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ドラム録音は、楽器の中でも最も難易度が高いと言われます。大音量と複雑な倍音、そして多数のマイクによるカブリとの戦い——求めるサウンドを実現するには、録音前の準備が重要です。本記事では、最適なセッティングの選び方やマイキングのテクニックを詳しく解説し、理想のドラムサウンドを手に入れるためのポイントを紹介します。
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音楽プロデューサー、レコーディング・エンジニア、マニピュレーターとして椎名林檎のレコーディングに参加。マニピュレーターとして松任谷由実のレコーディングに参加。レコーディング&ミキシング・エンジニアとして、シンセサイザープログラマーとして、また作品のサウンド・プロデュースなど多方面で活躍する。リットーミュージックより「Pro が教える Vision for Macintosh」執筆。
生ドラムの録音が出来れば他の何が来ても大丈夫なぐらい、録音するのは難しい楽器です。生音は大きくて、沢山マイクを立てれば相互にカブリもあります。又、ドラムの録音した後のスピーカーから鳴るイメージの幅も広く、タイトで響きの少ないドラムの音、たっぷり響きのあるゴージャスなドラムの音、CD等からもいろんなドラムの音を聞く事が出来ます。
出来れば、録音の作業を始める前にどんなサウンドにしたいのか、その曲にはどんなドラムサウンドが合うのか話し合ってから進めるのがいいでしょう。
ドラムは大きい音のする楽器ですから、飛び散って行く音の量も半端ではありません。飛び散って行った音はやがて残響としてマイクに戻ってきます。戻って来た音や目的以外のマイクに被ってしまう音は、位相を悪くしたり、音像を滲ませたり、あまりいい働きはしません。目的の音を的確に録る事も大切ですが、目的の音以外を録らない様にする事も同じぐらい大切です。
狭い部屋(ドラムにとって狭い部屋、20畳から30畳あっても狭い方)では、すぐに反射音は帰ってきますので、均一に帰ってくる部屋の真ん中を選ぶのも一つの手です。
部屋の端なら片方から帰ってくる音はすぐですが、反対端から帰ってくる音はかなり減衰しています。 その時間差を利用して、響きのコントロールをします。響きの多いドラムサウンドが欲しい場合、すぐに帰ってくる反射音が奇麗な音であれば、その側の壁の近くにセッティングして、響きごと録ってしまうのも目的に合うでしょう。
写真 Amb多めDr
響きの少ないドラムサウンドが欲しい場合、吸音が大きい壁側にセッティングすると、すぐには響きは帰って来ずに、遠くから帰って来た音も十分に減衰していきます。
写真 Amb少なめDr
狭い部屋では場所選びがサウンドの質を大きく左右します。
広い部屋(50畳より大きい部屋)でドラムを録音するチャンスは少ないと思います。イメージで思うとすごく響きのあるサウンドが録れそうに思います。
私も、何回かすごく大きな部屋でドラムを録音した事があります。 1度は倉庫の中、防音もされてないしスタジオでもありません。生では倉庫中に響き渡ったリバーブサウンドが聞き取れます。しかし、楽器の近くにセッティングしたキックやスネアのマイクに入ってくる音はどれもドライなタイトな音なのです。反射音が帰って来てマイクに入るまでに十分減衰しているのでそういう現象がおこります。もちろん部屋全体を録音するマイクには本物のリバーブと言える残響がありました。
写真 Sound Crew Dr Rec
どんなサウンドが欲しいかで機材に頼るより、楽器をセッティングする場所を選んだり、セッティングした場所の周りの反射音をコントロールするのは大きな効果を得る事が出来ます。
ドラムは楽器の成り立ち上、多くの太鼓を一度に演奏出来る様にしてしまった為に、音の飛び出す方向はまちまちです。あちこちに飛び出している音を全体としてとらえて録音するか、一つずつ捉えて録音するか、いろんな場合のマイクのセッティングを紹介していきましょう。
