2021年:オーディオインターフェイスの選び方とおすすめモデル[記事公開日]2020年10月21日
[最終更新日]2022年03月31日

オーディオインターフェイス Steinberg UR24C

DTMに必要な機材のページでも紹介しましたが、オーディインターフェイスはDAWソフトと並び、パソコンでエレキギターやアコースティックギター・ボーカルや生楽器を録音するなどの「音楽制作」に必要不可欠な機材です。本来はDAWソフトとオーディオインターフェイスは個別に用意する必要があるものですが、近年ではほとんどのオーディオインターフェイスにDAWソフトが付属するため、DTMをするのに最初に用意するべきものは、実質的にオーディオインターフェイスだと言えるでしょう。

ところがオーディオインターフェイスを選ぶにあたってはいくつかの専門知識が必要になり、またたくさんのメーカーから多数の製品がリリースされているため、どの製品を選ぶべきかを判断するのは大変難しい事です。そこでこのページでは、DTM初心者が初めてオーディオインターフェイスを選ぶ際に注意しておきたいポイント・用途別に合わせたオススメのオーディオインターフェイスを紹介します。

オーディオインターフェイスとは?

Universal Audio Apollo Twin
家庭用モデルは弁当箱くらいのサイズが一般的

オーディオインターフェイス (オーディオI/F、オーディオI/O)は、コンピューターでサウンドを入出力するための機器です。大きさはUSBハードディスク程度のものから1Uラックサイズのものまで様々で、サイズが大きくなるのと比例して性能も上がるのがほとんどです。

パソコン本体にもヘッドフォン端子が備わっているのでリスニングしたり音声を入力することもできますが、ギターやボーカルを繋ぐ専用のケーブル端子を装備しているわけではなく、また録音性能自体も優れているわけではないので、パソコン単体では音楽制作ができるほど高性能ではありません。

オーディオインターフェイスは、

  • ボーカルマイクを繋ぐことができるXLR端子
  • ギターケーブルを繋ぐ標準ジャック(TRSフォン)
  • モニターを繋ぐ音声出力端子

などの接続端子を装備しています。オーディオインターフェイスを使って録音することでレコーディングの際のノイズは圧倒的に抑えられ、レイテンシー(※1)は限りなく抑えられ、快適で高音質なレコーディングが可能になります。またギターやベースのインピーダンスに最適なHI-Z入力端子、高音質での録音が可能なコンデンサーマイクを使うためのファンタム電源(※2)、マイクの微弱な信号を増幅させる「マイクプリアンプ(※3)」などを搭載しているため、録音する楽器にあわせて美しく高音質でのレコーディングが可能になるのです。

※1 レイテンシーって何?

オーディオインターフェイスは、ギターやボーカルマイクから入力されてくるアナログ信号を、パソコンで扱うことのできるデジタル信号に内部で変換します。DTMの世界では、この「変換処理の際に生じる遅れ・時間のズレ」のことを”レイテンシー”と言います。オーディオインターフェイスに繋いだ楽器で音を鳴らしてから、パソコンから(モニターやヘッドフォンを介して)聞こえてくる音のコンマ何秒のズレ・音の遅延、これがレイテンシーです。

※2 ファンタム電源とは?

ファンタム電源は、コンデンサーマイクを動作させるのに必要な電源です。多くのミキサーやオーディオインターフェイスに備わっているもので、一般的に48Vの電源です。多くのオーディオインターフェイスで、「+48V」と書かれたボタンをONにするとコンデンサーマイクの使用が可能になります。

※3 マイクプリアンプとは?

