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「昨日まで動いていたプロジェクトが開かない」「HDDから異音がしてデータが読み込めない」――DTMやレコーディングに携わる人にとって、これほど血の気が引く瞬間はありません。
OSやアプリは再インストールできても、魂を込めて記録した演奏データは、失われたら二度と戻ってこないのです。
データ損失による作業の遅れやスタジオ代の無駄、そして精神的ダメージは計り知れません。
しかし、正しいリスク管理さえしていれば、万が一のハードウェアトラブルも恐れる必要はなくなります。
本記事では、現役エンジニアである筆者が実践している「絶対に仕事を止めない多重バックアップ術」と、外部のクリエイターやスタジオと安全にデータをやり取りするための「DAWデータ受け渡しの知識」を解説します。
大切な楽曲を人為的ミスや機材トラブルから守るため、今すぐ実践できる安全対策を身につけましょう!
音楽プロデューサー、レコーディング・エンジニア、マニピュレーターとして椎名林檎のレコーディングに参加。マニピュレーターとして松任谷由実のレコーディングに参加。レコーディング&ミキシング・エンジニアとして、シンセサイザープログラマーとして、また作品のサウンド・プロデュースなど多方面で活躍する。リットーミュージックより「Pro が教える Vision for Macintosh」執筆。
DAWのデータはすなわちコンピューターのデータですので、何らかのトラブルで瞬時に消えてしまう事もあります。
古いデータで新しいデータを置き換えてしまうと新しいデータは無くなってしまいます。
データ損失で失われる作業やスタジオ料金等は時として膨大な金額と大きな精神的損失を伴います。
OSやアプリケーションはインストールしなおせば復活出来ますが、演奏を記録したデータは二度と復活出来ません。
私も今まで数台のハードディスクが壊れました。しかし、バックアップを取っているので、一度も仕事に支障を来した事はありません。
ハードディスクと言えども永遠に記憶しておく所と考えず、一時的な記憶場所と考え、大切なデータ(録音データ)は、作業用のハードディスクとバックアップ用のハードディスクを用意して、2カ所に保存しましょう。
私の場合は、作業用と、バックアップ用と、更に長期保存用バックアップの3つに常に保存してあります
SSDはスピードは早いですが、静電気や熱等で一瞬にしてデータが無くなる事が考えられますので、長期保存には向きません。
ハードディスクはSSDほどスピードは早くありませんが、長期保存には向いています。
内臓ハードディスク(SSD)で作業している方を見かけますが、容量も限られますので、録音量が少なければそれでも足りるかもしれませんが、出来れば、幾つかのハードディスクに役割分担させておいた方がいいと思います。
ハードディスクも昔よりトラブルは少なくなりましたが、人為的ミスによるトラブルが多いと思いますので、トラブルを避ける方法を紹介しておきましょう。
私の場合、7つのHDを常に繋いであります。

いわゆる内臓ハードディスクです。
OSとアプリケーションを入れてあります。
次の5つのハードディスクはハードディスクが5つ入るレイドケースに入れてありますが、レイドはさせずに、個別に認識できる様にしてあります。
ワーク用の実際作業している最中のハードディスク。
スピードを優先してSSDを使用しています
作業している最中のデータをそのままバックアップしておくハードディスク。
短期保存の安全を考慮してのハードディスクです。
長期保存用の大きめの容量のハードディスクです。
僕の場合2TBで半年で埋まってしまいますので、埋まったら、その度に、新しいハードディスクにします。
ソフトシンセのデータを入れておくハードディスク。
少なければSystem HDと一緒でも構わないかもしれませんが、私の場合、3TBあるので、別にしています。
iTune等、リスニングオーディオのデータやムービーです。

Macの場合TimeMachineというSystem HDをバックアップしてくれるソフト?が付いて来ます。
オーディオデータまでTimeMachineでバックアップすると大変ですので、System HDだけをバックアップする様にしています。
System HDが一番不具合を起こす事が多いので、OSとアプリケーション(それに伴うシリアルナンバープロテクトデータ)だけにしておくと、リカバリーの時間も早くて済みます。
私も、何度かお世話になりました。
常に繋いでいる必要は無く、1ヶ月に一度ぐらいバックアップする時に繋げば、大丈夫です。