ドラムを録音する場合、時と場合によって、いろんな事が考えられますが、プロのレコーディング現場でドラムを録音する場合、(マイクの本数は1つの楽器と思えない程、17本立てた事もあります)多くのマイクを使用します。多ければ多い程、後でのチョイスで音色の変化幅は広がりますが、実際、そう言っても居られません。
マイクの本数を最小限に抑えたい場合、最低3本で録れるでしょう。低域ははっきりさせずらいので、Kickは別にしても残りをステレオで鳴っているイメージで録音する方法です。予算が少ないアマチュアの録音等で見られる録り方ですが、本当はドラマーやエンジニアの技量が問われる難しい録り方でもあります。
Kick以外の全ての楽器のバランスはドラマーが演奏で調整しなければなりません。その時点で、非常にバランスが取れている生音でなければなりません。更にドラマーはマイクに拾われてヘッドホンに帰って来ているバランスを気にしながら演奏しなければなりません。コンプをキツく掛けたいサウンドの場合は尚更です。多分いつも通り演奏したらシンバルばかりになって、スネアは聞こえません。何本で録るかも大切ですが、録音されるドラマーが何本で録られているかを意識して演奏するのも大切な事なのです。
3本のマイクしか無い場合、Kick1本とトップをステレオで録ります。
Kickのマイクは後で説明するとして、トップの二本のマイクの立て方はマイクによっても違いは出てきますが、ドラマーが生でキットのバランスを取って演奏しているはずですから、理想はドラマーの耳元です。しかし耳元にマイクがあったのでは、演奏出来ませんので、ドラマーの頭上の少々後ろから、ちょっとスネア、ハイハット寄りにステレオで立てるといい結果が得られます。ステレオマイクやペアマイクでステレオバー等を使うと1本のスタンドで、演奏の邪魔にもならず、綺麗なステレオイメージで録音する事が出来ます。
あと2、3本マイクを足せるとしたら、スネアとハイハットです。
基本のビートは全部オンマイクで録音出来るので、録音する側で調整がききやすくなります。しかし、まだまだ、トップのマイクに芯を足して行く感覚で録らなくてはなりませんので、まだ、トップマイクが重要な部分を占めます。
7本以上のマイクが使える場合、タムにもマイクを立てる事が出来ます。どんどん単体の太鼓の音を直接録音出来る様にはなりますが、それぞれのカブリの音が大きくなっていくので、今度は演奏より録音テクニックの方が問われる事になります。なるべくカブリの少ない、尚かつ1つずつの楽器の音を最大限良く録音する方法が問われます。この場合は全体を録っていたトップマイクをシンバルに寄せて、シンバルのマイクとした方がいいでしょう。
Kickのマイクの立てる位置は千差万別です。いろいろな録音法があり、どれも間違いとは言えませんし、どれも正解とは言い切れませんが、大まかに5つの録音場所があります。
1、Kickで一番良く見る録音方法は、外側の皮に穴のあいている場合、穴の近辺にマイクをセッティングしている方法でしょう。ビーターが内側の皮を打つ音、胴が鳴る音、Kick全体を1本で録音上でいろんな音が録音出来る場所ですが、数ミリでそのバランスが変わるので、経験が必要な場所でもあります。基本的にダイナミックマイクで録音します。ダイナミックマイクじゃないと歪んでしまいますが、ダイナミックマイクでも真正面から録音すると吹かれてしまうので、風の向きに対してちょっと斜めにするだけでも吹かれを軽減する事が出来ます。どうしても吹かれる時はポップガードを使ってもいいでしょう。
穴の皮と同じあたりにセッティングして、ちょっと入れぎみにしたり、抜き気味にしたりすると音色を変えられます。ゼンハイザーMD421,オーディオテクニカATM25,AKG D112,SHURE Beta52等を使用します。
SENNHEISER MD421-II
audio-technica ATM25
AKG D112 MK2
Shure BETA52A – Supernice!DTM機材
写真 Kick Mic
2、Kickの皮の外側はKick全体の音を録る事が出来ます。Kickの生音自体がいい音をしていれば素晴らしい音を録る事を出来る場所ですが、マイクが皮の振動に吹かれてノイズになりやすかったり、目的の音になりづらい場所でもあります。打面の音を直接録音する事は出来ないのでアタッキーな音にはなりませんが、Jazzやあまりハードじゃない楽曲の場合、Kick全体の音を録音出来ます。