マイクプリアンプは、マイクから入力された音を増幅しながらクリアな音質にする装置で、音質の良いレコーディングのためには欠かせない機材です。市販されているオーディオインターフェイスの多くは、すでにマイクプリアンプが内臓されているので、マイクプリアンプ内臓のオーディオインターフェイスを持っていれば、独立したマイクプリアンプはなくても、高音質レコーディングが可能です。

オーディオインターフェイスの選び方

オーディオインターフェイスを選ぶにあたってどのようなポイントに着目していけばよいかを、順番にみていきましょう。

1) 入出力端子を確認する

ギターやベースを録音したい/ボーカルを録音したい/マイクを2本使って録音したいなど、人によってオーディオインターフェイスの用途は様々です。自分がやりたい事ができるかどうか、オーディオインターフェイスを選ぶ時は、まず入出力端子の数を確認してみましょう。

製品のカタログには2in/2out、4in/4outなどと表記されています。
「in:入力端子」
「out:出力端子」
ですので、この場合は

  • 2in/2out:2つの入力端子を装備/2つの出力端子を装備
  • 4in/4out:4つの入力端子を装備/4つの出力端子を装備

ということなります。
モデルによってはS/PDIFなどの”デジタル入出力端子も含めた数”を記載しているので、ギターやマイクを何本繋ぐことができるか知りたい場合は「アナログ入出力」に着目して下さい。

接続端子を自分で調べてみよう

製品カタログにアナログ入出力が記載されていない場合もあります。製品のフロントパネル/リアパネルを確認し、自分で判断する力も必要です。

Roland QUAD-CAPTURE Roland QUAD-CAPTURE

では、Rolandから2011年に発売された「QUAD-CAPTURE」を見てみましょう。こちらの製品は公式カタログ4in/4outと記載されています。フロントパネルに標準フォーン/XLRどちらにも対応するINPUTを2系統装備、どちらもマイクプリアンプを搭載し、うち一つがHI-Z入力に対応しています。ギターやベースの録音に対応、マイクを使ってアコースティックギターやボーカルの録音に対応、2つの楽器の同時録音にも対応しています。リアパネルにはモニター出力に適したTRS標準フォーンタイプのステレオ・アウト端子を装備。アナログ入手力は「2in/2out」であることがわかります。

コアキシャルのデジタル入出力、MIDI入出力を装備し、全体で「4in/4out」となっているわけです。

アナログ入力端子の種類

アナログ入力端子

入力端子は、主に上画像の3タイプが存在します。

  • ①XLR:主にマイクの接続に使う
  • ②標準フォーン:主にエレキギターやベースの接続に使う
  • ③コンボジャック:XLR、標準フォーンどちらのケーブルも接続できる端子

エレキギターやエレキベースなど、インピーダンスの高い楽器は専用のHI-Z入力端子に繋ぎます。ギターやベースを録音したいという人は、HI-Z入力端子が搭載されているモデルを選びましょう。

マイクには大きく分けてダイナミックマイクとコンデンサーマイクの2種類があります。ダイナミックマイクは簡単に接続して使用することができ、丈夫で、コンデンサーマイクより手頃な価格で手にいれることができます。コンデンサーマイクはダイナミックマイクよりも高価で、デリケートなため取り扱いや保管に注意が必要ですが、よりクリアで微細な音まで録音することができます。またコンデンサーマイクを使用するにはファンタム電源が必要となりますので、コンデンサーマイクを使って録音したいという人は、ファンタム電源が搭載されているか確認しておきましょう。

出力端子の種類

tanshi

アナログ音声出力用のケーブルは、主に

  • 標準フォーン端子
  • 赤と白で左右LRの別れているRCA端子

の2種類があります。どちらか一方しかついていない場合も多いので、事前に自宅のモニター端子を確認して、必要な端子を搭載したオーディオインターフェイスを手に入れましょう。

ヘッドフォン出力

ヘッドフォンは音が出しにくい夜間などのリスニングに便利ですが、ボーカルやギターを録音する時のモニタリングの際にも重要です。

  • 標準フォーン端子
  • ミニプラグ端子

のどちらかが採用されるケースがほとんどです。手持ちのヘッドフォンを繋ぐことができるか確認が必要ですが、ミニプラグを標準フォーンに変換するコネクターも安価で手に入るので、そこまで心配は要りません。

2) パソコンとの接続端子を確認する

パソコンとオーディオインターフェイスを繋ぐケーブルは、主に「USB」「Firewire」「Thunderbolt」という3種類の規格が存在します。2010年以降Firewireはあまり見られなくなったので、実質「USB」「Thunderbolt」のどちらか、ということになります。

