プロが教えるミックスダウンの基本:下準備からエフェクトの正しい順番まで

[記事公開日]2025/12/31 [最終更新日]2025/12/31
[編集者]神崎聡

ミックスダウン

さあ、全ての録音作業が終わったら、いよいよ、ミックスダウンです。ミックスダウン、トラックダウンとも言われますが、全てのバラバラに録音した素材はリスナーが聞ける状態ではありませんので、それらを、CD等にして、リスナーに届ける為に左右(LR)の2チャンネルにまとめる作業です。

ミックスダウンの作業では音質、音量、パン(左右)、エフェクト(リバーブ、ディレイ等)を調整します。重要なのはバランス(各楽器の音量)ですが、一旦バランスを取ってからエフェクトするとバランスが変わってしまうので、各楽器の音をだいたい決めた後にバランスをとっていきます。

それでは、ミックスダウンの時に気をつけなくてはいけない事を説明しましょう。

北城浩志

ライター
シンセサイザー・プログラマー、音楽プロデューサー、レコーディング・エンジニア、マニピュレーター
北城 浩志

音楽プロデューサー、レコーディング・エンジニア、マニピュレーターとして椎名林檎のレコーディングに参加。マニピュレーターとして松任谷由実のレコーディングに参加。レコーディング&ミキシング・エンジニアとして、シンセサイザープログラマーとして、また作品のサウンド・プロデュースなど多方面で活躍する。リットーミュージックより「Pro が教える Vision for Macintosh」執筆。


  1. ミックスダウンの下準備
  2. ミックス時のエフェクター使用法
  3. ミックスダウンのテクニック

ミックスダウンの下準備

自分のモニター音量

モニターの項でも述べましたが、 適正音量でいつも聞く事を意識し、同じ音量で作業する事は重要です。ミックスレベルが大きくなってメーターが張り付いて歪んでしまう等の経験は無いですか?多分、ミックスする時に小さなモニター音量で始めてしまった為に、聞こえないのでついつい聞こえる様に大きくしてしまったのでしょう。
一度、ラフミックスして適正レベルになる様に、聞いてみてから作業するのもいいですし、ドラム等がある場合、Kick単体でVUメーターで-10dBぐらい振れているとこから始めるとミックスが出来上がった時に丁度いいレベルに仕上がるはずです。
いつも同じ音量で作業していると、どの機材(プラグイン)がどれぐらいのレベルを入れると、どんな反応をするかも解りやすくなります。

エフェクトを外す

もし、他の人からミックスを頼まれたら、EQ等のエフェクトは一旦はずしてみるといいでしょう。極端なEQがされていたり、Compされている場合、それが意図的ならば、使う事もありますが、どんな録音がされているかは確認して、その上で作業した方がいいでしょう。

全パートオーディオ化

MIDIトラックやInstrumentsトラックがある場合は、コンピューターの処理の順番次第でタイミングが変わる事もあるので、一旦オーディオトラックとしてフリーズやコミットしてオーディオ化してからミックスを始めましょう。またソフトシンセはかなりコンピューターのパワーを必要とする物も多いので、コンピューターのパワーをミックスのプラグイン等に回す事が出来ます。

必要に応じてモノラル化

これは、よくある事ですが、1本のマイクで録音したはずの、歌、ベース、Drums(個々のマイク)等をステレオファイルで送って来られる場合があります。左右が同じメーターの振り方をしていて、真ん中に聞こえる場合、Position Meterやリサージュメーター等で1本の線に見える場合は左右が同じ音ですので、片方だけ(モノラル化)にして3dBレベルを上げれば意味は同じです。

処理するPlugIn等のパワーも半分で済みます。ファイルを送る側の方も、モノラルファイルで送っておけば、半分の送信容量(時間)で済みます。

Position Meter
Position Meter

モノラルオーディオファイル

ミックス時のエフェクター使用法

2種類のエフェクター

エフェクターの項でも説明しましたが、エフェクターは大きく分けて2種類のエフェクターがあります。1つは、その音そのものを変えてしまうエフェクター。 これはInsertして使用します。イコライザー(EQ)や、コンプレッサーやゲート、エキスパンダー等のダイナミクスと呼ばれる物、ギターアンプシミュレーター等、ピッチ修正もそうです。

