がある人におすすめのコンデンサーマイク

AKG C314

AKG C314

伝統の銘機AKG C414系の血統を受け継ぐミドルクラス・マルチパターンコンデンサー。デュアルダイアフラム構造をとりつつ、C414がDCバイアス方式なのに対しC314はバックエレクトレット方式を採用してコストを抑えています。指向性はカーディオイド/オムニ/フィギュアエイト/ハイパーカーディオイドの4種から切替可能で、ボーカル・アコギ・ピアノからオーバーヘッドまで1本で幅広くカバー。最大SPL 155dB(PAD ON時)・20dB PAD・100Hzローカット内蔵と業務機の機能をひと通り備え、宅録の主力1本目としてはもちろん、プロのスタジオでもサブマイクとして信頼される実力派です。

AKG C314 – Supernice!DTM機材

Neumann TLM 102

Neumann TLM 102

「コンデンサーマイクの王者」と称されるドイツ・ノイマンの中で、もっとも導入しやすい価格帯に位置するラージダイアフラム機。最大SPL 144dB・自己ノイズ12dB(A)というハイエンド寄りのスペックを、コンパクトな筐体に詰め込んでいます。ノイマンらしいなめらかで品のある中高域と、過大入力にもびくともしない懐の深さを両立しており、家庭での宅録ボーカル・ナレーションは本機1本でほぼすべてまかなえる完成度。最近ではホワイトエディション(限定1000台)もリリースされ、人気の根強さを示しています。

NEUMANN TLM102 – Supernice!DTM機材

以上、宅録・DTMの「最初の1本」におすすめのダイナミック/コンデンサーマイク8機種を紹介しました。ライブでも使い回せる定番からスタートしたいならSM58、宅録ボーカルとアコギを両立したいならAT2020かLCT 440 PURE、長く使える1本を最初に揃えたいならe 935かTLM 102あたりが安全な選択肢です。お気に入りの1本を見つけて、レコーディングをスタートさせてください。

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