これは、常に繋いである訳ではありませんが、1TBのSSDで、スタジオに行く時等、コピーして持って行きます
Sound HDや、iTuneHDは更に外付けHDにバックアップしてあります。
ここまでしておけば、人為的ミスも少なくなり安全です。

ハードディスクが壊れたり、ハードディスク購入時に相談される事もしばしばありますが、ハードディスクが壊れるのはハードディスク自体より、ケースの電源部分や変換部分であったりしますので、バックアップ用にはハードディスクケースにハードディスクを出し入れ出来る物をお勧めしています。
ケースが壊れても、交換は出来るし、同時に使うのでなければ、中身を変えて使用する事も出来ます。

写真 Sync!Sync!Sync!LE
それでも、手作業でコピーしたりしていると、ミスして新しいファイルを古いファイルで置き換えたりしそうですが、私の場合必ずWork Backupと保存用Backupの2つのハードディスクにバックアップを作成していますが、それも間違わない様に、バックアップ用のSync!Sync!Sync!LEというソフトウェアを使って、作業用のハードディスクをバックアップのハードディスクに丸ごとバックアップします。
バックアップ用のソフトウェアは新しくなったファイルだけをコピーして、以前からあるファイルはコピーしませんので、時間も短縮出来ます。
作業の合間に、休憩時間に一日に何度もバックアップします。
常に一方向(ワークからバックアップ)にコピーするので、新しいファイルを古いファイルで置き換えてしまう心配もありません。
追加コピーを使用し、同期コピーする訳でも無いので、ワークから削除したファイルもバックアップ側には残ります。
非圧縮でバックアップしてくれる為、1つのファイルを呼び戻す事も容易で、万が一トラブルがあったとしても、バックアップのハードディスクからそのまま作業を再開出来ます。
それでも、先日、古いデータを開いてみる機会がありましたが、データ自体はバックアップしてるので、完全に保存されているのですが、ProTools 4.3(20年前のProTools)であった為、セッションファイルは認識せず、オーディオファイルも、規格が違って、SoundDesignerII Fileで読めず、読めたのは、スタンダードMIDIファイルだけ、という事がありました。
ご自身で楽曲管理される方は、定期的に楽曲ファイルを開いて、新しい楽曲ファイルとして保存される事をお勧めします。
ミックスを他の人にしてもらったり、楽器をダビングしてもらったり、DAWのデータを受け渡す事があるかと思います。
まず、自分と相手のDAWが同じかどうか、確かめましょう。
同じであれば、その曲のフォルダごとZip圧縮して送るのが確実です。
違うDAWの場合、ソングファイルやセッションファイル等という、曲全体の音の位置やテンポなどを管理しているファイルは読めませんので、オーディオファイルとして送る必要があります。
通常WAVファイルで送りますが、WAVファイルにも、サンプリング周波数 96kHz 48kHz 44.1kHz ビット数 32bit 24bit 16bitと組み合わせがいろいろありますので、相手が使える規格が確かめましょう。
そして、各WAVファイルは全てソング(セッション)のスタート位置から始まってなければなりません。
WAVファイルのスタート位置がトラックによってバラバラだと、受け渡された方は滅茶苦茶なアンサンブルを聞く事になります。
たとえ、最後の方に少しだけ演奏されるトラックでも、前半は無音になりますが、全てソング(セッション)のスタート位置からのファイルにしてください。
前述のモノトラックをモノファイル、ステレオトラックをステレオファイルも忘れずにトラックごとに処理しましょう。

ファイル1本化前

ファイル1本化後
途中リタルダンド等テンポ情報を必要とする場合はSMF(スタンダードMIDIファイル)を書き出して一緒に送るといいでしょう。

テンポ情報
例えば、ギターのダビングをしてもらう為に送るファイルなら、ステム(パートごとにステレオになっている)ファイルでもいいでしょう。
ギタリストはドラムやベース等、多少のバランスの変更も出来ますし、全部をバラバラに送るより、送信するファイルの量も減らせます。
Clickもオーディオで送っておけば、確実なテンポ情報を知らせられます。

ステムファイル

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