もう1つは、元音を素材に別の音を作り出し、付け加えるエフェクター。Sendで音を分けて、Aux Fader等で受け取りエフェクト分だけを付け加えます。リバーブ等の残響系、ディレイ等がそうです。

Insertの繋ぎ方

前者の その音そのものを変えてしまうエフェクターの場合インサートと呼ばれる所にセッティングします。殆どのDAWの場合、音は画面の上から下へと進んで行くので、複数のエフェクターを掛ける場合、順番に寄って、音質が違ってしまうので注意が必要です。

コンプとイコライザーの接続順

インサートされるエフェクターで多く使われるのはコンプレッサーとイコライザーですが、この2つの繋ぎ方の場合、繋いである2つのエフェクターは同じですが、順番が違います。通常は右側の様にコンプレッサーを掛けて、程よいレベルにした後でイコライザを掛けて音質を調整します。SSLやNEVEの様な大型コンソールにこの順番で用意されているのもその為です。
逆にイコライザーを先に掛けて、コンプレッサーを後にした場合、イコライザーで高音を強調したとしても、その高音でコンプレッサーが潰されて、低音も一緒に余計潰されてしまいます。間違いとは言い切れませんが、予測が効かない方法です。

コンプレッサー/リミッター

ドラムはコンプレッサーとリミッターとを使い分けたり、同時に使ったりします。アタックの強い楽器ですので、小さく録音しているつもりでもすぐにピークメーターで振り切ってしまいます。その場合、リミッターで大きい部分だけを叩く(潰す)様にして、ミックスレベルを稼ぎます。Waves L1,L2,L3の様な、リミッターとして単体のエフェクターの場合もありますが、コンプレッサーのレシオを大きくして、スレッショルドを大きなレベルに設定し、アタックを比較的早め、リリースを早めにすると同じ効果が得られます。

Limitter
写真 Limitter

ドラムのコンプサウンドと言われる様な音はドラムを2チャンネルにまとめてからコンプレッサーをグループとして掛ける場合もあります。TomやSnare等、余韻をコントロールしたい場合もあります。これらの場合はアタックは遅めで音のアタックを残し、リリースは早めで響きが多く聞こえる様にします。

Drum Comp
写真 Drum Comp

ベースは録音の章で書いた様にレベルが大きくなりがちな楽器なので、振り切れない様に自然に掛けます。リリースを早くすると、サスティンを伸ばす事が出来ます。
Compをかけすぎると詰まった感じになってしまうので、どれぐらい掛かっているかのメーターが 最大-5〜-7dBぐらい振れるぐらいでしょう。

Bass Comp
Bass Comp

アコースティックギターは、ドラムのリミッター的にアタック部分だけを押さえて使うと自然でしょう。演奏の感じはそのままにピークだけを押さえましょう。

Guitar Limitter
Gtr Limitter

イコライザー

イコライザーは修正的に考えて、本来は録音する際のマイクで音を作るのが基本です。どうしても録音してしまった音が気に入らない場合にその部分を修正します。イコライザーでどうにかなるだろうと思う事が多いかもしれませんが、過激に処理すると、位相がずれて変な音になっていくので、最小限にとどめたいものです。
各楽器のイコライジングは録音時のイコライジングと同じですが、録音時に足りなかった分を追加する、多すぎた所を削るぐらいで考えるといいでしょう。AMラジオの様に低音や高音が無い場合のエフェクト等にも使用します。

フィルター

ローカットフィルター(ハイパスフィルター,HPF)は低音をカットし、ハイカットフィルター(ローパスフィルター,LPF)は高音をカットします。シンセサイザーにあったフィルターと基本的には同じですが、レゾナンスはありません。ハードウェアのミキサーではカーブは固定でしたが、DAWではカーブも変えられます。