NeumannU47fet等 コンデンサーマイクを使用する事が多いですが、コンデンサーマイクの中で歪んでしまう事も多いので、高音圧でも歪まない様なコンデンサーマイクを選んだり、マイクにパッドがあれば使用します、やはり、吹かれ防止の為にちょっと上から録音すると、いい結果が得られます。周りの音も入りやすいので注意が必要です。
Neumann U47 FET i – Supernice!DTM機材
写真 Kick U47fet
3、Kickの中は実際は耳では聴く事が出来ない場所ですが、間違った場所とはいい切れません。場所によってはビーターが皮を叩く音と周りで鳴っているKick全体の音をバランス良く録音する事が出来ます。穴の入り口で使った様なダイナミックマイクを使用します。
4、Kickのペダル側。スネアやTomの録音と同じく打面側から録音する方法ですが、私はあまり試した事がありませんが、好んで録っている方もいらっしゃる様です。演奏の邪魔にならないようにする事と、ペダルの雑音を拾わない様に注意が必要かと思います。
5、サブキック
ダイナミックマイクの説明をした時に、ダイナミックマイクはスピーカーを逆にした様な構造でと説明しましたが、このYAMAHA SUBKICKという製品はYAMAHA10Mというスピーカーをマイクとして使用して録音していたエンジニアがいた事から製品になった物で、10Mのウーハーをそのままマイクとして使用されています。
Snareは多くの場合2本のマイクで録音します。上からSnare自体を狙うマイクと、下からスナッピー成分を多く狙うマイクです。まず注意したいのは、一つの楽器を上からと下から録音する為に全く逆の振動がマイクに伝わってくる為、逆相になってしまいます。
写真 Snare Mic Setting
そのまま足して聴くと打ち消し合って差分しか聴こえて来なくなりますので、Snareの裏のマイクから入力されている、HAもしくはミキサーでPHとかφとか書いてあるPhaseSwitch(逆相スイッチ)を入れて逆相にしましょう。正相の時と比べて低い成分が多く聴こえれば正解です。2本のマイクが近くにあるので、2本で一つのマイクでサウンドを作るイメージで上下対称に同じマイクをセッティングすると大きな効果を得られます。
殆どの場合SHURE SM57等、ダイナミックマイクを使用します。スネアのリムの中に入れる距離や角度で音が変わります。基本は丸い皮の真ん中を狙いますが、リムの中にかなり入れて行くと低音成分が増えて、太いスネアの音が録音出来ますが、叩かれる可能性も増えます。角度を大きくするとアタックが増えます。浅くするとアタックは減りますが、胴の音は増えます。
試してみて聞いてみてを繰り返してみてください。
SHURE SM57 – Supernice!DTM機材
しかし、Jazzっぽい演奏とかブラシによる演奏とかは、上と下のマイクをわざと違うマイクを使う場合もあります。コンデンサーマイクを使う事もあります。いずれにしても生のスネアの音を聴いて、どう録音するのが最適かを考えなければなりません。
ハイハットのマイクは、ダイナミックマイクを使う事もあれば、コンデンサーマイクを使う事もあります。曲によって繊細なハイハットワークを録音したいなら、コンデンサーマイクを使うでしょう。ハーフオープンでシャーシャーと荒々しいプレイを録音するには、ダイナミックマイクを使うでしょう。それゆえに曲を聞いてから変更する場合もあります。なるべくスネアや近くのシンバルが被らない様に、なおかつ演奏の邪魔にならない様に、立てなければなりません。
写真 High Hat Mic
タムのマイクは、ほとんどの場合、ダイナミックマイクで録音するでしょう。Sennheiser MD421やShure SM57等が多く使われます。コンデンサーマイクを使うエンジニアもいますが、 叩かれてしまう可能性が大きいので、高価なコンデンサーマイクだと壊した時の代償も大きいですから、コンデンサーマイクを使わせてもらえない場合もあります。