オーディオインターフェイスには「USB」「hunderbolt」どちらかの接続方法が明記されています。USB端子を装備していないパソコンは皆無ですが、Thunderbolt端子を搭載していないパソコンでThunderbolt対応のオーディオインターフェイスは使えませんので、パソコンとオーディオインターフェイス、双方の接続端子を確認しておくことが重要です。

USB接続

USB接続

多くのオーディオインターフェイスがUSB方式を採用し、ほとんどのパソコンにUSB端子は装備するので安心の規格です。自分のパソコンのUSBは「1.0」「2.0」「3.0」「3.1」など、どのバージョンなのか確認しておきましょう。例えばパソコンが「USB2.0」対応であるなら、オーディオインターフェースが「USB3.0」に対応していたとしても、2.0の転送速度でしかデータのやり取りが出来ません。

Thunderbolt接続

Thunderbolt接続

FireWire 800の12倍、USB 2.0の20倍の速さがあると言われている次世代規格。Intel社 と Apple社 が共同開発したコンピュータに周辺機器を接続するためのシリアルバス規格です。ハイエンドモデルのオーディオインターフェイスに採用されることが多くなっています。

USB1.1 USB2.0 USB3.0 USB3.1 Thunderbolt Thunderbolt2 Thunderbolt3
最大転送速度 12 Mbit/s 480 Mbit/s 5 Gbit/s 10 Gb/s 10 Gb/s 20 Gbp/s 40 Gbp/s

表:理論上の最大転送速度

「Steinber UR24C」をUSBケーブルでパソコンと繋いだ様子。USBバスパワー駆動するモデルだとこれだけで動作する。

3) 音質を確認する

オーディオインターフェイスの性能を表す重要な指標が、「量子化ビット数」「サンプリングレート」という2つの要素です。
「量子化ビット数(サンプリングビット数)」は、鳴った音が時間的流れの中で変化していくのを、どれだけ高い精度で再現できるかを示す値で、単位はbit(ビット)で表示されます。
「サンプリングレート(サンプリング周波数)」は、ある瞬間に鳴った音をどれだけ細かい精度で再現できるかを示す値で、単位はHz(ヘルツ)で表示されます。

製品カタログには「24bit/96kHz」などと表記され、両方の数値が大きいほど高音質での録音/再生が可能となります。

clear

DTM君「通常のCDの音質は【16bit/44.1kHz】です。現在では初心者向けのオーディオインターフェイスでも【24bit/192kHz】でのレコーディングに対応するモデルが発売されていて、今日では実質的に誰でもCD音質以上の高品質なサウンドでの録音が可能となっているわけです。」

4) 付属ソフトウェアも確認しておく

近年、入門用オーディオインターフェイスのほとんどで、有名DAWソフトのエントリーモデルが付属するようになってきています。これからDTMをはじめようと思っている人は、DAWソフトから購入するよりも、「DAWソフトが付属しているオーディオインターフェイス」を用意するのがいいかもしれません。

DTMに必要なアイテムがセットになった「DTMスターターセット」

DTMスターターセットDTMスターターセット:PRESONUS AudioBox iTwo STUDIO

オーディオインターフェイスとDawソフトのセットだけでなく、コンデンサーマイクやヘッドフォンなどDTMに必要なアイテム一式がパッケージになった「スターターセット」も存在します。全てのアイテムを単体で購入するよりもコストが抑えられるので、初めからマイクやヘッドフォンを用意したいという人はセットをチェックしてみましょう。スターターセットのランナップは以下のページで確認することができます。
これから音楽制作を始めるのに最適なDTMスターター・セット:8選

5) iPhone/iPadと接続可能か

Steinberg UR12

iPhone/iPadアプリを使っての楽曲制作が活発になってきたことを受けて、2013年頃からは、Windows/MacといったパソコンだけでなくiPhone/iPadなどのiOSデバイスに接続することもできるオーディオインターフェイスが登場するようになってきました。自宅での音楽制作を考えている人にとって特に関係のないことと言えそうですが、モバイル環境でのレコーディングが出来ることは大きなメリットとなりますから、確認しておいてもいいでしょう。


さて、ここまでオーディオインターフェイスを選ぶのに注意するポイントを紹介してきました。続いてのページでは価格帯毎のおすすめモデルについて紹介していきます。