フィルターはイコライザーの一部と捉えられがちですが、本来は別々に使われるべきです。 不必要な低音、高音がある場合はコンプレッサーよりもフィルターを前に繋いで使うと、コンプレッサー等にとって不必要な音が入力されないので、コンプレッサーは思う存分仕事をしてくれます。
コンプレッサーが突然意図せずに振れたり、思い通りの動きをしてくれない場合はCompの前にローカットフィルターを入れると効果があります。その後で、EQすれば、思い通りのEQが出来るでしょう。

ミックスダウンのテクニック

Send Rcv

センドレシーブは、音を元に別の音を作り出し、付け加えるエフェクターの掛け方ですが、元の音はそのまま聴こえなくてはいけませんので、Send(センド)やBus(バス)と呼ばれる部分で音を分けます。他に音を送る回路を作って、リバーブ等に送ります。リバーブ等からはリバーブ等成分だけが出力されMixerで混ぜ具合を決めます。

ProToolsの場合はBusで受け取るAuxFaderを用意して、そこにリバーブ等をインサートします。1つのリバーブを複数のチャンネルから送る事が出来るので、CPU(DSP)のパワーの節約にもなります。リバーブのPlugin内にDryとWet(リバーブ成分)のバランスを決める値があったら、100%(リバーブだけ)になる様にしておいてください

Send Rcv Block
図 Send Rcv Block

Soloにしてもリバーブをつけて聞きたい

チャンネルをSoloボタンを押してそのチャンネルだけを聞く事が出来ますが、そのままだと他のチャンネルは全てミュートされ、リバーブも掛からずスッピンの音で聞く事になります。
スッピンの音を聴きたければそれでも構わないのですが、ボーカル等Soloにしてもリバーブを着けて聞きたい場合、リバーブのトラックのSoloボタンをインアクティブにする事によって、リバーブはミュートされずにリバーブを着けて聞く事が出来ます。DAWソフトや卓によってはSoloSafeと表示される物もあります。

Solo Safe
図 Solo Safe

プリとポストって何?

センド/レシーブでエフェクターを使用する場合、センドの所から、エフェクターに送る量を決めますが、すぐ近くにポスト(Post)と書かれたスイッチがあります。
ポストの反対はプリです。プリは前、ポストは後ろという意味ですが、では、何の前か後か?
フェーダー(音量)です。

通常のポストの場合、フェーダーで聴こえるレベルを決めて、そのレベルに応じたレベルで送られますが、プリのスイッチを押すと、フェーダーのレベルに関係なくセンドレベルに応じてエフェクターに信号が送られます。
フェーダーを下げて、原音が聴こえなくなっても、リバーブやディレイには送られて、残響だけ残るといった具合です。
プリ/ポストは場合に応じて使い分けますが、Mixの殆どの場合はポストでしょう。

PrePost BlockDiagram
図 PrePost BlockDiagram

まとめてコンプレッサーやイコライザーを掛ける

Send Rcvは1つのリバーブやDelayをいろんなチャンネルに掛ける方法でしたが、コンプレッサーやイコライザーはSendRcvでは掛けても音がダブってフランジングしてしまいます。ドラム等でまとめてコンプレッサーやイコライザーを掛ける場合はグループを作ります。

例えばドラムをまとめてコンプレッサーを掛ける場合、ドラムの各トラックのアウトプットをバスに送って、Auxトラック(ProToolsの場合)やGroupチャンネルを用意し、インプットを各トラックから送られたバスにしてオーディオを受け取ります。そこにコンプレッサーを掛けると、ドラム全体に対してコンプレッサーが掛かります。

注意点として、各トラックにコンプレッサーを掛ける場合はフェーダーの前にコンプレッサーがある為にフェーダーを動かしてもコンプレッサーの掛かり具合は変わりませんが、グループに掛けたコンプレッサーは各チャンネルのフェーダーの後になりますので、掛けた後に各チャンネルのフェーダーを操作するとコンプレッサーの掛かり具合が変わりますので、あらかじめバランスを取ってから掛ける様にしましょう。

グループコンプ
図 グループコンプ

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