タムの場合もスネアと同じ様に、基本は皮の真ん中を狙います。リムから入れる量、角度でかなり音が変わります。AUDIX F-2やSennheiser E905,Shure PG56QTR,ElectroVoice N/D468等タム用にボディを短く設計されている物もあります。近くにシンバルがある場合も多くありますが、シンバルは横にはあまり音は飛びません。シンバルの真横でもタムの音の方を多く録る事も出来ます。
AUDIX F2 – Supernice!DTM機材
写真 Tom Mic
シンバルのマイクはシンバルだけを録ろうとするか、キット全体で録ろうとするかで場所は変わります。
シンバルだけを録ろうとする場合、シンバルの真上方向に、単一指向より録音する幅の狭い、超単一指向と呼ばれるコンデンサーマイクを立てると他のキットの音の被りの音を小さくおさえて録る事が出来ます。何枚かある場合は左側右側のそれぞれで数枚をカバーする様に立てます。内側から外側に向けて録ると更に被りが小さくなります。ライドシンバル専用に別に立てる事も多くあります。
Topマイクとして、キット全体で録ろうとする場合、最初に述べた3本で録るイメージで立てます。
アンビエンスはその部屋に響いている音を十分に聞いて立ててください。近すぎてもアンビエンスにならないし、大きく離してセッティングすると音像も大きくなります。
コンデンサーマイクを立てる事が多いと思いますが、ダイナミックマイクで録る事もあります。無指向性マイクで部屋全体を録音するイメージもあれば、単一指向性マイクでドラムを狙って離れたドラムの音を録る場合もあるし、単一指向性マイクをドラムと反対方向を狙って、部屋の響きだけを録る事もあります。アンビエンスの付け加え具合や潰し具合によって、マイクを立てる位置は変わってきますので、最終的イメージを考えながらマイクを立てて下さい。
ドラムを録音する時に、私が真っ先に使うのは、アナログ・マルチ・テープレコーダーです。レコーダーですから、エフェクターとは呼べませんが、良質のリミッターの様に、ピークを抑え、音を太くしてくれます。しかし、残念ながら、プロの私等でさえ、アナログ・マルチ・テープレコーダーは既に使えない事が多くなってきました。ProTools等のDAWに直接録音する場合、リミッター等のレベルを押さえて録音レベルを上げるエフェクターも効果的ですが、掛けすぎると元には戻りません。EQで補正するぐらいで、ピークメーターが振り切らない様ににらめっこしている方が懸命かもしれません。
やっぱりドラムは1にマイクセッティング、2にマイクセッティング、ブースに何度も足を運ぶ足が何よりのエフェクターです。
私の場合、録音時にイコライザーを過激に掛ける事はまずありません。足りないと思われる部分を自然に足したり引いたりするぐらいです。しかしフィルターはよく使います。特にキックは低音なので、あちこちに回り込みます。各パーツも音が変化しないぐらいにローカット(ハイパス)フィルターを使うと、低音の影響を受けず、各々の楽器が生き生きと録音されます。
参考にするEQカーブはプラグインで表示しますが、プラグインは録音される音に掛かる訳ではなく、再生される時に掛かるので、同様のイコライジングを録音用Mixerや実機EQで掛けます。
Kickは40〜80Hzを狭い範囲でイコライジングして低音部分を決めます。アタック部分の音は3kHzから10kHzを上下します。
図 Kick EQ
Snareは200〜800Hzの間でボディ音を調整し、3kHz〜15kHzでアタックやスナッピーの音を調整します。
図 Snare EQ
High Hatは80Hz以下をフィルターでカット、高音部分は3KHzから15kHzで金属音を調整します。
図 High Hat EQ
Tomは大きさに依っても違いますがKickとSnareの様に考えて下さい。
図 Tom EQ
CymbalはHighHatの様にローカットするとスッキリしますが、RideCymbal等は比較的低い音も出ていますので楽器の音自体を削ってしまわない様に注意して下さい。
図 Cymbal EQ
アンビエンスはちょっとだけローカットするぐらいで、基本的にはイコライジングしません。ミックスダウンの時にどう処理するか考えます。
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